パワハラによる精神障害の労災認定基準

2026/09/21|1,244文字

 

職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が原因でうつ病などの精神障害になった場合、一定の要件を満たせば労災保険の対象となります。

厚生労働省は「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を定めており、次の3つの要件をすべて満たすと労災と認定される可能性があります。

 

1 認定対象となる精神障害を発病していること

まず、うつ病、適応障害、急性ストレス反応、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、医学的に精神障害と診断されていることが必要です。

単に「気分が落ち込んでいる」「仕事に行きたくない」という状態だけでは足りず、医師による診断が必要になります。

 

2 発病前おおむね6か月以内に強い心理的負荷があったこと

労災認定では、発病前約6か月間に職場でどのような出来事があったかを調査します。

パワハラについては、例えば次のような行為が対象になります。

・人前で繰り返し人格を否定される

・「無能」「辞めろ」などの暴言を受ける

・長期間にわたり執拗な叱責を受ける

・他の社員の前で屈辱的な扱いを受ける

・業務上必要のない嫌がらせやいじめを受ける

・無視や仲間外れを継続的に受ける

・過大な業務や到底達成不可能なノルマを強制される

特に、人格や人間性を否定する言動が継続して行われた場合は、心理的負荷が「強」と評価され、労災認定につながる可能性が高くなります。

また、パワハラの回数、期間、内容、周囲への公開性なども総合的に判断されます。

 

3 業務以外の原因による発病ではないこと

精神障害は私生活上の出来事でも発病することがあります。

例えば、次のようなものが主な原因と判断される場合は、労災認定が難しくなります。

・家族との死別

・離婚や重大な家庭問題

・多額の借金

・重い病気の発症

そのため、職場でのパワハラと発病との因果関係が重要になります。

 

4 パワハラの証拠が重要

労災申請では、パワハラの事実を裏付ける証拠が非常に重要です。

例えば、次のようなものが役立ちます。

・メールやチャットの記録

・録音データ

・日記やメモ

・同僚の証言

・人事部への相談記録

・産業医や上司への相談記録

特に、いつ、誰から、どのような言動を受けたかを時系列で記録しておくことが大切です。

 

5 労災認定された場合

労災と認定されると、次のようなものを受けることができます。

・治療費の補償

・休業補償給付

・障害が残った場合の障害補償給付

・遺族補償給付(死亡した場合)

また、パワハラを行った会社に対して損害賠償請求が認められる場合もあります。

 

6 実務の視点から

パワハラによる精神障害の労災認定では、「実際に精神障害を発病したこと」と「職場で強い心理的負荷を受けたこと」を客観的な証拠で示せるかがポイントです。

体調不良を感じたら早めに精神科や心療内科を受診し、診断書を取得するとともに、パワハラの内容を記録しておきましょう。証拠が十分に残っているほど、労災認定を受けやすくなります。相談の段階では、発病時期、パワハラの内容と期間、証拠の有無を整理しておくと、手続がスムーズに進みます。

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