在宅勤務中の労働災害

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2020/07/01|1,233文字

 

<新型コロナウイルス感染症拡大の影響>

働き方改革の一環で、在宅勤務などテレワークの普及が、厚生労働省を中心に進められてきました。

これにより、大企業では在宅勤務の導入が進んできたところですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、中小企業でも在宅勤務を取り入れる企業が急速に増えました。

 

<厚生労働省のガイドライン>

厚生労働省は、早くも平成20(2008)年には、在宅勤務のためのガイドラインを策定し公表しています。

ガイドラインでは、「在宅勤務には、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働基準関係法令が適用される」と説明しています。

労働者災害補償保険法が適用されるわけですから、在宅勤務にも労災保険が適用されることになります。

 

<労災認定の事例>

厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」というパンフレットには、業務災害として認定されるものとして、次のような例が掲げられています。

 

【事例】

自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した事案。これは、業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められる。

 

<業務上といえるための条件>

「業務上の事由による」と認定されるためには、「業務起因性」が無ければならず、業務起因性が成立するためには、その前提として「業務遂行性」が無ければならないとされています。

ここで、「業務遂行性」とは、労働者が労働契約等に基づいて事業主の支配下にある状態をいい、「業務起因性」とは、傷病が業務に起因して生じたことであり、業務と疾病との間に相当因果関係が存在することをいいます。

 

<業務上の負傷>

「業務上の負傷」といえるためには、業務に伴う危険が現実化して生ずる災害であることが必要とされます。

業務そのものの作業中に発生した災害であれば、原則として「業務上の負傷」といえます。

生理的行為(トイレ・水分補給など)や反射的行為は、本来業務上の行為ではありませんが、業務に付随する行為として、作業からの離脱は無かったとされます。

この他、業務の遂行上必要な行為、業務の担当者として合理的な行為、業務遂行中にありがちな些細な私的行為、作業の準備行為・後始末行為などの最中に発生した災害も、「業務上の負傷」とされます。

具体的な判断にあたっては、数多く発出されている通達の参照が必要となることも多いでしょう。

 

<実務での対応>

在宅勤務中の傷病が、業務災害とされ労災保険が適用されるのか、私的行為とされ健康保険が適用されるのか、その峻別ができないのでは、速やかな対応が困難となってしまいます。

具体的な労働時間の管理方法、作業場所の特定、業務報告の方法などを明確に定めておき、在宅勤務を行う労働者本人と労災手続を行う担当者に周知しておくことが不可欠となります。

 

解決社労士