障害者が気持ちよく働けていない能力が発揮できない場合の職場の対応

2025/03/28|1,441文字

 

<いじめが疑われる場合>

障害者に対する偏見などにより、同僚からいじめられていたり、上司からパワハラを受けていたりすることによって、本来の能力を発揮できないことがあります。

また、求められている能力を発揮して業務をこなしているにもかかわらず、周囲から仕事ぶりについて悪く言われていることもあります。

この場合には、会社のトップや人事担当者が障害者と面談して、いじめの事実が無いか確認する必要があります。

そして、本人がいじめの事実を認めた場合でも、他に被害者がいないか、目撃者はいないかなどの調査を会社が始めると、告げ口したとされて、かえっていじめがエスカレートしてしまう危険があります。

会社が、いじめ、パワハラ、障害者について、きちんとした社内教育をしないうちに、障害者を迎え入れてしまうのは危険だということです。

それでも、法定の障害者雇用率の段階的な上昇により、障害者の雇用が難しくなりつつありますから、急ぐあまり、態勢が整わないうちに採用してしまうこともあります。

こうした場合には、すぐに犯人探しに走るのではなく、研修などの社内教育をする旨の全社告知をしたうえで、計画的に進めるのが得策です。

 

<メンタルヘルス不調が疑われる場合>

身体障害やいじめなどが原因で、精神疾患にかかっている場合もあります。

また、元々あった精神疾患が悪化している場合もあります。

これらの場合には、上司や同僚から不自然な言動についての情報が入ることもあります。

会社のトップや人事担当者が障害者と面談して、受け答えや態度に疑問を抱くようであれば、専門医の受診を促すようにします。

程度によっては、ご家族、支援機関、主治医、産業医との連動も必要になります。

精神疾患により、正常に勤務できないのであれば、会社のルールに従い休職などの手続を取ることになります。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が無いために、障害者が能力を発揮できないのであれば、会社側に問題があることを素直に認め、合理的な配慮を実施しなければなりません。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔第36条の2~第36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔第36条の5

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

この指針を参考にして、会社としての取り組みを進めましょう。

 

<解雇の検討>

以上の問題をクリアしたうえで、尚、障害者が思うように働いてくれない場合には、普通解雇を検討することになります。

しかし、障害者の場合には、会社側の努力が求められている分だけ、能力不足を理由とする解雇が困難です。

採用にあたっては、何をどこまで期待するのかについて、具体的な人材要件を文書化し、本人に説明して交付しておくことをお勧めします。

できれば3か月程度の試用期間を置き、定期的に必要な人材要件と本人の働きぶりとを対照しつつ面談を行って、本採用に至らない場合でも納得が得られるようにしておくと良いでしょう。

アルコール依存症への対応

2025/03/27|1,144文字

 

<アルコール依存症>

アルコール依存症とは、お酒の飲み方(飲む量、飲む間隔、飲む状況)を自分でコントロールできなくなった状態のことをいいます。

仕事、家庭、人間関係よりも、飲酒が優先となり治療が必要な状態です。

 

<コロナ禍でのアルコール依存症増加>

新型コロナウイルスの感染が拡大していた時期に、アルコール依存症が増加したと言われています。

生活の制限や働き方の急変によってストレスが増大し、アルコールに頼る気持が強くなってしまいました。

また、在宅時間が長くなったことから、自由にアルコール飲料を手にするチャンスも増えていました。

こうして、長時間にわたり多量に飲酒できる環境下で、アルコール依存症となるリスクが増大していたのです。

 

<飲酒の自由>

しかし、成人であれば、プライベートの時間に飲酒するのは基本的に本人の自由です。

体質にもよりますが、度を越した飲酒は、肝臓、膵臓、心臓、脳、血管、神経などに障害をもたらします。

これによって、生産性の低下や欠勤などが発生すれば、会社は具体的なダメージを受けますから、定期健康診断などの結果を踏まえ、対象者に健康指導を行う必要があります。

場合によっては、節酒や禁酒を求めることもあるわけです。

これは、アルコール依存症への対応ではなく、飲酒による健康障害への対応、あるいは予防策ということにもなります。

 

<アルコール依存症による職場の問題>

アルコール依存症となれば、内臓に大きな障害が発生していなくても、集中力・注意力の低下により、業務効率の低下、ミスの多発、労災やその危険の発生が見られるようになります。

