解雇の記事

2021/12/01|1,474文字

 

<問題社員かもしれない>

採用面接では人柄の良さを見せ、履歴書や職務経歴書によると経験やスキルは申し分の無いものだった。

そして、試用期間中は期待通りの働きぶりを見せ、皆「良い人材に来てもらえた」と喜んでいた。

ところが、試用期間が終わり本採用されると、様々な理由で遅刻が目立ち、体調不良を理由に早退も多い。

仕事のやり直しが多く、残業も長時間に及んでいる。

上司や同僚には「なかなか希望通りに年次有給休暇が取得できないですね」「◯◯さんは三六協定の限度を超えて残業していますね」など、批判するかのような発言が増えてきた。

 

<性悪説の社長>

うっかり問題社員を採用してしまったようだ。

遅刻や早退が多いけれど、会社に申し出た理由もどうせ嘘だろう。

そもそも履歴書や職務経歴書の内容も怪しいもんだ。

なにしろ人事考課の結果はひどいものだ。

私自らこの問題社員と面談して退職勧奨しよう。

 

こうした考えを持って面談すれば、「遅刻の本当の理由は何だ?」「体調不良で早退することが多いのだから治療に専念してはどうか?」「履歴書や職務経歴書の内容に誤りが無いか、これまでの勤務先に確認してみても良いか?」「この会社は自分に向いていないと思わないのか?」と詰問調になってしまいます。

そして、最後には「この会社を辞めて別の仕事をしてはどうか?」と退職勧奨することになります。

1回の面談で問題社員から退職の申し出があればともかく、面談を繰り返すうちに、内容がエスカレートしていくことが多いものです。

こうなると、思惑通り問題社員から退職願が出てきたとしても、やがて代理人弁護士から内容証明郵便が届いたりします。

退職の強要があったと主張され、未払賃金の支払や慰謝料など多額の金銭を請求されてしまいます。

 

<性善説の社長>

問題社員のレッテルを貼られてしまった者がいるようだ。

遅刻や早退が多いけれど、遠慮して会社に本当の理由を言えないのだろうか。

履歴書や職務経歴書の内容からすると、実力を発揮できていない。

なにしろ人事考課の結果はひどいものだ。

対応について人事部長と協議し、この社員の救済に乗り出そう。

 

こうした社長の方針に基づき、人事部長が本人と面談します。

「家庭の事情などで定時に出勤するのが難しいようなら、時差出勤を認めるので申し出てほしい」

「体調不良による早退が見られるが、通院などで必要があればフレックスタイム制の適用を考えたいので相談してほしい」

「過労を避けるため、勤務が安定するまで残業禁止とします」

「人事考課の結果を踏まえ、各部門の協力を得て、特別研修を実施することになった。これで、あなたは本来の力を発揮できるようになるだろう」

「末永く会社に貢献できるよう、是非とも頑張ってほしい」

会社からこのような対応を取られたら、本当の問題社員は、楽して残業代を稼げない、研修で努力を強いられサボれないなど思惑が外れてしまいます。

自ら会社を去っていくことでしょう。

名ばかり問題社員であれば、社長の期待に応えて戦力化される筈です。

 

<解決社労士の視点から>

性悪説で行けば、短期間で決着を見ることができますし、会社の負担は少なくて済むのかもしれません。

しかし、労働審判や訴訟など深みにはまってしまうリスクも高いのです。

その問題社員からの情報で、会社の評判も落ちることでしょう。

そして、対象者が問題社員ではなかった場合には、貴重な戦力を失うことになるのです。

性善説で行けば、会社の負担は大きいのですがリスクは抑えられます。

どちらの方針で行くか、長期的視点に立って判断していただけたらと思います。

2021/11/28|2,024文字

 

<民法の規定>

正社員のように、期間を定めずに雇用した従業員については、「使用者がいつでも解雇できる」と民法が規定しています。

 

【民法第627条:期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

一方で、パート社員など、期間を定めて雇用した従業員については、「やむを得ない事由があれば期間の途中でも解雇できる」と規定しています。

 

【民法第628条:やむを得ない事由による雇用の解除】

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

そして、雇用期間の満了とともに雇用契約を終了させることについては、特別な制約がありません。

ただ、雇用の期間が満了した後、従業員が引き続きその労働に従事する場合に、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、期間満了前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定されます。〔民法第629条第1項〕

 

<労働基準法の規定>

民法の特別法である労働基準法には、解雇予告の規定があり、使用者が従業員を解雇しようとする場合は、遅くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならないと規定しています。〔労働基準法第20条第1項本文〕

そして、解雇の禁止についていくつか規定しています。〔労働基準法第19条など〕

これだけであれば、解雇禁止にあたるケースを除き、解雇が困難である理由は見当たりません。

 

<司法判断による修正>

かつての日本企業では、年功序列の終身雇用制が採られていました。

年功序列であれば、若い時の給与・賞与は働きぶりに見合わないほど低く抑えられています。

それが、勤続年数が長くなるとともに、働きぶりに見合う収入となり、定年年齢が近づくと業務内容の割に高い収入となります。

つまり、若い頃のマイナスを、中高年になってから取り戻すという制度です。

退職金制度も年功序列なので、定年年齢まで勤め上げずに退職すると、給与・賞与だけでなく退職金の点でも不利になってしまいます。

そもそも、終身雇用制なのですから、企業は簡単には解雇しないというのが大前提となっています。

こうした企業で、若いうちの解雇は、人生設計を狂わせる大打撃となるわけですから簡単には許されません。

つまり、年功序列の終身雇用制の下での解雇は、余程の理由が無い限り、権利の濫用となって許されないというのが裁判所の判断として定着しました。〔日本国憲法第12条、民法第1条第3項〕

 

<労働契約法の成立>

労働契約法は、労働契約に関する基本的な事項を定める法律です(平成20(2008)年3月1日施行)。

解雇など個別労働紛争での予測可能性を高めるためにできました。

個別労働紛争というのは、労働組合が絡まない「会社と労働者個人との間の労働紛争」です。

労働基準法をはじめとする数多くの労働法は、その内容が抽象的なこともあり、労働紛争が裁判になったらどんな判決が出るのか、条文を読んでもよくわからないケースが増えてしまいました。

そこで、数多くの裁判例にあらわれた理論を、条文の形にまとめたのが労働契約法です。

労働契約法は、解雇について次のように規定しています。

 

【労働契約法第16条:解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文の解釈は、堂々巡りになりますが、過去の裁判例にあらわれた理論を参考に行われることになります。

したがって、年功序列の終身雇用制を前提とした理論も、かなり含まれてしまいます。

こうして、「解雇はむずかしい」と言われるようになっています。

 

<解決社労士の視点から>

年功序列や終身雇用制はすでに崩壊しているとも言われています。

今後、解雇の有効性が争われる裁判の中で、企業側が「自社は終身雇用を前提としない、年功序列ではない給与体系、退職金制度をとっているので、今回の解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」という主張を行っていけば、判例理論も緩やかに変更されて、「日本は解雇がむずかしい」というのも解消されていくのではないでしょうか。

労働市場や企業の実情の変化に合わせて解釈を変更できるように、労働契約法第16条の規定がやや抽象的な表現となったのだと考えることもできるでしょう。

2021/11/24|902文字

 

整理解雇の有効要件https://youtu.be/CazrPD2pm8Q

 

<整理解雇とは>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法律上の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

しかし、これでは内容が抽象的すぎて、具体的な場合にその解雇が有効なのか無効なのか判断に困ります。

会社が解雇を通告し、その通告を受け入れた退職者が、退職後数か月経過してから専門家に相談したところ「不当解雇であり解雇は無効だった可能性がある」と言われて、会社に異議を申し立てるということもあります。

退職の時点では、「早く転職先を見つけよう」など前向きな気持ちになっていたところ、なかなか仕事が見つからず経済的な不安も大きくなって、「あの解雇はおかしいのではないか」という疑問も膨らむようです。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇の具体的な有効要件は、次の4つの要素が最高裁判決の中で示されています。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく総合的に判断されます。

まず、経営上の人員削減の必要性です。会社の財政状況に問題を抱えていて、新規採用などできない状態であることです。

これは法的な判断というよりは、経営上の判断ですから、一応の必要性が認められればクリアできる基準です。

次に、解雇回避努力の履行です。配置転換や希望退職者の募集などの実施です。

これはかなり大きなウエイトを占めています。解雇に踏み切らなくても事業が継続できるのであれば、解雇は回避しなければなりません。

さらに、解雇対象者の人選の合理性です。差別的な人選は許されません。

ここは、人選基準を具体的に示して労働者全体に説明しなければならないところです。

最後に、手続の相当性です。事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

説明や協議は、回数が多く期間が長ければ誠実さも認められやすくなります。

2021/10/25|1,494文字

 

<希望者への支援>

会社が従業員に対して、自己啓発の一環として資格取得を支援するというのは、以前から行われていますし、業務との関連性の強いものは、特に支援を強化しているのが一般です。

あくまでも任意ですから、勉強時間の確保は自己責任です。

ただ、試験の当日や直前に特別休暇が設けられていることはあります。

勉強や受験に必要な経費の一部を会社が負担する場合もありますが、合格を条件として支払われることもあります。

事前申告無しに、合格したら報奨金を請求できるという仕組のこともあります。

いずれの場合も、資格取得を目指すか否かが、完全に従業員の自由に任されているわけです。

 

<資格取得を命じた場合の支援>

業務上の必要から、会社に資格者を置きたい場合には、従業員に資格取得を命じることもあります。

この場合には、資格取得に必要な行為は業務に準ずるものですから、次のような支援が必要となります。

資格取得に必須とされる教材費、受講料、受験料は会社負担とするのが妥当です。

会社指定の講習に参加させる場合には、その受講料や交通費、参加している時間帯の賃金の支払が必要です。

資格取得のためにレポートなどの提出が必要な場合には、その作成に必要な時間の賃金支払も必要です。

受験までは、業務の配分を見直して、勤務時間に勉強できるようにしたり、残業しなくても済むようにしたりの配慮も求められます。

資格取得に成功したら、昇級・昇格するとか、資格手当や金一封を支給するといったインセンティブも必要です。

 

<パワハラとなる場合>

パワハラの6類型のうちの「過大な要求」となるのが典型的です。

個人の能力や経験に照らして、難易度が高すぎる資格の取得を求め、一定の期間内に取得できなければ不利益を課すというのは明らかに「過大な要求」です。

業務との関連性が薄い資格の取得を強要したり、勤務状況から見て明らかに勉強時間を確保できないのに資格取得を求めたりするのも「過大な要求」となります。

 

<資格ハラスメントと背景>

資格ハラスメント(シカハラ)とは、会社が従業員に資格取得を強要し不当な負担を負わせたり、資格を取得できない従業員に対して減給、降格、退職勧奨、解雇などの不利益な取扱いをしたりするハラスメントです。

企業は、長年にわたって終身雇用、年功序列を前提としたメンバーシップ型雇用を行ってきました。

そこでは、企業内で役立つ能力が重視され、勤続年数や経験が能力の指標として用いられてきました。

しかし近年では、客観的に評価できる能力や仕事の成果が重視されるようになり、ジョブ型雇用も行われるようになりました。

こうした中で、資格を重視し従業員の資格取得を推奨する企業が増えた一方で、資格取得を口実とするハラスメントも顕在化するようになったのです。

 

<悪質な資格ハラスメント>

その会社の業務に無関係で難易度の高い資格取得を命じ、会社としての支援を全く行わないばかりか、長時間の残業や休日出勤を行わなければこなしきれない業務を担当させ、すぐに資格取得できないと解雇に追い込むというブラック企業もあります。

これはもう、資格取得の失敗を口実とする明らかな不当解雇です。

 

<解決社労士の視点から>

シカハラも、セクハラ、パワハラ、マタハラなどと同様に、以前から存在していたものが強く認識されるようになったものです。

その本質は、不当な嫌がらせであり、不法行為や犯罪に該当することがあります。

この場合、従業員や退職者は、企業に対して損害賠償を請求することもあります。

世間で新たなハラスメントの認識が強まるにつれ、企業の賠償責任のリスクも高まっているといえます。

2021/09/18|1,262文字

 

雇止めの有効性https://youtu.be/CVFw3w5uRGA

 

<雇止め(やといどめ)とは>

会社がパートやアルバイトなど有期労働契約で雇っている労働者を、期間満了時に契約の更新を行わずに終了させることを「雇止め」といいます。

一定の場合に「使用者が(労働者からの契約延長の)申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」という抽象的な規定があります。〔労働契約法第19条〕

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「雇止めに関する法理」という理論を条文にしたものです。ですから、雇止めがこの理論による有効要件を満たしていなければ、裁判では無効とされ、有期労働契約が自動的に更新されることになります。

 

<雇止めの有効性の判断要素>

雇止めは、次のような事情が多く認められるほど、有効と判断されやすくなります。

1.業務内容や労働契約上の地位が臨時的なものであること。

2.契約更新を期待させる制度や上司などの言動が無かったこと。

3.契約更新回数が少ないこと、また、通算勤続期間が短いこと。

4.他の労働者も契約更新されていないこと。

5.雇止めに合理的な理由が認められること。

 

<会社の義務>

契約期間の終了間際になってから雇止めの話を切り出したり、事前に充分な説明が無かったりすれば、それだけで「社会通念上相当でない」と判断されます。

ですから、雇止めをする事情が発生したら、対象者には早く説明してあげることが大切です。

上記1.については、労働条件通知書や就業規則の規定を示せば足りることが多いでしょう。

万一、就業規則が無く労働条件通知書の交付を忘れていたような場合には、説明のしようがありません。

口頭で伝えてあったとしても、労働条件を書面で労働者に通知することは法的義務なので、裁判になったら負けてしまいます。

上記2.については、有期契約労働者から契約更新の期待について話があれば、その範囲内で事実を確認すれば足ります。

上記3.4.については、事実を確認して有期契約労働者に示せば良いことです。

問題となるのは、上記5.の合理的な理由です。

ここでいう「合理的」とは、法令の趣旨や目的に適合するという意味だと考えられます。

法令の趣旨や目的は、法令の条文と裁判所の解釈が基準となります。

会社側の解釈も労働者側の解釈も基準とはなりません。

判断が分かれた場合には、早い段階で社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

会社は以上のような説明義務を負っていますが、有期契約労働者が納得することまでは求められていません。

そのため、説明文書を用意しこれを交付して説明するのが得策です。

説明義務を果たしたことの証拠となるからです。

 

<労働者が雇止めに納得できない場合>

会社側が上記のような説明をしない場合には、きちんと説明するよう求めましょう。

それでも説明が無い場合や、説明の内容がおかしいと感じたら、不当解雇を疑って、社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

2021/08/17|1,028文字

 

<休職期間中の産前休業>

産前休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第1項:産前休業】

使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 

このように、産前休業は法定された休業ですが、妊娠中の女性からの請求を待って発生するものです。

ですから、何らかの事情により、本人から産前休業の請求が無いまま休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)となることもあるわけです。

しかし、一般には本人からの請求があって、休職期間中に産前休業が開始されることになります。

この場合には、法定の制度である産前休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

むしろ、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<休職期間中の産後休業>

産後休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第2項:産後休業】

使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 

このように、産後休業は産前休業と同様に法定された休業ですが、出産した女性からの請求を待たずに当然に発生するものです。

ですから、休職期間中に産後休業が開始された場合には、法定の制度である産後休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

やはり、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<解決社労士の視点から>

休職に優先して産休が適用されることによって、残っていた休職期間がどうなるのか、法令には規定がありません。

これについては、各企業の就業規則に任されていることになります。

産休や育休が終了してから、休職期間の残された期間が進行する、期間がリセットされ改めて休職期間がスタートするなど、就業規則に定めることになります。

休職期間が短縮されたり終了したりというのは、産休や育休の取得による不利益取扱ですから許されません。

休職中の産休はレアケースですが、産休を取得する社員が多い職場では、予め就業規則に規定しておいてはいかがでしょうか。

2021/07/29|1,623文字

 

<解雇は無効とされやすい>

社員が障害者になったら「ある程度面倒は見るけれど、今まで通り働けないのなら、退職を申し出て欲しい」というのが経営者の本音だと思います。

それでも、本人から退職の申し出が無ければ、説得して退職を申し出てもらうように働きかけるでしょう。

これに応じてもらえれば、退職勧奨に応じての退職ということで、その人は失業手当(雇用保険の基本手当)も有利に受給できます。

しかし、本人の愛社精神が強ければ、働きたいと思うはずです。

経営者としては、こうした本人の想いに応えたい反面、止むを得ず解雇を考えることでしょう。

ところが解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

裁判になれば、この条文の中の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」というのは、経営者の考え方や世間の常識ではなく、裁判官の解釈が基準になります。

ですから、安易に懲戒解雇を行うのは危険です。

実際に発生している具体的な事実に照らして、関連する判例を数多く調べたうえで、懲戒解雇を検討しなければなりません。

多くの中小企業では、社外の専門家の手助けを必要とするでしょう。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮指針>

さらに、障害者については法令による保護が強化されています。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ〔第36条の2~第36条の4〕、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています。〔第36条の5

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています。(平成27(2015)325日)

 

※正式名称は、「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」と長く、具体的な内容を示すものですが、ここでは「合理的配慮指針」と呼びます。

 

<合理的配慮指針の基本的な考え方>

全ての事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならないとしています。

また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとしています。

 

<中小企業での対応>

しかし、中小企業で社員が障害者となった場合に、上記のような対応を求められたのでは大変でしょう。

実は、障害者雇用促進法の募集・採用、均等待遇、能力発揮についての規定には、「ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という但し書きが添えられています。〔第36条の2、第36条の3

これを受けて、合理的配慮指針にも、同様の内容が加えられています。

つまり各企業には、その規模や体力に応じた対応が求められているのであって、決して無理を強いられているのではないということです。

 

中小企業では、何が何でも障害者となった社員を解雇してはならないということではなく、ご本人と親身になって相談したうえで、会社ができる限りのことをしても限界があるのなら、解雇もやむを得ないということになります。

2021/07/19|738文字

 

<諭旨(ゆし)解雇の定義>

従業員が不祥事を起こし、諭旨解雇になったという報道に接することがあります。

しかし、その報道の中で、諭旨解雇の意味について説明されている例は、ほとんど見られません。

「諭旨解雇」というのは法律用語ではなく、公式な定義が無いことによるものと思われます。

諭旨解雇の取扱は各企業により異なるため、報道機関も安易に解説できないのです。

それでも、諭旨解雇の多くは、懲戒解雇の一種または退職勧奨による退職であると考えられます。

 

<懲戒解雇の一種>

就業規則や労働条件通知書などに定められた懲戒処分の一つで、解雇予告手当や退職金の全額または一部を支払ったうえで解雇するものです。

懲戒解雇も諭旨解雇も、就業規則などに具体的な定めが無ければできませんし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められなければ、解雇権の濫用となり無効です。

また、退職金の減額や不支給が就業規則に規定されている場合であっても、客観的に相当と認められる範囲に限り有効となります。

退職者が会社を訴え、退職金の不足分を請求すると、多くの場合に裁判所が会社に対して不足する退職金の支払を命ずる判決が下されています。

 

<退職勧奨による退職>

従業員の不祥事や非行があった時に、その行為を諭(さと)したうえで、従業員自身の意思により退職願を提出させるものです。

これは、退職を勧められたことにより、従業員自身の意思で退職を決めるので、解雇にはあたりません。

しかし、従業員の自由な意思による決定が前提となっていますので、精神的に追い込まれ、その真意に反して退職願を提出させられたような場合には、退職の申し出が無効となることもあります。

本人に十分反省させたうえで、自主的に退職させることが、その本質となります。

2021/07/12|2,011文字

 

解雇予告の効力https://youtu.be/oB35mJkVccQ

 

