年金の税金が急に高くなっていたらありがちなこと

2025/04/22|723文字

 

<年金振込通知書>

年金振込通知書は、原則として年16月に郵送されます。

年度の最初となる4月分の年金は6月に支給されます。

6月が年度の最初の月分の振込月となることから、6月に年金振込通知書が郵送されるのです。

年金振込通知書は、2か月に1回の各支払期の年金振込額を知らせるものです。

2つ以上の年金を受けている人には、年金種類ごとの年金振込通知書が封書で届くこともあります。

振込額や振込口座に変更がなければ、6月から先の支払月には年金振込通知書は送付されません。

もちろん、年金振込通知書が送付されない月でも年金は支払われます。

なお、年金振込通知書に記載されている金額は、あくまでも予定額です。

各支払期に支払額の変更があれば、その都度、年金振込通知書が郵送されます。

 

<税金が急に高くなる場合>

年金振込通知書を見て、税金が急に高くなっていることを知り、驚いて年金事務所に問い合わせるというケースが見られます。

年金から差し引かれる税金(所得税および復興特別所得税)は、所得税法の規定により、支払う年金額から各種控除を行い、残りの額に税率を掛けた額となります。

年金から各種の控除を受けるためには、年金を受けている人に送られている扶養親族等申告書に必要事項を記入して、提出期限までに出すことになっています。

しかし、扶養親族等申告書が提出されない場合には、年金の支給額から25%に相当する公的年金等控除額を差し引いた額の10.21%が所得税および復興特別所得税となります。

昨年と比べて急に高額の税金が徴収されている場合、扶養親族等申告書の提出を忘れている可能性があります。

個別に原因を確認したい場合は、ねんきんダイヤルまたは年金事務所等にお問い合わせください。

在宅勤務を命じられた従業員の実際の勤務地

2025/04/21|1,252文字

 

<自宅外勤務の発生>

会社が在宅勤務を命じたところ、社員の判断で自宅ではなく、友人宅、カフェ、ホテル、レンタルオフィスなどで業務を行っていたということがあります。

在宅勤務について、詳細な規程があれば、形式的にルール違反ということが多いでしょう。

しかし、大雑把なルールしか無いため、必ずしもルール違反とはいえず、迂闊に指導できないということもあります。

こうしたことでのトラブル発生を防ぐためのポイントを、検討したいと思います。

 

<在宅勤務の趣旨・目的>

在宅勤務を命じたのに、自宅で勤務しないからルール違反であり、指導や懲戒の対象となるというのは少し乱暴です。

やはり、在宅勤務を命じた趣旨・目的を軸に据えて考える必要があります。

まず、育児や介護との両立のために、本人からの希望もあって在宅勤務を命じた場合には、自宅よりも実家での勤務の方が現実的なこともあります。

自宅や実家以外での勤務であっても、配偶者の実家、兄弟の家、介護施設など、そこで業務をこなすことに合理性を見出しうる場合もあります。

つぎに、ウイルスなどの感染拡大防止のため、通勤や社内での密を避けるために在宅勤務を導入したのであれば、電車やバスで遠くに出かけて業務を行うのは趣旨に反します。

密になりやすい場所での勤務も同様です。

しかし、近所のホテルやレンタルオフィスであれば、多くの場合には、感染拡大防止の趣旨には反しないことが多いでしょう。

さらに、業務効率化の目的で在宅勤務が行われているのであれば、本人が業務に集中しやすい環境で勤務することが趣旨に適います。

たとえば、学生時代からカフェでの勉強が効率的であったという社員であれば、カフェでの勤務も趣旨に適うわけです。

 

<勤務場所の届出>

会社としては、社員がどこで業務を行っていようとも、きちんと業務が遂行されていれば基本的には問題ありません。

勤務場所は就業規則の必要記載事項でもないですし、労働条件通知書でも、雇入れ直後のものに加えて、将来勤務しうる就業場所を網羅的に明示することも許されています。

しかし、勤務場所により情報漏洩のリスクが高まる、労災発生のリスクが高まる、容易に連絡がつかないなど就業管理が困難になるなどは困りものです。

これらを総合的に考えると、会社が社員に在宅勤務を指示した時点で、社員が自宅以外の場所を勤務場所としたいのであれば申し出てもらう必要がありますし、勤務場所を途中で変更する場合にも申告が必要です。

