2025/09/27|929文字
「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定せず、一定期間ごとに作成される勤務表(シフト表)によって、初めて具体的な労働日・時間が決まる勤務形態です。
この制度は、飲食・小売・介護など、業務量が日々変動する業種で広く使われています。
<合意の有無:シフト制は契約で決まる>
シフト制の運用は、労働契約の内容によって左右されます。
契約書や労働条件通知書に「勤務日・時間はシフト表により決定する」と明記されていれば、原則としてその運用が認められます。
例えば、契約時に「月〜金の週5日勤務、9時〜17時」と明記されていた場合、合意がないまま会社が一方的に「週3日勤務」に変更することはできません。
判例でも、フルタイム勤務からシフト制への変更について、労働者の同意がない場合は無効とされています。
<シフト変更の可否:会社の裁量 vs 労働者の権利>
契約が「勤務日はシフト表による」など抽象的な場合、会社の人事権の範囲内でシフトを決定・変更することが可能です。
ただし、その変更が「社会通念上著しく妥当性を欠く」場合は、権利の濫用とされ違法になる可能性があります。
シフト変更が認められるかどうかは、以下の要素が総合的に判断されます。
・会社の業務上の必要性
・労働者が受ける不利益の程度
・変更の頻度や事前通知の有無
・労働者との協議の有無
医療法人が医師に対し、勤務日数を一方的に減らした裁判事例では、労働者の同意がないため変更は無効とされました。
その結果、減らされた勤務日数に対する賃金の一部支払が認められました。
<使用者側のポイント>
労働契約書に「シフト制であること」「シフト表によって勤務日・時間が決まること」を明記します。
シフト表の作成・変更は、できる限り事前に通知し、労働者の意見を聞きます。
業務上の必要性がある場合でも、変更の合理性を説明できるようにしておく必要があります。
<労働者側のポイント>
契約書の勤務条件を確認し、曖昧な表現があれば、使用者に対して積極的に明確化を求めます。
シフト変更に不満がある場合は、業務上の理由や不利益の程度を整理して会社と協議します。
合意のない変更が繰り返される場合は、労働局や労働組合、専門家への相談、転職も検討します。