<解雇の意味>

雇い主から「この条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

労働契約法の第15条と第16条は、重複している部分があるものの、第15条の方により多くの条件が加わっています。

懲戒処分は、この厳格な制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは懲戒+解雇ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけ満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について、就業規則などにぴったり当てはまる具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で、他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合にも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。

しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。

特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<障害者雇用促進法に基づく合理的配慮>

障害者を採用した場合や、健常者である社員が障害者となった場合には、会社が障害者雇用促進法に基づく合理的配慮を求められます。

こうした配慮が不十分であれば、解雇を通告しても、労働契約法第16条にいう解雇権の濫用とされ、解雇が無効となる可能性が高くなります。

ましてや、知的障害者や精神障害者の懲戒解雇となれば、そのハードルは更に高くなります。

懲戒処分の対象となる行為の原因が、知的障害や精神障害である可能性もあり、これに対して、戒めて反省を求めるための懲戒処分が無意味なケースもあるからです。

障害者の雇用の促進等に関する法律は、昭和35(1960)年に障害者の職業の安定を図ることを目的として制定されました。

そして、労働者の募集・採用、均等待遇、能力発揮、相談体制などについて定められ(第36条の2~第36条の4)、事業主が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針が定められるとしています(第36条の5)。

また、平成28(2016)4月の改正障害者雇用促進法の施行に先がけて、合理的配慮指針が策定されています(平成27(2015)325日)。

この指針を参考にして、会社が十分な取組を行ってきたのでなければ、解雇を有効に行うことはむずかしいのです。

 

<解決社労士の視点から>

結論としては、会社が一方的に普通解雇や懲戒解雇をするのではなく、障害者本人、家族、主治医、産業医などとよく話し合い、会社が対応しきれないことを説明して、合意による退職を目指すのが現実的です。

会社が誠実に説明すれば、家族が本人の説得に回ってくれることもあります。

それでも合意できない場合には、病状により休職を命じることも考えます。

客観的に見て、懲戒解雇の検討対象となるような行動が現れたのなら、医師から病状が重いと判断されることが多いでしょう。

「あの対応で本当に良かったのだろうか」という疑問を残さないよう、慎重に対応しましょう。

2021/07/09|1,694文字

 

簡単ではない懲戒処分https://youtu.be/eAmGzzbHbas

 

<解雇は無効とされやすい>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この条文の中の「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」というのは、それぞれの会社の方針や世間一般の常識ではなく、裁判官の解釈が基準になります。

ですから、安易に懲戒解雇を行うのは危険です。

実際に発生している事実に照らして、関連する判例を数多く調べたうえで、懲戒解雇を検討しなければなりません。

多くの中小企業では、社外の専門家の手助けを必要とするでしょう。

 

<懲戒解雇の手順>

懲戒解雇が無効とされないためには、一般に次の手順を踏むことが必要になります。

 

1.口頭注意

何か不都合な行為を行った社員に対しては、口頭で注意を行います。

そして、注意の内容を文書化し本人に確認させます。

本人に署名してもらい、注意をした社員の上司の確認を得ます。

原本を会社が保管し、コピーを本人に渡します。

 

2.文書による注意

本人が口頭注意に従わない場合、反省していない場合には、文書による注意を行います。

この文書も口頭注意の場合と同じ手順を踏みます。

 

3.懲戒処分

文書による注意を行っても、本人がこれに従わず、あるいは反省していない場合には、懲戒解雇には至らない軽い懲戒処分を行います。

これを行うには、就業規則や労働条件通知書に解雇の具体的な定めがあることや、本人に弁解の機会を与えるなどの適正な手続が必要です。

 

4.懲戒解雇

上記の手順を踏んでも、本人が態度を改めず、会社に籍を置いておくことが会社にとって害悪をもたらす場合には、やむを得ず懲戒解雇に踏み切ることになります。

 

<証拠の品質>

上記の1.から4.までについて、きちんと証拠を残しておくことが、会社を守るためには大事なことです。

しかし、ただ証拠を残せば会社が裁判で勝てるというわけではありません。

証拠の品質が問題となります。

 

懲戒解雇の有効性を争う裁判には、民事訴訟法の次の条文が適用されます。

 

(自由心証主義)

第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

このことから、証拠の内容は具体的で、確かにそうした事実があったのだということを裁判官に納得させるものでなければなりません。

 

そして、懲戒解雇の有効性が争われた場合、その証拠からうかがわれる会社の態度も裁判官から見透かされてしまいます。

懲戒解雇の有効性を否定される会社の態度としては、次のようなものがあります。

・口頭注意や文書による注意の段階から、問題社員のレッテルを貼り懲戒解雇を決めていた。

・会社が親身になり本人の改善に協力的な態度を示しているとは認められない。

・本人が迷ったとき、相談したり指導を仰いだりする具体的な担当者を決めていなかった。

 

 

<円満解決>

たしかに、会社が問題社員に対して親身になって指導し、成長させ改善させるというのは現実には厳しい話です。

それでも、本当の問題社員であれば、そこまでされたら退職願を提出することでしょう。

なぜなら問題社員は、きちんと仕事をしようとか、成長して会社に貢献しようなどとは思っていませんから、会社側からこれを求められるのが一番つらいからです。

懲戒解雇の有効性を争われた場合と、退職願が提出された場合とでは、社員全体にもたらす影響に雲泥の差が生じます。

もちろん、クチコミによる社外への影響も無視できません。

経営者や人事担当者は、目の前の問題社員の態度に熱くなってはいけません。

どのような解決が会社にとってベストなのかを、冷静に見極めることが求められているのです。

 

<解決社労士の視点から>

社内で問題行動が発生した時点で、将来の懲戒解雇を見据えた証拠集めが必要となります。

また、注意・指導の内容が不適切な場合には、パワハラや不当解雇の証拠が蓄積されてしまいます。

問題の火種が小さなうちに専門家に相談することをお勧めします。

2021/06/19|1,010文字

 

解雇予告の効力https://youtu.be/oB35mJkVccQ

 

<整理解雇>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法令の規定>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

この規定は抽象的ですから、素人判断で解雇の有効・無効を決めつけるのは危険です。

 

<整理解雇の有効要件>

実務的には、判例で示された次の4つの要素から、解雇の有効性を判断することになります。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく、総合的な判断となります。

まず、経営上の人員削減の必要性です。会社の財政状況に問題を抱えていて、新規採用などできない状態であることです。

次に、解雇回避努力の履行です。配置転換や希望退職者の募集などの実施です。

さらに、解雇対象者の人選の合理性です。差別的な人選は許されません。

最後に、手続の相当性です。事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

 

<地域限定社員の場合>

「そもそも勤務地を限定されていたのだから」という理由だけで、閉店や事業所の閉鎖によって、そこで勤務する地域限定社員を解雇することはできません。

これは、整理解雇の4つの要素のうち、解雇回避努力の履行にかかわることです。

採用の時点で勤務地限定を望んでいた社員であっても、その後事情が変わっている場合もありますし、解雇されるよりは転勤に応じた方が有利ということもあります。

解雇回避努力が求められるということは「なるべく解雇しないように努力したけれども、どうしてもダメでした」という事情がなければ、簡単に解雇はできないということです。

結局、地域限定社員と話し合って、本人がどうしても別の店舗や営業所などでは勤務できないというのであれば、他の社員に優先して解雇を考えざるを得ないということになります。

 

 <解決社労士の視点から>

整理解雇を含め、解雇の多くは不当解雇となり無効となる危険をはらんでいます。

そして不当解雇は企業に思わぬ損失をもたらします。

「解雇」ということを思いついてしまったなら、迷わず信頼できる国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

2021/05/13|1,376文字

 

<業務災害>

労働者災害補償保険(労災保険)は、業務上の災害(業務災害)と通勤中の災害(通勤災害)による負傷、疾病、障害、死亡について、被災労働者や遺族を保護するために必要な保険給付を行う公的保険制度です。

通勤災害については、その防止に向けた会社の努力が、安全教育や情報提供などに限定されています。

したがって、業務災害ほど会社の責任が重くはないので、解雇について特別な配慮が必要なケースは稀です。

しかし、業務災害をきっかけに解雇を検討する場合には、配慮すべき点が多いといえます。

 

<故意・重過失による業務災害>

会社や上司に対する恨みなどにより、意図して業務災害を発生させた場合には、悪質性が高いですから、被害の程度によっては懲戒解雇を検討することになります。

これは、重過失による業務災害も同様です。

重過失による業務災害とは、結果発生の予測がたやすい場合や、結果発生の回避がたやすい場合に、注意義務に反して結果を発生させた業務災害をいいます。

 

<過失による業務災害>

故意・重過失によらず単なる過失によって業務災害を発生させた場合には、これを懲戒の対象としない会社もあります。

懲戒の対象としないのは、業務災害発生の原因を教育不足・指導不足に求めるからです。

しかし、会社の教育・指導が十分であって、およそ業務災害の発生が想定できない場合にまで、懲戒の対象から外してしまうのでは、他の従業員が安心して勤務できませんし納得できないでしょう。

やはり、業務災害発生の原因を具体的に吟味したうえで、本人に責任がある場合には、懲戒の対象とすべきです。

そして、過失による業務災害であっても、被害が大きければ懲戒解雇が検討される場合があります。

しかし、被害の大きさにとらわれて、悪質性の低さを見失うと、解雇権の濫用となり解雇が無効となることもあります。〔労働契約法第16条〕

懲戒と教育・指導の併用によって対応するのが基本となります。

 

<業務災害による能力低下>

業務災害で被災し、健康状態の減退や障害によって、業務遂行能力が低下する場合もあります。

そして、能力低下が著しい場合には、普通解雇を検討することもあります。

しかし、会社の施設・設備・器具の欠陥や不適切な配置、教育・指導の不足などが業務災害に影響していた場合には、会社に雇用の維持が求められます。

具体的には、異動や業務の転換によって、勤務を継続できるように配慮することになります。

一方で、被災者に故意・重過失が認められる場合には、能力低下による普通解雇一般の基準で判断することとなります。

 

<労働基準法による解雇制限>

以上のどのケースであっても、被災者が業務災害によって療養のために休業した場合には解雇が制限されています。〔労働基準法第19条〕

 

【労働基準法第19条:解雇制限】

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

 

2021/05/15|1,345文字

 

<懲戒解雇>

民間企業での懲戒は「制裁」を意味します。

労働基準法に「懲戒」という用語はありませんが、「制裁」が「懲戒」の意味で用いられています。〔労働基準法第89条第9号、第91条〕

解雇とは、使用者側から労働契約を解除することをいいます。

ですから懲戒解雇は、制裁としての労働契約解除ということになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒を有効に行うためには、就業規則に具体的な規定があること、弁明の機会を与えること、懲戒権の濫用とならないこと、労働基準法の制限内であることなど、多くの条件をクリアする必要があります。

解雇を有効に行うためには、解雇権の濫用とならないこと、労働基準法等が定める禁止規定に触れないことが必要です。

ですから、懲戒解雇を有効に行うには両方の要件を満たす必要があり、かなりバードルが高いことになります。

 

<懲戒解雇の効果>

懲戒解雇の場合には、雇用保険の失業手当(基本手当)について、7日間の待期期間に加えて3か月間の給付制限が設けられていますので、受給開始が遅れることになります。

また、所轄の労働基準監督署長の除外認定を受ければ、解雇予告手当の支払が不要です。

さらに、就業規則に「懲戒解雇の場合には退職金を不支給または減額する」などの規定があれば、退職金が全額は支払われないことになります。

もっとも裁判になれば、懲戒解雇の理由に鑑み、退職金を全く支給しないことが不合理であると判断されることは多いものです。

 

<諭旨解雇>

諭旨とは、趣旨や理由を諭し告げることをいいます。

ですから諭旨解雇は、使用者が労働者を諭し、趣旨や理由を告げて退職を促すことになります。

しかし諭旨解雇は法令に規定がありませんので、その内容も各企業の就業規則等によって異なっています。

多くの場合には、本来であれば懲戒解雇となるべきところ、本人に言って聞かせて反省を示していれば、自主的に退職願を提出してもらうことで、懲戒解雇扱いにはしないという内容です。

ほとんどの場合、自己都合退職となりますから、雇用保険の失業手当(基本手当)について、7日間の待期期間に加えて3か月間の給付制限が設けられていますので、受給開始が遅れることになります。

この場合、解雇ではありませんから解雇予告手当は支払われない一方で、退職金の減額は行われないのが一般です。

 

<諭旨解雇特有の問題>

「本来は懲戒解雇とすべきところを懲戒解雇扱いにはしない」というのが諭旨解雇ですから、そもそも「本来は懲戒解雇とすべきではなかった」ならば、前提が崩れてしまいます。

このことから、諭旨解雇を承諾して退職した労働者が、弁護士に相談し諭旨解雇を不服として会社を訴えるケースがあります。

会社としては、懲戒解雇の条件と手続をすべてクリアしたうえで、諭旨解雇に踏み切らなければリスクを負うことになります。

 

<諭旨退職>

諭旨退職も法律用語ではありませんので、各企業によってその意味は異なってきます。

諭旨解雇の意味で、諭旨退職という言葉が用いられている場合も多くあります。

また、退職勧奨の意味で用いられている場合もあります。

「会社や他の従業員に迷惑をかけてしまったし、あなたは信用を失ってしまったので、責任をとって退職しませんか」と話を持ちかけることになります。

<高年齢者雇用確保措置>

定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する義務があります。〔高年齢者雇用安定法第9条〕

「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25(2013)年度以降、原則として希望者全員を対象とすることが必要となっています。

なお、継続雇用先は自社のみならずグループ会社とすることも認められています。

 

<高年齢者就業確保措置>

さらに、令和3(2021)年4月1日からは、事業主には70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務が課されています。〔高年齢者雇用安定法第10条の2〕

したがって、定年を70歳未満に定めている事業主、70歳未満の継続雇用制度を導入している事業主は、次のいずれかの措置を講ずるよう努める必要があります。

一、70歳までの定年引上げ

二、定年制の廃止

三、70歳までの継続雇用制度の導入

四、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

五、70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

・事業主が自ら実施する社会貢献事業

・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

このうち、三の継続雇用制度については、特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものが含まれます。

三、四、五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、労使で十分に話し合うことが求められます。

過半数労働組合があれば、事業主と過半数労働組合との間で十分に協議したうえで、過半数労働組合の同意を得ることが望ましいことになります。

ただし、高年齢者雇用安定法や他の労働関係法令に反する不合理なものは認められません。

特に五の措置をとる場合に、基準を定めて対象者を限定する場合には、事業主の指揮監督を受けることなく業務を適切に遂行する能力や資格、経験があること等、予定される業務に応じて具体的な基準を定めることが必要とされています。

上記の「基準を定めて対象者を限定する場合」の「基準」は、会社に都合よく恣意的に定めることはできません。

対象外とされた従業員から、会社にクレームが入ったり、訴訟を提起されたりのリスクがあります。

以下の点に配慮して基準を定め運用するように心がけましょう。

 

<懲戒解雇の事由>

「懲戒解雇の事由がある場合には再雇用しない」と就業規則に規定されていることがあります。

懲戒も解雇もハードルが高いですから、懲戒解雇となれば、その具体的な事由が就業規則に規定されていなければなりませんし、重ねて指導したにも関わらず改めない、極めて悪質であるなどの事情や、弁明の機会の付与などが求められます。

「再雇用しない理由に使うだけ」と気を緩めてはいけません。

 

<懲戒解雇の先送り>

定年後の再雇用をしない理由として、懲戒解雇の事由を挙げる場合、「そろそろ定年が近いから今すぐ解雇しなくても」と問題を先送りしてきた可能性があります。

定年前に懲戒解雇が正当視されるような事由がある場合、本人が勤務し続けることは、他の従業員にとって迷惑であり、その部署の生産性を低下させてしまいます。

先送りの意識が働いている場合には、定年前に不都合な言動があっても、注意・指導を受けることなく放置される危険も高まります。

定年までの年数が長く、先送りが長期に及んだ場合には、「今まで許されてきたこと」を理由に再雇用を拒否することになり、不当な不意打ちと評価される危険があります。

定年を待たずに解雇するのが、会社や他の従業員のためになります。

 

<客観的な評価基準>

「健康状態が良好でない者」「生産性が低い者」「会社への貢献度が不足する者」のような主観的な判断基準で、再雇用の対象外とすることはできません。

事実の存否を争われた場合に、立証することができないからです。

「定年まで3年間の勤務評定が平均B以上であること」のような基準は、一見すると客観的な基準のように見えます。

しかし、普段の勤務評定が客観的な事実に基づかず、考課者の主観によるところが大きければ、やはり主観的な基準ということになってしまいます。

人事考課は、客観的な指標や事実に基づいて行われる必要があります。

 

YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<基準時の設定>

再雇用の判断について、いつの時点を基準とするかは重要です。

これが明確でなければ、判断基準が無いに等しくなってしまいます。

 

<過去の懲戒>

「出勤停止以上の懲戒が2回以上あった者は再雇用しない」などの基準も、一見すると客観的な基準だと思われます。

しかし、過去の懲戒が適正な手続に従い、有効に行われたことを示す客観的な資料が無い限り、その正当性を争われるリスクがあります。

 

<公平な運用>

特定の従業員について、基準を緩め例外的に再雇用してしまうと、それ以降は、緩い基準で再雇用しない限り不公平が生じてしまいます。

例外的に基準を緩めたい事情があるなら、再雇用の基準をより緻密に修正する必要があります。

2021/04/19|1,118文字

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

これには、最高裁判所が「整理解雇の4要件」を示していて、これらの要件を満たしていないと解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要件とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要件を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば整理解雇が有効とされています。

 

<人選の合理性について>

整理解雇対象者の選定については、客観的で合理的な基準を設定し公正に適用して行う必要があります。

年齢や勤続年数のように簡単に数値化できるものは、客観的な基準として挙げられやすいものです。

しかし、たとえば比較的転職しやすいだろうという理由で、30歳未満の社員を整理解雇の対象とした場合でも、社内での経歴から転職しやすさに差が出るのは明らかです。

会社の判断で配属し異動させているわけですから、転職しやすさに差が出るのは会社側にも責任があります。

また反対に、会社に対する貢献度の割に給与が高いという理由で、50歳以上の社員を整理解雇の対象とした場合でも、年齢とともに昇給する給与体系となっているのは会社がそのようにしているわけですから、これも会社側に責任があります。

 
YouTube「合理的」の意味
https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<人事考課が適正に行われている場合>

協調性が無い、素行不良である、上司の指示に従わない、報連相ができない、身体が虚弱で業務に支障が出ているなど、総合的に評価された結果が、「直近3年間ですべてC評価以下であった」などの基準は、客観的で合理的な基準として使うことができます。

人事考課は、止むを得ず整理解雇を行う場合に備えてのものではありませんが、適正な人事考課の運用は、こうした場合にも役立つということです。

 

<懲戒処分が適正に行われている場合>

過去5年間に、減給処分または1週間以上の出勤停止処分を受けた者という基準も、客観的で合理的な基準として使うことができます。

ただし、解雇権の濫用と同様に、懲戒権の濫用も問題になりますから、あくまでも懲戒処分が適正に行われてきたことが前提となります。

 

<解決社労士の視点から>

今は、新型コロナウイルスの影響で、整理解雇が必要になる企業も増加しています。

しかし、このような状況下でこそ、新たな人事考課制度や給与体系を構築しやすいものです。

このチャンスに、人事考課制度の課題に取り組むことをお勧めします。

2021/04/08|1,468文字

 

<解雇一般の有効要件>

解雇権の濫用であれば不当解雇となります。

不当解雇なら、使用者が解雇を宣告し、解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。

一方、従業員は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。

しかし従業員が働かないのは、解雇権を濫用した使用者側に原因があるので、従業員は働かなくても賃金の請求権を失いません。

何か月か経ってから、従業員が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。

これを使用者側から見れば、知らないうちに従業員に対する借金が増えていくことになります。

解雇権の濫用による解雇の無効は労働契約法に、次のように規定されています。

 

