業務上腰痛の認定基準

2025/04/15|1,455文字

 

<腰痛の労災認定>

腰痛は労災として認定されにくいということが誇張されて、腰痛は労災保険の対象外であるという噂が根強く残っている企業もあります。

こうしたこともあって、業務上腰痛の認定基準について、厚生労働省は内容を改訂しながら、繰り返し広報に努めています。

 

<2種類の腰痛>

業務上腰痛の認定基準では、腰痛を「災害性の原因による腰痛」と「災害性の原因によらない腰痛」に分けて、それぞれの認定要件を満たす場合に労災補償の対象としています。

どちらの場合であっても、労災補償の対象となる腰痛は、医師により療養の必要があると認められたものに限られます。

 

<災害性の原因による腰痛>

負傷などによる腰痛で、次の2つの要件を両方とも満たすものが「災害性の原因による腰痛」とされます。

 

・腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること

・腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症・基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること

 

このことから分かるように、「腰痛が持病であれば労災にならない」とはいえません。

災害性の原因による腰痛には、腰に受けた外傷によって生じる腰痛のほか、外傷はないものの、突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等(筋、筋膜、靱帯など)が損傷して生じた腰痛を含みます。

ぎっくり腰(正式には「急性腰痛症」など)は、日常的な動作の中で生じるので、たとえ仕事中に発症したとしても、必ずしも労災補償の対象とはなりません。

ただし、発症時の動作や姿勢の異常性などから、腰への強い力の作用があった場合には労災補償の対象として認められることがあります。

 

<災害性の原因によらない腰痛>

突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に過度の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるものは、「災害性の原因によらない腰痛」とされます。

災害性の原因によらない腰痛とは、日々の業務による腰部への負荷が徐々に作用して発症した腰痛をいい、その発症原因により、筋肉等の疲労を原因とした腰痛と骨の変化を原因とした腰痛の2つに区分して判断されます。

 

<筋肉等の疲労を原因とした腰痛>

次のような業務に比較的短期間(約3か月以上)従事したことによる筋肉等の疲労を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

・約20㎏以上の重量物または重量の異なる物品を繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務

・毎日数時間程度、腰にとって極めて不自然な姿勢を保持して行う業務

・長時間立ち上がることができず、同一の姿勢を持続して行う業務

・腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務

※これらの業務に約10年以上従事した後に、骨の変化を原因とする腰痛が生じた場合も労災補償の対象となります。

 

<骨の変化を原因とした腰痛>

次のような重量物を取り扱う業務に相当長期間(約10年以上)にわたり継続して従事したことによる骨の変化を原因として発症した腰痛は、労災補償の対象となります。

・約30㎏以上の重量物を、労働時間の3分の1程度以上に及んで取り扱う業務

・約20㎏以上の重量物を、労働時間の半分程度以上に及んで取り扱う業務

※ただし腰痛は、加齢による骨の変化によって発症することが多いため、骨の変化を原因とした腰痛が労災補償の対象と認められるには、その変化が「通常の加齢による骨の変化の程度を明らかに超える場合」に限られます。

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