2025/04/19|1,237文字
<タイムカード通りの計算>
労働時間をタイムカードの打刻に従って、きちんと1分単位で集計し、給与計算を正しく行い、賃金の支払を行ってきたのに、退職者から未払残業代を請求されるということがあります。
これは本人からの通知であったり、代理人弁護士からの通知であったりするのですが、宛先は代表取締役です。
総務部門から人事部門へと情報が共有され、給与計算に誤りのないことが確認されたりします。
一方で、通知の内容としては、タイムカードで把握されていない労働時間があって、その部分についての賃金を追加で請求するというものです。
タイムカードで把握されていない労働時間には、いくつかのケースがあります。
<持ち帰り仕事の時間>
タイムカードで集計されない労働時間には、持ち帰り仕事の労働時間があります。
上司から残業や休日労働を厳しく制限されている一方で、仕事の量が定時ではこなし切れないほど多いのであれば、必然的に持ち帰り仕事が発生します。正式に上司の許可を得ていなくても、勤務時間に比べて多くの仕事をこなしていることが分かる場合には、上司の黙示の指示があったと認められることも多いでしょう。
場合によっては、テレワークの形で、上司が把握できるような持ち帰り仕事まで、労働時間外という扱いを受けていることさえあります。
<不当な打刻の強制>
ある程度規模が大きな企業の本部では、労働時間の把握が正しく行われているのに対し、営業所や店舗など現場では、違法なマイルールが横行していることもあります。
主に始業時刻前の労働時間と、終業時刻後の労働時間が、集計されていない状態が生じます。労働時間には業務の準備時間と、業務の後片付けの時間が含まれるという本部での常識が、現場には浸透していないことが原因です。
朝の着替えと朝礼が終わってから打刻する、帰りは打刻してから後片付けと清掃をして着替えるなどが典型例です。
また終業後に、仕事のやり直しや、研修会の参加前に打刻するというマイルールもありえます。中には上司が「マンツーマンで指導するので、その前に打刻してきなさい」というのもあります。
こうしたことは、親会社と子会社との間でも生じがちです。
<自主的な不正打刻>
自分は同僚たちよりも仕事が遅い、あるいは加齢によって仕事が遅くなったと自覚している従業員もいます。
また、同僚たちよりも完成度の高い優れた成果物を提出したいと考える従業員もいます。
こうした人たちは、本来の始業時刻前に仕事を開始して始業時刻に打刻する、あるいは、終業時刻に打刻してからサービス残業を行うということがあります。
そして退職後になって、「あの努力に対する報酬がないのは不当だ」などと考え、追加の賃金を会社に請求するということがあるのです。
たとえ自主的な不正打刻であっても、未払賃金があれば会社は追加で支払わなければなりません。
ただ、こうしたことは個人的に行われるため、上司から見つからないこともあり、証拠が残りにくいので、未払賃金の計算も困難です。