そして、その勤務場所が実質的な不都合をもたらすものであれば、会社から社員に対して、勤務場所の適正化を求めることができるようにしておくことも必要です。

これらのことから、在宅勤務を命じた場合に、社員が自宅とは異なる就業場所を希望するのであれば、会社への届出を義務付け、その就業場所が実質的な不都合をもたらすのであれば、会社は就業場所の変更を求めることができるルールとし、届出とは異なる場所での業務遂行や届出の懈怠に対しては、懲戒を規定しておくのが合理的だといえるでしょう。

危険な密室型セクハラは見つかりにくいのが特徴です

2025/04/20|1,220文字

 

<セクハラの定義>

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など、意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。

「対価型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

「対価型」とは言いますが、この対価はマイナスの対価であり、不利益のことを指しています。セクハラを受け入れてしまえば、不利益がなく、場合によってはプラスの対価が得られるということもありえます。だから逃げられなくなってしまうのです。

「環境型セクハラ」とは、労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

この中の「労働者」は、直接の相手方だけでなく、セクハラ行為を直接・間接に見聞きした労働者を含みますから、被害者は多数に及びます。また、出社できなくなるだけでなく、その後の社会生活を送れない被害者も出てきます。

 

<定義の修正>

上記の公式定義からは、実害のあったことがセクハラ成立の条件であるかのように思われます。

しかし、企業はセクハラ発生の防止に努めなければなりませんし、セクハラ行為を行った社員に対して懲戒処分を行いたいと思っても、会社が実害の発生を証明できなければ断念せざるを得ません。

このことから、私は「職場の人間関係や職場環境で性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為」という定義が正しいと考えています。

セクハラの加害者は「本人の受け取り方次第」という言い逃れをしたがりますが、この定義であれば、被害者の感情とは無関係に客観的に認定されますから、不当な言い逃れはできなくなります

 

<密室型セクハラの特殊性>

部屋の中に加害者と被害者だけがいる状態で行われたセクハラは、他のハラスメントと同様にその立証が極めて困難です。

セクハラがあったということが、真実であったとしても、これを客観的に認定するのは、ほとんど不可能ではないでしょうか。

反対に、セクハラをでっち上げることも簡単な状況であるといえます。

 

<企業の取るべき対応>

密室型セクハラを防止するためには、それが起こらないためのルールを設定し、社員に教育し、ルールの順守を求めることが必要です。

たとえば、男女1名ずつで会議室や応接室には入らない、自動車に乗車しないなどのルールです。

さらに、LGBTQ+やSOGIハラに配慮するのであれば、性別にかかわりなく密室に2名でこもることを禁止しなければなりません。

少し厳しいルールのような気もしますが、2名で密室に入る必要性は滅多に発生しません。

社員と会社を守るためには、必要なことではないでしょうか。

タイムカード通りに計算した賃金の適法性

2025/04/19|1,237文字

 

<タイムカード通りの計算>

労働時間をタイムカードの打刻に従って、きちんと1分単位で集計し、給与計算を正しく行い、賃金の支払を行ってきたのに、退職者から未払残業代を請求されるということがあります。

これは本人からの通知であったり、代理人弁護士からの通知であったりするのですが、宛先は代表取締役です。

総務部門から人事部門へと情報が共有され、給与計算に誤りのないことが確認されたりします。

一方で、通知の内容としては、タイムカードで把握されていない労働時間があって、その部分についての賃金を追加で請求するというものです。

タイムカードで把握されていない労働時間には、いくつかのケースがあります。

 

<持ち帰り仕事の時間>

タイムカードで集計されない労働時間には、持ち帰り仕事の労働時間があります。

上司から残業や休日労働を厳しく制限されている一方で、仕事の量が定時ではこなし切れないほど多いのであれば、必然的に持ち帰り仕事が発生します。正式に上司の許可を得ていなくても、勤務時間に比べて多くの仕事をこなしていることが分かる場合には、上司の黙示の指示があったと認められることも多いでしょう。

場合によっては、テレワークの形で、上司が把握できるような持ち帰り仕事まで、労働時間外という扱いを受けていることさえあります。

 

<不当な打刻の強制>

ある程度規模が大きな企業の本部では、労働時間の把握が正しく行われているのに対し、営業所や店舗など現場では、違法なマイルールが横行していることもあります。

主に始業時刻前の労働時間と、終業時刻後の労働時間が、集計されていない状態が生じます。労働時間には業務の準備時間と、業務の後片付けの時間が含まれるという本部での常識が、現場には浸透していないことが原因です。

