雇用保険から脱退する手続

2025/02/21|952文字

 

<離職票の交付を希望しないとき>

※離職は退職に限られず、週所定労働時間が20時間未満となった場合等を含みます。

・提出書類・・・・・・「雇用保険被保険者資格喪失届」

※被保険者というのは保険の対象者のことです。脱退は、被保険者の資格を失うことなので、資格喪失といいます。

・提出期限・・・・・・被保険者でなくなった日の翌日から10 日以内

※被保険者が転職した場合に、資格喪失が遅れると、転職先での手続がそれだけ遅れてしまいます。期限にかかわらず、なるべく早く手続しましょう。

・提出先・・・・・・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

・持参するもの・・労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、雇用契約書など

 

<離職票の交付を希望するとき>

※59歳以上の離職者は本人が希望しなくても必ず離職票の交付が必要です。

・提出書類・・・・・・「雇用保険被保険者資格喪失届」「雇用保険被保険者離職証明書」

※「雇用保険被保険者離職証明書」は31組ですが、1枚ずつ名前(書類のタイトル)が違います。

・提出期日・・・・・・被保険者でなくなった日の翌日から10 日以内

※被保険者でなくなった人が給付を受けるのは、本人がハローワークで手続をするのが早ければ、それだけ早くなります。手続には、離職票が必要ですから1日も早く手続して、離職票を渡しましょう。

・提出先・・・・・・・・事業所の所在地を管轄するハローワーク

・持参するもの・・労働者名簿、出勤簿(タイムカード)、賃金台帳、辞令及び他の社会保険の届出(控)、離職理由の確認できる書類(就業規則、役員会議事録など)。

 

<退職以外のとき>

「資格喪失届」は、次のような場合でも提出が必要です。

・被保険者資格の要件を満たさなくなったとき(週所定労働時間が20時間未満となった場合等)

・被保険者が法人の役員に就任したとき(ハローワークから兼務役員として労働者性が認められた場合を除く)

・被保険者として取り扱われた兼務役員が、従業員としての身分を失ったとき。

・他の事業所へ出向し、出向先から受ける賃金が、出向元の賃金を上回ったとき。

・被保険者が死亡したとき。

 

失業保険が雇用保険となり、失業手当が基本手当となってから、50年以上経過しているのに、今だに古い言葉が使われている理由は謎です。

評価能力が足りない考課者から評価されるのは不幸です。経営者は考課者の適性を見極め、訓練する義務を負います

2025/02/20|685文字

 

<中央化傾向(中心化傾向)>

中央化傾向というのは、極端な評価を避けようとして、評価を真中に集めてしまう傾向があることを意味します。

たとえば、5段階評価で3ばかりつけてしまうのは中央化傾向の典型例です。

平均値で評価しておけば、評価対象者からクレームをつけられないだろうという臆病な考え方をしたり、普段の仕事ぶりをきちんと把握していないために判断できなかったりすると、このような傾向が見られます。

 

<役職者としての能力不足>

部下の意見や提案を聞きながら業務を進めるのは、部下を育てるためにも、モチベーションを維持するためにも、役職者にとって必要なことです。

しかし、部下の考えを吸い上げないまま、あれこれ想像して、部下の批判を恐れているようでは、役職者として能力不足です。

また、部下の具体的な働きぶりを把握していなければ、指導することは困難ですから、やはり役職者に必要な能力を欠いているということになります。

 

<中央化傾向を示す役職者への対応>

人事考課制度を適正に運用するためには、考課者に対する定期的な教育研修の実施が大事です。

そして、中央化傾向を示す役職者には、重点的な教育研修が必要でしょう。

それでもなお、きちんとした人事評価ができないのであれば、適性を欠くものとして考課者から外すことも考えなければなりません。

そもそも、こうした人物が役職者になってしまうこと自体、適正な人事考課制度の運用ができていなかったり、人事政策が失敗していたりの可能性があります。

たとえば、「縁故採用」までは良いとしても、役職者への「縁故登用」をしてしまうと、こうした役職者が増えてしまいます。

役員と労働保険(雇用保険・労災保険)

2025/02/19|1,092文字

 

