2025/05/24|1,139文字
<法令の規定>
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条は、「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」と規定しています。
<裁判所の判断基準>
法令の文言が抽象的なこともあって、「不合理と認められる相違」であるか否かについては、訴訟で争われ多くの判例・裁判例があります。
パート・有期労働者の待遇は、職務内容や職務・配置の変更範囲、その他の事情を考慮して、正社員との間で不合理な相違を設けることが禁止されており、不合理な待遇か否かについては、個々の手当や退職金、賞与ごとに、その目的に照らして判断するというのが裁判所の基本的な態度となっています。
<裁判所の具体的な判断例>
パート・有期労働者に住宅手当を支給しないのは、この会社で住宅手当を支給する理由が、パート・有期労働者には当てはまらないため、不合理ではないとした最高裁の判例(ハマキョウレックス事件)があります。
同様の理由で、退職金(メトロコマース事件)、賞与(大阪医科薬科大学事件)
についても、不支給を不合理と認めなかった最高裁判例があります。
反対に、その会社で、皆勤手当、年末年始勤務手当、扶養手当を支給する理由は、正社員だけでなくパート・有期労働者にも当てはまるとして、パート・有期労働者に支給しないのは不合理だとした最高裁の判例(日本郵便事件)があります。
基本給については、大学専任教員と非常勤講師の本俸の格差を不合理と認めなかった裁判例があります(学校法人中央学院事件)。
非正規労働者の均等待遇のために、正社員の労働条件を引き下げることは、不利益変更にあたり望ましくないというのが、行政の態度でしたが、これを認めた裁判例があります(社会福祉法人恩賜財団済生会事件)。
<労基署による指導強化>
このように裁判所の判断基準が明らかになってきたこともあり、労働基準監督署や労働局が企業の指導に入ることも多くなってきました。
同一労働同一賃金について、罰則はありませんから、企業がパート・有期労働者から損害賠償を求められないようにとの配慮があるのでしょう。
電話連絡とFAXなどによるアンケートを経て、規程類を参照しながらの対面での調査というのが一般的な形です。
アンケートへの回答を、一種の報告と考えると、虚偽の回答や無回答は避けなければなりません。