朝の着替えと朝礼が終わってから打刻する、帰りは打刻してから後片付けと清掃をして着替えるなどが典型例です。

また終業後に、仕事のやり直しや、研修会の参加前に打刻するというマイルールもありえます。中には上司が「マンツーマンで指導するので、その前に打刻してきなさい」というのもあります。

こうしたことは、親会社と子会社との間でも生じがちです。

 

<自主的な不正打刻>

自分は同僚たちよりも仕事が遅い、あるいは加齢によって仕事が遅くなったと自覚している従業員もいます。

また、同僚たちよりも完成度の高い優れた成果物を提出したいと考える従業員もいます。

こうした人たちは、本来の始業時刻前に仕事を開始して始業時刻に打刻する、あるいは、終業時刻に打刻してからサービス残業を行うということがあります。

そして退職後になって、「あの努力に対する報酬がないのは不当だ」などと考え、追加の賃金を会社に請求するということがあるのです。

たとえ自主的な不正打刻であっても、未払賃金があれば会社は追加で支払わなければなりません。

ただ、こうしたことは個人的に行われるため、上司から見つからないこともあり、証拠が残りにくいので、未払賃金の計算も困難です。

セクハラ防止対策の第一歩として会社の態度を示しましょう

2025/04/18|830文字

 

社員が社内で、あるいは、お取引先やお客様からセクハラを受けたなら会社は毅然とした態度を示しましょう。

 

<ハラスメント対策>

セクハラはハラスメントの一種ですから、客観的に見れば人権侵害です。

そして、直接の相手だけではなく、その行為を見聞きした人にも恐怖感や不快感を与える形で被害を及ぼします。

ハラスメント対策の目的は、従業員の中から被害者も加害者も出さないことです。

対策の柱は、「ハラスメントは卑劣で卑怯な弱い者いじめ。絶対に許さない」という経営者の宣言と、社内での定義を明確にして社員教育を繰り返し行うことです。

その効果は、労働力の確保、労働環境の維持、生産性の向上、定着率の向上、応募者の増加、会社の評判の上昇と幅広いものです。

 

<形式面でのハラスメント対策>

目的は、会社がハラスメント防止に取り組んでいることの証拠を残しておくことです。

対策の柱は、就業規則などで定義を明確に文書化しておくこと、教育実績の保管、相談窓口の設置(できれば社外)です。

その効果は、被害者からの損害賠償請求額の減少などです。

 

<社員とは限らない加害者>

多くのセクハラは、社員同士で問題となります。

これを放置することは、会社にとって明らかにマイナスですから、積極的な対応をすることに躊躇する理由はありません。

しかし、お取引先の社員からのセクハラであれば、今後の取引関係を考えて、事なかれ主義に走ってしまう危険があります。

こうした場合には、社長自らお取引先に出向いてセクハラの事実を確認し、事実があれば取引関係を解消する毅然とした態度が必要です。

お取引先も理解を示さざるを得ませんし、社員は会社の態度に共感するでしょうし、こうした情報が外部に漏れても批判は生じにくいものです。

長い目で見れば、会社にとってのプラスが大きいといえます。

このことは、お客様からのセクハラについても、全く同じことが言えます。

むしろ、これを放置することは、他のお客様が離れていく原因となるのではないでしょうか。

労災認定されるかされないかの限界事例

2025/04/17|1,066文字

 

<業務災害認定の原則>

業務災害と認定されるには、業務遂行性と業務起因性の2つが必要です。

業務遂行性とは、労働契約関係が認められたうえで発生した災害であることをいいます。

業務起因性とは、業務と病気や怪我との間に因果関係があることをいいます。

ですから、業務とは無関係な私傷病による事故は、業務災害とは認められません。

 

<業務災害の限界事例>

事務所に1人でいる時に意識を失い、後から入室してきた別の従業員に発見されて、救急搬送されたケースがありました。

こうした場合の殆どは、業務とは無関係な病気によるものです。

しかし病院の検査で、外傷性くも膜下出血と診断され、頭に大きなコブも発見されました。

この診断結果を受けて、事務所内を確認したところ、机の上にFAXで受信した書類が置いてあり、FAXのコードが抜けかけていたことが分かりました。

この時点で、FAXのコードに足を取られ、転んで頭を打ったことにより、外傷性くも膜下出血を発症したことが疑われました。

幸いにも意識を回復し、こうした事実が正しいことが確認されました。

結局、業務災害と認定されました。

 