<役員が労働保険の対象外とされる理由>

雇用保険は、労働者の雇用を守るのが主な目的です。

労災保険は、労働者を労災事故から保護するのが主な目的です。

会社と役員との関係は、委任契約であって雇用契約ではないため、役員は労働者ではないということで、雇用保険も労災保険も適用されないというのが原則です。

 

<労働者か否かの判断基準>

「役員」という肩書が付いたり、商業登記簿に取締役として表示されたりは、形式上、役員であることの基準になります。

しかし、法律関係では形式ではなく実質で判断されることが多く、労働保険の適用についても役員が実質的に労働者であるか否かが基準となります。

 

<雇用保険の労働者>

雇用保険の適用対象となる「労働者」とは、雇用保険の適用事業に雇用される労働者で、1週間の所定労働時間が20時間未満であるなどの適用除外に該当しない者をいいます。

この「適用除外」の中に役員は含まれていません。

役員であっても、実質的に会社に雇われ、賃金を受けていれば、その限度で雇用保険の対象者となるわけです。

 

<労災保険の労働者>

労災保険の適用対象となる「労働者」とは、職業の種類にかかわらず事業に使用される者で、労働の対価として賃金が支払われる者をいいます。

正社員、契約社員、パート、アルバイト、日雇、臨時などすべての労働者が、労災保険の対象となります。

役員であっても、労働の対価として賃金が支払われている部分があれば、その限度で労災保険の対象者となりうるわけです。

 

<兼務役員>

役員でありながら労働者でもあるという、労働保険の対象となる役員の典型です。

取締役工場長、常務取締役本店営業本部長など、取締役かつ労働者という立場の人は、役員報酬と賃金の両方を受け取っています。

雇用保険では、ハローワークに兼務役員である旨を届出ておく必要があります。

雇用保険料は、賃金だけをベースに計算され徴収されることになりますし、失業手当(求職者給付の基本手当)も賃金だけをベースに計算され支給されます。

労災保険も、賃金をベースとした保険料・休業(補償)給付となります。

 

<執行役員>

名称に「役員」の文字が入っているものの、実際には従業員(労働者)であることも多いです。

雇用契約に基づいて企業に雇われ、取締役会などの決定に基づいて業務を執行し、役員報酬ではなく給与として賃金が支払われているなどの事情があれば、労働者と判断され、雇用保険と労災保険が適用されることになります。

常務執行役員、専務執行役員という名称でも、実質的には労働者ということもあります。

あくまでも、実質的な権限や役割を踏まえて判断することが必要です。

高校生のアルバイトには多くの制約があります

2025/02/18|1,221文字

 

<高校生の採用>

以前からコンビニ、スーパー、飲食店などでは、高校生をアルバイトとして採用している店舗が多かったのですが、人手不足の折、他業種でも高校生の採用が増えているようです。

一方で、物価高が家計を圧迫し、アルバイトとして働くことを希望している高校生も増えています。

高校生等の未成年者を使用する場合にも、労働基準法等を守らなければなりません。さらに労働基準法では、年少者の健康及び福祉の確保等の観点から、様々な制限が設けられ保護が図られています。

未成年者自身が、こうした制限についての知識を持っていないことが多いため、職場の他のメンバーが趣旨を理解し、制限の内容を知っておくなどして、法令違反が生じないように注意する必要があります。

 

<採用にあたっての制限>

労働契約は、未成年者が結ばなければならず、親や後見人が代わって結ぶことはできません。〔労働基準法第58条〕

賃金は、直接本人に支払わなければなりません。ただし、本人同意の上で、指定する銀行等の本人名義の口座に振込みをすることができます。〔労働基準法第24条〕

賃金の額は、都道府県ごとに定められた最低賃金の額を下回ってはなりません。〔最低賃金法第4条〕

事業場には、未成年者の年齢を証明する公的な書面を備え付けなければなりません。〔労働基準法第57条〕

 

<労働時間の制限>

原則として、1週間の労働時間は40時間、1日の労働時間は8時間を超えてはなりません。三六協定によっても、これを延長することはできません。〔労働基準法第35条〕

また原則として、午後10時から翌日午前5時までの深夜時間帯に働かせることはできません。〔労働基準法第61条〕

 

<危険有害業務の制限・坑内労働の禁止>

下の一覧表にある危険有害業務は制限されています。〔労働基準法第62条〕

また、坑内での労働は禁止されています。〔労働基準法第63条〕

 

