労働施策総合推進法とはどのような法律か

2025/10/03|1,217文字

 

労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)は、すべての労働者が安心して働き、生きがいを持てる社会の実現を目指す法律です。働き方改革の一環として2018年に「雇用対策法」から改正され、2020年6月に施行されました。

この法律は、雇用の安定、多様な働き方の推進、職場環境の改善などを総合的に支援する枠組みを定めており、特に「パワーハラスメント防止措置の義務化」が注目され、通称「パワハラ防止法」とも呼ばれています。

 

法律の目的と理念>

労働施策総合推進法の基本理念は、以下の2点に集約されます。

・多様な労働者が安定して働ける社会の実現

・職業能力や働き方に応じた公正な評価と支援

これにより、労働者が将来への不安なく働ける環境を整え、企業も多様な人材を活用しやすくなります。

 

主な内容と施策>

法律は以下のような施策を柱としています。

 

  1. 労働環境の整備

・長時間労働の是正

・過労死防止

・最低賃金の引き上げ

・安全・健康な職場づくり

 

  1. 雇用形態の改善

・非正規雇用者の待遇改善

・正社員転換支援

・柔軟な働き方の推進(テレワーク、時短勤務など)

 

  1. 多様な人材の活躍促進

・女性、若者、高齢者、障害者、外国人などの就労支援

・包括的なダイバーシティ推進

 

  1. 仕事と生活の両立支援

・育児・介護・治療と仕事の両立支援制度の整備

 

  1. 職業能力評価の充実

・スキルや経験に応じた評価制度の導入

・キャリア形成支援

 

  1. 転職・再就職支援

・職業紹介や研修制度の充実

 

  1. 働き方改革の推進

・地方自治体や企業との連携による制度整備

 

パワーハラスメント防止措置の義務化>

この法律の大きな改正点は、職場におけるパワハラ防止措置の義務化です。企業は以下の対応が求められます。

・パワハラ禁止方針の明示と周知

・相談窓口の設置

・迅速かつ適切な対応体制の構築

・プライバシー保護の措置

また、パワハラの定義も明確化され、優越的な関係を背景に業務上必要な範囲を超えた言動で労働者の就業環境を害する行為が該当します。

 

最近の改正(令和7年)>

2025年(令和7年)には、さらなる改正が行われ、以下の点が強化されました。

・カスタマーハラスメント(顧客からの嫌がらせ)への対応

・求職者へのセクシュアルハラスメント防止

・女性の職業生活における活躍推進

これらの改正により、より包括的なハラスメント対策と職場の多様性が求められるようになっています。

 

企業への影響と対応>

企業はこの法律に基づき、働きやすい職場環境を整備する責任があります。違反した場合は行政指導や企業イメージの低下などのリスクがあるため、法令遵守と継続的な改善が重要です。

 

<実務の視点から>

労働施策総合推進法は、単なるハラスメント対策法ではなく、すべての労働者が安心して働ける社会を目指す包括的な法律です。働き方の多様化が進む現代において、企業・労働者・行政が連携し、持続可能な労働環境を築くための基盤となっています。

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