<通勤災害認定の原則>

通勤災害と認定されるには、通勤によって被災したこと、つまり、通勤に潜む危険が現実化して被災したことが必要です。

通勤ではない移動中のケガや、通勤に伴う危険とは無関係に、私傷病が原因でケガをした場合には、通勤災害と認定されません。

 

<通勤災害の限界事例>

会社に向かうため、バスに乗ろうとしてステップに足を掛けたところで倒れ、頭を打ち意識を失って救急搬送されたケースがありました。

頭を打って意識を失った場合、身体の半分以上がバスに入っていた場合にはバス会社の責任が発生しうるのです。

バス会社に状況の説明を求めたのですが、運転手も他の乗客もよくみていなかったという回答でした。

後日、病院の診断結果が出ました。

たまたまバスに乗ろうとしたタイミングで、貧血を起こして意識を失い、そのまま倒れて頭を打ったということでした。

結局、通勤災害ではないと認定されました。

 

<就業規則との関係で>

就業規則によりバイク通勤が禁止されている会社の従業員が、バイクで出勤中に転倒してケガをした場合、会社に届けていた通勤経路とは別のルートで帰宅中にケガをした場合、これらは就業規則違反であり、懲戒の対象となることもあります。

しかし、これはあくまでも社内的な話です。

労災保険は国の制度ですから、原則として、各企業の就業規則の内容に左右されません。

就業規則違反の事実は捨象して、労災の成否を検討しましょう。

長時間労働抑制のための具体的施策リスト

2025/04/16|2,122文字

 

<働き方改革>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「企業が働き手の必要と欲求に応えつつ生産性を向上させる急速な改善」といえるでしょう。

 社員は人間ですから、ある程度の時間働き続ければ肉体的精神的疲労が蓄積して効率が低下します。

休憩や休暇によってリフレッシュできれば、体力と気力が回復して生産性が高まります。

適切な労働時間で働き、ほどよく休暇を取得することは、仕事に対する社員の意識やモチベーションを高めるとともに、業務効率の向上にプラスの効果が期待されます。 

これに対し、長時間労働や休暇が取れない生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性も高まりますし生産性は低下します。

また、離職リスクの上昇や、企業イメージの低下など、さまざまな問題を生じることになります。

社員のためだけでなく、企業経営の観点からも、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進が得策です。

社員の能力がより発揮されやすい労働環境、労働条件、勤務体系を整備することは、企業全体としての生産性を向上させ、収益の拡大ひいては企業の成長・発展につなげることができます。

 

<長時間労働抑制のための具体的施策リスト>

厚生労働省から「働き方・休み方改善指標」が公表されています。

この中から、長時間労働抑制に向けた働き方の改善を進めるための具体的な施策を抽出すると、次のようになります。

 

項目1:方針・目標の明確化

□経営トップによるメッセージの発信

□経営や人事の方針として長時間労働の抑制を明文化

□全社・部署・個人等での労働時間、残業時間等に関する数値目標の設定

 

項目2:改善推進の体制づくり

□長時間労働の抑制に向けた社内体制の明確化

□労働時間に関する相談窓口の設置

□長時間労働の抑制に関する労使の話し合いの機会の設定

 

項目3:改善促進の制度化

□労働時間・就労場所を柔軟にする制度( フレックスタイム制、朝型の働き方、短時間勤務制度、テレワーク制度、在宅勤務制度等)の導入

□業務繁閑に応じて営業時間を設定

□ノー残業デー、ノー残業ウィーク等、定時退社期間を設定

□勤務間インターバル制度を導入

 

項目4:改善促進のルール化

□残業の多い部下を持つ管理職への指導、改善促進

□部下の長時間労働の抑制を管理職の人事考課に盛り込む

□残業を行う際の手続を厳格化

 

項目5:意識改善

□長時間労働の抑制に関する社員向けや管理職向けの教育・研修を実施

□長時間労働抑制のための周知・啓発

□退勤時刻の終業呼びかけ、強制消灯

 