【危険有害業務一覧表】

●重量物の取扱いの業務

●運転中の機械等の掃除、検査、修理等の業務

●ボイラー、クレーン、2トン以上の大型トラック等の運転又は取扱いの業務

●深さが5メートル以上の地穴又は土砂崩壊のおそれのある場所における業務

●高さが5メートル以上で墜落のおそれのある場所における業務

●足場の組立等の業務

●大型丸のこ盤又は大型帯のこ盤に木材を送給する業務

●感電の危険性が高い業務

●有害物又は危険物を取り扱う業務

●著しくじんあい等を飛散する場所、又は有害物のガス、蒸気若しくは粉じん等を飛散する場所又は有害放射線にさらされる場所における業務

●著しく高温若しくは低温な場所又は異常気圧の場所における業務

●酒席に侍する業務

●特殊の遊興的接客業(バー、キャバレー、クラブ等)における業務

 

<その他>

雇入れの際には、仕事に必要な安全衛生教育を行わなければなりません。〔労働安全衛生法第59条〕

未成年者であっても、また短期間の臨時アルバイトであっても、労災保険が適用されます。〔労働者災害補償保険法〕

昇給時期や賞与支給前だけ頑張る社員への対応

2025/02/17|778文字

 

<期末誤差>

就業規則で昇給時期や賞与支給時期が決まっているのが一般です。

給与の決定には1年間の、賞与の決定には半年程度の人事考課期間が設定されていることでしょう。

考課者にとっては、評価期間の最初の方よりも、評価期間の最後の方が印象が強いため、評価決定に近い時期の働きぶりを重視しすぎてしまう傾向が見られることもあります。

これを期末誤差といいます。

評価される社員の中には、このことを期待して、評価の実施時期が近づくと張り切る人もいます。

中には、出勤するなり「今日も1日頑張るぞ!」と気合を入れ、勤務終了時に「今日も1日頑張ったなぁ!」と言うような口先だけの人もいます。

そして、この時期だけ残業する人がいるのではないでしょうか。

 

<考課者としての対策>

期末誤差を防ぐには、考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えておくこと、評価対象者と定期的に話をして常に働きぶりを見ていることを伝えておくことが必要です。

 

<会社としての対策>

考課者が対象者の働きぶりをコンスタントに記録して評価の実施に備えるというのは、実際にはむずかしいものです。

どうしても、後回しにしがちです。

考課者に対しては、毎月、評価対象者の評価を会社に提出させるなど、明確な義務を負わせるのが確実です。

また、人事考課については、定期的な考課者研修が必須ですが、評価される側の一般社員に対しても、人事考課制度についての説明会が必要だと思われます。

評価が適正に行われるようにするためにも、会社は全社員に人事考課制度を理解させなければなりません。

 

業界間格差や人手不足の影響で、社員の出入りが激しくなり、ますます人事考課制度が重要になっています。

人事考課制度の導入や改善、考課者研修など、まとめて委託するのであれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

繰り下げても老齢厚生年金が増えない場合

2025/02/16|935文字

 

<在職老齢年金制度>

70歳未満の方が会社で働いていて、厚生年金保険に加入している場合、あるいは70歳以上の方であっても、厚生年金保険の加入基準以上の所定労働日数・所定労働時間の場合には、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これが「在職老齢年金」の制度です。

 

在職老齢年金制度による調整後の受給月額

=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2

※「50万円」の数値は年度ごとに決定され、令和6年度は50万円、令和7年度は51万円

 

たとえば、給与や役員報酬が1か月あたり100万円で、賞与等がなく総報酬月額相当額が100万円だとします。この場合、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額が20万円だとしても、在職老齢年金制度による調整後の年金受給月額は、全額停止となってしまいます。

 

基本月額20万円-(基本月額20万円+総報酬月額相当額100万円-50万円)÷2=マイナス15万円

 

この計算式で、年金受給月額がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)は全額支給停止となるのです。この「支給停止」となった部分の年金は、いつかまとめて支給されるということではなく「不支給」となります。

 

<繰下げ受給を想定した場合>

仕事を続けていて、収入が十分にある間は年金を受給せず、引退してから繰り下げて受給すれば、年金額も増額されて得だろうということは、多くの方が思いつきます。

ところが、繰り下げている期間中に、在職老齢年金の仕組みによって、支給停止される額については、増額の対象とならないのです。全額支給停止であれば、その期間は全く増額の対象とならないことになります。

