2024/09/24|1,221文字
<保険証>
皆さんは、病院に行くと受付で「保険証」を提示すると思います。
マイナ保険証のこともあるでしょう。
この「保険証」という名前は通称です。
正式には「被保険者証」という言いにくい名前です。
お手元の「保険証」を見ていただくと「被保険者証」と書いてあるはずです。
<「被」という漢字の意味>
「被」という漢字には、受け身の意味があります。
「受け身」というのは、行動の主体からの動作・作用を受ける人を主人公にして話す話し方です。
Aさんから見て「AさんがBさんをほめた」というのは、
Bさんから見ると、「BさんがAさんからほめられた」となります。
この「BさんがAさんからほめられた」というのが受け身です。
受け身は、英語の授業では受動態として習いました。
漢文の授業では、「被」という字を「る」「らる」という受け身の助動詞として習いました。
<社会保険で「被」が付くことば>
「被保険者」は、保険について受け身の人のことをいいます。
保険者は、保険を運用する人のことをいいます。
健康保険の保険者は、保険証に書かれています。
協会けんぽであったり、健康保険組合であったりです。
国民健康保険では、市町村が保険者です。
そして、保険が適用され給付を受ける人が「被保険者」ということになります。
日常用語では「保険加入者」とも言いますね。
「被扶養者」は、扶養について受け身の人のことをいいます。
誰かを扶養する人を、わざわざ「扶養者」ということは少ないでしょう。
誰かに扶養されている人のことを「被扶養者」といいます。
日常用語では「扶養家族」ですね。
特に被扶養者のうち配偶者を「被扶養配偶者」といいます。
厚生年金で勤め人が第二号被保険者、その被扶養配偶者が20歳から59歳までであれば、第三号被保険者ということになっています。
<労働保険で「被」が付くことば>
雇用保険や労災保険でも、保険が適用される人は「被保険者」ということになります。
労災保険では、保険事故に遭った人のことを「被災者」といいます。
業務災害や通勤災害という災害に遭った人ということです。
<その他「被」が付くことば>
「被相続人」というのは亡くなった人です。
「相続人」は、相続する人ですから、相続される人は亡くなった人ということになります。
「被害者」は害を受ける人です。相手は「加害者」です。
「被告人」は、犯罪の嫌疑を受けて公訴を提起された人です。
「告訴された人」が語源ですが、その意味は「起訴された人」です。
告訴は、犯罪の被害者などが、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求めることですから、起訴とは意味が違っています。
なお「被告」は、民事裁判で訴えを提起された人のことを指しますから、犯罪者というわけではありません。
日常用語では、「被告人」と「被告」が混同されています。
テレビニュースでも、正しく区別されていません。
話が脱線しましたが、「被◯◯」という言葉が出てきたら、思い出してみてください。