2026/10/24|1,050文字
会社が外部からサイバー攻撃を受けた場合、直ちに担当者や管理職個人の責任と考えるのは適切ではありません。まずは、事故の原因が個人の故意・過失によるものなのか、それとも会社の管理体制上の問題によるものなのかを整理する必要があります。
1 担当者や管理職の責任はどのように考えるべきか
サイバー攻撃は近年ますます巧妙化しており、十分な注意を払っていても被害を受けることがあります。このため、次のような場合には、担当者や管理職に責任を問うことは難しいと考えられます。
- 外部からの高度な攻撃であった
- 社内ルールに従って業務を行っていた
- 会社が求めていた手順どおりに対応していた
一方で、次のような場合には、本人の責任が問題となる可能性があります。
- セキュリティ規程を知りながら意図的に無視した
- 繰り返し注意・指導を受けていたにもかかわらず改善しなかった
- 不審メールであることが明らかなのに安易に開封した
- パスワードの使い回しや第三者への開示など重大なルール違反があった
また、管理職についても、次のような事情があれば、管理監督責任が問われることがあります。
- 必要な指導教育を全く実施していなかった
- セキュリティ上の問題を認識しながら放置していた
- 部下からの相談や報告を握りつぶした
2 懲戒処分は可能か
懲戒処分が有効となるためには、一般の労務管理と同様に、次の要件を満たしていることが必要です。
①就業規則に懲戒事由が定められていること
②労働者に規則が周知されていること
③処分に客観的合理性と社会的相当性があること
これらのことから、「サイバー攻撃による損害が発生した」という結果だけを理由に懲戒処分を行うことは困難です。
例えば、フィッシングメールを開封した結果、ランサムウェア被害が発生したとしても、次のようなことを総合的に検討する必要があります。
- 会社が十分な教育を実施していたか
- 技術的な対策を講じていたか
- 従業員が通常期待される注意義務を尽くしていたか
特に、一度の単純ミスや誠実な業務遂行の過程で生じた過失のみを理由に重い懲戒処分を行うと、後に無効と判断されるリスクがあります。
3 実務上の注意点
サイバー事故発生時には、責任追及を急ぐよりも、被害拡大防止、原因調査、再発防止策の策定を優先すべきです。
担当者への過度な責任追及は、「報告すると処分される」という意識を生み、将来の事故の隠蔽や報告遅延につながるおそれがあります。最近では、個人のミスだけでなく、組織全体の管理体制や教育体制の不備も含めて検証すべきとの考え方が重視されています。