パワハラにあたることを加害者が納得しないのですが

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<パワハラとは>

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与え、または職場環境を悪化させる行為をいいます。

 

<パワハラの定義の抽象性>

パワハラの定義は抽象的なものになりがちです。

ところが懲戒処分を有効に行うには、つまり懲戒処分を行ってそれが無効だと主張されないようにするには、就業規則や労働条件通知書などに具体的な懲戒規定が必要です。パワハラについての懲戒規定が無かったり、たとえあっても抽象的すぎて具体的な言動がパワハラにあたるかどうか判断できなかったりすれば、加害者が有効に処分されることはありません。

懲戒処分の手続きを担当する従業員の常識に照らせばパワハラにあたることが明らかな行為であっても、加害者の常識に照らせば対象者を育成するのに必要不可欠な行為であり正当な行為だという場合もあります。

 

<懲戒処分の目的>

懲戒処分の目的には、不都合な行為を行った従業員に対して制裁を加えることにより、他の従業員が納得して安心して働けるようにすること、他の従業員が同様の行為を行わないよう再発を防止すること、そして何より行為者本人が深く反省し同じ過ちを繰り返さないようにすることなどがあります。しかし、本人が自分の行為は懲戒処分の対象になるようなものではないと確信していては、たとえ懲戒処分を行っても、反省するどころか、会社に対する反発と不信感を生むだけです。

ですから、会社がパワハラ対策をきちんとするには、懲戒規定を読めばパワハラの具体的な定義と具体例がすぐわかるようにしておく必要があります。パワハラについての具体的な定義が無い職場には、必ずパワハラがあると言っても過言ではないでしょう。

 

<上司は部下をしかれないのか>

職場では、業務上の指示や指導の際に、やや厳しい言動が見られることはありますし、労働者本人が不快に感じたからといって、その行動の全部が違法になるわけではありません。

しかし、その行動の目的と手段から見て、企業の中で通常行われている範囲を超えた業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになるといえます。つまり、相手の感情を基準に違法性を判断するのではなく、周囲の人々が客観的に見たときに、業務上の必要性も無く、嫌がらせなどの不当な目的が明らかで、一般的に見て不安を感じさせるような対応だと言えるときに、違法性の存在が認められるのです。

また、その言動自体は業務の範囲と言えるものでも、退職に追い込む、あるいは見せしめなどの目的が客観的に明らかであれば、違法なパワハラであることが認定できます。

裁判となった事例では、一人だけ炎天下の作業を命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。

さらに、部下の指導や勤務態度の改善といった正当な目的でなされた行動であっても、暴力を伴う行為は、原則として違法となる犯罪行為です。

たとえ言葉の上での対応でも、その発言の内容が著しく労働者の人格や尊厳を傷つけるものであったり、社会的に許される範囲を超えて継続的になされたりすれば、やはり違法となります。このときも、言われた人がどう思ったかではなく、客観的に見て人格や尊厳を傷つけるか、世間一般の基準から客観的に許される範囲と言えるかが基準となります。

 

<パワハラと指導の境界線をどこに引くか>

こうして見て来ると、次の場合には、指導を超えたパワハラと言えるでしょう。これらを踏まえて、パワハラについての懲戒規定を見直すようお勧めします。

・相手の成長を促すのとは別の不当な目的が客観的に認定できる場合。ここで、不当な目的とは、退職に追い込む、見せしめ、差別的、人格権の侵害などがあります。つまり、憲法で保障された人権の侵害や、刑罰法規に触れるような不当な目的です。

・客観的に見て犯罪行為にあたる場合。炎天下の人目につかない場所で、たった一人で力仕事をさせたり、暴力を振ったりというのは、目的がどうであれパワハラにあたります。

・客観的に見て、怒りをぶつけている場合。親が子供をしつける場合には、こうしたことが必要になるかもしれません。しかし、社会人を指導し育成するのに、怒りの感情を持ち込むことは、必要不可欠なことではありません。

 

就業規則の見直しなど、具体的にどうしたら良いのか迷ってしまう場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

また、感情に左右されることなく、冷静に対応できることから、第三者的な立場の社労士が、パワハラの相談窓口になることも有効な対策になります。

 

2016.10.10.