生活習慣の乱れから、遅刻・早退・欠勤や年次有給休暇取得の急増もあるでしょう。

 

<治療に向けて>

飲酒はプライベートなこととはいえ、アルコール依存症の影響により発生した事実の中には、懲戒の対象となるものもあります。

会社は、これを軽視せず、就業規則に従って適正な懲戒を行う必要があります。

無断遅刻・無断欠勤、正当な理由の無い遅刻・早退・欠勤、不注意により会社に損害をもたらす、飲酒し酔った状態で勤務などは、発生しやすいものです。

懲戒を受けることによって、本人がアルコール依存症と正面から向き合うきっかけが生まれます。

またこれに先立ち、懲戒手続の中で本人に弁明の機会を与えることになりますから、ここで出てきた情報を元に、アルコール依存症の可能性を説明し受診を促すこともできます。

本人のことを考えれば、決して対応に遠慮があってはなりません。

 

<実務の視点から>

在宅勤務が長期化している場合には、上司や人事担当者との定期的なオンライン面談も必要です。

話し方やしぐさの変化から、ストレスの蓄積具合や生活習慣の乱れが感じられたなら、適切なフォローが必要となってきます。

懲戒処分での情状酌量とは

2025/03/26|918文字

 

<情状とは>

刑事手続では、訴追を行うかどうかの判断や刑の量定に影響を及ぼすべき一切の事情をいいます。

犯罪の動機や目的、犯人の年齢・経歴や犯行後の態度などがこれにあたります。〔刑事訴訟法第248条、刑法第66条〕

しかし、懲戒処分は会社の行う制裁であって、国が行う刑事処分と全く同じということではありません。

それでも、故意に行った場合には、その動機や目的が情状にあたります。

また、行為者の年齢、社歴、事後の態度などは情状にあたります。

 

<酌量とは>

刑事裁判では、同情すべき犯罪の情状を汲み取って、裁判官の裁量により刑を減軽することをいいます。〔刑法第66条〕

懲戒処分の場合にも、事情を汲み取って処分に手心を加えるという意味で使われます。

 

<就業規則の規定>

最新版(令和5(2023)年7月版)のモデル就業規則には、次の規定があります。

 

(懲戒の事由)

第68条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第53条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

 

この規定からも明らかなように、「平素の服務態度」つまり「日頃の勤務態度」は、情状酌量の対象となります。

ただし、これは客観的に認定されなければ、不平等や不公平の問題が発生しますから、勤怠だけでなく人事考課による適正な評価を基準とすべきです。

 

<情状酌量の効果>

モデル就業規則には、他にも「情状に応じ」〔第67条本文、第68条第1項本文〕、「その情状が悪質と認められるとき」〔第68条第2項第9号〕という言葉が出てきます。

つまり、情状酌量が懲戒処分を軽くする方向に向かう場合だけでなく、懲戒処分を重くする方向に向かう場合にも作用するということになります。

 

懲戒処分を行うこと自体、懲戒権の濫用となり無効となることがあります。〔労働契約法第15条〕

この場合には、不本意ながら、懲戒処分を通知した従業員から慰謝料など損害賠償を求められることもあります。

結局、安易な懲戒処分は会社にとって危険ですから、情状酌量をも踏まえて、どの程度の懲戒処分が可能なのかは、刑法に明るい社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

一部の事業の雇用保険料が高い理由

2025/03/25|896文字

 

<特掲事業>

雇用保険では、失業等給付の負担の均衡化を図るために、短期雇用特例被保険者が多く雇用される事業については、雇用保険の保険料の料率を一般の事業と比べて高くしています。

これらの事業を特掲事業といい、次の4つの事業が該当します

(1) 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(園芸サービスの事業は除く。)

(2) 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業(牛馬の育成、養鶏、酪農又は養豚の事業及び内水面養殖の事業は除く。)

(3) 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業(通常「建設の事業」といっている。)

(4) 清酒の製造の事業

 

<失業等給付>

雇用保険で、労働者の生活及び雇用の安定、求職活動の促進のために支給される給付金をまとめて失業等給付といいます。

失業等給付には、1.求職者給付、2.就職促進給付、3.教育訓練給付、4.雇用継続給付の4種類があり、50年前まで「失業手当」と呼ばれていたものは、求職者給付の基本手当に相当します。