第16条【解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

 YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

 

<解雇の予告>

解雇権の濫用とはならず、解雇が有効になる場合であっても、その予告が必要です。

つまり、解雇しようとする従業員に対し、30日前までに解雇の予告をする必要があります。

解雇予告は口頭でも有効ですが、トラブル防止のためには、解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成し交付することが必要です。

また、従業員から求められた場合には、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければなりません。

これは法的義務です。

一方、予告を行わずに解雇する場合は、最低30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。

 

<即時解雇が許される場合>

「従業員の責に帰すべき理由による解雇の場合」や「天災地変等により事業の継続が不可能となった場合」には、解雇予告も解雇予告手当の支払もせずに即時に解雇することができます。

ただし、解雇を行う前に労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けなければなりません。

また、次のような場合は解雇予告そのものが適用されません。

ただし、所定の日数を超えて引き続き働くことになった場合には解雇予告制度の対象となります。

試用期間中の者 14 日間
4 か月以内の季節労働者 その契約期間
契約期間が2 か月以内の者 その契約期間
日雇労働者 1 か月

 

<労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)>

労働基準監督署では「従業員の責に帰すべき事由」として除外認定申請があったときは、従業員の勤務年数、勤務状況、従業員の地位や職責を考慮し、次のような基準に照らし使用者、従業員の双方から直接事情等を聞いて認定するかどうかを判断します。

1)会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合

2)賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合

3)採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合

4)他の事業へ転職した場合

5)2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合

6)遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合

 

上記の認定は客観的な基準により行われますので、社内で懲戒解雇とされても、解雇予告除外認定が受けられない場合があります。

また、懲戒解雇が有効か否かは、最終的には裁判所での判断によることになります。

 

さらに、次の期間は解雇を行うことができません(解雇制限期間)。

1)労災休業期間とその後30日間

2)産前産後休業期間とその後30日間

 

解雇してもトラブルにならないケースといえるのか、即時解雇は許されるのかといった専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2021/03/28|2,122文字

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<和解契約の性質>

和解とは、法律関係の争いについて、当事者が互いに譲歩し争いを止める合意をすることをいいます。

退職者から会社に対し、代理人弁護士を通じて、法的な権利を主張し何らかの請求をしてくることがあります。

在職者からは、弁護士を介さず直接請求してくることが多いでしょう。

会社が何らかの回答をし、これに退職者・在職者が納得しなければ、あっせんや労働審判を申し立てられることがあります。

これを超えて訴訟にまで発展すると、当事者には時間、費用、労力、精神力などの負担が大きくのしかかります。

和解というのは、会社と退職者・在職者のどちらが正しいか白黒を付けるのではなく、お互いに歩み寄って解決することにより、時間、費用、労力、精神力などの負担を軽減しようという、合理的な解決方法であるといえます。

 

<和解契約書のひな形>

和解契約書のひな形は、ネットで検索すると、金銭消費貸借契約に関するものも多いですが、「和解 ひな形 労働者」で検索すれば、会社と従業員や退職者との和解契約書のひな形が見つかります。

しかし、その一般的なものには、そのまま利用すると、紛争の解決どころか新たな紛争の火種となる要素が含まれています。

以下、そうした例について説明を加えてみましょう。

なお、例文中の甲は会社、乙は退職者・従業員を示しています。

 

<離職理由>

第○条 甲乙は、本件に関し、雇用保険の離職証明書の離職事由は、○○○○であることを確認した。

雇用保険の離職理由は、会社(事業主)と退職者(離職者)のそれぞれが、離職票・離職証明書に具体的事情を記入し、所轄のハローワーク(公共職業安定所)が判断します。

会社と退職者とで離職理由の申し合せをしても、ハローワークがこれに拘束されるわけではありません。

あくまでも具体的事情に基づいて判断されます。

したがって、事実と異なる申し合せは無効となります。

たとえ話ですが、自己都合の退職者が、雇用保険の手続担当者に「5万円あげるから会社都合にして」と依頼し、手続担当者がこれを承諾して会社都合の離職票を作成したら、失業手当(求職者給付の基本手当)を不正受給することになりかねません。

こうしたことが許されないのは明らかです。

 

<守秘義務1>

第○条 乙は、在籍中に従事した業務において知り得た技術上・営業上の情報について、退職後においても、これを他に開示・漏洩し、自ら使用しないことを誓約する。

退職者に「他に開示・漏洩しない義務」を負わせることは可能ですが、退職者の頭の中に残っている情報を使用しないというのは不可能なことです。

無意識のうちに使用することは避けられません。

不可能なことを和解の内容に加えてしまうと、全体の信憑性が損なわれてしまいます。

 

<守秘義務2>

第○条 乙は、本合意書の存在及びその内容の一切を厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、一切開示又は漏洩しない。

守秘義務に共通のことですが、守秘義務に反して秘密を開示・漏洩してしまった場合のペナルティーが無ければ、実効性を保てないのではないでしょうか。

秘密の開示・漏洩によって会社に実害が発生した場合には、和解契約書の有無とは関係なく、不法行為または債務不履行による損害賠償責任が発生しますので、あえて和解契約書を交わすメリットは見当たりません。

会社側が実害の立証をしなくても、秘密の開示・漏洩があれば、従業員や退職者に一定の違約金を請求できる内容を加えておく必要があるでしょう。

 

<競業避止義務>

第○条 乙は、退職後○年間は、甲と競業する企業に就職したり、役員に就任するなど直接・間接を問わず関与したり、又は競業する企業を自ら開業したり等、一切しないことを誓約する。

退職者にも、憲法で保障された職業選択の自由がありますから、競業避止義務を負わせる場合には、期間だけでなく、地域的な範囲を限定しなければ一般には無効となります。

地域を限定しないで、つまり全世界で禁止ということが合理性を持つのは、ほんの一つまみのグローバル企業の場合だけです。

また、給与への上乗せ、退職金への上乗せなどで、競業避止に対する対価の支払が行われている場合を除き、和解に当たって、競業避止の対価を支払うことが必要です。

退職者には、和解に応じる/応じないの選択権がありますから、会社に都合の良い内容を押し付けることはできないのです。

 

<債権債務の不存在>

第○条 甲乙は、本件に関し、本合意書に定めるほか、何らの債権債務が無いことを相互に確認し、今後一切の異議申し立てを行わない。

和解にこの条項が無いと、紛争のぶり返しがありうるので、最終決着であることを担保するために設けられます。

しかし、従業員と会社との間には労働契約上の債権債務があります。

これが消滅してしまう和解というのは、ありえないでしょう。

また、退職者であっても、退職直後であれば、退職金の支払、健康保険や雇用保険の手続が残っていることがあります。

こうしたものが残っている場合には、例外として盛り込んでおく必要があります。

 

<解決社労士の視点から>

「ひな形」は飽くまでも「ひな形」です。

主体的に考えて、カスタマイズして利用しましょう。

2021/03/18|1,590文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

出来てからまだ10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<「客観的」の落とし穴>

「客観的に合理的な理由」を欠けば、解雇権の濫用となり、解雇は無効となるわけです。

しかし、当事者である会社側と対象社員の言い分は、完全に主観的なものです。

会社がそれなりの理由を示して解雇を通告した場合、その解雇理由は主観的な判断により示したものです。

また、これに対する対象社員の反論も主観的なものです。

ですから、「どちらが正しいか」という議論は、解雇の有効性については無意味です。

あくまでも、「客観的に合理的な理由」が有るか無いかによって、解雇権の濫用となるか否かが決まってきます。

 

<「客観的に合理的な理由」とは>

「客観的に合理的な理由」とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

そして、最終的な判断は裁判所が行います。

 

結局、バイク通勤の禁止ルールに違反することが、その職場では絶対に許されない背信的行為であるとされる特別な事情が客観的に認定されるのであれば、解雇もやむを得ないということになります。

 

しかし、現実にはそこまで特別な事情は想定できません。

会社がバイク通勤を禁止するのは、事故が多いとか、駐車場が確保できないとか、近隣のお客様に不快感を与えるとかいうのが一般的な理由でしょう。

これらは、可能性があるというに過ぎません。

 

現実に、通勤の途中でバイク事故を起こした場合、違法駐車をした場合、近隣のお客様からバイクの騒音などについてクレームがあった場合に、これらを理由として解雇してしまうのは行き過ぎだと考えられます。

これらの行為と解雇とのバランスがとれていないからです。

つまり解雇するについて「客観的に合理的な理由」があるとはいえないわけです。

 

<会社として取りうる措置>

まず、就業規則で全面的にバイク通勤を禁止するのではなく、「会社の許可なくバイクで通勤することは禁止する」という形にして、特別な理由があれば許可する形にすることです。

そして、許可の条件としては、一定の条件を満たすバイク保険の加入、適正な駐車場の利用、騒音が一定以下であることなどを示す書面を添付して、会社に申請書を提出することなどが考えられます。

 

たとえこの場合でも、無許可でのバイク通勤が解雇の理由となるわけではありません。

就業規則の中に会社の手続違反に対する懲戒規定があって、懲戒処分についての適正な手続を踏めば、減給や出勤停止程度の処分が有効となるケースもあるといえるに過ぎません。

 

<解決社労士の視点から>

バイク通勤は危ないから禁止、そして違反したら解雇というような、安易な運用はできません。

解雇が有効になるのは、労働契約法の条件を満たす場合に限られるのです。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/03/14|1,295文字

 

YouTube常識ってなんだろう?

https://youtu.be/UgGT9OM0_S8

 

<常識とは>

「常識」という日本語は、一般の社会人が共通に持つ/持つべき普通の知識・意見や判断力などと説明されます。

これを英語に訳すと、次の3つの内のどれかになると思われます。

general knowledge ― 誰もが持っている知識・情報

common courtesy ― 礼儀作法、マナー

common sense ― 当たり前の感覚、分別(ふんべつ)

「常識」という言葉が出てきたときには、どの意味で使われているのかを考える必要があるでしょう。

 

<誰もが持っている知識・情報としての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、仕事が上手く進まないことがあります。

しかし、単純に知識や情報を与えることで不都合は解消します。

社内でAさんの「常識」とBさんの「常識」が食い違った場合、ネットで検索すれば大抵の場合に、どちらが正しいか簡単に判明します。

社内に特有なことであれば、社内資料で確認できます。

ですから、3つの中では最もトラブルになりにくい「常識」です。

 

<礼儀作法、マナーとしての常識>

社内にこの「常識」を欠く社員がいると、人間関係がぎくしゃくし、取引先との関係が悪くなることがあります。

ビジネスマナー研修を受講させ、上司や先輩が手本を示すことによって、「常識」を身に着けさせることができます。

「中途採用の〇〇さんは、挨拶の仕方も知らない。常識が無い」という話を耳にすることがあります。

たしかに、応接室や車内での席順、名刺交換の方法などは、ほとんどの企業に共通の「常識」となっています。

しかし、挨拶の仕方については地域や業界によって「常識」が異なっていますから、転職すれば「常識」の修正が必要になります。

こうした違いについての知識が無い社員が、異なる「常識」を備えた社員を馬鹿にしたり、叱ったりすることでトラブルが発生します。

また、中途採用の社員を試用期間中に解雇してしまうなど、誤った判断をすれば訴訟に発展することもあります。

社内での礼儀作法とマナーを統一し、それが全企業統一の「常識」ではなく社内ルールであることを、社員に教育しておく必要があります。

 

<当たり前の感覚、分別としての常識>

これが最もトラブルになりやすい「常識」です。

なぜなら、この「常識」は個人ごとに異なり、それにもかかわらず多くの人に共通するものだという勘違いがあるからです。

「近頃の若いもんは」というのは、世代による「常識」の違い、ゼネレーションギャップを端的に表した言葉です。

この「常識」の違いが、ハラスメントの原因にもなります。

部下に反省させるためなら、怒鳴るのも、多少の暴力をふるうのも仕方が無いという「常識」が、パワハラの原因となります。

いつも笑顔で感謝の言葉を述べるのは、自分に好意を抱いている確たる証拠であるという「常識」が、セクハラの原因となります。

勤務中にマスクを外すことは許されないという「常識」が、コロナハラスメントの原因となります。

社員一人ひとりの「常識」に任せておけば、必然的にトラブルの温床となります。

安全配慮義務を果たし、ハラスメントを防ぐには、社内の統一ルールと教育が必要なのです。

 

解決社労士

2021/03/10|2,173文字

 

YouTube年次有給休暇と出勤率

https://youtu.be/UHsJHrJymP0

 

<年次有給休暇を使わせる義務>

年5日以上の年次有給休暇を取得させる義務が規定される前から、労働基準法には次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない

 

この規定の中の与えなければならないというのは、文脈からすると、権利を与えるということではなく、使わせるという意味であることが明らかです。

そして、この義務に違反した場合の罰則としては、次の規定があります。

 

第百十九条 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 

たとえば、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えれば、法律上は懲役刑もありうるということになります。

それが悪質であって、労働基準監督官が使用者を逮捕し送検して有罪判決が下されれば、その使用者が前科者となるわけです。

 

しかし、刑罰の存在と、年次有給休暇請求の効力とは別問題です。

刑罰は国家権力と使用者との関係で規定されるもので、年休請求により年休が使えることになるかどうかという使用者と労働者との間の民事的な関係には、直接的には影響しないのです。

 

ということは、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えた場合、その従業員が当日会社を休んだ場合にどうなるかは別に考える必要があります。

結論としては、年次有給休暇を使ったことにはなりません。

無断欠勤になってしまいます。

 

従業員としては、使用者に対して年次有給休暇を取得させるように説得を試み、それでもダメなら、所轄の労働基準監督署やその他の相談機関に相談するしかありません。

 

<年次有給休暇を使った人の解雇>

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するなど、不利益な取扱いをすることは、次の規定によりやんわりと禁止されています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この条文の解釈については、最高裁判所が次のような判断を示しています。

 

労基法第136条それ自体は会社側の努力義務を定めたものであって、労働者の年休取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を持つとは解釈されない。

また、先のような措置は、年休を保障した労基法第39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが、労基法第136条の効力については、ある措置の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度年休の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年休を取得する権利の行使を抑制し、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効(民法第90条)とはならない

沼津交通事件 最二小判平5.6.25

 

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するというのは、解雇により労働者が失う経済的利益の程度、年休の取得に対する事実上の抑止力は甚だしいですし、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものですから、公序に反して無効(民法第90条)になるでしょう。

 

それにしても、年次有給休暇を使わせておいて、後から解雇を言い出すのはおかしな話です。

 

<年次有給休暇の使い過ぎを理由とする契約更新の拒否>

下の方に示すように、労働契約法に有期契約労働者の契約更新についての規定があります。

この規定では、何回か契約が更新されている人と、契約更新に対する期待が客観的に是認できる人に限定されていますが、前回と同じ条件での契約更新を権利として認めています。

 

この規定の解釈にも、先ほどの沼津交通事件判決の趣旨が及びます。

たとえば、契約更新にあたって「あなたは年次有給休暇の残日数が少ない。年休の使い過ぎなので、契約は更新できない」などという理由で、契約更新を拒否できないということになるでしょう。

 

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

解決社労士

2021/02/16|905文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

出来てから10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<解雇のチェックリスト>

過去の裁判所の判断例から、以下にチェックリストを示します。

ほとんどの項目にチェックマークが入るケースならば、解雇の有効性が肯定されやすいといえるでしょう。

 

□ 解雇の理由が労働契約の継続を期待し難いほど重大なものである

□ 労働契約で約束した能力や資質と実際とが大きく食い違う

□ 教育しても労働者の能力の向上が期待できない

□ 配転や降格では対応できない

□ 教育指導を十分に行ってきた

□ 上司や教育担当が十分な対応を行ってきた

□ 解雇までの経緯や動機に隠された意図や恣意が認められない

□ 解雇の手続は就業規則に定めた通りに行った

□ 対象者と話し合い、言い分も聞いたうえで決定した

□ 対象者の会社に対する功績や貢献度が低い

□ 勤続年数は短い

□ 対象者は解雇されても再就職が容易である

□ 他の従業員に対する処分とのバランスはとれている

□ 対象者に対して、より軽い懲戒処分で対応した過去がある

 

<解決社労士の視点から>

こうして見ると、しろうとでは判断が困難な項目も含まれています。

また、チェックマークを入れられる状態にするには、日頃の準備が必要な項目もあります。

問題社員が増加傾向にある今、会社を守るための準備を進めるには、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

2021/01/16|1,615文字

 

YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<労働基準法の規定>

労働基準法によると、解雇する場合には30日前に予告しなければならないのが原則です。

30日前に予告する代わりに、12日分の解雇予告手当を支払うとともに18日前に予告するなど、足して30日になるという方法も取れます。

30日分の解雇予告手当を支払うとともに即日解雇も可能です。

この場合には、「後日支払う」という約束ではなく、現実に支払っておくことが必要です。

そして、試用期間中の労働者に対しては、最初の14日間に限り、解雇予告も解雇予告手当も不要です。

労働基準法には、こうした規定しかありません。

ですから、入社から14日間は解雇の条件が緩いという誤解が生じます。

 

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

 

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

 

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

一   日日雇い入れられる者

二   二箇月以内の期間を定めて使用される者

三   季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者

四   試の使用期間中の者

 

<試用期間についての判例>

試用期間については、最高裁判所が解約権留保付労働契約だと言ったために、何か特別な契約期間であるかのように思われがちです。〔昭和44年12月12日三菱樹脂事件判決〕

しかし、最高裁判所が試用期間について述べたのは、判決を下すのに必要があって述べたわけではなく、傍論として、ついでに語っただけです。

試用期間であれば、本採用後よりも解雇のハードルが低くなる趣旨のことを述べていますが、具体的に、どの項目についてどの程度低くなるのかは語っていません。

結局、試用期間も本採用後も労働契約の期間であることに変わりはなく、両者の違いを明確に説明することはできません。

それでも、試用期間であれば、本採用後とは違った扱いができるという勘違いは、多くの企業に存在しています。

 

<解雇の制限>

試用期間の最初の14日間でも、解雇権濫用であれば不当解雇とされます。

不当解雇なら、使用者が解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。

一方、労働者は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。

しかしこれは、解雇権を濫用した使用者が悪いのです。

何か月か経ってから、労働者が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。

これを使用者側から見れば、知らない間に労働者に対する借金が増えていったということになります。

これは労働契約法に、次のように規定されています。

 

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

一部の企業に端を発した法令の拡大解釈や、最高裁判所の判決に対する誤解が、いつの間にか「常識」となってしまうこともあるのです。

さらに、昨日まで正しかった常識も、法改正や判例変更によって、不適法になることがあります。

正しいことは、信頼できる社労士にご確認ください。

 

解決社労士

2021/01/01/|1,382文字

 

YouTubeコロナハラスメント

https://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

<「やむを得ない」の意味>

「やむを得ない」の「やむ」は「やめる」、「得ない」は「できない」という意味ですから、「やむを得ない」の意味は、「そうするよりほかに方法がない。しかたがない」という意味になります。

「やむ負えない」「やむ終えない」「やむ追えない」などの誤った表記も見られますが、これらは「やむおえない」ですから、そもそも誤りです。

「やもおえない」「やもうえない」という誤りも、耳にすることがあります。

かつては、「已むを得ない」と表記されていましたが、当用漢字で「止むを得ない」が一般的になりました。

 

<労働基準法の「やむを得ない」>

労働基準法により、解雇の予告や解雇予告手当の支払が無いまま解雇することは、犯罪となり罰則の適用もありえます。

しかし、「やむを得ない」事由のために事業の継続が不可能となった場合には、犯罪にはなりません。

 

【解雇の予告:労働基準法第20条第1項】

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合または労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

 

