2025/06/18|962文字
<解雇には原則30日前の予告が必要>
労働基準法第20条により、使用者が労働者を解雇する場合、原則として少なくとも30日前に予告する必要があります。
予告を怠った場合、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。
<即日解雇が許される例外的な条件>
即日解雇が合法とされるのは、以下の2つの「除外事由」がある場合に限られます(労働基準法第20条但書)。
(1)天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能な場合
これは、自然災害や火災など、予測不可能かつ不可抗力によって事業の継続が困難になった場合を指します。
例えば、地震で工場が倒壊した、火災で事業所が全焼した(事業主の重大な過失がない場合)などの場合です。
単なる経営不振や資金難はこれに該当しません。
(2)労働者の責めに帰すべき重大な事由がある場合
労働者の行為が極めて悪質で、客観的に見て、解雇予告による保護を与える必要がないと判断される場合です。
具体例としては、会社の金品を横領・窃盗した、勤務中に暴力行為を行った、度重なる無断欠勤や職場規律違反など、刑事事件や債務不履行がある場合です。
これらの行為が「懲戒解雇」に相当するような重大な非違行為である必要があります。
<労働基準監督署の「除外認定」が必要>
上記の除外事由に該当する場合でも、即日解雇を行うには、労働基準監督署から「除外認定」を受ける必要があります(労働基準法第20条第3項)。
企業が独自の判断で即日解雇を行った場合、違法とされる可能性があります。
<解雇が無効とされた場合のリスク>
不当な即日解雇が認定されると、企業は以下のようなリスクを負います。
・解雇期間中の賃金支払い義務(バックペイ)
・解雇無効による復職命令
・損害賠償請求
・企業イメージの悪化
<即日解雇の手続き上の注意点>
即日解雇を行う際には、以下の手順を踏むことが望ましいです。
- 解雇理由の明示(書面での通知が望ましい)
- 労働基準監督署への除外認定申請
- 退職証明書の交付
- 未払い賃金や退職金の精算
- 業務の引き継ぎや備品の返却確認
<実務の視点から>
即日解雇は、労働者の権利を大きく制限する行為であるため、法律上は非常に限定的な場合にしか認められていません。
企業側は、解雇の正当性と手続きの適正性を十分に確認し、慎重に対応する必要があります。