2025/06/17|1,151文字
<年次有給休暇の基本ルール>
労働基準法第39条により、労働者は一定の条件を満たすと年次有給休暇を取得する権利があります。
2019年の法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、企業が年5日を取得させる義務が課されました。
この義務に違反した場合、企業には1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります。
<違法な「会社オリジナルルール」の実例>
- 有給申請を事実上拒否する
事例:従業員が有給を申請しても、「繁忙期だから」「代わりがいないから」といった理由で却下。
違法性:有給休暇は原則として労働者の自由な意思で取得できるものであり、企業側が一方的に拒否することはできません。
- 有給取得を欠勤扱いにする
事例:有給を申請したにもかかわらず、給与が差し引かれたり、欠勤として処理されたりする。
違法性:これは明確な労働基準法違反であり、賃金未払いにも該当します。
- 虚偽の有給取得記録を作成
事例:実際には取得していないのに、管理簿上では「取得済み」と記録。
違法性:虚偽報告は悪質な違反とされ、企業や担当者が書類送検されるケースもあります。
- 有給の「買い取り」を強要
事例:退職時に「有給は買い取るから使わないで」と言われる。
違法性:原則として、有給休暇は労働者が休むための権利であり、企業が一方的に買い取りを強制することはできません(ただし退職時の未消化分の買い取りは例外的に認められます)。
- 時季指定義務を怠る
事例:企業が年5日の有給取得を義務づけられているにもかかわらず、何の対応もしていない。
違法性:企業は、対象者に対して時季を指定してでも5日間取得させる義務があります。怠ると罰則対象です。
<違法ルールが横行する背景>
「休むことは悪」文化:日本企業では「休む=迷惑をかける」という意識が根強く、取得しづらい雰囲気がある。
管理体制の不備:有給管理簿の未整備や、就業規則に明記されていないケースも多い。
罰則の軽さ:違反してもすぐに罰則が科されるわけではなく、是正勧告で済むことが多いため、軽視されがち。
<労働者が取るべき対策>
- 有給申請は書面で残す:メールや申請書など、証拠を残すことが重要です。
- 就業規則を確認する:有給に関する規定が明記されているかをチェック。
- 労働基準監督署に相談:違法な対応が続く場合は、最寄りの労基署に相談しましょう。
- ユニオンや専門家に相談:個人での対応が難しい場合は、労働組合や専門家の力を借りるのも有効です。
企業が独自に設けた有給休暇に関するルールが、労働基準法に違反しているケースは少なくありません。特に「取得させない」「虚偽記録」「欠勤扱い」などは重大な違反です。
労働者は、自身の権利を正しく理解し、必要に応じて外部機関に相談することで、健全な職場環境を守ることができます。