条文には、「やむを得ない」事由の例として、天災事変が示されています。

簡単に「やむを得ない」と判断できないことは明白です。

実際、通達(昭和63年3月14日 基発150号、婦発47号)には、「やむを得ない」場合に該当する例として、次のものが挙げられています。

 

【やむを得ない場合の例】

・事業主の故意や重大な過失に基づかず、事業場が火災により焼失した場合

・震災によって工場、事業場の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能となった場合

 

反対に、「やむを得ない」とはいえない場合の例として、次のものが挙げられています。

 

【やむを得ないとはいえない場合の例】

・国税の滞納処分を受け事業廃止となった場合

・取引先が休業状態となり、これが原因で事業が金融難に陥った場合

 

<コロナ禍による場合>

コロナ禍による業績の落ち込みから、正社員の整理解雇や非正規社員の雇い止め等を検討している企業もあります。

事業の継続が不可能となった場合には、コロナ禍が「やむを得ない」事由に該当するといえるのかが問題となります。

しかし、現時点では、厚生労働省などから、コロナ禍により事業の継続が不可能となった場合について、何らかの発表は見られません。

むしろ、助成金・補助金の特例、融資の拡大、税制上の措置、社会保険料の特例軽減などの緊急対応策により、事業の継続を維持するように促している状態です。

少なくとも、これらの緊急対応策を利用し尽くしてもなお、事業主の責任を問われない原因で、事業の継続が不可能となった場合でなければ、解雇の予告や解雇予告手当の支払が無いまま解雇することが許される「やむを得ない」事由があったとは、認められないのではないでしょうか。

さらに、コロナ禍による業績の落ち込みを理由とする解雇は、整理解雇にあたります。

整理解雇が有効となるためには、厳格な要件を満たす必要があります。

まずは、希望退職者の募集や退職勧奨など、労使の合意によって可能な対応を優先することをお勧めします。

 

解決社労士

2020/12/31|1,422文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<解雇の意味>

雇い主から「この条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

普通解雇は、この制限を受けることになります。

 

<懲戒処分の制限>

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第15条〕

労働契約法の第15条と第16条は、重複している部分があるものの、第15条の方により多くの有効要件が含まれています。

懲戒処分は、この厳格な制限を受けることになります。

 

<懲戒解雇の有効要件>

懲戒解雇というのは懲戒+解雇ですから、懲戒の有効要件と解雇の有効要件の両方を満たす必要があります。

普通解雇は、解雇の有効要件だけ満たせば良いのですから、懲戒解雇よりも条件が緩いことは明らかです。

 

<懲戒解雇と普通解雇の有効要件の違い>

そして、条文上は不明確な両者の有効要件の大きな違いは次の点にあります。

まず懲戒解雇は、社員の行った不都合な言動について、就業規則などにぴったり当てはまる具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇ならば、そのような規定が無くても、あるいは就業規則が無い会社でも可能です。

また懲戒解雇の場合には、懲戒解雇を通告した後で、他にもいろいろと不都合な言動があったことが発覚した場合にも、後から判明した事実は懲戒解雇の正当性を裏付ける理由にはできません。

しかし普通解雇ならば、すべての事実を根拠に解雇の正当性を主張できるのです。

ですから、懲戒解雇と普通解雇とで、会社にとっての影響に違いが無いのであれば、普通解雇を考えていただくことをお勧めします。

特に、両者で退職金の支給額に差が無い会社では、あえて懲戒解雇を選択する理由は乏しいといえます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。

整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。

解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけです。

会社目線の素人判断ではいけません。社会目線の法的判断が必要です。

具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

解雇を検討する最初の段階でご相談いただければ、時間、労力、経費、人件費、精神力を大幅に削減できます。

 

解決社労士

2020/12/24|1,227文字

 

YouTube情報漏洩の防止

https://youtu.be/nnTZG2FyG8w

 

<解雇は無効になりやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、それが解雇権の濫用であれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで、解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。会社にとっては、恐ろしい事態です。

10年余り前に施行された労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

不当解雇で処罰されることは無いですし、解雇を通告された人が納得すれば問題ありません。

納得がいかなくて、会社に損害賠償の請求をしたときに、初めて問題が表面化するのです。

 

<「客観的に合理的な理由」とは>

「客観的に合理的な理由」とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

ソーシャルメディアに悪質な投稿をした社員の解雇に「客観的に合理的な理由」が認められるためには、次のような要件が必要です。

・投稿された映像の内容が悪質であること

・会社にソーシャルメディアの利用に関するガイドラインが存在すること

・社員にガイドラインを遵守する旨の誓約書を書かせていること

・ガイドラインの遵守義務が就業規則に規定されていること

・ガイドライン違反についての懲戒規定があること

・ガイドライン遵守の重要性について十分な教育研修を行っていること

・ソーシャルメディアの利用に関し管理職が部下に注意指導していること

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社員が何か不都合な行為を行った場合でも、懲戒処分を行うには、それなりの準備が必要だということです。

ましてや、懲戒解雇ともなれば用意周到である必要があります。

対象者から争われ、不当解雇とされた場合のダメージは、かなり大きいものがあります。

他のケースを含め、必要に応じて適正な懲戒処分が行えるようにしておくためには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

<余談>

パソコンのデータが消えた時のために、データのバックアップを取っておくことは、多くの会社で行われています。

しかし、パソコンが立ち上がらなくなった時のために、再セットアップディスクなどを作成しておくことは、意外とされていません。

面倒に思われても、予め準備しておくことは大事だと思います。

「備えあれば患いなし」というのは、懲戒処分と共通するものがあります。

 

解決社労士

2020/12/21|1,289文字

 

YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<解雇は無効とされやすい>

会社が社員に解雇を通告しても、解雇権の濫用となれば無効になります。

これを不当解雇といいます。

解雇したつもりになっているだけで、解雇できていないので、対象者が出勤しなくても、それは会社側の落ち度によるものとされ、賃金や賞与の支払義務が消えません。

会社にとっては、恐ろしい事態です。

施行されてから10年余りの労働契約法という法律に次の規定があります。

 

(解雇)

第十六条   解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

大変抽象的な表現ですから、いかようにも解釈できそうです。

しかし、正しい解釈の基準は裁判所の判断です。

そして、裁判所の判断によれば、解雇権の濫用は簡単に認定されます。

つまり、多くの場合、不当解雇が認定されます。

 

<「客観的」の落とし穴>

客観的に合理的な理由を欠けば、解雇権の濫用となり、解雇は無効となるわけです。

しかし、当事者である会社側と対象社員の言い分は、完全に主観的なものです。

会社がそれなりの理由を示して解雇を通告した場合、その解雇理由は主観的な判断により示したものです。

また、これに対する対象社員の反論も主観的なものです。

ですから、「どちらが正しいか」という議論は、解雇の有効性については無意味です。

あくまでも、客観的に合理的な理由が有るか無いかによって、解雇権の濫用となるか否かが決まってきます。

 

<客観的に合理的な理由>

客観的に合理的な理由とは、誰が見ても解雇はやむを得ないという理由です。

なぜなら、誰が見ても正しいというのが、客観的に正しいということだからです。

ただし、当事者である会社側と対象社員は「誰が見ても」の「誰」からは除かれます。

当事者は、主観的に考えてしまうからです。

解雇の客観的に合理的な理由となりうるものとしては、次のものが挙げられます。

まず、労働者の著しい能力不足や協調性不足です。

これは、会社側が十分な教育指導を行っていることが前提となります。

教育指導をせずに、会社が能力不足や協調性不足を主張することはできません。

つぎに、労働者が正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返していることです。

ただし、長時間労働や過重労働などで疲労が蓄積しているような場合には、会社に落ち度があるので客観的に合理的な理由にはなりません。

さらに、労働者の不法行為や反社会的行為は、客観的に合理的な理由となりえます。

しかしこれは通常、懲戒解雇でしょうから、就業規則に具体的な規定があることや、対象社員が十分な弁明の機会を与えられるなど、厳格な条件を満たし適切な手順を踏んでいる場合に限り可能です。

そして、会社が解散するような場合には、「客観的な合理性」が認められるのが原則です。

会社の経営不振による整理解雇であれば、対象者の選択基準の合理性が問題とされます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「客観的」というのがネックになり、社内で検討し結論を出すのはリスクを伴います。

解雇を検討する場合には、なるべく早く、客観的な第三者である社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/20|1,127文字

 

YouTube「社会通念上相当」の意味

https://youtu.be/z4rMrTt-cn8

 

<常識的な判断>

社員が詐欺や傷害などの刑事事件を起こし、警察のお世話になって、テレビのニュースに出たような場合、「常識的」な判断からは、懲戒解雇が当然であり、解雇にならないのは非常識だと考える人もいるでしょう。

しかしこれは、会社目線の素人判断です。

「ごめんで済めば警察は要らない」のと同じように、「常識で済めば法律は要らない」のです。

そして労働者は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されていますから、たとえ犯罪に走った場合でも、簡単には解雇が認められないのです。

この場合、会社が解雇を通告しても、解雇は無効になります。

「不当解雇」とされるわけです。

 

<懲戒解雇が有効となる場合>

まず、社員の行為が懲戒事由にあたることが必要です。

懲戒事由にあたるといえるためには、就業規則に具体的な規定があるか、労働条件通知書や雇用契約書にその旨が定めてあることが必要です。

会社が法定の就業規則や労働条件通知書などの作成を怠っていれば、そもそも懲戒解雇ができないことになります。

またその懲戒が、労働者の行為の性質や態様その他の事情から、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められることも必要です。〔労働契約法第15条〕

さらに、犯罪行為を行ったことの証拠も必要です。マスコミによって報道されても、犯罪の証拠があるとは限りませんから要注意です。

特に、本人が犯行を否認していて、本当に犯罪が行われたかどうかが明らかでない場合には、犯行があったことを前提として懲戒処分を行うことは危険です。

懲戒処分は、あくまでも確実な証拠から認定できる事実に基づいて行わなければなりません。

この他、犯罪が軽微なものであり、懲戒処分を行うにしても解雇は行き過ぎという場合もあります。

そして、勤務時間外の犯罪行為であれば、私生活上の行為を理由として懲戒処分を行うことになりますから、懲戒処分が正当化されるのは、会社の名誉や信用などの社会的評価を大きく侵害するような場合に限定されます。

 

<会社によっても違う>

懲戒解雇の有効性について裁判では、会社の事業の種類、態様、規模、経済界に占める地位、経営方針、対象社員の会社での地位や職種など、あらゆる事情から総合的に判断して、犯罪行為による会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価できるかどうかという観点から判断されています。

 本当に懲戒解雇にしても大丈夫なのか、懲戒解雇にできない場合にはどうするのか、退職金の支給はしなくても大丈夫なのか、後任はどうするのか、社内への説明はどうするのかなど、検討すべきことは多岐にわたります。

会社としての対応を検討する場合には、一刻も早く、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/18|1,300文字

 

パワハラ加害者の処分https://youtu.be/CHoRL8XmcXA

 

<パワハラ教育の充実>

パワハラ防止のための社員教育が、中小企業でも進んできています。

そうした中で、昔のことについて「あの行為はパワハラだったのでは?」という疑問も出るようになってきています。

昔のパワハラ行為を、懲戒処分の対象とすることはできるのでしょうか。

 

<刑罰不遡及の原則>

今現在の就業規則に、問題とされるパワハラ行為について、具体的な懲戒規定があるとしても、昔の行為当時に規定が無かったならば、さかのぼって懲戒規定が適用されることはありません。

これは、刑罰不遡及の原則によるものです。〔日本国憲法第39条〕

 

<時効の問題>

労働基準法や民法は、賃金・退職金などの請求権について、消滅時効期間を定めています。

しかし、懲戒処分は請求権ではないので、消滅時効の適用はありません。

また刑事訴訟法には、犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると公訴が提起できなくなるという、公訴時効についての規定があります。

しかし、これは国家が刑罰を科す場合の規定ですから、民間企業の懲戒処分には適用されません。

今でも、遅刻すると罰金3,000円などブラックな話も聞かれますが、民間企業が従業員に罰金を科すということなど、あってはならないことです。

結局、懲戒処分に時効期間の規定は無いのです。

 

<民法の基本原則>

時効が無いのだから、どんなに昔のことでも懲戒処分の対象となりうるというのでは、安心して勤務できません。

労働契約も契約の一種ですから、民法の信義誠実の原則や権利濫用の禁止があてはまります。

「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」〔民法第1条第2項〕

「権利の濫用は、これを許さない」〔民法第1条第3項〕

ということで、あまりにも昔のことを持ち出して懲戒処分を行うのは、不誠実で懲戒権の濫用となり無効であるというのが結論となります。

 

<裁判では>

最高裁の裁判では、7年前の暴行を理由に懲戒解雇処分を行ったのは、懲戒権の濫用であり無効であるという判決があります。

1審では解雇無効、2審では解雇有効、そして最高裁で解雇無効という判断でした。

最高裁は、会社が警察の判断を待っていて懲戒処分のタイミングを見失ったという主張を退け、会社には懲戒処分を行うチャンスがあったのに怠っていたと判断したのです。

また、そこまでひどい暴行ではなく、解雇は行き過ぎだとも言っています。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社に懲戒規定を置く目的として、次のようなものが挙げられます。

・懲戒対象の社員に反省を求め、その将来の言動を是正する。

・懲戒が行われることで、他の社員は道義感が満たされ安心して働ける。

・懲戒対象となる行為が明確になり、社員全員が伸び伸びと行動できる。

・懲戒規定があることで、社員全員が不正行為を思いとどまる。

一般には、行為者を懲らしめる目的だけがクローズアップされがちですが、他の目的も重要です。

こうした目的からすると、タイムリーな懲戒処分が必要なわけですが、会社としては懲戒権の濫用を指摘されないよう、慎重に行う必要もあります。

懲戒処分を検討するのでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/12/11|863文字

 

<長期の音信不通と解雇>

長期間にわたって無断欠勤が続いた場合には、普通解雇の理由になることが多いですし、ほとんどの就業規則で懲戒解雇の対象にしていることでしょう。

しかし、使用者による解雇の意思表示は、解雇の通知が対象者に到達しないと効力が発生しません。〔民法第97条第1項〕

その社員が自宅にいて、ただ単に出社しない状態であれば、社員の自宅に解雇の通知が届くことによって、解雇の意思表示が到達したことになります。

しかし、本人が不在で家族も居場所を知らないような場合には、自宅に解雇通知を届けても効力が発生しません。

ましてや、その社員がいつの間にか転居していたような場合には、解雇の通知の届け先すらわからないことがあります。

こうした場合には、解雇の通知ができずに、解雇できないことになってしまいます。

 

<メールによる解雇通知>

電子メールでの解雇通知は、本人からの返信が無ければ、通知を読める状態にあったとは言い難いので、やはり解雇の意思表示が到達したとはいえないでしょう。

もし、解雇を了解する内容の返信があれば、解雇の意思表示が到達したことになります。

しかし、この場合には、そもそも音信不通という判断が間違っていて、解雇権の濫用になってしまい、解雇が無効になる可能性が高まってしまいます。〔労働契約法第16条〕

 

<公示による解雇通知>

全く連絡の取れない社員に対して、解雇の通知をするには、簡易裁判所で公示による意思表示を行うこともできます。〔民法第98条〕

これによって、解雇の意思表示が行方不明の社員に到達したものとみなされ、解雇を有効とすることができるのです。

 

<就業規則の備え>

無断欠勤と音信不通が一定の期間続いた場合には、就労の意思が無いものとして、自然退職にするという規定を置いておくことをお勧めします。

多くの場合には、この規定により自然退職扱いにすれば問題が解決します。

こうした規定は、必ずしも就業規則のひな形に入っているものではありません。

会社の実情に応じた適法な就業規則にするには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/29|1,053文字

 

<解雇の判断>

解雇には、懲戒解雇、普通解雇、整理解雇、諭旨解雇があります。

解雇とは、雇い主が労働契約の解除を行うことです。

これは、労働者の同意なく、雇い主から労働者への一方的な通告によって成立します。

解雇を通告しても、有効要件を満たさない不当解雇であれば、解雇は無効となり、労働契約がそのまま続くことになります。

その有効要件を端的に示しているのが次の条文です。

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

驚くほど抽象的な条文です。

具体的なことは、数多くの労働審判や裁判の例を確認して初めてわかることになります。

ですから、労働基準法だけでなく数多くの労働法の専門家でなければ、とても判断できるものではありません。

 

<懲戒解雇の場合>

懲戒解雇は、懲戒処分としての解雇ですから、懲戒処分の有効要件と解雇の有効要件との両方を満たしていなければ無効になります。

懲戒処分が無効になる場合を示しているのが次の条文です。

「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」〔労働契約法第15条〕

ここで、「使用者が労働者を懲戒することができる場合」というのは、労働者の行為が就業規則の懲戒規定に具体的に当てはまり、労働者の言い分を良く聞き、事実関係を客観的に明らかにするなどの適正な手順を踏んでいる場合をいいます。

こうした場合であって、行為と処分とのバランス、一事不再理、二重処罰の禁止、刑罰不遡及、手続保障、平等主義、不当な動機目的の不存在などの条件をクリアして初めて懲戒処分としての有効性が認められます。

 

<解雇通告の準備>

経営者や上司の目から見て、客観的に解雇は当然と思える場合であっても、安易に解雇を通告するのは避けるべきです。

なぜなら、本人が解雇されることに反論しない場合でも、親戚や友人に強く勧められて、法的手段に出ることがあるからです。

やはり、解雇する場合には、その正当性を裏付ける証拠をきちんとそろえ、そうした証拠をもって解雇するのだということを、対象者に説明したうえで解雇しないと危険なのです。

「解雇」「クビ」という言葉が頭をよぎったら、なるべく早く信頼できる社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/21|1,324文字

 

<退職してもらう方法の選択>

大きなミスが多く、一定の期間、適正な注意・指導・教育を行っても改善が見られない場合には、仕方なく会社を辞めてもらうことになります。

その方法としては、退職勧奨や普通解雇があります。

解雇が有効となる条件がそろっているような場合には、会社から対象者に十分な説明のうえ退職を勧め(退職勧奨)、本人がこれに応じて合意退職が成立することも多いでしょう。

しかし、解雇が有効となる条件が欠けている場合、能力不足などにより転職がむずかしい社員の場合、実力に比べて高額な給与が支給されているような場合には、なかなか本人が退職勧奨に応じないものです。

また、能力不足そのものを理由とする懲戒解雇はできませんので、「このままだと懲戒解雇になる」などの説明をして退職願・退職届を提出させた場合でも、錯誤〔民法第95条〕、強迫〔民法第96条〕による退職の意思表示の無効が主張され、取り消されてしまう可能性があります。

さらに、反省を示す意図で退職願が出されたのに対し、会社側がその意図を知りうるのに退職手続を進めたような場合には、心裡留保〔民法第93条〕により退職の意思表示が無効となる可能性もあります。

 

<普通解雇による退職>

結局、能力不足によるミスの連発が見られる場合には、普通解雇を検討することになります。

普通解雇のつもりで解雇を通告しても、法的な条件を満たしていなければ解雇権の濫用とされ無効となります。

これが不当解雇です。

不当解雇の場合には、解雇したつもりになっていても、それは無効だということです。

解雇が有効となるためには、次の条件を満たしている必要があります。

・就業規則に普通解雇の具体的な理由が示されていること

・就業規則の普通解雇の具体的な理由に当てはまる事実があること

・解雇権の濫用〔労働契約法第16条〕ではないこと

・解雇予告義務〔労働基準法第20条〕が果たされていること

・解雇が法律上の制限に違反していないこと

 

