タクシー会社の実質残業代ゼロ

LINEで送る

2020/04/02|894文字

 

<実質残業代ゼロ>

東京の大手タクシー国際自動車(kmタクシー)では、残業代が増えるほど、それに合わせて歩合給が引かれ、結局同じ額の給与となる仕組が取られていました。

ドライバーに対し、基本給や残業代のほか、売上高に応じた歩合給が支払われていましたが、歩合給を計算するときに、残業代相当額などが差し引かれて、「実質残業代ゼロ」の状態になっていたのです。

この制度の導入にあたっては、ドライバーの約95%が加入する最大組合も了承していました。

ところが、別の少数組合のドライバーが、こうした制度は未払残業代を発生させるものであり違法だとして提訴しました。

 

<東京高裁の判断>

高等裁判所では、法令違反などがない限り、賃金をどのように定めるかは自由としたうえで、名目上は法定の金額を下回らない残業代が支給されていることなどから、制度を合法と解釈していました。

手続面を含め、手当の名称や算定方法などから、形式的な判断が行われていたわけです。

 

<最高裁の判断>

最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は令和2年3月30日、残業代の支払いについて定めた労働基準法第37条の趣旨に反するなどとして、規則を違法とする判決を言い渡しました。

ドライバー側が敗訴した高裁判決が破棄され、未払い残業代の金額を算定するため、審理が東京高裁に差し戻されることになりました。

最高裁判決では、労働者に対する補償や労働基準法第37条の時間外労働抑止の趣旨を踏まえ、賃金体系全体における位置付けなどにも留意すべきだとして、実質的な判断が行われました。

 

<タクシー業界の動向>

「通常の労働時間の賃金」と「時間外割増賃金(残業代)」とは、明確に区別されていなければなりません。

これは、固定(定額)残業代については周知されつつあります。

しかし、残業代の中に歩合給が含まれるという運送業界特有の制度については、明確に否定されてはきませんでした。

国際自動車は、訴訟を提起されてから、既に従来の仕組を見直したそうです。

一方で、他のタクシー会社や運送会社では、同じような規則を設けている会社があります。

これらの会社でも、早急に見直しが行われるでしょう。

 

解決社労士