2026/10/17|1,427文字
就業規則の作成・届出義務は、原則として常時10人以上の労働者を使用する事業場に課されています。そのため、従業員が9人以下の小規模な企業では、法的には就業規則を作成しなくても違法ではありません。
しかし、就業規則がないことによる不都合は少なくありません。むしろ会社の規模が小さいほど、人間関係や運営上のトラブルが起きやすくなる場合があります。
- 労働条件があいまいになり、トラブルになりやすい
就業規則には、労働時間、休日、休暇、賃金、退職などのルールが定められます。
これがないと、基本的なルールが不明確になります。
- 遅刻や早退はどのように扱うのか
- 有給休暇の申請方法はどうするのか
- 欠勤した場合の賃金控除はどうなるのか
- 残業を命じることができるのか
会社としては当然と思っていたことでも、従業員は「そんな話は聞いていない」と主張するかもしれません。結果として労使トラブルにつながりやすくなります。
- 問題社員への対応が難しくなる
従業員に問題行動があった場合でも、懲戒に関するルールがなければ、会社は懲戒処分を行うことができません。
- 無断欠勤を繰り返す
- 職場の秩序を乱す
- 業務命令に従わない
- 会社のお金を私的に使用した
法律上、懲戒処分をするためには、あらかじめ懲戒事由や懲戒の種類を定めておくことが重要です。
就業規則に具体的な規定がない状態で処分すると、懲戒権の濫用となり懲戒が無効となります。
- 解雇や退職をめぐる紛争が増える
就業規則には通常、定年、退職手続、解雇事由などが定められています。
これらがないと、従業員との認識の違いが生じやすくなります。
例えば会社が「能力不足なので辞めてもらいたい」と考えていても、どのような場合に退職や解雇となるのかが明確になっていないと紛争が発生しやすくなります。
もちろん就業規則があれば自由に解雇できるわけではありませんが、少なくとも会社の基準を明確に示すことができます。
- 残業命令や配置転換が難しくなる
従業員に残業をしてもらったり、担当業務を変更したりすることは、多くの企業で必要となります。
しかし、就業規則に業務命令や配置転換に関する規定がないと、「そのような命令に従う義務はない」と主張される余地が大きくなります。
会社の指揮命令権を円滑に行使するためにも、一定のルール整備は重要です。
- 従業員ごとに扱いが異なり、不公平感が生じる
就業規則がない会社では、経営者の判断で個別対応することが多くなります。
その結果、不公平が生じやすくなります。
- Aさんは許されたのにBさんは注意された
- Aさんだけ特別な休暇を認められた
- 賃金控除の扱いが人によって違う
不公平感は職場の不満や離職の原因になります。
- 助成金や企業成長の際に支障が出る
助成金の中には、就業規則の整備が前提となるものがあります。
また、従業員が増えて10人以上になった場合には就業規則の作成義務が発生します。
その時になって慌てて作成すると、実態に合わない内容になったり、現場の運用とのズレが生じたりすることがあります。
従業員数が少ないうちから基本的なルールを整備しておく方が、将来的にはスムーズです。
小規模企業であっても「法律上義務がないから作らない」のではなく、少なくとも勤務時間、休日、賃金、服務規律、休職・退職、懲戒などの基本事項を定めた簡潔な就業規則を整備しておくことをお勧めします。就業規則は単なる書類ではなく、会社と従業員が安心して働くための「共通のルールブック」と考えると分かりやすいでしょう。