 

<老齢厚生年金と老齢基礎年金>

在職老齢年金の仕組みによって、全額支給停止となる場合には、すぐに年金の請求手続をしても、老齢厚生年金を受給できません。また繰り下げて、数年後から受給し始めても、老齢厚生年金は増額されません。

しかし、この仕組みは老齢厚生年金に関するものです。老齢基礎年金には、在職老齢年金の適用がありません。

厚生年金保険に加入していても、老齢基礎年金は全額受給できます。また、繰り下げれば増額されます。

海外に法人を設立して社会保険料を節約するという話があります

2025/02/15|1,510文字

 

<社会保険料の節約になるのか?>

海外に法人を設立し、自社で勤務している従業員の給与・賞与の半額は自社から直接支払い、残りの半額は海外の法人から支払えば、従業員も会社も社会保険料を節約できるのではないかという話があります。

しかし、これはできないことが多いですし、不正なことをしてしまうと、健康保険の傷病手当金や出産手当金が減額されたり、将来の老齢年金などの給付が減額されたりで、会社が賠償責任を負うことにもなりかねません。

 

<海外勤務者の社会保険の継続>

日本国内の厚生年金保険適用事業所での雇用関係が継続したまま、海外で勤務する場合、出向元から給与の一部(全部)が支払われているときは、原則、健康保険・厚生年金保険の加入は継続します。

この場合、海外法人からの賃金を,社会保険料の計算基礎となる報酬等に算入するかしないかは、その賃金が実質的に見て、海外法人の負担なのか国内法人の負担なのかによって、その結論が分かれます。

 

<海外法人からの賃金を社会保険料の計算基礎となる報酬等に算入しないケース>

国内の適用事業所の給与規程や出向規程等に、海外勤務者についての定めがなく、海外の事業所での労働の対償として直接給与等が支給されている場合は、国内事業所から支給されているものではないため、「報酬等」には含めません。

国内事業所に勤務する被保険者が、国内事業所との雇用関係を維持したまま、海外の事業所に転勤となり、国内事業所と海外事業所の双方から給与等を受けていて、海外事業所から支給される給与等は海外事業所の給与規程に基づいている場合、国内事業所から受ける給与のみが「報酬等」となります。

ただし、形式的に海外事業所から支払われている給与等が、実質的に国内事業所から支払われていることが確認できる場合は、海外事業所から支給される給与等も「報酬等」に含めることとなります。

 

<海外法人からの賃金を社会保険料の計算基礎となる報酬等に算入するケース

国内の適用事業所の給与規程や出向規程等に、海外勤務者についての定めがあり、海外の事業所での労働の対償として国内事業所から給与等が支給されている場合は、実質的に見て国内事業所から支給されているものであるため、「報酬等」に含めて計算します。

国内事業所に勤務する被保険者が、国内事業所との雇用関係を維持したまま、海外の事業所に転勤となり、国内事業所と海外事業所の双方から給与等を受けていて、海外事業所から支給される給与等が国内事業所の給与規程に基づいている場合、国内事業所から受ける給与と、海外事業所から受ける給与の合算額が「報酬等」となります。

これは、形式的に海外事業所から支払われている給与等が、実質的に国内事業所から支払われていることが確認できるためです。

 

<その他の注意点>

国内適用事業所から支払われる給与に、渡航費用の精算額が含まれている場合、その渡航費用が実費弁償を行ったものであることが確認できれば、「報酬等」には含めません。この点、通勤手当が「報酬等」に含まれるのとは扱いが異なります。

外貨で給与等を支払った場合は、実際に支払われた外貨の金額を、支払日の外国為替換算率で日本円に換算した金額を報酬額とします。

 

<実務の視点から>

原則として法令は、その形式や外形を基準に適用されるのではなく、実質や実態を基準に適用されます。

実態を伴わず、形ばかり海外事業所から給与・賞与の一部が支給されることにしても、その給与・賞与を実質的に国内事業所が負担するのであれば、社会保険料を減額することはできません。

社会保険料を節約する意図で、海外に法人を設立しても、無駄な経費が発生するだけとなってしまいます。

公平な人事評価を妨げるハロー効果

2025/02/14|1,028文字

 

