手取り額で給与の金額を決定する

2026/09/20|1,151文字

 

給与額の決定方法には、「額面給与(総支給額)」を基準に決める方法と、「手取り額(本人が実際に受け取る金額)」を基準に決める方法があります。

 

1.メリット

(1)求職者にとって分かりやすい

従業員が最も関心を持つのは「実際にいくら受け取れるか」です。

例えば、

  • 月給30万円

と説明しても、社会保険料や税金が差し引かれるため、実際の受取額は24~26万円程度になります。

一方で、

  • 「毎月25万円の手取りを確保します」

と説明すると、生活設計がしやすく、応募者に安心感を与えることができます。

(2)採用競争力の向上

特に若年層や未経験者の採用では、手取り額を重視する傾向があります。

同じ月給30万円でも、

  • A社:月給30万円
  • B社:手取り25万円相当

であれば、求職者にはB社の方が魅力的に映る場合があります。

(3)給与に対する不満が起きにくい

入社後に「思ったより手取りが少ない」というギャップが生じることを防げます。

 

2.デメリット

(1)会社の人件費が読みにくくなる

手取り額を固定すると、社会保険料率や税制改正の影響を会社が負担することになります。

例えば、

  • 手取り25万円を保証

している場合、保険料率が上昇すると、その分だけ会社は額面給与を引き上げなければなりません。

結果として、人件費が変動しやすくなります。

(2)従業員ごとに必要な額面給与が変わる

手取り額は以下の要素によって変動します。

  • 年齢
  • 扶養家族の有無
  • 住民税額
  • 前年所得
  • 社会保険加入状況

例えば、

  • 独身者
  • 配偶者・子どもがいる人

では、同じ額面給与でも手取り額が異なります。

逆に同じ手取りを保証しようとすると、個人ごとに異なる給与額を設定しなければならず、公平性の問題が生じることがあります。

(3)昇給・評価制度が複雑になる

一般的な人事制度は額面給与を基準に設計されています。

しかし手取り基準にすると、

  • 保険料変更
  • 税額変更
  • 扶養状況変更

などにより、評価と無関係に給与改定が必要になる場合があります。

(4)法的・実務的なトラブルの原因となる

雇用契約では通常、

  • 月給〇万円
  • 基本給〇万円

という形で額面給与を定めます。

「手取り25万円保証」だけを約束すると、

  • 税金が上がった場合
  • 社会保険料が上がった場合

に誰が負担するのかが不明確になり、労使トラブルにつながる可能性があります。

 

3.社労士としての実務の視点から

給与は原則として「額面給与(総支給額)」で決定することをお勧めします。

ただし採用活動では、

「月給30万円(社会保険加入後の手取り目安:約25万円)」

「初年度の想定手取りは24~25万円程度です」

のように、参考として手取り額を説明することは有効です。

一方、

「手取り25万円を保証します」

という表現は、将来の社会保険料率や税制改正によるリスクを会社が負うことになるため、安易に用いない方が安全です。

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