<証拠固め>

退職勧奨に応じた社員や、普通解雇をした社員から、合意退職や解雇の無効を主張されることがあります。

これに備えて会社は証拠を保管しておく必要があります。

ところが実際には、会社側に証拠が残っていないことが多く、退職者の主張を覆せないことによるトラブルが後を絶ちません。

会社が「十分に注意・指導・教育しても改善の見込みが無かった」という証拠を持っていなければ、真実はそうであったとしても、裁判官はその事実を認定できません。

注意・指導・教育の日時と内容、そしてその後の対象社員の変化などを、文書に残しておく必要があります。

会社経営者、上司、同僚、部下、取引先などは、基本的に会社の味方ですから、その証言は信頼に値する証拠になりません。

また、そもそも業務上のミスが多いので辞めてもらいたいわけですから、いつどのようなミスがあったのか、会社はどう対処したのかという基礎的な証拠も必要なわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

解雇権の濫用とされる基準は、労働契約法第16条を読んだだけでは具体的なことが分かりません。

具体的な事案に即した専門的な判断が要求されるのです。

社員に退職してもらうことを検討する場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

柳田 恵一

2020/11/16|743文字

 

<パートやアルバイトなどの定義>

正社員、パート、アルバイト、嘱託社員、契約社員などの言葉は、法律用語ではありません。

ですから、それぞれの企業で自由に定義を決めています。

そうした言葉をなんとなく使っているだけで、明確な定義を決めていない企業も数多くあります。

このように、パートなどが法律用語ではない以上、各企業が特定の従業員をどのような名称で区分しようとも、それを根拠に正社員と違った扱いを自由にできることにはならないのです。

 

<パートやアルバイトの解雇>

ところが、パートやアルバイトであれば、いつでも解雇できるものと誤解されていることがあります。

むしろ、契約期間の途中で解雇するのは、定年の他に期間を定められていない正社員よりもむずかしいのです。

客観的に「やむを得ない」理由が無ければ、契約期間中に解雇することはできません。〔労働契約法第17条第1項、民法第28条〕

「客観的に」ということは、経営者が「主観的に」判断してはならないことを意味します。

「やむを得ない」理由とは、期間を定めて雇用しているにもかかわらず、その約束を破って、期間満了前に雇用契約を終了しなければならないような特別重大な理由をいいます。

ですから、余程のことがない限り、契約期間の途中で解雇することはできません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

期間満了とともに解雇する場合にも、決して自由に行えるわけではありません。

解雇したつもりになっていても、不当解雇であれば解雇は無効なのです。

その人を採用するかどうかは、基本的に企業側の自由なのですが、採用したからには雇い続ける努力をしなさいというのが、労働法全体の趣旨となっています。

それでもなお、解雇を考えなければならないのなら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/12|1,576文字

 

<基本的な態度として>

パワハラを指摘されたなら、それはそれで十分反省すべきです。

しかし、解雇というのが行き過ぎた対応ではないかと疑うことも必要です。

パワハラを理由に解雇を宣告されても、それが法的に有効となるためには、厳格な要件を満たす必要があります。

会社に再考を促すべき場合もありますので、冷静に考えてみてください。

 

<懲戒の有効要件>

解雇までいかなくても、懲戒が有効とされるには、多くの条件を満たす必要があります。

条件を1つでも欠けば、無効を主張できるわけです。

法律上の制限としては、次の規定があります。

 

「使用者が労働者を懲戒できる場合に、その労働者の行為の性質、態様、その他の事情を踏まえて、客観的に合理的な理由を欠いているか、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効とする」〔労働契約法第15条〕

 

これは、数多くの裁判の積み重ねによって作られた「懲戒権濫用法理」という理論を条文にしたものです。

ですから「使用者が労働者を懲戒できる場合」、つまり就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒の具体的な取り決めがあって、その労働者の行為が明らかに懲戒対象となる場合であっても「懲戒権濫用法理」の有効要件を満たしていなければ、裁判ではその懲戒が無効とされます。

また、そもそも就業規則や労働条件通知書、雇用契約書などに懲戒の具体的な取り決めが無ければ、懲戒そのものができないことになります。

 

懲戒権の濫用ではないといえるためには、次の条件を満たす必要があります。

・労働者の行為と懲戒とのバランスが取れていること。

・パワハラの問題が起きてから懲戒の取り決めができたのではないこと。

・過去に懲戒を受けた行為を、再度懲戒の対象にしていないこと。

・その労働者に説明や弁解をするチャンスを与えていること。

・嫌がらせや退職に追い込むなど不当な動機目的がないこと。

・社内の過去の例と比べて、不当に重い処分ではないこと。

 

<懲戒規定の明確さ>

実際にパワハラとされた行為が、懲戒の対象であることが明確でなければ、従業員としては、何が処分の対象かわからないまま処分されてしまうことになります。

これは、やはり懲戒権の濫用となり、懲戒は無効となります。

同じパワハラでも、暴行、傷害、名誉毀損など、刑法上の罪に問われる行為であって、懲戒規定に「会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったときは懲戒解雇とする」という規定があれば、他の条件を満たす限り懲戒解雇も有効になります。

しかし、こうした規定が無かったり、パワハラとされた行為が刑罰法規に違反する行為ではないという場合には、パワハラの定義の明確性が問題となります。

 

<パワハラの定義>

パワハラの定義は、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)で明らかにされました。

大企業については、令和2(2020)年6月1日に施行されていますが、中小企業では令和4(2022)年4月1日施行予定となっています。

この法令の施行により、企業は「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者に周知し啓発を行うことが義務づけられています。

社内で何が禁止されているか分からないのに、「あれはパワハラだったから処分します」という不合理なことは、明らかな犯罪行為にあたるような場合を除き許されないのです。

ですから、パワハラを指摘され反省してみたものの、本当にパワハラと言えるのか良く分からないならば、社内でパワハラの定義が不明確である可能性が高いのです。

 

パワハラで解雇されそうな場合、自分の行為が本当にパワハラだったのか、パワハラと認識できる状態だったのか、パワハラだったとして解雇されるほどのことだったのか、あくまでも謙虚に冷静に再検討してみる必要があります。

 

解決社労士

2020/11/09|1,257文字

 

<普通解雇>

懲戒解雇は、就業規則や雇用契約書、労働条件通知書などに具体的な規定が無ければできません。

しかし普通解雇は、これらに規定が無い場合でも民法が適用されるので、一定の条件を満たせば可能です。

 

〔民法第627条第1項〕

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

 

〔民法第627条第2項〕赤文字は令和2年4月1日の改正で追加)

期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

通常、給与計算には締切日がありますので、給与支給が月1回であれば第2項の方が適用されます。

 

<解雇の意味>

雇い主から「これこれの条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

具体的には、雇用契約書、労働条件通知書などです。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により会社が必要な教育研修を行っても労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

労働者の労働契約違反があった場合でも、雇い主はある程度まで労働契約の維持に向けた努力を示さなければ、解雇権の濫用とされ、解雇を通告しても無効になってしまいます。

能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合でも、雇い主は業務に必要な指導教育を十分に行っていなければ解雇できません。

労働者が業務上必要な指示に従わない場合でも、労働者に指示内容の重要性を説明し、指示に従うよう指導したうえでないと解雇できません。

雇い主は、その労働者を雇わないという選択もできたわけです。

それでも雇ったからには、雇ったことに対する責任があるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。

整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。

解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけですから、具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/11/04|1,104文字(偶然の一致)

 

<解雇を希望する従業員>

従業員のほうから解雇を希望するというのは、それ自体が不自然な話です。

解雇という言葉の意味からして、会社から従業員に対して労働契約の解除を申し出るのが解雇ですから。

それでも、全く本人の自由な意思で退職を希望する場合や、会社から退職勧奨があった場合に、「解雇にしてください」という申し出は実際にあるのです。

本人の説明によると、失業手当(雇用保険の求職者給付の基本手当)をもらうのに有利だからと言うのです。

退職勧奨の場合には、すでに労働者に有利になっているので、解雇扱いでさらに有利になることは無いのですが、自己都合退職から解雇への理由変更なら有利になりますし、助成金を受給しないのなら会社に不利益なことはなさそうにも思えます。

しかし、絶対に応じてはいけません。

 

<見えなかった下心>

雇用保険の手続にあたっては、本当の退職理由を記入しなければ違法になります。

会社が退職理由を偽ること自体、コンプライアンスの点で問題があります。

しかし、こんな単純な話ではありません。

今や簡単には解雇が認められず、退職者からの不当解雇の主張が通ってしまうという現実があります。

ということは、本人が希望したにもかかわらず、後から会社に対して不当解雇の主張をして、多額の金銭を要求するというリスクがあるのです。

 

<退職者からの要求>

まず、平均賃金の30日分の解雇予告手当の請求があります。

つぎに、不当解雇であり解雇が無効であったことによる賃金支払の要求があります。

不当解雇というのは、会社が解雇を通告し、解雇したつもりになっていて、実は解雇が無効なわけですから、裁判などで争いが長引けば、その間の賃金支払義務は消えないということになります。

ついでに、未払残業代や慰謝料の請求まで加わることもあります。

 

<会社の対抗措置>

会社としては、解雇を撤回し「今まで通り勤務してください」と申し出るという作戦をとることも可能です。

もちろん、解雇扱いになっていた期間の賃金支払義務は消えません。

しかし、本当のところは本人が希望して退職しているわけですから、いまさら仕事に復帰する可能性は低いでしょう。

ただし、最初から弁護士と相談して行動していた場合や、労働組合に支援してもらっている場合には、仕事への復帰も想定されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

普通とは違った話が従業員から出てきたときに、経営者は自分の中の常識に従って判断しがちです。

そして、これが会社にとって大きな打撃となることもあります。

優れた経営者は、いつも自分の中の常識を疑っているものです。

少しでもおかしいと思ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/31|1,043文字

 

<一般的な規定>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」〔労働契約法第16条〕

解雇を通告し、解雇したつもりになっていても、それが不当解雇であって無効なら、従業員の立場は失われないということですから、働いていなくても賃金の支払が必要になるなど大変なことになります。

不当解雇というのは、解雇したつもりで、実は解雇できていない状態ですから危険です。

 

<個別的な規定>

解雇を制限する規定としては、次のようなものがあります。

・国籍、信条、社会的身分による差別的取扱の禁止〔労働基準法第3条〕

・公民権行使を理由とする解雇の禁止〔労働基準法第7条〕

・業務上の負傷・疾病の休業期間等、産前産後休業期間等の解雇制限〔労働基準法第19条〕

・性別を理由とする差別的取扱の禁止〔男女雇用機会均等法第6条第4号〕

・婚姻、妊娠、出産、産前産後休業を理由とする不利益取扱の禁止〔男女雇用機会均等法第9条〕

・育児休業、介護休業、子の看護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置の申出等を理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔育児介護休業法第10条、第16条、第16条の4、第16条の9、第18条の2、第20条の2、第23条の2〕

・短時間・有期雇用労働者が、事業主に対して、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由などについて、説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔パート・有期労働法第14条第3項〕

・都道府県労働局長に対し個別労働関係紛争解決の援助を求めたこと、あっせんを申請したことを理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔個別労働関係紛争解決促進法第4条第3項、第5条第2項〕

・法違反を監督官庁(労基署等)に申告したことを理由とする解雇その他の不利益取扱の禁止〔労働基準法第104条第2項、最低賃金法第34条第2項、労働安全衛生法第97条第2項、賃金確保法第14条第2項〕

・公益通報したことを理由とする解雇の無効〔公益通報者保護法第3条〕

・不当労働行為の禁止〔労働組合法第7条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「常識」に従った解雇は、法的には不当解雇であることが多いものです。

解雇を検討するなら、一度、信頼できる社労士にご相談ください。

何の落ち度もない従業員を退職に追い込むようなことはできませんが、納得して退職していただくためのお手伝いはさせていただきます。

 

解決社労士

2020/10/29|861文字

 

<解雇の意味>

雇い主から「これこれの条件でこの仕事をしてください」という提案があり、労働者がこれに合意すると労働契約が成立します。

労働契約は口頭でも成立します。

ただ労働基準法により、一定の重要な労働条件については、雇い主から労働者に対し、原則として書面による通知が必要となっています。

解雇は、雇い主がこの労働契約の解除を労働者に通告することです。

 

<普通解雇>

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

 

<解雇の制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

労働者の労働契約違反があった場合でも、雇い主はある程度まで労働契約の維持に向けた努力を示さなければ、解雇権の濫用とされ、解雇を通告しても無効になってしまいます。

能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合でも、雇い主は業務に必要な指導教育を十分に行っていなければ解雇できません。

労働者が業務上必要な指示に従わない場合でも、労働者に指示内容の重要性を説明し、指示に従うよう指導したうえでないと解雇できません。

雇い主は、その労働者を雇わないという選択もできたわけです。

それでも雇ったからには、雇ったことに対する責任があるということです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

広義の普通解雇には、労働者の労働契約違反を理由とする解雇の他に、整理解雇が含まれます。

整理解雇とは、雇い主側の経営上の理由による解雇をいいます。

解雇は、解雇権の濫用とされれば無効になるわけですから、具体的なケースで解雇の有効性に疑問がある場合には、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/25|778文字

 

<従業員から>

従業員からの申し出により労働問題とされやすいのは、パワハラ、セクハラ、労働条件の不利益変更です。

これらは、従業員からの申し出があったとき、経営者が判断に困り、適切な対応ができないでいるうちに、社内で解決しきれない労働問題に発展することがあります。

会社に落ち度が無いという自信があれば、所轄の労働基準監督署に確認して、従業員に説明すれば良いでしょう。

そうでなければ、何かアクションを起こす前に、なるべく早く信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

<訴訟や労働審判への発展>

退職者からの、残業代請求、不当解雇、退職に伴う請求がメインです。

どう考えても円満退職だった退職者の代理人弁護士から、内容証明郵便が届いてビックリというパターンです。

在職中は会社に遠慮して言えなかった不平不満が、退職後に爆発するのですから意外性があります。

退職者ご本人にその気が無くても、ご家族やお知り合いの中には労働法に詳しい方がいらっしゃいます。

そして、この方が労働者の権利を強く主張すると、退職者が同調して会社に請求することもあります。

 

<複合的な形になるもの>

退職者から未払残業代の請求がある場合、パワハラによる慰謝料請求が加わったりします。

セクハラの被害者が退職させられ、加害者が会社に残り、これを不満とした退職者からの慰謝料請求に、未払残業代の請求が加わったりします。

パワハラの加害者として退職させられた人から、不当解雇を主張され、賃金、賞与、慰謝料を請求されることもあります。

権利の侵害を感じた退職者が弁護士に依頼すると、弁護士は依頼人に事実を確認し、これを法的に構成し、できる請求をすべてすることになります。

依頼人と弁護士との契約は、委任契約ですから、医師が治療にベストを尽くすのと同じように、弁護士も依頼人の権利実現にベストを尽くすわけです。

 

解決社労士

2020/09/15|1,281文字

 

<会社の不安>

健康診断の結果、社員に癌が見つかった。

あるいは、社員から会社に申し出があったとします。

こんなとき勤務を続けさせていて、万一のことがあったら、会社は何らかの責任を負わされるリスクがあります。

しかし、安易に労働契約を解除すれば、不当解雇として責任を追及されるかもしれません。

会社としては、放置できない悩ましい問題です。

 

<健康診断で癌が見つかった場合>

会社は健康診断の結果で、異常の所見があると診断された労働者について、健康を保持するために必要な措置について、医師などの意見を聴かなければなりません。〔労働安全衛生法第66条の4〕

そして意見を聴いた結果、必要があると認めるときは、その労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設・設備の設置・整備、その他の適切な措置を講じなければなりません。〔労働安全衛生法第66条の5〕

これは、健康診断で異常が見つかった場合の規定ですが、労働者に健康不良がある場合に会社がとるべき対応として参考になる内容です。

 

<具体的な対応方法>

まず、健康状態について事実を確認するため、経営者や人事部門の担当者が対象者と面談します。

このとき、健康診断の結果などを持参してもらうのが一般的ですが、健康診断の項目に無い病状であれば、これに代わる資料が必要です。

つぎに、ご本人の了解を得たうえで、医師などに相談します。

相談結果については、ご本人にも伝えます。

もちろん、会社の担当者とご本人とで、医師の意見を聴きに行くのも良いでしょう。

そして、会社としての対応策を検討し、その案をご本人に伝え、具体的な対応策を決めるようにします。

ここまでの流れの中で、ご本人から退職の意向が示されることも多いでしょう。

会社から退職勧奨となるような働きかけが無ければ、ご本人の自由な意思による退職の申し出ですから、労働契約は労働者からの解除となります。

 

<会社の責任>

癌にかかったからと言って、労働契約解除通知など出したら不当解雇になります。

ご本人にも生活がありますし、治療費を負担するためにも働き続けたいのです。

癌といえば、かつては、入院治療が当然の時代もありました。

しかし、今や医学の発達によって、通院治療が主流となっています。

つまり、通院の日には休んだり早退したりが必要になっても、普段の日は通常通り勤務できるということです。

ですから、ご本人と今後の勤務について良く話し合うことが大切です。

勤務の継続に無理が感じられるようでしたら、医師などと相談のうえ、再度、ご本人と話し合うことになります。

これと併行して、労働安全衛生法などの規定を参考に、会社として取るべき措置を実施することも大切です。

ここまでやって初めて、会社は責任を果たしたことになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

健康保険により、長期休業した場合の賃金の補償や、医療費が高額になった場合の補助もあります。

具体的な事例に即して、何をどうすれば良いのか、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/02|854文字

 

<法律による制約>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とされています。〔労働契約法第16条〕

この条文を適用しても解雇が無効とされないケースは、かなり限られています。

つまり、簡単には解雇できないことになっています。

入社して間もなくの解雇は、「採用取消」などと呼ばれますが、実態は解雇ですから、解雇としての法的規制を受けます。

 

<詐欺のようなケース>

採用選考の段階で、労働者から会社に対して「業務に支障の出る病気は無い」「病気治療のための通院でしばしば欠勤するようなことは無い」と申し出ていたにもかかわらず、入社後の雇い入れ時健康診断で「要治療」の結果が出てしまい、仕事にも支障が出るし、通院のため毎週1回午後3時までに早退しなければならないことが発覚し、本人がこれを知っていて嘘をついていたというケースなら、解雇(採用取消)も正当なものと認められやすいでしょう。

もっとも、証拠を残しておくことを忘れていなければですが。

 

<業務の転換すらできないケース>

雇い入れ時健康診断であれ、定期健康診断であれ、その結果がかなり悪くて今の業務を続けさせることが困難であれば、会社は職務の転換をしてあげなければなりません。

しかし小規模な会社であれば、転換させようにも、適当な仕事が見つからないかもしれません。

会社は、新たに仕事を作るような義務までは負っていません。

このようなケースであれば、解雇も正当なものとして有効となることが多いでしょう。

ただし、会社に休職の制度があるのなら、それも検討したいところです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

ただ単に健診結果が悪いだけで解雇を通告しても、不当解雇となり解雇は無効です。

具体的なケースで会社がどうすべきか、失敗しないためには、信頼できる社労士にご相談ください。

すでに、解雇があって不当解雇が疑われるケースでは、社労士の中でも、特定社労士の業務となりますので、特定社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/07/18|792文字

 

<やる気そのものは見えない>

いかにも「やる気」が無さそうな社員は、他の社員に悪影響を及ぼします。

しかし、「やる気」というのは、心の中のことですから目に見えません。

それでも、「やる気」のないことが客観的に外部に現れていれば、それを理由とする解雇も可能です。

 

<法的規制>

「退職に関する事項」は、就業規則の絶対的必要記載事項です。

就業規則に必ず規定しなければなりません。〔労働基準法第89条第3号〕

ですから、就業規則に定めていない理由での解雇はできません。

しかし、就業規則に定めれば、どんな理由でも解雇できるというわけではありません。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とするとされています。〔労働契約法第16条〕

 

