2024/03/18|1,385文字
<退職者からの文書>
退職者から会社に宛てて、様々な主張、要求、金銭的請求などが書かれた文書が郵送されてくることがあります。
代理人弁護士名義で届いた文書であれば、退職者が弁護士に相談し、弁護士が退職者の委任を受けて発信していますから、事実関係の認定は不確かなものの、退職者の主張する事実を前提とした法的主張の部分は正当なはずです。
しかし、退職者が自分自身の想いで作成し、会社に対して主張をぶつけてきた文書は、かなり主観に傾いたものであることが多く、その趣旨が不明確なことも多いものです。
大企業では、こうした文書の内容に対して寛大な態度がとられることもあり、言った者勝ちの不公平が発生する恐れがあります。
一方で、中小企業の経営者は立腹し、その内容を全否定しようとする危険があります。
<退職者の心境>
毎日のように出勤し、余計なことを考えずに生活していたところ、退職して自分の時間を持て余すようになった退職者は、あれこれと余計なことを考える傾向にあります。
思いを巡らせるうちに、ネットサーフィンで得た不確かな情報を拡大解釈、類推解釈して、会社に物申したくなることもあります。
転職先の決まっている退職者や、事業を立ち上げる準備を開始した退職者は、毎日が忙しく充実していますから、余計なことを考え、ネットでつまらない情報を探索する時間はありません。
会社に文書を送りつけてくる退職者は、次の仕事が決まっていない場合が多いのです。
すぐに転職先が決まるつもりでいたところ、なかなか決まらないとなれば、精神的にも経済的にも追い詰められてきますから、会社に金銭的請求をしようと考えても不思議ではありません。
<会社に対する主張>
在職中に、大変な目に遭っていたという主張は多く見られます。
セクハラやパワハラのような嫌がらせがあったという、不平・不満・恨みが支離滅裂に書き連ねられているのです。
その中に、一部感謝の気持が述べられていることもあります。
感情を爆発させたいという欲求を満たしているかのような文書となります。
文書に対する回答は、文書で行うのが社会のルールです。
しかし、ただ単に感情をぶちまけているだけの文書であれば、これに文書で回答するのは、冷たくあしらっているように受け取られます。
人事部門の担当者などが直接面会して親身になって話を聞くのが良いでしょう。
そして、職場環境の改善に努めたいという話をすれば、納得して帰ることが多いものです。
<会社に対する要求>
具体的な根拠となる事実関係の主張がなく、ただ単に金銭を要求している内容であれば、「事実関係と計算根拠を示して請求してください」という内容の文書で回答すれば良いでしょう。これに対して、それなりの根拠を示したうえで、会社に対する謝罪の要求や、未払い賃金の請求、慰謝料などの賠償請求を含む内容であれば、文書の中に記された事実関係を確認する必要があります。
会社から回答する文書の内容としては、会社が認定した事実関係と会社の見解の2点に限られます。
回答するまでの期間が長くなってしまうと、退職者が労働基準監督署などに相談して、余計な労力と時間を費やす結果を招くことになりかねませんので、事実関係の確認は、なるべくスピーディーに行いましょう。
退職者の主張する事実関係が信じられないからといって、放置することだけは避けなければなりません。