2025/01/02|1,237文字
<旧パートタイム労働法などの改正>
平成27(2015)年4月1日付で旧パートタイム労働法、施行規則、指針が改正されました。
10年近く前のことです。
パートタイム労働者とは「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用されるいわゆる正社員など通常の労働者に比べて短い労働者」のことをいいます。
※「正社員」には法律上の定義がなく、法令には使えない言葉なので「通常の労働者」などと表示されます。
労働条件は、労働条件通知書などの書面により労働者に通知しておくことが、事業主に義務づけられています。
パートタイム労働者を雇ったときは、事業主に次のようなことについての説明義務があります。〔旧パートタイム労働法第14条第1項〕
・賃金制度の具体的な内容
・教育訓練の具体的な内容
・利用できる福利厚生施設
・正社員への転換を推進する措置の具体的な内容
また採用後も、パートタイム労働者から次のようなことについて質問があれば、事業主はきちんと理解できるように説明する義務があります。〔旧パートタイム労働法第14条第2項〕
・どのような要素をどのように考慮して賃金を決定したか
・参加できる教育訓練の内容がどうしてそのように決まっているのか
・利用できる福利厚生施設の範囲がどうしてそのように決まっているのか
・正社員への転換推進措置は何を考慮してそのように決まったのか
ところが、具体的なことが何一つ決まっていないということもありえます。
こうした状態では、法律違反ということとは別に、職場としての魅力が無いため、退職者が多い一方で、新人を採用できないことになりかねません。
遵法経営の点からも、人材不足解消の点からも、なるべく経費をかけずに改善を進める必要があります。
<同一労働同一賃金の法制化>
パートタイム・有期雇用労働法により、令和3(2021)年4月1日から中小企業を含めすべての企業で、採用時の説明義務が拡大されています。
まず、対象者が増えています。
フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者(パートタイム労働者)に加えて、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者(契約社員など)も対象となっています。
つぎに、説明内容が増えています。
新規採用者には、賞与、手当、退職金、休暇、福利厚生など待遇の各項目について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを説明します。
そして、それぞれの違いについて理由を説明します。
この「待遇の違いの内容と理由」が客観的に合理的なものであることが求められます。
<無期転換申込権>
令和6(2024)年4月1日から、無期転換申込機会を明示することが義務づけられています。
これは5年を超えて働き続ける有期労働契約の従業員に、無期転換権を行使させることを促進するためです。
<実務の視点から>
サービス残業が問題視され減少したのと同様に、採用時の説明義務を果たさない企業も減少していくでしょう。
サービス残業が労働基準法違反の犯罪であり罰則が適用されうるのに対して、「説明不足」には罰則がありません。
しかし、採用したつもりの新人が、会社の説明に納得できず出勤しないリスクがあります。
新人としては、なぜ採用を辞退するのか、「説明不足」の会社に説明するのは無駄だと考えるからです。
働き方改革の流れに乗れないのであれば、一度、社会保険労務士に相談することをお勧めします。