<具体的な規定例>

具体的な就業規則の規定例としては、次のようになります。

「労働者が次のいずれかに該当するときは解雇することがある。

1.勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。

2.勤務成績または業務能率が著しく不良で向上の見込みがなく、他の職務にも転換できないなど就業に適さないとき」

1.は「やる気」の無さが、遅刻、早退、欠勤などに形となって現れた場合、

2.は「やる気」の無さが、仕事の成果に形となって現れた場合の規定です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働法の改正が重ねられ、労働判例が集積されるにつれ、「不当解雇」のハードルが低くなっています。

つまり、「常識的に考えて解雇は当然」と思われる場合でも、法的には「不当解雇」であると判断されるケースが大半になっています。

解雇を検討する場合には、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

いや、それ以前に、そんな人物を採用してしまうのはおかしいのですから、採用についてのご相談をしていただきたいです。

 

解決社労士

2020/06/23|850文字

 

<確実に違法解雇と呼べるもの>

労働基準法により違法とされ、罰則が規定されている解雇には次のものがあります。〔労働基準法第119条第1号〕

・業務災害を理由とする休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・産前産後休業期間中と業務復帰後30日間の解雇〔労働基準法第19条〕

・法定の解雇予告や解雇予告手当が無い解雇〔労働基準法第20条〕

これらの場合には、国家により使用者に刑罰が科されるという規定です。

この刑罰とは別に、労働者から使用者に対して、不法行為を理由とする損害賠償の請求がありえます。〔民法第709条〕

前者が刑事的な側面の話で、後者が民事的な側面の話です。

 

<不当解雇は違法でもあるが効力が無い>

一方で、不当解雇というのは、使用者が労働者を解雇したつもりになっていて、それが不当であるために無効とされる場合をいいます。

労働契約法に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定されているのが不当解雇です。

罰則はありません。〔労働契約法第16条〕

解雇が有効になるのは、解雇を通告された本人が客観的に合理的な理由があると納得できる場合であって、しかも、世間一般の人々が「やむを得ない」と納得できる事情がある場合に限られるのです。

たとえば、毎日普通に勤務していた男性社員が、社長の好きなアイドルの歌を嫌いだと言ったがために、30日分の解雇予告手当を渡されると同時に解雇を通告された場合、罰則の適用はありませんが、不当解雇になります。

つまり、解雇予告手当を支払ったとしても、解雇が無効になるわけです。

こうした場合、使用者が罰せられることはないのですが、解雇が無効なのに退職扱いされた労働者は、使用者に対して慰謝料を含め損害の賠償を請求できます。

 

<解決社労士の視点から>

適法で有効な解雇は条件が厳しいものです。

無効とされない解雇を考える経営者も、不当解雇されたと感じる労働者も、ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

2020/06/22|1,075文字

 

<整理解雇>

整理解雇とは、会社の事業継続が困難な場合に、人員整理のため会社側の都合により労働契約を解除することです。

法律上は普通解雇の一種ですが、労働慣例により他の普通解雇と区別するため整理解雇という用語が使われています。

 

<法律上の解雇制限>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

しかし、これでは内容が抽象的すぎて、具体的な場合にその解雇が有効なのか無効なのか判断に困ります。

 

<コロナショックによる収益悪化の特性>

新型コロナウイルスの感染者が出た店舗など、営業が制限された場合には、使用者が労働者の労務の提供を受けることができません。

しかし、多くの場合には、都道府県の要請を受けて営業を自粛した結果、収益の悪化が生じています。

現実の問題としては、休業せざるを得ない状況であったにも拘らず、法的には、使用者の判断で営業を自粛したのだから、必ずしも労務の提供を受けることが不可能であったとはいえなかったと評価されます。

この場合、整理解雇や雇い止めについては、多くの裁判を通じて確立された「整理解雇制限法理」が適用されます。

 

<整理解雇制限法理>

整理解雇制限法理というのは、次の4つの要素から、解雇の有効性を制限的に判断する考え方です。

4つのうち1つでも要件を欠いていたら、解雇が無効になるということではなく、総合的に判断されます。

1.経営上の人員削減の必要性

会社の財政状況に問題を抱え、新規採用などできない状態となったことです。

2.解雇回避努力の履行

配置転換や希望退職者の募集などを実施したことです。

3.解雇対象者の人選の合理性

差別的な人選は許されず、客観的な基準によらなければなりません。

4.手続の相当性

事前の説明や労働者側との協議など、誠実に行うことが求められます。

 

<コロナショックの特殊性>

コロナショックの特殊性を理由に、整理解雇制限法理が特例的に緩和されるということはありません。

ただ、各要素について、整理解雇が有効と判断されやすい事情はありえます。

あらゆる助成や支援を受けても、なお財政状況に問題が残り、経営上の人員削減の必要性が高いと判断されるような場合や、配置転換しようがない場合が想定されます。

また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、ほぼ公知の事実となっていますので、この点について、詳細な説明は不要です。

ただ、会社の事業にどのような影響を与えたのか、具体的な内容の説明は必要になってくるでしょう。

 

解決社労士

2020/06/17|1,122文字

 

<退職金の性質>

労働基準法などに、退職金の支払義務が規定されているわけではありません。

しかし、就業規則や労働条件通知書などに、計算方法、支払方法などの規定があれば、労働契約の内容となって会社に支払義務が生じます。

 

<退職金の減額・不支給が許されない場合>

懲戒解雇の場合に、退職金が減額されあるいは支給されない旨の規定が、就業規則や退職金規程の中に無ければ会社に全額支払の義務があります。

なぜなら、退職金を全額支払うことが、労働契約の内容となっているからです。

ちなみに、中退共(中小企業退職金共済)や建退共(建設業退職金共済)の退職金についても、懲戒解雇による退職金の減額などの規定はありませんので、全額支給されることになります。

 

<退職金の減額・不支給を規定する意味>

退職にあたって、退職者が会社に大きな損害を与えていることが発覚し、その穴埋めのために退職金の減額・不支給という手段を用いるということも考えられます。

しかし、むしろ退職金を減額されたり支給されなかったりということがないように、従業員に真面目で誠実な勤務を心がけてもらうための警告として規定していることが多いのです。

 

<退職金の減額が許される場合>

懲戒解雇の場合に、就業規則などに退職金が減額される旨の規定があり周知されていて、従業員のそれまでの長年の勤務による功労を大きく減殺するほどの信義に反する行為があった場合には、ある程度の減額が許されます。

信義に反する行為というのは、正義に反し信頼関係を破壊する行為のことです。

功労をどの程度減殺するかによって、減額が許される限度も変わってきます。

裁判になれば、会社が思い切った減額をした場合、裁判所は退職者の功労や過去の勤務態度を踏まえ、減額し過ぎを指摘し不足分を追加で支払うように命ずることがあります。

 

<退職金の不支給が許される場合>

就業規則などに、懲戒解雇の場合には退職金が不支給となる旨の規定があり周知されていて、従業員のそれまでの長年の勤務による功労がすべて抹消されるような信義に反する行為があった場合には許されます。

裁判になれば、会社に対する劣悪な裏切り(功労を全く失わせる程度の著しい背信的行為)があった場合にのみ、退職金の不支給が許されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

万一の場合に、退職金の減額や不支給が可能となる就業規則を整えるのも社労士の仕事です。

また、実際に懲戒解雇を検討する場合、それが不当解雇とならないか、どの程度まで退職金を減額できるか意見を述べるのも社労士の仕事です。

しかし、懲戒解雇を出さないように職場環境を整えることこそ、社労士の大事な仕事です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/06/07|1,153文字

 

<解雇の有効性についての判断基準>

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16 条〕

この規定は、裁判所が判断を下すのに使った理論が条文となったものですから、その趣旨は様々な形で解雇の有効性の判断基準にあらわれます。

しかも、「こうすれば大丈夫」という絶対的な基準ではありません。

 

<就業規則に解雇の理由が無ければ>

まず、解雇の理由(事由)は、就業規則に必ず記載する事項とされています。〔労働基準法第89条第3号〕

つまり、就業規則に規定の無い理由で解雇することはできません。

また労働者が、解雇の予告をされた日から退職する日までの間に、解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。〔労働基準法第22 条第2 項〕

ですから、使用者が就業規則に規定の無い理由で労働者を解雇した場合には、労働者に有利な証拠書類を交付することになってしまいます。

 

<就業規則に解雇の理由があっても>

つぎに、裁判所はあいまいさの残る規定について、使用者に対して厳密な立証を求めます。

たとえば、営業成績が「著しく不良」という規定であれば、使用者はその程度が客観的かつ具体的に重大であることを証明しなければなりません。

また、将来の改善・回復の見込みが無いなどの「将来の予測」については、客観的な立証が必要とされます。

今日の判例は、使用者に困難な立証を求めることによって、「解雇は最後の手段であるべき」との態度を示しているのです。

 

<能力不足を理由とする解雇>

そして裁判では、労働者の能力が職場全体の中で相対的に低いというだけでは、能力不足による解雇が認められていません。

使用者は、解雇を検討する前に、配置転換や再教育による能力向上、あるいは降格処分など、解雇を回避するための措置を求められます。

 

<目標未達成を理由とする解雇>

結局、市場動向の変化や会社の業績に左右されない、客観的で合理的な目標が就業規則に規定されていて、その目標を達成できないことを理由に解雇する場合であって、教育研修を十分に行い、配置転換や降格処分も行ったのになお効果が無く、やむを得ず解雇を通告するのでなければ、その有効性は疑わしいということになってしまいます。

そもそも、条件付きの解雇通告というのは、それだけで労働者の立場を不安定にしますから、どんなに工夫を重ねても、有効性に疑いが残るものなのです。

こんなむずかしいことにチャレンジするよりは、信頼できる社労士(社会保険労務士)と相談して、充実した教育研修システムや、納得のいく人事考課制度を構築したほうが、会社も社員も成長するのではないでしょうか。

 

解決社労士

 

2020/05/18|1,433文字

 

<中途採用者を短期間で解雇したい場合>

同業他社で、長年の実務経験を積み、即戦力となることを期待した中途採用者が、全くの期待外れで解雇を検討したいということがあります。

この場合に、解雇が無効とならず、不当解雇とならない基準が曖昧なため、判断を先送りしていると、ますます解雇しづらくなってしまいます。

 

<解雇に関する法の規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用について、特別な規定が置かれているわけではなく、すべての採用に共通の規定があるだけです。

解雇権の濫用とはならず、解雇が有効になるためには、客観的に合理的な理由を備えていることと、社会通念上相当であることの2つが必要です。

この判断基準の具体的な中身が、新卒採用と中途採用とでは異なってきます。

10年の実務経験を積んで転職してきた人であれば、10年以上にわたって社会人としての経験を積んでいるわけですから、挨拶などのマナー、基本的な報連相、服務規律、社内ルールの遵守などは、常識として身につけていることが期待されます。

これらのことが全く身に付いていないのであれば、組織の一員として活躍できませんから、解雇するについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえるでしょう。

ただし、解雇を通告するには、基本的な常識不足を客観的に示す事実を、一覧表の形でまとめておいて提示するのが得策です。

これは、将来想定される訴訟の準備のためにも有効です。

 

<解雇に関する就業規則の規定>

また、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

会社の就業規則でも、普通解雇について、中途採用だけ特別な規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

しかし、判断基準の具体的な中身が、新卒採用と中途採用とでは異なってきます。

中途採用の場合、通常は職務と役割を特定して採用しますから、「業務能率」は経験者としての基準で評価することになりますし、「向上の見込み」「他の職務への転換」は配慮する余地が限られています。

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことは無く、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<実務上の配慮>

中途採用では、可能な限り、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を文書化し明示して、本人の理解を得ておくことが必要でしょう。

試用期間を設けるのであれば、本採用する/しないの具体的な基準を明示します。

試用期間を設けない場合でも、労働条件通知書に解雇の理由を可能な限り具体的に明示しておくことで、トラブルを未然に防止したいものです。

 

解決社労士

2020/04/04|1,244文字

 

<労働契約の重要性>

職位・職種を定めて採用した年俸制社員が、期待しただけの働きをしないときは、解雇を検討する場合もあります。

ここでの解雇は、懲戒解雇ではなく普通解雇です。

普通解雇は、労働者の契約違反に対して、使用者が債務不履行を理由に労働契約を解除するものです。

ですから、どのような場合に解雇できるかは、原則として、労働契約の内容によるということになります。

労働契約は口頭でも成立しますが、基本的な労働条件については会社から労働者に書面を交付して確認することが法定されています。

ところが書面が作成されていなかったり、そもそも基本的なことを決めていなかったりすれば、トラブルが発生するのは当たり前です。

 

<年俸制の考え方>

厚生労働省のモデル就業規則に年俸制の規定が無いことからも明らかですが、プロ野球の制度を真似してサラリーマンに年俸制を当てはめるのは無理があります。

取締役であれば委任契約ですから、年俸制がしっくりきます。

実際にサラリーマンに年俸制を適用する場合、今後の活躍ぶりを期待してあらかじめ年俸を決める場合と、過去の実績から年俸を決める場合があります。

過去の実績から決める場合は良いのですが、これからの活躍を期待して年俸を決めたのに、期待を裏切ったら減俸できるのか、さらには普通解雇できるのかという問題になります。

こうしたことは、労働契約の内容が不合理でなければ、労働契約の内容に従うということです。

ところが口頭でも決めていなければ、解決の手掛かりがありません。

結局、会社と年俸制社員の話し合いで決めるしかありません。

 

<あらかじめ職位・職種を定めた社員の解雇>

年俸制ではない場合でも、あらかじめ経理部長、店長など職位や職種を定めて中途採用することがあります。

労働契約で「何をどのレベルで」ということが明確になっていれば、普通解雇も困難ではないでしょう。

しかし、「当社の経理部長にふさわしい働きぶり」とか、「当社の店長として標準的な業務」では、裁判などで客観的に認定できないですから、紛争になるのは目に見えてます。

ところが口頭でも決めていなければ、解決の手掛かりがありません。

結局、会社とその社員の話し合いで決めるしかありません。

 

<社労士(社会保険労務士)の役割>

社労士は手続を代行するだけではありません。

労働と社会保険に関する法律と人事・労務管理の専門家として、企業経営の3要素(ヒト・モノ・カネ)のうち、採用から退職までのヒトに関するエキスパートです。

顧問先の企業でトラブルが発生しないように予防策を講じることで、経費、労力、時間、精神力の負担を軽減します。

万一トラブルが発生した場合には、両当事者の主張内容を法的観点から整理し、その正当性、反論可能性を明らかにしたうえで、実体と証明の両面からのご対応をご提案いたします。

人の感情に配慮して、お互いに怨みを残さない解決を目指します。

これは、顧問先でなくてもスポットでも対応いたします。

是非、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/03/12|1,128文字

 

<解雇の有効性についての判断基準>

解雇の有効性の判断基準について、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16 条〕

この規定は、裁判所が判断を下すのに使った理論が条文となったものですから、その趣旨は様々な形で解雇の有効性の判断基準にあらわれます。

 

<解雇の理由が無ければ>

まず、解雇の理由(事由)は、就業規則に必ず記載する事項とされています。〔労働基準法第89条第3号〕

つまり、就業規則に規定の無い理由で解雇することはできません。

また労働者が、解雇の予告をされた日から退職する日までの間に、解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。〔労働基準法第22条第2項〕

ですから、使用者が就業規則に規定の無い理由で労働者を解雇した場合には、労働者に有利な証拠書類を交付することになってしまいます。

 

<解雇の理由があっても>

裁判所は、使用者側が解雇の理由として、就業規則の規定を主張したとしても、その規定にあいまいさが残っていれば、使用者に対して厳密な立証を求めます。

たとえば、営業成績が「著しく不良」という規定であれば、使用者はその程度が客観的かつ具体的に重大であることを証明しなければなりません。

また、将来の改善・回復の見込みが無いなどの「将来の予測」については、客観的な立証が必要とされます。

裁判所は、使用者に困難な立証を求めることによって、「解雇は最後の手段であるべき」との態度を示しているのです。

 

<能力不足を理由とする解雇>

裁判では、労働者の能力が職場全体の中で相対的に低いというだけでは、能力不足による解雇が認められていません。

使用者は、解雇を検討する前に、配置転換や再教育による能力向上、あるいは降格処分など、解雇を回避するための措置を求められます。

 

<目標不達成を理由とする解雇>

市場動向の変化や会社の業績に左右されない、客観的で合理的な目標が就業規則に規定されていて、その目標を達成できないことを理由に解雇する場合であって、教育研修を十分に行い、配置転換や降格処分も行ったのになお効果が無く、やむを得ず解雇を通告するのでなければ、その有効性は疑わしいということになってしまいます。

そもそも、条件付きの解雇通告というのは、それだけで労働者の立場を不安定にしますから、どんなに工夫を重ねても、有効性が確実にはならないものなのです。

こうした困難なことにチャレンジするよりは、充実した教育研修システムや、納得のいく人事考課制度を構築したほうが、会社も社員も成長するのではないでしょうか。

 

解決社労士

2020/02/20|1,175文字

 

<解雇の法的性質>

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生じます。〔民法第623条〕

そして解雇は、使用者の労働者に対する雇用契約の解除です。

ただし、使用者による解雇が、解雇権の濫用にあたる場合には無効となります。〔労働契約法第16条〕

たとえ使用者が、労働者に解雇を通告して解雇したつもりになっていたとしても、その解雇が客観的に合理的な理由を欠き、または、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効であって、労働者は使用者に対する権利を失わないことになります。

この場合、解雇を通告された労働者は、給与や賞与を受けるなど労働者の権利を主張できるわけです。

実際に労働者が働いていないとしても、それは解雇を通告した側の落ち度によるものとされ、労働者は働かずして給与を受け取れることになります。

このように、解雇というのは、雇用契約の解除という民事的効果をもたらすものですから、トラブルになれば、金銭による解決が図られることになります。

 

<犯罪と刑罰>

犯罪とは、法によって禁じられ刑罰が科される事実・行為をいいます。

刑法には、不当解雇罪のような規定がありません。

ですから、不当解雇だからといって、必ずしも刑罰が科されるわけではありません。

しかし、労働基準法などには、一定の解雇を禁止する規定があり、これに対応する罰則も規定されています。

 

【解雇制限:労働基準法第19条第1項】

使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。

 

つまり、業務災害により休業する労働者がいる場合、あるいは、産前産後休業をする労働者がいる場合には、原則として休業終了後30日以内に解雇することができません。

この禁止に違反した場合、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則もあります。〔労働基準法第119条第1号〕

 

【解雇の予告:労働基準法第20条第1項本文】

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

 

つまり、解雇予告の期間を置かず、解雇予告手当の支払もなしに解雇することは、原則として違法な解雇となり、この規定に違反した場合、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則もあります。〔労働基準法第119条第1号〕

 

<結論として>

不当解雇のすべてが犯罪となるわけではありません。

しかし、労働基準法などに触れると罰則が適用される解雇もあり、こうした解雇は一種の犯罪になりうるわけです。

 

解決社労士

2020/01/25|1,393文字

 

<営業ノルマの意味>

営業ノルマは、企業が部門ごと、あるいは個人ごとに設定する、売上や成約件数などの目標です。

目標を設定することで、モチベーションを維持することができ、管理もしやすくなります。

営業ノルマが、単なる目標値として掲げられているだけであれば、基本的には法的な問題を生じません。

しかし、企業が営業ノルマ達成に熱心なあまり、違法行為が発生してしまうことがあります。

 

<営業ノルマとパワハラ>

経営者や部門長から、各社員に向けて過剰な叱咤激励が行われ、個人の人格権が侵害されれば、パワハラとなってしまいます。

ましてや、ノルマを達成できない社員を叱りつけることは、行き過ぎた態様で行われやすく、パワハラとなる危険性が高まります。

民事上の不法行為に止まらず、犯罪が成立することもありますから、十分に注意が必要です。

 

