懲戒解雇と退職金の減額・不支給

2023/11/05|1,122文字

 

<退職金の性質>

労働基準法などに、退職金の支払義務が規定されているわけではありません。

しかし、就業規則や労働条件通知書などに、計算方法、支払方法などの規定があれば、労働契約の内容となって会社に支払義務が生じます。

 

<退職金の減額・不支給が許されない場合>

懲戒解雇の場合に、退職金が減額されあるいは支給されない旨の規定が、就業規則や退職金規程の中に無ければ会社に全額支払の義務があります。

なぜなら、退職金を全額支払うことが、労働契約の内容となっているからです。

ちなみに、中退共(中小企業退職金共済)や建退共(建設業退職金共済)の退職金については、懲戒解雇による退職金の減額などの規定はありませんので、全額支給されることになります。

 

<退職金の減額・不支給を規定する意味>

退職にあたって、退職者が会社に大きな損害を与えていることが発覚し、その穴埋めのために退職金の減額・不支給という手段を用いるということも考えられます。

しかし、むしろ退職金を減額されたり支給されなかったりということがないように、従業員に真面目で誠実な勤務を心がけてもらうための警告として規定していることが多いのです。

 

<退職金の減額が許される場合>

懲戒解雇の場合に、就業規則などに退職金が減額される旨の規定があり周知されていて、従業員のそれまでの長年の勤務による功労を大きく減殺するほどの信義に反する行為があった場合には、ある程度の減額が許されます。

信義に反する行為というのは、正義に反し信頼関係を破壊する行為のことです。

功労をどの程度減殺するかによって、減額が許される限度も変わってきます。

会社が思い切った減額をした場合、裁判になれば、裁判所は退職者の功労や過去の勤務態度を踏まえ、減額し過ぎを指摘し不足分を追加で支払うように命ずることがあります。

 

<退職金の不支給が許される場合>

就業規則などに、懲戒解雇の場合には退職金が不支給となる旨の規定があり周知されていて、従業員のそれまでの長年の勤務による功労がすべて抹消されるような信義に反する行為があった場合には許されます。

裁判になれば、会社に対する劣悪な裏切り(功労を全く失わせる程度の著しい背信的行為)があった場合にのみ、退職金の不支給が許されます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

万一の場合に、退職金の減額や不支給が可能となる就業規則を整えるのも社労士の仕事です。

また、実際に懲戒解雇を検討する場合、それが不当解雇とならないか、どの程度まで退職金を減額できるか意見を述べるのも社労士の仕事です。

しかし、懲戒解雇を出さないように職場環境を整えることこそ、社労士の大事な仕事です。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

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