誤解の多いノーワーク・ノーペイの原則

2026/09/16|1,392文字

 

◆ノーワーク・ノーペイの原則

「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、言葉のとおりNoWork(働かない)→NoPay(賃金は発生しない)という考え方です。働いていない時間については賃金を支払う義務はないという労働法上の基本原則です。

日本の労働契約は「労務提供の対価として賃金を支払う」という仕組みで成り立っています。このため、労働者が働かなかった時間には賃金は発生しないというのが基本です。

ただし、働いていなくても賃金を支払わなければならない例外がいくつもあります。

この「原則」と「例外」を正しく理解することが、トラブル防止に非常に重要です。

 

◆適用されるケース(賃金が支払われないケース)

以下は典型的に「ノーワーク・ノーペイ」が適用されます。

 

①遅刻・早退・欠勤

労働者の都合で働かなかった時間は賃金が発生しません。

・10時出勤予定が11時に来た→1時間分は無給

・体調不良で欠勤→その日の賃金は発生しない(有給休暇を使えば別)

 

②労働者の自主的な研修・資格取得

会社が義務付けていない研修や勉強会は「労働時間」とは扱われず、賃金は発生しません。

 

③ストライキ(争議行為)

労働組合のストライキは正当な権利ですが、その時間の賃金は支払われません。

 

④業務命令に反して働かなかった場合

会社が指示した業務を正当な理由なく拒否した場合、その時間は無給となります。

 

◆適用されないケース(働いていなくても賃金が発生するケース)

ここが重要です。

「働いていない=必ず無給」ではありません。

法律上、会社が賃金を支払わなければならない例外が多数あります。

 

①会社都合で働けない場合(休業手当)

会社の事情で働けない場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります(労働基準法第26条)。

・機械の故障

・材料不足

・システム障害

・経営上の都合で一時的に休業

 

これは「労働者は働く意思があるのに、労働者の都合ではなく会社の都合で働けない」ため、ノーワーク・ノーペイは適用されません。

 

②有給休暇(年次有給休暇)

有休は「働いていなくても賃金が100%支払われる」制度です。

労働者が請求すれば、会社は拒否できません(時季変更権の例外を除く)。

 

③会社が義務付けた研修・教育

会社が参加を命じた研修は「労働時間」とみなされ、賃金が発生します。

・新入社員研修

・安全衛生教育

・会社が必須とする資格講習

 

④労働者の責めに帰さない待機時間

労働者が働く準備をして待機している時間は「労働時間」です。

・上司の指示待ち

・客が来るまで店内で待機

・清掃が終わるまで待機

これは「働いていないように見えても、会社の指揮命令下にある」ため、賃金が発生します。

 

⑤業務災害による休業補償

業務災害で休業した場合、会社はその最初の3日間について、平均賃金の60%以上の休業補償をする義務があります。

ただし、これは本来の賃金とは異なります。

 

◆ノーワーク・ノーペイの誤解が生むトラブル

相談現場でよくある誤解は次のとおりです。

 

誤解①「働いていないなら全部無給でいい」

→会社都合の休業、有給休暇、義務研修などは無給にできません。

 

誤解②「遅刻・早退は罰金を取っていい」

→減給の制裁には厳しい制限があり、就業規則の定めが必要ですし、労働基準法による上限があります。

 

誤解③「研修は仕事じゃないから無給でいい」

→会社が義務付けた研修は労働時間です。参加義務のないものは、無給で構いません。

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