 

<短期雇用特例被保険者と特例一時金>

季節的に雇用されている者等は、短期雇用特例被保険者として一般の雇用保険加入者(被保険者)と区別されます。

短期雇用特例被保険者は、一定の期間ごとに就職と離職を繰り返すため、一般の被保険者への求職者給付よりも一時金制度とすることのほうが、その生活実態に適合しているといえます。

そのため短期雇用特例被保険者には、一般の被保険者と区別して、特例一時金が給付される仕組がとられています。

 

<不公平の是正>

特掲事業には、短期雇用特例被保険者の割合が高く、特例一時金の給付も多いのです。

そして、給付と保険料とのバランスを考えたときに、特例一時金は失業等給付の中でも、特に保険料に対する給付の比率が高いものとなっています。

そのため、すべての事業で雇用保険率を一律にしてしまうと不公平が発生してしまいます。

特掲事業を定め、これらの事業だけ雇用保険率を高くすることによって、この不公平を是正しているわけです。

会社での失言

2025/03/24|1,300文字

 

<同じ失言でも>

大臣が失言で罷免されたというニュースは、たびたび報道されています。

場合によっては、大臣をクビになるだけでなく、国会議員としても辞職に追い込まれるケースがあります。

しかし、民間企業での社員の失言はほとんど報道されず、じわじわとその影響が現れてくることが多いものです。

 

<会社での失言>

上司が部下に対して「○○くんって彼女はいるのかな?」という失言をしたとします。

これが失言だとピンとくる人は、正しい知識を持っていて実践できているので、問題となる失言はしないでしょう。

 職場の優位者が劣位者に対して、仕事上接する際に、必要以上に人権を侵害しうる行為をパワハラといいます。

上司が部下を「○○くん」と呼ぶ必要はありません。

このように呼ぶのは、客観的に見れば上から目線の態度ですから、パワハラになりうるのです。

職場の人間関係や職場環境で、性について平穏に過ごす自由を侵害しうる行為をセクハラといいます。

彼女かいるかどうかは、聞かれるだけでドキドキします。

ですからセクハラになるのです。

ましてや、言われた男性が同性愛者であれば、同性愛者であることがバレたのかと、大いに困惑することもあるでしょう。

LGBTQ+への対応は、すべての企業に必須の取組み課題なのです。

 

<失言で表面化する労働問題>

この例で、言われた部下がパワハラやセクハラを問題にすることは少ないでしょう。

ハラスメントについての社員教育が不足していれば尚更です。

しかし、彼女のいない○○くんは「彼女がいないのは出会いが無いからだ。毎日残業続きだし、休日出勤もあるし、有給休暇も取れないからだ」と思ってしまうかも知れません。

また、彼女がいる○○くんは「今の年収では結婚もできないし、子供を設けるなんてとても無理だ。それに、家族と過ごす時間も確保できやしない」と考えるキッカケとなります。

上司の失言により「会社のため、自分のため」と頑張ってきた○○くんは、考えを変えてしまう可能性があるのです。

何気ない一言が、人間関係や職場関係を悪化させ労働問題が表面化します。

この例では、パワハラ、セクハラ、長時間労働、サービス残業、年次有給休暇の取得率、低賃金の問題について、法的に正当な主張を公式の場で展開する可能性が高まります。

 

<実務の視点から>

特に中小企業では、社員教育が最善の対策です。

すべての点で、労働法に従った遵法経営というのは困難です。

有名な大企業であっても、しばしば労働法違反の報道がされています。

あらゆる点で法律上の努力義務まで尽くしているという企業は稀です。

だからといって、法令を無視することはできません。

日本は法治国家です。

会社は、法律によって法人としてその存続が認められでいるのですから、アウトローでは生きていけません。

罰則が適用されるようなことは慎まなければなりません。それは犯罪なのです。

結局、会社として対応すべきは対応して、社員とのコミュニケーションを密にして、適正な社員教育をすることです。

少なくとも、部下を持つ社員には失言させない教育が必要ですし、すべての社員にブラック企業の疑いを発生させないための教育が必要です。

知的障害者や精神障害者の懲戒解雇で後悔しないために

2025/03/23|2,008文字

 