<ハロー効果>

ハロー効果とは、ある際立った特徴を持っている場合に、それが全体の評価に影響してしまうことです。

英語のハロー(halo)は、日本語では後光(ごこう)といいます。

仏やキリストなどの体から発するとされる光です。

仏像の背中に放射状の光として表現されています。

この光がまぶしくて、真の姿が見えなくなってしまうのでしょう。

 

<プラス評価の場合>

たとえば、次のように思い込んでしまう例があげられます。

・〇〇大学を卒業している → 学力だけでなく人格も優れている

・将棋の有段者である → 頭が良くて勝負勘がある

・国体の出場経験がある → 目標を達成する意欲が高い

これらの例では、矢印の左側が根拠となる事実であり、右側が結論なのですが、そもそも仕事に関わる事実ではないものが根拠となっています。

 

<マイナス評価の場合>

たとえば、次のように思い込んでしまう例があげられます。

・太っている → 健康状態が悪い、自己管理能力が低い

・高校を中退している → 忍耐力が乏しい、社会性が欠如している

こちらも仕事に関わる事実ではないものが根拠となっています。

 

<評価項目間の影響>

特定の評価項目の評価が際立っているために、他の評価項目の評価にまで影響してしまうことがあります。

・積極性が高い → 応用力が高い

・責任性が高い → 規律性が高い

 

<実際のハロー効果と対処法>

実際の人事考課では、ある人について「優れている」というレッテルを貼り、あらゆる評価項目について評価が甘くなってしまうことがあります。

「あばたもえくぼ」です。

「あばた」というのは、天然痘が治った後に皮膚に残るくぼみのことです。

大好きな人の顔にある「あばた」が「えくぼ」に見えてしまうのです。

 

反対に、「劣っている」というレッテルを貼り、あらゆる評価項目について評価が厳しくなってしまうことがあります。

「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い」です。

袈裟というのは、仏教の僧侶が身に着ける衣装のことです。

坊主を憎んでしまうと、その坊主が着ている衣装まで憎く思われるということです。

 

人事考課では、人物を評価するのではなく、評価項目ごとに客観的な評価をする必要があります。

先入観を捨てる必要があるのです。

人事考課制度を適正に運用するためには、考課者に対する定期的な教育研修の実施が大事です。

制度の導入や改善、考課者研修など、まとめて委託するのであれば、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご用命ください。

雇用保険の不正受給に対する処分

2025/02/13|1,361文字

 

<不正受給とは>

失業手当(求職者給付の基本手当)や雇用継続給付(高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付)など、失業等給付の支給を受ける権利が無いのに、不正な手段によって支給を受けたり、支給を受けようとしたりすると、不正受給となります。

つまり、実際に給付を受けていなくても不正受給となります。

 

<不正受給の処分>

不正受給があった場合には、次のような処分が行われます。

・不正のあった日から、雇用継続給付、基本手当等の支給を受ける権利がなくなります(支給停止)。

・不正な行為により支給を受けた金額は、全額返還しなければなりません(返還命令)。

・さらに悪質な場合には、不正な行為により支給を受けた金額の最高2倍の金額の納付が命ぜられます(納付命令)。

この場合、不正受給した金額の返還と併せて、3倍の金額を納めなければなりません。

これらの支払を怠った場合は、財産の差し押えが行われる場合があります。

・刑法により処罰されることがあります。詐欺罪(刑法第246条第1項)の場合、10年以下の懲役に処せられます。

 

<事業主との連帯責任>

事業主が虚偽の申請書等を提出した場合は、事業主も連帯して返還命令や納付命令処分を受けることがあります。

また、同一事業所で一定期間に複数回連続して就職、離職、失業等給付の基本手当の受給を繰り返している人(循環的離職者)を再び雇用した場合は、雇用保険の受給資格決定前から再雇用予約があったものとして受給資格者本人だけでなく、事業主も共謀して不正受給したとして連帯して返還命令処分を受ける場合があります。

 

<ハローワークによる調査>

不正受給の疑いがある場合には、ハローワークによる調査が行われます。

失業等給付を受けていた人を採用した場合に、その人を採用した時期の点検等のため、ハローワークが事業主から関係書類を借りる場合があります。

また、循環的離職者を雇用する(雇用していた)事業主へ再雇用予約の有無等について、ハローワークが確認の連絡をする場合もあります。

 