項目6:情報提供・相談

□労働時間・残業時間を社員各自に通知

□36協定による労働時間の制限を周知

□労働時間制度紹介のパンフレット等を配布

□定期健康診断以外での長時間労働やストレスに関するカウンセリング機会等を提供

 

項目7:仕事の進め方改善

□長時間労働の抑制を目的とした業務プロセスの見直し

□業務計画、要員計画、業務内容の見直し

□長時間労働の抑制を目的とした取引先との関係見直し

 

項目8:実態把握・管理

□社員の働き方や労働時間に関する意識や意向の定期的な把握

□タイムカードやICカード等の客観的な方法により労働時間を管理・把握

□管理職やみなし労働・裁量労働制等の適用者について労働時間を把握

 

これらは、あくまでもチェックリストですから、実際に施策を進めるにあたっては、この順番で進めるわけではありません。

会社の実情に応じて、順番を考えなければなりませんが、項目1:方針・目標の明確化は最優先でしょう。

次に行うべきは、多くの会社では、項目7:仕事の進め方改善だと思います。

仕事のムリ・ムダ・ムラを排除して、本当に必要な仕事だけを抽出する必要があります。

仕事は減らず、社員は減少しているのに、労働時間削減など無理な話です。

習慣的に行っている仕事の中で必要性の低い仕事をやめる、他部署とダブっている仕事はより得意な部署がまとめて行う、会議はやめて誰かに一任する、あるいは、23人の協議に委ねるなど、仕事の分量を減らす工夫も大事です。

 

<実務の視点から>

いきなり労働時間を減らすと言われても、社員ひとり一人の都合があります。

周囲の社員に気を遣って、やむなくダラダラ残業をして、終業時間を合わせていた社員なら、長時間労働抑制は大助かりです。

会社にとっても、人件費の削減となりますから利害が一致します。

それでも、残業代を稼いで生活の糧にしていた社員にとっては深刻です。

高級な外車を買うために残業代を稼いでいたのなら、諦めてもらうことは難しくないのかも知れません。

しかし、実家の親に仕送りをするためであれば、転職や副業を考えるほど深刻な話になりかねません。

また、自分の仕事の出来栄えにこだわりを持っている社員は、「残業代は要らないから、思う存分、残業させてくれ」と思っているかもしれません。

企画やデザインの仕事をしている人には多いパターンです。

そこまで考えて、労働時間の削減をするのはむずかしい、時間と手間をかけられないというのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

業務上腰痛の認定基準

2025/04/15|1,455文字

 

<腰痛の労災認定>

腰痛は労災として認定されにくいということが誇張されて、腰痛は労災保険の対象外であるという噂が根強く残っている企業もあります。

こうしたこともあって、業務上腰痛の認定基準について、厚生労働省は内容を改訂しながら、繰り返し広報に努めています。

 

<2種類の腰痛>

業務上腰痛の認定基準では、腰痛を「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」に分けて、それぞれの認定要件を満たす場合に労災補償の対象としています。

どちらの場合であっても、労災補償の対象となる腰痛は、医師により療養の必要があると認められたものに限られます。

 

<災害性の原因による腰痛>

負傷などによる腰痛で、次の2つの要件を両方とも満たすものが「災害性の原因による腰痛」とされます。

 

・腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること

・腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること

 

このことから分かるように、「腰痛が持病であれば労災にならない」とはいえません。

災害性の原因による腰痛には、腰に受けた外傷によって生じる腰痛のほか、外傷はないものの、突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等(筋、筋膜、靱帯など)が損傷して生じた腰痛を含みます。

ぎっくり腰(正式には「急性腰痛症」など)は、日常的な動作の中で生じるので、たとえ仕事中に発症したとしても、必ずしも労災補償の対象とはなりません。

ただし、発症時の動作や姿勢の異常性などから、腰への強い力の作用があった場合には労災補償の対象として認められることがあります。

 

<災害性の原因によらない腰痛>

突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるものは、「災害性の原因によらない腰痛」とされます。

災害性の原因によらない腰痛とは、日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛をいい、その発症原因により、筋肉等の疲労を原因とした腰痛と骨の変化を原因とした腰痛の2つに区分して判断されます。

 

<筋肉等の疲労を原因とした腰痛>

次のような業務に比較的短期間(約3か月以上)従事したことによる筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