<解雇の意味>

雇い主から「この条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

労働契約法の第15条と第16条は、重複している部分があるものの、第15条の方により多くの条件が加わっています。

懲戒処分は、この厳格な制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは懲戒+解雇ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけ満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について、就業規則などにぴったり当てはまる具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で、他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合にも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。

しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。

特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が不十分であれば、解雇を通告しても、労働契約法第16条にいう解雇権の濫用とされ、解雇が無効となる可能性が高くなります。

ましてや、知的障害者や精神障害者の懲戒解雇となれば、そのハードルは更に高くなります。

懲戒処分の対象となる行為の原因が、知的障害や精神障害である可能性もあり、これに対して、戒めて反省を求めるための懲戒処分が無意味なケースもあるからです。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ(第36条の2~第36条の4)、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています(第36条の5)。

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています(平成27(2015)325日)。

この指針を参考にして、会社が十分な取組を行ってきたのでなければ、解雇を有効に行うことはむずかしいのです。

 

<実務の視点から>

結論としては、会社が一方的に普通解雇や懲戒解雇をするのではなく、障害者本人、家族、主治医、産業医などとよく話し合い、会社が対応しきれないことを説明して、合意による退職を目指すのが現実的です。

会社が誠実に説明すれば、家族が本人の説得に回ってくれることもあります。

それでも合意できない場合には、病状により休職を命じることも考えます。

客観的に見て、懲戒解雇の検討対象となるような行動が現れたのなら、医師から病状が重いと判断されることが多いでしょう。

「あの対応で本当に良かったのだろうか」という疑問を残さないよう、慎重に対応しましょう。

海外での「ねんきん定期便」受取

2025/03/22|579文字

 

<「ねんきん定期便」の海外送付>

日本年金機構に申込むことによって、「ねんきん定期便」を海外の住所に送ってもらうことができます。

パソコンまたはスマートフォンから、「ねんきん定期便お申込みページ」にアクセスして、必要事項を入力して送信するだけです。

https://www.nenkin.go.jp/do/reg_service/

 

申込に際しては、基礎年金番号の入力が必要になります。

不明の場合には、転居前にお近くの年金事務所などで基礎年金番号を確認しておく必要があります。

 

<サービスの利用にあたって>

このサービスを使って、日本国内の住所への送付を申し込むことはできません。

1回申し込むことによって、定期的に郵送されるサービスではなく、1回の手続きで1回限りの送付となります。

申し込んでから「ねんきん定期便」が届くまで、約3か月かかります。

また、年金記録の状況や各国の郵便事情などにより、それ以上の期間を要する場合があります。

「ねんきん定期便お申込みページ」には、メールアドレスの入力欄がありますが、メールの返信サービスは行われていません。

「ねんきん定期便お申込みページ」の入力内容に不備があった場合など「ねんきん定期便」を送付できないときは、その旨を記載した「エアメール」が送付されます。

この場合には、再度申し込むことによって、送付を受けられるようになります。

懲戒解雇のための証拠集め

2025/03/21|1,688文字

 

<解雇は無効とされやすい>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文の中の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」というのは、それぞれの会社の方針や世間一般の常識ではなく、裁判所の解釈が基準になります。

ですから、安易に懲戒解雇を行うのは危険です。

実際に発生している事実に照らして、関連する判例を数多く調べたうえで、懲戒解雇を検討しなければなりません。

多くの中小企業では、社外の専門家の手助けを必要とするでしょう。

 

<懲戒解雇の手順>

懲戒解雇が無効とされないためには、一般に次の手順を踏むことが必要になります。

 

1.口頭注意

何か不都合な行為を行った社員に対しては、口頭で注意を行います。

そして、注意の内容を文書化し本人に確認させます。

本人に署名してもらい、注意をした社員の上司の確認を得ます。

原本を会社が保管し、コピーを本人に渡します。

 

2.文書による注意

本人が口頭注意に従わない場合、反省していない場合には、文書による注意を行います。

この文書も口頭注意の場合と同じ手順を踏みます。

 

3.懲戒処分

文書による注意を行っても、本人がこれに従わず、あるいは反省していない場合には、懲戒解雇には至らない軽い懲戒処分を行います。

これを行うには、就業規則や労働条件通知書に解雇の具体的な定めがあることや、本人に弁解の機会を与えるなどの適正な手続が必要です。

 