ハローワークには、雇用保険給付調査官が配置され、不正受給者の摘発や実地調査を行なっています。この場合には、企業の訪問調査も行われています。

 

<不正受給のうっかりポイント>

労働者を採用した場合、雇用年月日の理解が不正確なために不正受給につながることがよくあります。

試用期間や見習期間も雇入れのうちですから、この期間の初日が雇用年月日となります。

この期間について失業等給付(基本手当)を受給すると不正受給になります。

 

失業等給付(基本手当)を受給している人が、内職、アルバイト、手伝等をした場合は、ハローワークへ申告をしなければなりません。

失業中にアルバイトなどをすること自体は違法ではありませんが、必要な申告を怠ると不正受給になります。

 

対象者本人から、雇入年月日、賃金や労働日数、働いていた期間等について、事実と相違する書類が提出されることもあります。

しかし、事業主は事実に基づく証明をしなければなりません。

万一、偽りの記入を求められても絶対に受け入れないようにしてください。

 

不正受給に関して、事業主の証明が誤っていたり、承知しながら見逃していたりした場合、事業主も連帯責任を問われることがあります。

うっかりしないように注意してください。

人事考課は相対評価か絶対評価か?

2025/02/12|1,275文字

 

<相対評価>

相対評価では、社内の評価対象の社員たちが基準となります。

上位3分の1の成績なら評価A、中位3分の1は評価B、下位3分の1は評価Cというように、評価A~評価Cの割合を予め決めておいて評価を決定します。

この方法では、社内や部署内での順位によって評価が決まることになります。

 

<絶対評価>

絶対評価では、世間一般の同業で働く人たちや同一職種の人たちが基準となります。

この方法では、評価対象の社員が皆優秀であれば全員が評価Aとなることもあり、反対に全員が評価Cとなることもありえます。

 

<社員の努力目標として>

相対評価なら、社員は社内や自部署で1番になることを目指します。

どうしても、「お山の大将」「井の中の蛙」ということになります。

また、社員同士が切磋琢磨すれば良いのですが、足の引っ張り合いも懸念されます。

絶対評価だと、最終目標は日本一や世界一ということになりそうです。

個人の性格にもよりますが、最終目標は高い方が良いのではないでしょうか。

 

<評価の変動>

相対評価で、自分の評価を上げるには、誰かを追い抜かさなければなりません。

下がれば「誰に抜かされたのだろう?」と疑心暗鬼になります。

絶対評価の場合、人事考課制度を導入し始めた頃は、社員たちが評価を意識せずに働いていますから、一般に評価が低くなります。

しかし、評価を意識して働くようになると、社員全体の評価が少しずつ向上する傾向が見られます。

こうして一定の期間、社員全体の評価が向上した後は、世間一般のレベルアップを上回って向上した場合に限り評価が上がり、前年と同じ働きぶりを続ける社員の評価は下がっていくことになります。

ここのところは、人事考課制度導入時に社員にきちんと説明しておかないと、不満が出やすいポイントでもあります。

 

<達成感と危機感>

相対評価では、全員がそろって向上した場合には達成感がありません。

反対に、全員がレベルダウンしても気付きにくいという危険があります。

社員に達成感や危機感を持たせるには、絶対評価の方が向いています。

 

<解雇の基準として>

やむを得ず整理解雇をするときは、過去数年間の評価が悪い社員を対象とすることも考えられます。

相対評価でも絶対評価でも、整理解雇の対象者を決める客観的な基準として、一定の合理性が認められるでしょう。

一方、相対評価で一定の期間にわたって成績の悪い社員を能力不足と考えて解雇した場合は、解雇権の濫用であり不当解雇となるので、その解雇は無効であるとされています。

相対評価なら、優秀な社員しかいない会社でも、一定の割合で評価の低い社員は必ずいるわけですから、評価を理由に「仕事ができない」と認定することはできないからです。

 

<実務の視点から>

人事考課制度をどのようにするかの判断は、各企業の裁量の幅が大きいのですが、会社や社員ひとり一人に対する影響だけでなく、そこから生じうる労働法上の問題を踏まえて検討するのなら、社会保険労務士への依頼をお勧めします。

実務的には、絶対評価をベースとして、相対評価による修正を加えたものが運用されています。

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