職務評価を用いた基本給の点検・検討での留意点

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2020/05/30|1,809文字

 

<パート有期労働法の施行>

働き方改革関連法の一つであるパートタイム・有期雇用労働法の施行により、2020年4月から正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との不合理な待遇差が禁止されることとなりました。(ただし、中小企業は2021年4月からの適用です)

同じ企業で働く正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間に待遇の違いがある場合、あらゆる待遇について、個々の項目ごとに不合理な待遇差の解消が求められます。

待遇差があってはならないのではなく、待遇差の存在とその程度について、客観的に合理的な理由が存在しなければならないということです。

とはいえ、基本給については、それぞれの企業で様々な要素を踏まえて支払われており、各企業間で大きな金額の差があって、その合理性については判断がむずかしいものです。

 

<職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル>

同一労働同一賃金への対応のための参考資料として、厚生労働省から「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」が発行されています。

すでに基本給の見直し案を策定済の場合には点検ツールとして、これから基本給の見直しを検討する場合にはマニュアルとして、数多くの企業で活用されています。

このマニュアルが、不合理な待遇差を解消する一つの方法として紹介しているのは、職務評価の手法のうちの要素別点数法という方法です。

これは、職務(役割)の内容を、構成要素ごとに点数化し、この点数に従って基本給を決定していくものですから、客観性が示されることで納得が得られやすい方法です。

 

<人事考課との区別>

職務評価の要素別点数法は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の職務(役割)の大きさを比較する方法です。

評価というと、企業内では人事考課が一般的です。

しかし、正社員の考課基準は、将来への期待を含めた能力、会社への帰属感、会社での経験、会社への貢献度など、職務(役割)の大きさを測る指標としては不適切なものが含まれています。

一方、パートタイム労働者・有期雇用労働者の考課基準が不明確な企業もありますし、たとえ明確であっても、正社員とは異なる基準で評価していることが多いものです。

要素別点数法は、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者を、同じ土俵で職務(役割)の大きさを比較する方法ですから、これまで用いてきた人事考課の基準を流用することはできません。

 

<評価項目のカスタマイズ>

「職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアル」には、評価項目の例として、学習院大学が開発したGEMや国際労働機関(ILO)によるものが紹介されています。

しかし、これらはあくまでも例示です。

例示をそのまま流用してしまうと、自社の実情に合わないものとなる恐れがあります。

各企業には、元々基本給の決定にあたって考慮している要素があります。

これを分析し明確化することによって、基本的な評価項目の軸に据えましょう。

「マニュアル」に示された例は、項目の分類や表現の仕方についての、参考資料として活用できます。

 

<ウェイトのカスタマイズ>

要素別点数法による職務(役割)評価は、職務(役割)評価表を用いて職務(役割)評価ポイントを算出して行います。

職務(役割)評価表は、評価項目、ウェイト、スケールの3要素から構成されています。

このうちウェイトは、各企業の事業特性などに応じた構成要素の重要度を示します。

評価項目ごとのウェイトをどのように設定するかによって、職務(役割)評価ポイントは大きく異なってきます。

ある程度まとまった人数の正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者についてシミュレーションを行い、現在の給与実態と大きく異なるのであれば、評価項目ごとのウェイトを変えてみて、実態に合ったものにしましょう。

このとき、ウェイトのベースを1にすると、上手くいかないことがあります。

少しだけ重点を置きたい項目のウェイトを2にすると、影響度が2倍になってしまうからです。

この場合には、ウェイトのベースを2あるいは3にして調整することをお勧めします。

 

<実務上のポイント>

職務評価の基準を設定するにあたって、まずは、その結果が現状と大きく乖離しないものを作成します。

これをベースに、同一労働同一賃金の観点から、不合理な部分を手直しする形で最終案をまとめると、社内での混乱を招くことなく、納得の得られるものとなるでしょう。

 

解決社労士