4.懲戒解雇

上記の手順を踏んでも、本人が態度を改めず、会社に籍を置いておくことが会社にとって害悪をもたらす場合には、やむを得ず懲戒解雇に踏み切ることになります。

 

<証拠の品質>

上記の1.から4.までについて、きちんと証拠を残しておくことが、会社を守るためには大事なことです。

しかし、ただ証拠を残せば会社が裁判で勝てるというわけではありません。

証拠の品質が問題となります。

 

懲戒解雇の有効性を争う裁判には、民事訴訟法の次の条文が適用されます。

 

(自由心証主義)

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

このことから、証拠の内容は具体的で、確かにそうした事実があったのだということを裁判官に納得させるものでなければなりません。

 

そして、懲戒解雇の有効性が争われた場合、その証拠からうかがわれる会社の態度も裁判官から見透かされてしまいます。

懲戒解雇の有効性を否定される会社の態度としては、次のようなものがあります。

・口頭注意や文書による注意の段階から、問題社員のレッテルを貼り懲戒解雇を決めていた。

・会社が親身になり本人の改善に協力的な態度を示しているとは認められない。

・本人が迷ったとき、相談したり指導を仰いだりする具体的な担当者を決めていなかった。

 

 

<円満解決>

たしかに、会社が問題社員に対して親身になって指導し、成長させ改善させるというのは現実には厳しい話です。

それでも、本当の問題社員であれば、そこまでされたら退職願を提出することでしょう。

なぜなら問題社員は、きちんと仕事をしようとか、成長して会社に貢献しようなどとは思っていませんから、会社側からこれを求められるのが一番つらいからです。

懲戒解雇の有効性を争われた場合と、退職願が提出された場合とでは、社員全体にもたらす影響に雲泥の差が生じます。

もちろん、クチコミによる社外への影響も無視できません。

経営者や人事担当者は、目の前の問題社員の態度に熱くなってはいけません。

どのような解決が会社にとってベストなのかを、冷静に見極めることが求められているのです。

 

<実務の視点から>

社内で問題行動が発生した時点で、将来の懲戒解雇を見据えた証拠集めが必要となります。

また、注意・指導の内容が不適切な場合には、パワハラや不当解雇の証拠が蓄積されてしまいます。

問題の火種が小さなうちに専門家に相談することをお勧めします。

日本年金機構の運営方針

2025/03/20|1,761文字

 

<運営方針>

日本年金機構のホームページには、次の運営方針が掲げられています。

最終更新は、令和4(2022)年9月9日となっています。

 

1.組織ガバナンスの確立

(1)お客様である国民の信頼を得られる組織の実現を目指し、組織改革・意識改革・業務改革を断行する。
(2)理事長の強いリーダーシップの下、職員一人ひとりが意欲と使命感をもって自ら変わる、自ら機構をつくり上げていくという意識で改革に取り組み、組織改革を断行する。
(3)組織内の対話とコミュニケーションを通じて、目標の共有化を図るとともに、働きやすい職場環境作り、風通しの良い組織作りを進める。
(4)リスクの未然防止に重点を置いた厳格な内部統制の仕組みを構築する。
(5)理事長に直結した内部監査部門による効果的な内部監査を通じて、機構自らがPDCAサイクルの中で不断の改善努力を行うとともに、外部監査の活用を図ることにより、内部統制の有効性を検証するための体制を整備する。
(6)職員に対しコンプライアンス意識を徹底するとともに、コンプライアンス・リスク管理担当部門や外部通報窓口の設置などの体制を整備する。
(7)システム開発・管理・運用に係る権限と責任の明確化、CIO(システム担当理事)やPJMO(本部のシステム部門)の設置、システム人材の確保・育成などにより、ITガバナンスの構築を含むIT体制を確立する。
(8)お客様本位の立場に立った健全な労使関係を確立する。