<営業ノルマとサービス残業>

ノルマを達成したいがために、長時間労働に走る社員も出てきます。

営業部門では、残業手当に代えて、定額の営業手当が支給されていることもあります。

しかし、この場合でも、原則的な計算方法で算出した残業手当の金額が、営業手当を上回った場合には、毎月その過剰分を支給しなければ労働基準法違反となってしまいます。

ノルマ達成に向け、労働時間の延長ではなく、効率アップを図るように指導することが必要です。

 

<自爆営業>

社員に対し、ノルマ未達成部分の自腹購入をさせることは、そもそも労働契約の内容にはなりえませんので、一種の押し売りであり、労働基準法第16条の禁止する賠償予定の実行でもあって、違法行為であると解されます。

これはまた、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)にも違反し、懲戒権の濫用(労働契約法第15条)にもなってしまいます。

 

<未達成を理由とする解雇>

たとえば「ノルマ未達成が3か月続いたら解雇」などの基準を設定し運用することは、解雇権の濫用(労働契約法第16条)になりますから無効です。

社員教育を十分に行い、無理のないノルマが設定されている中で、特定の社員だけが明らかな努力不足で達成できないような、特殊なケースでのみ、解雇が有効となりうるのです。

 

<未達成を理由とする懲戒処分>

仕事をさぼって、故意にノルマを達成しないような、本人の責任が重い特殊な場合には、懲戒処分が有効とされることもあるでしょう。

しかし一般には、懲戒権の濫用となり懲戒処分は無効とされます。

そもそも懲戒処分は、本人に反省を求め、態度を改めさせることに意義があります。

ノルマ未達成に対して懲戒処分を行ったからといって、ノルマを達成できるようになることが期待できない以上、懲戒処分の対象とすべきではないのです。

 

<未達成を理由とする給与減額>

ノルマを達成できない場合に、給与を減額するというのも、自爆営業と同様に、労働基準法違反や労働契約法違反になってしまいます。

しかし欠勤した場合に、欠勤控除を超えて給与を減額することが懲戒処分にあたる一方で、

皆勤した場合に皆勤手当が支給されるのは違法ではありません。

これと同様に、ノルマを達成した場合には報奨金が支払われ、未達成の場合には支払われないというのは必ずしも違法ではありません。

報奨金の金額が、基本的な賃金との比較で適正であり、報奨金が支払われない場合でも最低賃金法違反とならないのであれば、上手に運用することを考えたいものです。

 

解決社労士

2019/12/18|1,374文字

 

<就業規則違反>

厚生労働省が公表するモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。

※分量が多いので一部の抜粋です。

 

【解雇】

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

 

⑥第66条第2項に定める懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき。

 

【懲戒の事由】

第66条  2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

 

②正当な理由なく無断欠勤が  日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。

③正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

⑦素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき。

⑧数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき。

⑭その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

 

このように、就業規則違反の程度が重ければ、懲戒解雇もありうることが規定されています。

 

<懲戒処分の制限>

ただし、懲戒処分は次の制限を受けます。

 

労働契約法第15条【懲戒】

使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

就業規則の懲戒規定には、明示されていないことも多いのですが、故意や重大な過失の存在が前提となっています。

故意や重大な過失が無い場合には、その行為を懲戒処分とすることについての「客観的に合理的な理由」は認めがたいですし、「社会通念上相当」であるともいえません。

病気によって、就業規則に定められたルールを守れない場合、一般には故意も過失も認められないでしょう。

懲戒解雇の対象とすることには無理があると考えられます。

 

<普通解雇>

このように、懲戒解雇とすることが認められないとしても、普通解雇を検討する余地があります。

狭義の普通解雇は、労働者の労働契約違反を理由とする労働契約の解除です。

労働契約違反としては、能力の不足により労働者が労働契約で予定した業務をこなせない場合、労働者が労働契約で約束した日時に勤務しない場合、労働者が業務上必要な指示に従わない場合、会社側に責任の無い理由で労働者が勤務できない場合などがあります。

「病気で就業規則を守れない」というのは、多くの場合「労働契約を守れない」ということになり、労働契約違反となりますから、普通解雇の対象にはなりえます。

 

<解雇の制限>

そして、解雇もまた次の制限を受けます。

 

労働契約法第16条【解雇】

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

すべての解雇は、この制限を受けることになります。

「病気で就業規則を守れない」という場合には、「病気が治れば守れるようになる」可能性が含まれています。

就業規則に休職の規定を置いている会社であれば、その規定に従い一定の期間、回復を待つことになります。

また、就業規則に休職の規定を持たない会社であっても、一定の期間、回復を待たずに解雇するのは、解雇権の濫用として無効となる可能性が高いといえるでしょう。

 

解決社労士

2019/10/21|1,399文字

 

<反社会的勢力との関わり>

平成19(2007)年6月19日、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団資金源等総合対策ワーキングチームでの検討を経て、企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」が取りまとめられました。

この指針にも支えられて、反社会的勢力の活動は下火となりつつあります。

また、お笑い芸人の反社会的勢力との関わりが発覚した事件を見ても、企業の所属メンバーが反社会的勢力と関わることによって、企業の信用低下を招くのは明らかです。

こうしたことから、各企業は、従業員が反社会的勢力との関わりを持たないよう予防策を講じる必要があります。

 

<就業規則の規定>

就業規則には、反社会的勢力との関わりを禁止する規定と、この禁止に違反した場合の懲戒規定をセットで置く必要があります。

 

禁止規定は、次の例のようになります。

 

【遵守事項】

第〇〇条  従業員は、以下の事項を守らなければならない。( 中 略 )

⑪暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないこと。

⑫反社会的勢力を不当に利用し、反社会的勢力の維持や運営に関与し、反社会的勢力と社会的に非難されうる関係をもたないこと。

⑬その他当社従業員としてふさわしくない行為をしないこと。

 

また、懲戒規定は次の例のようになります。

 

【懲戒解雇】

第〇〇条 従業員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第〇〇条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。( 中 略 )

⑨第〇〇条第11項、同条第12項に違反し、その情状が悪質と認められるとき。

⑩その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき。

 

<誓約書の提出>

就業規則を周知することによって、反社会的勢力との関わりを禁止することはできるのですが、すでに関わりをもった人物が新たに入社してくることを防止することはできません。

そこで、新人の入社にあたっては、次のような誓約書の提出を求めるようにします。

 

令和  年  月  日

〇〇〇○ 株式会社

代表取締役 〇〇 〇〇 殿

 

誓 約 書

 

貴社に採用されるにあたっては、下記の事項を遵守することを誓約いたします。

 

 

一、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロ、特殊知能暴力集団、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という)に該当しないこと。

 

二、反社会的勢力を不当に利用し、反社会的勢力の維持や運営に関与し、反社会的勢力と社会的に非難されうる関係をもたないこと。

 

以 上

 

氏名           印 

 

 

他にも誓約書の提出を求めている場合には、タイトルを「反社会的勢力の排除に関する誓約書」とすればよいでしょう。

 

<反社会的勢力と関わった従業員の解雇>

上記の就業規則や誓約書は、主に反社会的勢力との関わりを防止するための対策です。

実際に、従業員が反社会的勢力との関わりをもっていることが判明した場合には、安易に懲戒解雇などすることは危険を伴います。

地域の警察、暴力追放運動推進センター、弁護士会などに相談しながら、慎重に対応することをお勧めします。

 

解決社労士 柳田 恵一

<基本はプライベート>

多額の借金を抱えた社員が会社で働いていると、それだけで上司や同僚、人事部門の社員たちは大きな不安を感じます。

それでも、借金というのは、会社からの借り入れでない限り、基本的にはプライベートなことです。

たしかに、プライベートなことであっても、会社の利益を害し信用を傷つける行為であれば、懲戒処分の対象となることはあります。

しかし、借金が多いことが発覚したからといって、それだけで解雇を検討するというようなことはできないのです。

以下、順を追って検討してみます。

 

<人事異動の検討>

多額の借金を抱えた社員が、お金を直接扱える業務に携わるのは好ましくありません。

人員配置の大原則である適材適所の観点から、経理、会計、財務、店舗のレジなどへの異動は避けなければなりません。

また、借金が発覚したときに、こうした業務に携わっていたならば、早期に別の業務に異動させることが望ましいといえます。

しかし、借金があることを理由に、降格、降職などを行うことは、人事権の濫用となり、その効果が否定される場合もあるでしょう。

 

<督促で会社に迷惑がかかっている場合>

借金の相手がサラ金業者などの場合には、会社にまで電話やファックスでの督促や嫌がらせがあったりもします。

時には、サラ金業者の従業員が直接、職場に押しかけてくるようなこともあります。

しかし、これは社員が借金したことの結果ではあっても、社員が違法・不当なことを行っているわけではありません。

むしろ、サラ金業者が貸金業法に違反する方法で督促を行い、嫌がらせまで行っているわけです。

こうしたことで戸惑って、懲戒処分や解雇を検討するのは的外れです。

明らかに、懲戒権や解雇権の濫用となってしまいます。〔労働契約法第15条、第16条〕

 

<給与の差押が発生した場合>

債権者が裁判所で手続きをして、裁判所から会社に給与債権差押の命令が届くこともあります。

会社は、この命令に素直に従わなければなりません。給与の一部を、指定された方法で支払うことになります。

このことによって、会社側に余計な事務手続きの手間は発生しますが、やはり、懲戒処分や解雇を検討するほどの大きな負担ではありません。

 

<破産した場合>

社員が破産しても、会社の業務に支障は出ません。

ちなみに、個人破産の場合、破産手続きをするのに十分な資力が無いなどの事情により、破産手続きの開始と共に終了する「同時廃止」となることが多いのです。〔破産法第216条第1項〕

この場合も、懲戒処分や解雇を検討すべきではありません。

 

<懲戒や解雇を考えるべき場合>

多額の借金を抱えた社員が、同僚や上司から借金をして具体的なトラブルに発展したような場合、あるいは会社の金品を横領したような場合には、当然に懲戒処分や解雇を検討しなければなりません。

しかし、これは借金を抱えた社員に限定されることではなく、すべての社員に共通することです。

 

<上司による指導>

多額の借金を抱えた社員が、その精神的な負担から、体調を崩して遅刻しがちになったり、業務に集中できなくなったりする恐れは大きいといえます。

上司としては、それをただ人事考課で評価すれば済むというのではなく、面談の機会を持ち、現在の生活ぶりや不安、借金を抱えるに至った事情など、本人から自発的に話してもらえるよう働きかけ、注意すべきところは注意する一方で、支えになってやる必要があるでしょう。

 

2019.09.05. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇に関する規定>

労働契約法には、解雇について次の規定があります。

 

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

中途採用と新卒採用とで、異なる規定が置かれているわけではなく、両者に共通の規定があるだけです。

 

また、モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、能力不足を理由とする普通解雇について、次のように規定しています。

 

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

実際の就業規則でも、普通解雇について、中途採用と新卒採用とで別の規定を置いていることは、殆ど無いと思われます。

 

<新卒採用の雇用契約>

新卒採用は、相当長期にわたって雇用が継続することを予定して行われます。

また、即戦力であることは期待されておらず、会社が一から教育を施して、必要な能力を身に着けさせることを予定しています。

この方が、会社の方針・風土に即した成長が期待できるので、会社にとっても都合が良いものです。

配属後の働きぶりを見て、適性の面で無理があるようならば、全く異なる部署への異動も検討すべきことになります。

 

<新卒採用の普通解雇>

このような雇用契約の性質から、会社が根気よく教育を行ったにもかかわらず、本人がどの部署でも能力を発揮できないような、極めて期待外れな場合でなければ普通解雇は困難です。

なぜなら、労働契約法第16条や就業規則の普通解雇の条件を満たすためには、会社側にかなりの努力が求められるからです。

 

<中途採用の雇用契約>

中途採用は、これまでのキャリアが買われて採用されます。

そのため、一定の経験・能力・適性を備えているものとして、即戦力となることが期待されています。

新卒採用のように、入社時に長期間の研修を行うことは無く、入社と共に配属先が決まっているのが一般です。

その配属先で、立場に応じた役割を担い切れない場合には、全く異なる部署に異動させて様子を見るということも予定していません。

 

<中途採用の普通解雇>

このように中途採用は、会社から新卒採用よりも高い期待を持たれています。

会社としては、会社に馴染むまである程度の期間はフォローするものの、予定した役割を果たしてくれなければ、期待外れになってしまい、普通解雇を検討せざるを得なくなります。

この点、新卒採用の場合よりも中途採用の方が、会社の解雇権は広く認められることになります。

 

<会社が心がけること>

このように中途採用と新卒採用とで普通解雇の有効要件が異なるのは、雇用契約の内容が異なるからです。

しかし、「常識的に」「暗黙の了解で」というのでは、雇用契約の内容があやふやになり、解雇を検討する際には、トラブルの発生が危惧されます。

特に中途採用では、個人ごとに会社が期待する経験・能力・適性、社内で果たすべき役割など、具体的な内容を雇用契約書に盛り込んでおくことが必要です。

 

2019.08.22. 解決社労士 柳田 恵一

<アウトソーシング>

アウトソーシングとは、中核事業に経営資源を集中投入することを目的として、中核事業以外の一部を外部に委託することをいいます。

たとえば、経理部門の業務を会計事務所に委託する、人事部門の業務を社会保険労務士事務所に委託するなどです。

メリットとしては、頻繁な法改正にも専門的に対応し適法運営が可能であることや、人材の採用・教育を含めた人件費等のコストを削減できることなどがあります。

 

<余剰人員の発生>

人材不足で緊急の必要に迫られてアウトソーシングに踏み切ったという場合には、人手が余るということはありません。

しかし、経営の合理化やコンプライアンスの強化のために、政策的にアウトソーシングを導入した場合には、現に関連業務を行っている社員の仕事が奪われることになります。

これは、その社員に全く落ち度のないことですから、会社は安易に解雇することはできません。

 

<整理解雇の有効要件>

整理解雇は、会社の経営上の理由により行う解雇です。

経営不振に陥った会社で行われるイメージですが、経営合理化を果たすために行われるものが含まれます。

整理解雇の有効要件としては、最高裁判所が「整理解雇の4要素」を示しています。

総合的に見て、これらの要件を満たしていないと、解雇権の濫用となり無効となる可能性があります。

その4要素とは次の4つです。

1.人員削減の必要性が高いこと

2.解雇回避の努力が尽くされていること

3.解雇対象者の人選に合理性が認められること

4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること

これらはそれぞれに厳格な基準があるわけではなく、また、すべての基準を満たしていなければ解雇が無効になるということではありません。

裁判では、4要素を総合的に見て、一定の水準を上回っていれば、整理解雇が有効とされています。

 

<1.人員削減の必要性が高いこと>

業務の一部を外部に委託するのですから、社内の担当社員の業務は減少します。

人によっては業務が全くなくなってしまい、社内失業の状態になることもあります。

経営合理化のために、人員削減の必要性が高いことは認められやすいでしょう。

 

<2.解雇回避の努力が尽くされていること>

社会保険の手続きや給与計算などを担当している人事部門の社員は、社会保険労務士事務所への委託によって仕事を失うかもしれません。

しかし、その社員はその仕事しかできないわけではありません。

人事部門内でも、採用や教育、人事制度の構築・改善の業務を担当することはできるでしょうし、総務部門の仕事をこなすこともできるでしょう。

アウトソーシングによって無くなった仕事の担当者を解雇するのではなくて、他の仕事を担当させたり、他部署に異動させたりすることを検討しなければなりません。

もっとも、本人がこれを拒めば、合意退職に至る場合もあります。

 

<3.解雇対象者の人選に合理性が認められること>

たまたまアウトソーシングされた業務を担当していたから解雇対象者に選ばれたというのは不合理です。

もっとも、その業務以外は行わないという条件で働いている従業員がいれば、その人が優先的に選定されることにも合理性があります。

全社的に見て、勤務成績や勤務態度の面で客観的に問題のある社員について、優先的に解雇対象とすることを検討すべきでしょう。

 

<4.労働者への説明など適正な手続きが行われていること>

十分な期間にわたって、段階的に説明するのが望ましいのです。

まず、会社を取り巻く環境から経営の合理化が必要になっていることを説明します。

次に、アウトソーシングを導入する方針であることを説明します。

さらに、対象業務やスケジュールについて説明します。スケジュールの中には、社員面談や希望退職者の募集、最終的な退職予定日などが含まれます。

適正な手続きというのは、解雇予告手当の支払いなどを指していますが、むしろ説明義務を十分に尽くしているかという点が、整理解雇の有効性判断の大きな要素とされています。

 

2019.08.20. 解決社労士 柳田 恵一

<公務員の場合>

公務員が得る報酬の財源は税金ですから、重い職務専念義務が課されています。

ですから、ほとんどの場合はダブルワーク禁止です。

親から相続したマンションを経営して収入を得ているのがダブルワークにあたるという理由で、辞めさせられるという実例もありました。

 

<民間企業の場合>

民間企業では、会社が給与を支払っています。

ですから、社員が自社の職務に専念しなかったり、ダブルワークをしたりということに対して、厳しい態度を取る必然性はありません。

 

<ダブルワークの理由>

ダブルワークを希望する人の大半は、今の収入では足りないので、別に収入を得るために別の仕事をしなければならないと言います。

こうした人たちは、会社が給料を上げてくれれば、ダブルワークの必要などないと考えています。

しかし中には、別の仕事もしてみたい、家業を手伝いたい、別の分野で自分の能力を高めたい、将来の独立に向けて準備したいなど考えている人もいます。

働き方改革の流れで、政府は副業・兼業を推奨していますから、ダブルワークを希望する人は今後も増えるでしょうし、企業も対応を迫られています。

 

<ダブルワーク禁止の理由>

会社としては、社員が別の会社で働くと、体力・精神力を消耗して疲れてしまい、自分の会社で充分な働きができないのではないかという不安があります。実際にそうなるケースが多いものです。

また、社員がライバル会社で働いたら、会社の機密が漏れるかもしれません。ただ、これは会社の重要な情報を握る立場にある人限定で考えればよいことです。社員一般にあてはまる話ではありません。

むしろ、女性社員が性風俗店でアルバイトしたら、会社の評判が落ちるのではないか、さらには男性社員でも違法カジノでアルバイトしたら、摘発されたとき自分の会社の名前もマスコミに報道されるのではないか。

こうした不都合が発生することを恐れて、会社としてはダブルワークを禁止したいのです。

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、次のように規定しています。これを参考に、社内規定を調えてはいかがでしょうか。

 

【副業・兼業】

第68条  労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。

2 労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

3 第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。

① 労務提供上の支障がある場合

② 企業秘密が漏洩する場合

③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合

④ 競業により、企業の利益を害する場合

 

<ダブルワーク禁止の有効性>

就業規則で「ダブルワーク禁止」としたり、社員に「ダブルワークしません」という念書を提出してもらったりした場合、これらは有効なのでしょうか。

基本的には、憲法が職業選択の自由を保障していますから、原則として効力が無いということになります。

では、就業規則や労働条件通知書にダブルワークをした場合の懲戒処分や解雇の規定を置いたら、その効力はどうなのでしょうか。

この場合には、ダブルワークのすべてについて有効になるというわけではありません。

実際に有効とされるためには、次の2つの条件をクリアする必要があります。

 

・具体的なダブルワークの中身が会社に大きな不都合をもたらし、懲戒処分や解雇をすることについて、客観的な合理性が認められること

・懲戒処分や解雇をすることについて、社会一般の常識から考えても仕方のないケースだといえること

 

これらの条件は、労働契約法第15条・第16条によるものです。

 

<留学生の場合>

ちなみに留学生の場合には、勉強のために入国しているのですから、アルバイトなどの活動は、本来の入国目的とは異なるということで制限されています。

留学生は資格外活動許可を受けた場合に限り、アルバイトを行うことができます。一般的に、アルバイト先が風俗営業または風俗関係営業が含まれている営業所でないことを条件に、1週28時間以内を限度として勤務先や時間帯を特定することなく、包括的な資格外活動許可が与えられます。また、在籍する大学などの長期休業期間は、1日8時間以内に延長されます。

