派遣社員を利用する企業の配慮

2021/04/24|1,777文字

 

派遣先企業には、派遣元責任者等と連携をとりつつ、次のような措置等を講じることが義務付けられています。

(文中の「法」は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」を指します。)

 

<労働者派遣契約に関する措置(法第39条)>

派遣先は、労働者派遣契約の定めに反することのないように適切な措置を講じなければなりません。

派遣社員は、契約違反があっても自分からは言い出しにくい立場にありますから、派遣先には次のような配慮が求められます。

1.労働者派遣契約で定められた就業条件の関係者への周知

2.派遣労働者の就業場所の巡回による就業状況の確認

3.派遣労働者を直接指揮命令する者からの就業状況の報告

4.労働者派遣契約の内容に違反しないよう、直接指揮命令する者への指導の徹底

派遣先は、労働者派遣契約違反の事実を知った場合、早急に是正し、違反した者や派遣先責任者に契約遵守のための措置を講じる等、適切な対応をする必要があります。

 

<適正な派遣就業の確保(法第40条第1項)>

派遣先は、派遣労働者からの苦情の処理を適切かつ迅速に行わなければなりません。

また、派遣労働者の適切な就業環境の維持等に努めなければなりません。

派遣先は、派遣労働者から派遣就業に関し、苦情の申出を受けたときは、その内容を派遣元事業主に通知するとともに、派遣元事業主との密接な連携の下、誠意をもって遅滞なく、苦情の処理を図らなければなりません。

また、派遣労働者から苦情の申し出を受けたことを理由として、派遣労働者に不利益な取扱をしてはなりません。

派遣先は、派遣就業が適正かつ円滑に行われるよう、セクシュアルハラスメントの防止等適切な就業環境の維持、派遣先の労働者が通常利用している診療所等の施設の利用に関する便宜の供与等、必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。

 

<教育訓練(法第40条第2項>

派遣元の求めに応じて、派遣労働者に対しても業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を実施するなどの義務があります。

ただし、派遣先の労働者と同様の訓練実施が難しいときまで義務を課すものではなく、例えば、研修機材の不足等の事情がある場合に、派遣先の労働者は集団研修を行うが、派遣労働者に対してはDVDを視聴させる等でも差し支えありません。

なお、派遣先は、派遣元事業主が派遣労働者に対し段階的かつ体系的な教育訓練を実施するに当たって、求めがあったときは、派遣元事業主と協議等を行い、派遣労働者が教育訓練を受けられるよう可能な限り努力するとともに、必要に応じた教育訓練についての便宜を図るよう努めなければなりません。

その他の教育訓練や自主的な能力開発等についても同様です。

 

<福利厚生施設(法第40条第3項、第4項)>

食堂・休憩室・更衣室については、派遣社員に利用の機会を与える義務があります。

物品販売所、病院、診療所、浴場、理髪室、保育所、図書館、講堂、娯楽室、運動場、体育館、保養施設などの施設については、利用に関する便宜供与を講ずるよう配慮する義務があります。

この配慮義務は、派遣先の労働者と同様の取扱をすることが困難な場合にまで求められてはいません。

例えば、定員の関係で派遣先の労働者と同じ時間帯に食堂の利用を行わせることが困難であれば、別の時間帯に設定する等の措置を行うこと等でも差し支えありません。

 

<情報提供(法第40条第5項)>

派遣元事業主の方で、段階的かつ体系的な教育訓練やキャリアコンサルティング、賃金等についての均衡待遇の確保のための措置が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の情報や、派遣先の指揮命令の下に労働させる派遣労働者の業務の遂行の状況等の情報を派遣元事業主に提供する等必要な協力をするよう努めなければなりません。

派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する派遣先の労働者等の賃金水準に関する情報を派遣元事業主に提供するよう配慮しなければなりません。

 

<解決社労士の視点から>

いずれも派遣先の義務ではありますが、派遣労働者の保護のためだけでなく、派遣先が派遣社員を十分活用できるようにするためでもあります。

可能な限りの対応を心がけましょう。

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