2.新たな人事方針の確立

組織の一体感を醸成するとともに能力・成果の適正な評価、計画的な人材育成等を実行するための人事方針を確立し、別途定める。

3.お客様の立場に立った親切・迅速・正確で効率的なサービスの提供

(1)職員全員が年金記録管理や個人情報管理の重要性を再認識するとともに、お客様である国民の信任を受けて年金記録を正確に管理し、正しく年金をお支払いするという使命感と責任感をもって業務にあたる。
(2)お客様に対するわかりやすい言葉での十分な説明、信頼される誠実な対応を旨とし、お客様の立場に立った懇切丁寧なサービスの提供を行う。
(3)適用・徴収・給付等の各業務について、法令や業務処理マニュアルに従った迅速・適正な処理を推進する。
(4)現行業務についての徹底した見直しを行い合理化・効率化を図るとともに、できる限りの標準化を進める。
(5)業務効率化やコスト削減、お客様サービスの向上に資するため、積極的に業務の外部委託を進めるとともに、委託業務の品質の維持・向上のために委託者としての管理責任を果たす。
(6)契約の競争性・透明性の確保を図るとともに、公正な契約を担保するための厳格なチェックを実行する。

4.お客様の意見の反映等

(1)広報については、分かりやすく親切な情報提供を効果的に行うとともに、機構の業務目標や成果などについて、年次報告書等により情報公開に向けた取組をより一層充実する。
(2)お客様のニーズを的確に把握し、業務運営に反映する。このための仕組みとして、充実した機能を有する運営評議会を設置するほか、お客様の声を収集するための様々な取組を進め、それらを踏まえたサービス改善に取り組む。
(3)被保険者、事業主、受給者、地方公共団体等の協力の下に、事業を適正に運営するとともに、年金事業に対する国民一般の理解を高めるよう努力する。

 

 <年金事務所の現状>

年金加入者(被保険者)や年金受給者の相談窓口として、年金事務所や街角の年金相談センターなどが設置されています。

かつては社会保険庁の傘下に、社会保険事務所が設置されていましたが、民営化により年金事務所となり、その機能もほぼ年金に特化されています。

上記の運営方針の中で、「コスト削減」は人員削減によって成果が数値にあらわれます。

しかし、「お客様サービスの向上」は数値化が容易ではありません。

人員削減によりサービスが低下したのではないかと不安を感じています。

年金相談は予約制ですし、その予約は1週間以上先になってしまうことも多いのです。

予約なしに相談することも可能ですが、2時間以上待ちが一般的です。

また、どちらかというと街角の年金相談センターの方が空いているようです。

最寄りの年金事務所にこだわらず、空いている所を狙ってはいかがでしょうか。

雇用契約不更新の合意の有効要件

2025/03/19|1,077文字

 

<シンガー・ソーイング・メシーン事件判決>

シンガー・ソーイング・メシーン事件は、退職金放棄の有効性について争われたものです。

この判決は、「賃金に当る退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である」と述べています。(最高裁第二小法廷 昭和48年1月19日判決)

そして、この判決の趣旨は、有期雇用契約を更新しないという、使用者と労働者との合意について、その有効性を判断する基準としても参考になるものです。

つまり、「雇用契約の不更新についての労使間の合意は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である」と考えられます。

 

<「合理的な理由が客観的に存在」とは>

この基準の中の「合理的」というのは、「有期契約労働者を保護するという労働契約法などの趣旨や目的に適合する」という意味だと考えられます。

また、「客観的」というのは、「裁判所の判断」を指していると考えられます。

そして、裁判所が判断するには、有期契約労働者の生活が不安定にならないように、労働契約法などの趣旨を踏まえて、会社がどれだけ誠意ある態度を示しているかが重要な要素となります。

 

<労働者の自由な意思>

合意書に労働者の署名捺印があったとしても、それが「労働者の自由な意思」によるものでなければ、有効ではないのです。

そして、「労働者の自由な意思」によるものだと認められるためには、すべての具体的な事情から、強制の要素が無く、労働者が合意するのも自然だと認定される必要があります。

 

<会社の誠意ある態度>

会社の誠意ある態度は、次のような事実から認定されます。

・入社してから不更新の合意までの期間が短いこと

・説明会や面談での説明回数が多いこと

・退職金や慰労金など金銭の支払があること

いずれも、有期契約労働者が契約打ち切り後の生活について、十分な準備ができるようにするための配慮です。

 

<具体的な判断方法>

こうすれば確実に契約の不更新が許されるというような、明確な基準はありません。

ここでは、シンガー・ソーイング・メシーン事件で示された最高裁の判断を頼りに一応の基準を示しました。

しかし、無期転換と不更新合意について、現時点では、最高裁の判例が存在しません。

ですから、過去の裁判例のうち、具体的なケースに関連したものを抽出して、論理的に結論を推定するしかないのです。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

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