そして、資格外活動の許可を受けずに、あるいは条件を超えてアルバイトに従事した場合は、不法就労となります。

ですから、夏休みなど長期休暇を除けば、留学生がダブルワークをするというのは難しいでしょう。

 

2019.06.09. 解決社労士 柳田 恵一

<経歴詐称>

経歴詐称とは、学歴・職歴を偽ることです。

通常は、履歴書の学歴・職歴欄に架空の内容を書いたり、一部の事実を隠して会社に提出する形で行われます。

学歴については、大学中退なのに「卒業」というように高学歴を偽るパターンが多いようです。しかし、高卒限定での採用を希望する会社に、大学卒を隠して応募する場合もあります。

職歴については、経験者限定の募集に対して、勤務経験が無いのに履歴書に記入するパターンが多いようです。しかし、たとえばA社の東京営業所で勤務し職場の人間関係を悪化させて自ら退職しておきながら、この職歴を隠して同じA社の大阪営業所の求人に応募するという場合もあります。

また、一つの企業での勤続期間が短く、転職を繰り返している人については、多くの企業が採用を避けていますから、このような応募者は、職歴の一部のみ記入し勤続期間を長く偽ることもしばしば見られます。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省のモデル就業規則にも、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」は懲戒解雇と書いてあります。これにならって、就業規則に採用取り消しや懲戒解雇の規定を置き、実際に退職させても問題は無いのでしょうか。

「重要な経歴を詐称」の中の「重要」の判断がむずかしいように思われます。

裁判での判断基準を見ると、その会社について具体的に考えた場合、その経歴詐称が無かったならば採用しなかっただろうし、実際に勤務に支障が出ているという場合であれば、有効と判断されることが多いようです。

たまたま履歴書の職歴欄に誤りが見つかったからといって、会社がこれを盾に退職に追い込むようなことは、不誠実な態度であり許されないのです。

 

<経歴詐称に優先して考えたい要素>

経歴詐称は客観的な事実ですから、これを立証するのも容易でしょう。

しかし、問題となる社員に退職して欲しい本当の理由は、期待した仕事ぶりではないということです。

たとえば、ある特定の分野でシステムエンジニアとしての経験が豊富だというので採用したところ、経歴はデタラメだった。しかし、大変な努力をして独学により充分な技能を身に着けているので、その能力を期待以上に発揮しているという社員がいたならどうでしょうか。会社は懲戒解雇など勿体なくてできません。

反対に、履歴書に書いてある経歴は正しいが、期待したほどの能力を発揮してくれない社員についてはどうでしょう。どこかに少しでもウソの経歴が無いか、履歴書を見直すことは無意味です。たとえわずかな経歴詐称が見つかったとしても、それを理由に解雇を考えるのは言いがかりというものです。むしろ、端的に能力不足による普通解雇や人事異動を考えるのが適切です。

 

<結論として>

配属先での評価が著しく低い新人がいる。怪しんで経歴の裏をとってみたらデタラメだった。もし、本当の経歴がわかっていたら採用しなかっただろう。こんなケースなら、懲戒解雇に正当性があります。その新人は会社をダマし、会社に損害を加えたわけですから。

しかし、3年、5年と無事に勤務してきた社員について、今さら経歴詐称を理由とする懲戒解雇は適切ではありません。やはり、人事異動を考えるべきでしょう。

 

2019.06.08. 解決社労士 柳田 恵一

次の事項を理由に解雇することは、一部の例外を除き禁止されています。

 

・労働者の国籍、信条、社会的身分〔労働基準法第3条〕

・労働者の性別〔男女雇用機会均等法第6条〕

・労働者が労働基準監督機関に申告したこと〔労働基準法第104条〕

・女性労働者が婚姻したこと、妊娠・出産したこと〔男女雇用機会均等法第9条〕

・個別労働関係紛争に関し、都道府県労働局長にその解決の援助を求めたこと〔個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条〕

・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法及びパートタイム労働法に係る個別労働紛争に関し、都道府県労働局長に、その解決の援助を求めたり、調停の申請をしたこと

・労働者が育児・介護休業等の申出をしたこと、又は育児・介護休業等をしたこと〔育児・介護休業法〕

・労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、又はこれを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等〔労働組合法第7条〕

・公益通報をしたこと〔公益通報者保護法第3条〕

 

ちょっと耳慣れない法律もありますが、すべては労働者を保護するための規定です。

中には、会社にとって不都合なことや、会社に逆らっているかのような内容もあります。

うっかり解雇を通告すれば、それは解雇権の濫用となって無効となるばかりではなく、慰謝料を含め未払い賃金など損害賠償請求の対象ともなりますので、くれぐれもご注意ください。

 

2019.05.19. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇の検討>

入社4年目の正社員が、ある時期から遅刻を繰り返すようになります。

上司が注意しても、ただただ謝るだけです。

定期健康診断の結果も正常ですし、同僚からの勧めもありメンタルクリニックで受診したのですが、正常の範囲内という診断でした。

それにしても全く仕事が手につかない様子です。

社長が直に面談してみたところ、個人的な悩みを抱えているとのことでしたが、具体的なことは何も話してもらえませんでした。

社長と上司が、就業規則を見ながら考え込んでしまいました。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(解雇)

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

① 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、労働者としての職責を果たし得ないとき。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・働きぶりがあまりにもひどいこと

・普通に働けるようになるとは思えないこと

・社員としての役割を果たせないこと

この3つの条件を備えていたら、解雇もありうるということです。

ここでの解雇は、仕事での発揮能力の低下を理由とするものですから、懲戒解雇ではなくて普通解雇となります。

それにしても、「著しく」と言えるのか、「改善の見込みがない」のか、「職責を果たし得ない」のか、そのように断言できるのでしょうか。

 

<モデル就業規則の基本的な考え方>

厚生労働省のモデル就業規則は、労働者の権利を侵害することが無いように、また違法な行為が行われないように配慮されて作られています。

特に解雇というのは、会社が労働者の権利を一方的に奪うことになりますから、慎重な規定になっているわけです。

しかし、会社がこの規定を根拠に解雇しようとして、裁判にでもなったなら、会社は「勤務状況が著しく不良」「改善の見込みがない」という証明をしなければ、勝ち目が無いでしょう。

 

<カスタマイズの方法>

こうした困ったことにならないようにするには、就業規則を次のように定めることです。

 

(解雇)

第51条 労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

①  勤務状況が不良で、労働者としての職責を果たしていないとき。

 

会社としては、遅刻・欠勤・早退の事実を証明し、きちんと勤務できていないということだけ証明すれば良いのです。

このように言うと、簡単に解雇できそうですが、実際には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定があります。〔労働契約法第16条〕

会社としては、就業規則に最低限の条件だけを定めておき、余計な証明責任を負わないようにして、あとは実質的に見て、客観的で合理的な理由があるか、世間一般の感覚で考えてやむを得ないと言えるかを判断すれば良いのです。

むやみに解雇することはいけませんが、解雇のハードルを上げ過ぎて他の社員に迷惑がかかることがないように注意したいものです。

 

2019.05.18. 解決社労士 柳田 恵一

<解雇無効の主張>

試用期間中に時間が守れない、パソコンも使えない、当然本採用は見送りということで、試用期間終了をもって退職とした社員の代理人弁護士から「解雇は無効であり労働者の権利を有する地位にあることの確認を求める」という内容証明郵便が会社に届くということがあります。

ネット上でも、こうした情報が増えるにつれ、不当解雇の主張も増えているようです。

「いや、うちの会社はすべての新人に試用期間を設け、試用期間の評価によっては本採用とならず退職となることをきちんと説明している」と言っている会社が、実際に解雇無効を主張される結末になっているのです。

 

<ひな形の規定>

これは、ネットから就業規則のひな形をコピーして、少しアレンジして使っていると起こりうる事件なのです。

あるひな形には、次のように書いてあります。

 

(試用期間)

第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から  か月間を試用期間とする。

2 前項について、会社が特に認めたときは、この期間を短縮し、又は設けないことがある。

3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第49条第2項に定める手続によって行う。

4 試用期間は、勤続年数に通算する。

〔厚生労働省のモデル就業規則平成31年3月版〕

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに良く出来ています。

この条文は、次のことを言っています。

・試用期間を○か月とするが、短縮したり無しにすることがある。(しかし延長は無い)

・入社して14日を超えた人を解雇するときは、第49条2項に定める手続き(30日以上前の予告、解雇予告手当)が必要である。

この「第49条2項」というのがクセ者です。そんなに後の方に書いてあることは読まずに済ませてしまう危険があるのです。

 

<注意書き>

実は、厚生労働省のモデル就業規則には、次のような注意書きがあります。

試用期間中の者も14日を超えて雇用した後に解雇する場合には、原則として30日以上前に予告するか、又は予告の代わりに平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要となります(労基法第20条、第21条)。

 

もっともよく使われているひな形だけあって、さすがに手抜かりは無いのです。

ところが、専門家ではない人が、この大事な注意書きを読み飛ばしてしまいます。その結果、思わぬ事態を招いてしまうのです。

 

<実例として>

新入社員のAさんが、就業規則で定めた3か月の試用期間終了近くなっても、電話応対がきちんとできません。同じ職場のメンバーの顔と名前が覚えられず、自分から挨拶できません。

社長が「せっかく入社したのだからもう少し様子を見よう」という特別の計らいで、もう1か月だけ試用期間を延長したのですが、結局、Aさんは不適格者ということで、解雇となってしまいました。

「大変ご迷惑をおかけしました」と挨拶して会社を去っていったAさんの代理人から「解雇は無効である。一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料も支払え」などという内容証明郵便が届きます。

この場合、会社としては就業規則に無い試用期間の延長や、解雇予告手当を支払わずに解雇したことについて、法令違反や就業規則違反があったのです。

 

<こうして使いましょう>

困ったことにならないようにするには、2つのポイントがあります。

1つは、試用期間を定めたら延長しないこと。そのためには、本採用とするための条件を書面で明らかにして、会社と新人とが保管することです。たとえば「遅刻・欠勤が無いこと。基本的な電話応対を身に着けること。身だしなみを整えること。業務の報告は確実に行うこと」などです。試用期間内にクリアする条件を明確にすれば、温情的な延長も防げます。

もう1つは「ちょっと無理かな」と思ったら、試用期間が終わるまで待たないで、14日以内に解雇することです。長引けば、その新人の転職のチャンスも遠くなります。

もちろん、こうしたドライな対応をする前提として、募集・選考・採用の精度は高めておかなければなりません。試用期間中の教育訓練も、スケジュールに沿って着実に行わなければなりません。

人は見極めて採用し育てることが肝心なのです。

 

2019.05.11. 解決社労士 柳田 恵一

<具体例>

タクシーの運転手が運転免許を取り消された、医師が医師免許を取り消された、となればもう働けないのだから解雇は当然という考えは常識でしょうか。

 

<法律では>

解雇については、労働契約法に次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

では、免許の取消を解雇の理由としたら、客観的に合理的な理由になるのか、社会通念上相当と認められるのかは、基準が抽象的なので判断が容易ではありません。

 

タクシーの運転手や医師が免許を剥奪されても、事務や営業の仕事ならできるでしょう。そうなると、必ず解雇というのもどうなのでしょうか。

 

<紛争防止のために>

使用者が労働者を雇うにあたっては、労働条件通知書を交付します。これは、罰則をもって使用者に義務付けられていることです。

その中の、「従事すべき業務の内容」の欄に、「運転免許を利用してのタクシー運送」「医師免許を利用しての診察・治療」と記載してあれば、免許を失えば業務ができないことも明確になります。

「退職に関する事項」の中の「解雇の事由及び手続」の欄に、解雇の事由として「自動車運転免許を失ったとき」「医師免許を失ったとき」と明記しておけば、免許の取消を解雇の理由とすることが明確になります。

タクシーの運転手として雇う、医師として雇うということが、明確に示されて雇用されたのなら、免許を失ったときに解雇するのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるといえます。

 

法的に正しい形式を整えるということは、常識的に正しいというのとは違います。

人を雇っていて、つまらないことで足元をすくわれないように、専門家である社会保険労務士にご相談いただけたらと思います。

 

2019.04.09.解決社労士

<就業規則が必要ということ>

懲戒処分を有効に行うためには、就業規則に具体的な規定のあることが必要です。

しかし、これは規定が必要だということであって、規定さえあれば十分ということではありません。

架空の例ですが、ある会社の就業規則に次のような規定があったとします。

 

【遅刻、早退、欠勤等】

第●条 労働者は遅刻、早退若しくは欠勤をし、又は勤務時間中に私用で事業場から外出する際は、事前に会社に対し申し出るとともに、承認を受けなければならない。

 

【懲戒解雇】

第●条 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。

○  1営業年度のうちに無断で100回遅刻したとき

 

1年間で100回も無断で遅刻したら、解雇されても仕方がないように思えます。

しかし、99回目まで誰も注意を与えず、遅刻してきた社員をニヤニヤして見ているだけだったのに、100回目の遅刻で突然「はい、就業規則の規定により、あなたは解雇となります」ということにはできないのです。

 

<懲戒処分の有効要件>

労働契約法は、懲戒処分が無効となる場合について、次のように規定しています。

 

【懲戒】

第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

 

裏を返せば、懲戒処分が有効となるためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。

・客観的に合理的な理由があること

・社会通念上相当であること

 

このことからすると、1回目の無断遅刻のときに、上司など会社側は最低でも次のアクションを起こすことが求められます。

・無断遅刻はいけないことであり、ルール違反であることの説明。

・無断遅刻について、本人の弁解を聞くようにすること。

 

無断遅刻について注意を与えなかったり、正当な理由の有無を確認しなかったりというのでは、2回目以降の無断遅刻が発生しても強く責めることはできません。

それにもかかわらず、懲戒処分を行うと「客観的に合理的な理由がある」ともいえませんし、「社会通念上相当」ともいえませんから、その懲戒処分は懲戒権の濫用となって無効になります。

 

こうしたことを踏まえて、厚生労働省のモデル就業規則の規定は、次のようになっています。

 

【懲戒の事由】

第61条 2 労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、第41条に定める普通解雇、前条に定める減給又は出勤停止とすることがある。

③正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、  回にわたって注意を受けても改めなかったとき。

 

このように、懲戒処分の有効要件〔労働契約法15条〕に配慮した規定となっています。

 

<遅刻の再発を予防する労務管理>

遅刻の再発を予防するため、上司が取るべき行動には次のようなものがあります。

 

・出勤時刻になっても姿を現わさないので、連絡してみたが応答もなく、みんながとても心配していたことの説明。

・健康状態は大丈夫か、仕事や家庭の事情で疲労が蓄積していないか、夜はしっかり眠れているか、何か心配事があるのではないかの確認。

・やむを得ず遅刻する場合には、事前に会社に申し出て承認を受けるルールがあることと、その具体的な方法についての説明。

 

上司からこのようにされたら、本当は明け方まで友人と居酒屋にいて寝坊したのであっても、「二度と遅刻しないようにしよう」と考えるものです。

少なくとも、みんなの見ている前で机を叩きながら「遅刻するなバカヤロー」と怒鳴るパワハラ上司の100倍は尊敬されるでしょう。

部下にルール違反があった場合の対応についても、管理職の教育が重要だということです。

 

2018.12.31.解決社労士

<解雇予告の規定>

労働基準法第20条に次の規定があります。

 

【解雇の予告】

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

<解雇予告手当>

会社が従業員を解雇しようとする場合に、少なくとも30日前には解雇する旨を通知しなくてはならないというものです(第1項)。

もし30日以上前に解雇予告をしなかった場合には、使用者は平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う義務が生じます(第1項)。

 

<予告と手当の組み合わせ>

予告期間と解雇予告手当を組み合わせることもできます(第2項)。

たとえば、17日前に予告して平均賃金の13日分の解雇予告手当を支払うこともできます。併せて30日になれば良いのです。

ただし、解雇予告の当日は24時間ありませんので、1日としてカウントできません。今月30日をもって解雇という場合には、13日に予告すれば17日前の予告となります。

 

<解雇予告手当の支払い時期>

解雇予告手当は解雇の通知とともに支払います。

この手当は、給与ではなく支払うことによって効力が発生する特殊な手当なので、「次の給与と一緒に支払います」ということはできません。

もし給与と一緒に支払ったなら、支払ったその日に予告したものとして予告期間が計算されてしまいます。

解雇予告手当を給与振込口座に振り込んでから、解雇の通知をすれば良いでしょう。

 

<注意すること>

解雇予告を正しく行うということは、手続きを正しく行うということです。

これによって、不当解雇が正当化されるわけではありません。

労働契約法にも、次の規定があります。

 

【解雇】

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

解雇予告手当を支払い解雇を通告して安心していると、解雇の無効を主張され、働いていないのに賃金を請求されるということもありますから注意しましょう。

 

2018.11.18.解決社労士

<モデル就業規則の規定>

能力不足を理由とする解雇に関して、厚生労働省労働基準局監督課が作成したモデル就業規則の最新版(平成30(2018)年1月版)は、次のように規定しています。

 

(解雇)

第51条  労働者が次のいずれかに該当するときは、解雇することがある。

勤務成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないとき。

⑧ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき。

 

直感的には、能力不足を理由とする解雇は、厚生労働省の立場からも②の規定により認められていると読み取れます。

しかし、この規定をよく見ると、解雇の条件がクリアされるためには、会社側にもそれ相当の準備が必要であることに気づきます。

 

<著しく不良>

「勤務成績」「業務能率」という言葉に明確な定義があるわけでもなく、ましてや評価基準となると、客観的に統一されたものなどありません。

これらが「著しく不良」であることを、会社側が証明するのは困難です。

 

<向上の見込みがない>

向上の見込みがあるか、それともないか、これを見極めるには、会社側が様々な教育・研修を行ってみる必要がありそうです。

上司が熱心に指導して、少しも成長しないので匙を投げたという場合であっても、上司の指導力不足を疑われたら、反論するのもむずかしいでしょう。

 

<他の職務にも転換できない>

他の部署で活躍できるか、それともできないか、これを見極めるには、異動させてみないと分からない点もあります。

しかし、すべての部署を経験させてから見極めるのでは、余りにも非現実的です。

 

<就業に適さない>

これはもう、その会社で働くことが向いていない、あるいは、働くことそのものが向いていないと言っているに等しい表現です。

そのような人物であれば、最初から採用しませんから、この規定を根拠として解雇するのは現実的ではありません。

 

<別の攻め方>

そもそも、「勤務成績」「業務能率」「向上の見込み」や適性は、目に見えない抽象的なものです。

ですから、これらを根拠に解雇しても、不当解雇を主張され解雇を無効にされる恐れがあります。

むしろ、不都合な事実を多数突き付けて、⑧の「その他前各号に準ずるやむを得ない事由があったとき」を理由に解雇するのが現実的です。

 

【解雇理由となる不都合な事実の例】

ルール違反が多い。

居眠りをしている。

勤務中に個人的な興味でスマホをいじる時間が長い。

仕事をしているふりをして時間をつぶしている。

時々勤務中に感情を爆発させ叫ぶことがある。

上司から注意しても詫びないし、反省の色を示さない。

上司の指示に従わない。

常識から外れた行為が目立ち、その自覚が無い。

遅刻の回数が多く、1回あたりの遅刻が長時間。

以上について、口頭・文書での注意が繰り返されているが改善されない。

 

万一、裁判などになれば「いろいろありました」ではなく、いつどこで何があったのかという事実の記録が必要です。

つまり、解雇するにもそれ相当の準備が必要になるということです。

 

大前提として、解雇が無効とされないためには、就業規則に具体的な解雇理由の規定が置かれていることも必要です。

その意味で、解雇に関する規定は、具体的で詳細なものであることが求められるのです。

 

2018.10.23.解決社労士

アクセスカウンター

月別過去の記事

年月日別過去の記事

2021年12月
« 11月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031