2025/09/29|1,271文字
無断欠勤とは、従業員が事前の連絡や正当な理由なく勤務日に出勤しないことを指します。企業にとっては業務の停滞や他の従業員への負担増など、深刻な影響を及ぼす行為です。しかし、無断欠勤を理由に解雇することは、法的リスクを伴います。
<法的な位置づけと解雇の有効性>
解雇は「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」と認められる場合に限り有効とされます(労働契約法第16条)。無断欠勤がこれに該当するかどうかは、欠勤の期間、理由、会社の対応など、総合的に判断されます。
裁判所の一般的な判断もあって、実務では「14日以上の無断欠勤」が懲戒解雇の目安とされることが多いです。
ただし、欠勤理由が精神疾患や職場のハラスメントなどの場合は、解雇が無効とされる可能性がありますから、原因の確認も必要です。
<解雇に至るまでの注意点(7つのポイント)>
- 欠勤日数の確認:2週間以上の無断欠勤が続いているかを確認。短期間(数日)の欠勤では、解雇は不当とされる可能性が高いです。
- 欠勤理由の調査:精神疾患、事故、逮捕、家庭の事情など、欠勤の背景を調査します。正当な理由がある場合は、解雇は認められません。
- 出勤督促の実施:電話・メール・書面などで出勤を促します。督促を怠ると、解雇の正当性が疑われます。
- 就業規則の整備と周知:無断欠勤に関する懲戒規定が就業規則に明記されているか確認します。従業員に周知されていることも重要です。
- 退職勧奨の検討:解雇の前に、本人に退職を促す選択肢を提示することで、トラブルを回避できる場合があります。
- 解雇通知の方法:内容証明郵便や特定記録郵便など、確実な方法で通知する。メールのみでは証拠性が弱いです。
- 証拠の確保:欠勤記録、督促履歴、就業規則、通知文書など、解雇の正当性を裏付ける資料を整理・保管しておくことが重要です。
<実務対応の流れ>
欠勤初日から連絡を試み、事情を確認します。連絡が取れない場合は、家族や緊急連絡先にも接触を試みます。
欠勤が続けば、出勤を促す文書を送付し、記録を残します(内容証明郵便が望ましい)。
状況に応じて、退職勧奨を行うか、懲戒解雇の手続に進みます。
解雇通知書を送付し、離職票には「懲戒解雇」または「自己都合退職」など、事実に基づいた記載を行います。
<解雇が無効とされるリスク>
次のような場合、裁判で解雇が無効と判断される可能性があります。
・欠勤理由が精神疾患で、会社が配慮を怠った場合
・ハラスメントが原因で出勤できなかった場合
・就業規則に懲戒事由が明記されていないのに懲戒解雇を行う場合
・出勤督促を行っていない、または証拠がない場合
実際に、無断欠勤を理由とした解雇が「不当解雇」とされ、企業が損害賠償を命じられた判例も存在します(例:日本ヒューレット・パッカード事件)。
<実務の視点から>
無断欠勤は企業にとって深刻な問題ですが、解雇には慎重な対応が求められます。欠勤の理由を調査し、就業規則に基づいた手続を踏むことで、法的リスクを回避できます。最終的な判断は、弁護士など専門家と相談しながら進めるのが望ましいです。