2026/10/18|1,446文字
三六協定(さぶろくきょうてい)は、会社が従業員に法定労働時間を超える残業や休日労働を命じるために必要な労使協定です。しかし、実務では誤解されていることも少なくありません。勘違いしやすいポイントを説明します。
- 三六協定を結んでも残業が無制限にできるわけではない
最も多い誤解です。
三六協定を締結し、労働基準監督署長へ届け出ても、残業時間に上限があります。
原則として時間外労働の上限は、月45時間、年360時間です。
特別条項付き三六協定を締結した場合でも、次のような規制があります。
- 年720時間以内
- 単月100時間未満(休日労働含む)
- 2~6か月平均80時間以内(休日労働含む)
つまり、「三六協定があるからいくらでも残業させられる」というわけではありません。
- 三六協定があっても残業命令が必ず有効になるわけではない
三六協定は会社が残業を命じるための一つの条件にすぎません。
実際に残業を命じるためには、就業規則や労働契約などに、時間外労働や休日労働を命じることができる旨の根拠規定が必要です。
三六協定だけ締結しても、従業員に残業義務が当然に発生するわけではありません。
- 三六協定を結べば割増賃金を払わなくてよいわけではない
三六協定は「残業を適法に行わせるための協定」です。
残業代の支払義務をなくすものではありません。
そのため、三六協定があっても、割増賃金の支払義務は消えません。
- 時間外労働には25%以上
- 深夜労働には25%以上
- 休日労働には35%以上
- 管理職なら三六協定は関係ない、とは限らない
「管理職は残業代が出ないから三六協定も不要」と思われがちですが、注意が必要です。
労働基準法上の「管理監督者」に該当する人は、労働時間規制の適用を受けません。
しかし、店長や課長などの肩書があっても、法律上の管理監督者と認められないケースは少なくありません。
その場合は一般社員と同じく三六協定の対象となります。
労働基準法上の「管理監督者」は、労働安全衛生についての「管理監督者」とは異なるので注意が必要です。
- パートやアルバイトにも三六協定は関係する
三六協定は正社員だけの制度ではありません。
パートタイマーやアルバイトであっても、1日8時間、週40時間を超えて働かせる場合には三六協定が必要です。
雇用形態による違いはありません。
- 従業員代表は会社が勝手に選べない
三六協定を締結する際は、従業員の過半数で組織される労働組合がなければ、従業員の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出する必要があります。
社長が指名した、管理職が勝手に決めたというケースでは、有効な選出がないため、過半数代表者がいないことになります。
過半数代表者は、労働者の民主的な手続により選出されなければなりません。
選出方法が不適切であれば、三六協定も無効となってしまいます。
- 三六協定を締結しただけでは効力が発生しない
労使で署名・押印しただけでは不十分です。
三六協定は、所轄の労働基準監督署長へ届け出て初めて効力を持ちます。
協定書を作成しただけで届出を忘れていると、法定時間を超える労働を行わせた時点で労働基準法違反となります。
- 従業員本人の同意がなくても三六協定は有効
「従業員全員の同意が必要」と誤解されることがあります。
しかし三六協定は、個々の従業員との契約ではなく労使協定です。
適法な手続で締結されていれば、個々の従業員が反対していても協定自体は有効です。
もっとも、育児・介護を行う労働者などについては、別途、残業の制限制度が設けられている場合があります。