2026/10/15|1,192文字
仕事をしない従業員を処罰できないのか
業務命令に従わない、著しく勤務成績が不良である、職務怠慢が認められるといった場合には、就業規則に基づいて懲戒処分を行うことは可能です。
単に「成果が上がらない」「能力が低い」というだけで直ちに懲戒処分が認められるわけではありません。
まず確認すべきは、その従業員が本当に働いていないのか、それとも働いているものの能力面や適性面の問題で期待する成果が出ていないのかという点です。
例えば次のような場合には、職務怠慢として懲戒処分の対象となる可能性があります。
- 指示した業務を正当な理由なく拒否する
- 業務中に私用を繰り返す
- 故意に仕事を放置する
- 注意・指導を繰り返しても改善しない
一方で次のような場合には、懲戒よりも配置転換や教育指導を優先すべきと考えられます。
- 能力不足により仕事が遅い
- 経験不足で成果が上がらない
- 業務量が本人の能力を超えている
実務上の対応策
むしろ重要なのは、懲戒処分そのものよりも、改善に向けたプロセスを適切に踏むことです。
① 事実関係を記録する
「仕事をしない」という評価は主観的になりやすいため、事実を記録として残します。
- 指示内容
- 指示日時
- 未実施の状況
- 注意指導の内容
- 本人の回答
② 面談を行う
本人が、会社側の把握していない事情を抱えていることもあります。
- 業務内容を理解していない
- 健康上の問題を抱えている
- 職場の人間関係に悩んでいる
- ハラスメントを受けている
まずは改善のための面談を行うことが大切です。
③ 改善指導を行う
会社として期待する行動を明確に伝えます。
例えば、「毎日17時までに進捗報告を提出する」「1か月以内に○○業務を単独で処理できるようにする」など、客観的に判断できる目標を設定します。
④ 配置転換を検討する
現在の業務との適性が合っていない可能性もあります。
能力不足が原因であれば、業務内容の変更、配置転換、業務範囲の見直しなども有効な手段です。
⑤ 改善が見られない場合
指導や支援を十分に行ったにもかかわらず、これらを受け入れず、次のような事実があれば、就業規則に規定されている範囲で、懲戒処分を検討することになります。
- 業務命令違反を繰り返す
- 職務怠慢が続く
- 勤務成績が著しく不良である
注意点
企業が最も避けるべきなのは、「周囲から見て仕事をしていないように見える」という印象だけで処分してしまうことです。
裁判例でも、会社が十分な教育指導や改善機会を与えていなかった場合には、懲戒処分や解雇が無効と判断されることがあります。
そのため、「処罰すること」を先に考えるのではなく、
①事実確認 → ②指導 → ③改善機会の付与 → ④評価 → ⑤懲戒
という順序で対応することが重要です。
会社としては、「問題社員を処罰する」よりも、「改善させる努力を行ったこと」を客観的に示せる状態を作ることが、法的にも実務的にも最も重要なポイントといえるでしょう。