2023/06/21|1,451文字
<トラブルが生じやすい雇い止め>
パート、アルバイト、派遣社員、契約社員などの雇用形態では、有期労働契約が多く見られます。
有期労働契約というのは、1年契約、6か月契約など期間の定めのある労働契約のことです。
有期労働契約である以上、契約期間満了により雇用が終了することが原則です。
しかし、契約更新の繰り返しにより長い間雇用を継続する場合もあります。
このような場合に、契約を更新せずに期間満了をもって退職させると、期待を裏切ることになります。
こうした「雇い止め」では、トラブルが生じやすいので、トラブル防止のためのルールが定められています。
<雇い止めの予告>
雇い止めの予告が義務となるのは、次のような場合に限られます。
・労働契約を3回以上更新している場合
・1年を超えて継続勤務している場合
・1年を超える労働契約の場合
これらの場合に事業主は、少なくとも期間満了の30日前までに、雇い止めの予告をしなければなりません。
ただし、雇用の約束をした時に、期間満了で必ず退職する約束だった場合には、期待を裏切る可能性は無いので対象外となります。
事業主としては、辞めてもらうことが決まっていても、あまり早く雇い止めの予告をしてしまうと、働く意欲が低下するのではないか、一緒に働いている人たちに不満を言うのではないかと心配になります。
しかし、早く伝えてあげないと、雇い止めの対象となった人は、次の仕事を見つけるための準備をする期間が短くなってしまいます。
このルールは、この点に配慮しているわけです。
<理由の明示>
雇い止めの予告をしたのに対応して、対象者から雇い止めの理由について証明書を請求された場合には、遅滞なく交付しなければなりません。
退職後に請求された場合でも、会社には交付義務がありますが、あくまでも請求があった場合のみの義務となります。
雇い止めの理由の例としては、次のものが挙げられます。
・前回の契約更新時に本契約を更新しないことが明確に合意されていたため
・契約締結当初に定めた契約更新回数の上限に達したため
・閉店など事業縮小のため
・業務を遂行する能力が十分ではないと会社が判断したため
わかりやすく事実に沿った理由を示す必要があります。
誤解を生じる表現だと、これが元で訴訟に発展することもあります。
退職後は特にそうですが、「雇い止め理由書」を郵送して終わりにするのは危険です。
せめて電話で、できれば面談で説明したいものです。
<トラブルを防止するには>
雇い止めというのは、本当にトラブルを発生しやすいものです。
決まりきったルールを守るだけではなく、プラスアルファのトラブル防止策をお勧めします。
まず、雇い止めの予告にあたってのトラブルを防ぐには、最初の採用のときと、契約更新のときに、次の契約更新の条件を具体的に示しておくことが必要です。
対象者から反論されたり、疑問を出されたりするような条件では、具体性に欠けるということになります。
また、雇い止めの理由を示したことによって、新たなトラブルを発生させないようにするには、その理由が客観的に合理的なものであって、世間一般の常識からしても「やむをえない」といえるものであることが必要です。
その基準は、労働法や裁判例を参考にすれば明らかになるものです。
もし社内に専門の担当者がいないなど、不安な状況があるのであれば、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。
それぞれの会社と業務内容に応じた対策をとることによって、リスクを大幅に軽減し、経費を削減することができます。