・約20㎏以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務

・毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務

・長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務

・腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務

※これらの業務に約10年以上従事した後に、骨の変化を原因とする腰痛が生じた場合も労災補償の対象となります。

 

<骨の変化を原因とした腰痛>

次のような重量物を取り扱う業務に相当長期間(約10年以上)にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

・約30㎏以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務

・約20㎏以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務

※ただし腰痛は、加齢による骨の変化によって発症することが多いため、骨の変化を原因とした腰痛が労災補償の対象と認められるには、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合」に限られます。

法人代表者の変更で雇用契約は交わし直しか

2025/04/14|753文字

 

社長など法人の代表者が替わったからといって、雇用契約を交わし直して、労働条件通知書や雇用契約書を作り直す必要はありません。

 

<社長個人が雇う場合>

社長宅で働くお手伝いさんを、社長個人が雇うのであれば、雇用契約の当事者は社長個人とお手伝いさんということになります。

この社長が会長になったとしても、契約の当事者は会長個人とお手伝いさんのままです。

この場合、雇用契約書には社長や会長といった肩書を使わず、契約書は個人名で作成します。

 

<法人とは>

法人というのは、一定の社会的活動を営む組織体で、法律により特に権利や義務の主体となる能力を認められたものをいいます。

本来、権利や義務の主体となるのは個人です。

そして一定の条件を満たした組織だけが、法律によって特別に権利や義務の主体となることを認められます。

法律上、権利や義務の主体となることのできる資格を、法人格(法律上の人格)と呼びます。

法人格を持つのは、個人(自然人)と法人です。

 

<法人の活動>

法人は、生身の人間ではありませんから身体もありません。

その活動は代表者(代表機関)の行為によって行われます。

そして、代表者が法人の目的の範囲内で行った行為の効果は、直接法人に帰属します。

また、代表者が事業遂行上、他人に与えた損害については法人が賠償の義務を負います。

法人は解散によって法人格を失います。

 

<法人との契約>

こうして、個人が法人と契約する場合には、法人の代表者と契約を交わす形をとるのですが、その効果は直接法人に帰属します。

つまり、法人の代表者が動いて、法人に効果を帰属させるわけです。

ですから、雇用契約を交わした後で、社長などの代表者が交代した場合でも、法人そのものが変わってしまうわけでないので、雇用契約の効果は失われず、その性質も変わらないのです。

障害者雇用納付金などに関する事業所調査

2025/04/13|962文字

 

<調査の趣旨>

申告申請の内容が適正であるかを確認するため、毎年度、一定数の事業主が抽出され訪問調査が行われます。

これには、納付金申告を行っていない事業主の申告義務の有無確認が含まれます。

すべての事業主を対象として、毎年調査することはできないため、数年に分けて行っています。

事業主から見れば、約3年に1回調査が入るということになります。

この調査は、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づくものです。〔障害者雇用促進法第52条〕

資料の提出拒否や虚偽の報告等は、罰せられることがありますのでご注意ください。〔障害者雇用促進法第86条〕

 

<事業所調査の概要>

原則として、申告申請年度を含む直近3か年の各月における常用雇用労働者数や雇用障害者の雇用を裏付ける資料を確認します。

●常用雇用労働者の総数確認

・常用雇用労働者の範囲

・法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数

●雇用障害者の確認

・障害の種類と程度

(障害者手帳等の写しは退職後も3年間は保管が必要です)

・雇用関係と労働時間数

 

<調査対象となる資料>

・全労働者の労働者名簿、賃金台帳、雇用契約書等

(これらは労働基準法により罰則付きで義務付けられています)

・全労働者の勤務(就労)状況が確認できる出勤簿、タイムカード、勤怠表等

・その他、労働者の雇用に関する資料

 

<調査結果による対応>

調査の結果に基づき、次のような手続がとられます。

●申告した納付金の額が過少であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、納入の告知を行います。

この場合、その納付すべき額に10%を乗じて得た額の追徴金が加算されます。

●申告した納付金の額が過大であった場合

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が納付金の額を決定し、すでに納付した納付金の額のうち、過大となっている額がある場合には、未納の納付金に充当し、なお残余があるとき又は未納の納付金がないときは還付します。

●支給を受けた調整金等の額が過大であった場合

対象事業主は、最大過去10年に遡って支給額の全部または一部を返還することになります。

 

最新情報は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 のページでご確認ください。

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 (jeed.go.jp)

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