2025/06/12|1,078文字
<健康診断の判定区分>
労働安全衛生法第66条に基づき、企業は常時使用する労働者に対して定期的な健康診断を実施する義務があります。
健康診断の結果に基づき、たとえば以下のような判定区分が設けられています。
– A:異常なし
– B:要経過観察
– C:要再検査
– D:要精密検査
– E:要治療
このうち「要再検査」は、一次検査で異常値が見られ、それが一時的なものか、継続的な健康リスクかを判断するために再度検査を行う必要がある状態を指します。
<再検査の法的位置づけと義務>
再検査は、一次健康診断の結果に基づいて医師が必要と判断した場合に推奨されるものですが、法的には義務ではありません。つまり、企業が従業員に再検査を強制することはできません。
しかし、企業には「安全配慮義務」(労働契約法第5条)があり、従業員が健康に働けるよう配慮する責任があります。そのため、再検査が必要とされた従業員に対しては、受診を勧奨することが望ましいとされています。
<再検査にかかる費用の負担>
再検査の費用負担については、法令に明確な規定はありませんが、一般的には以下のように整理されています。
一般健康診断の再検査:企業が費用を負担するのが望ましいとされる。
特殊健康診断の再検査:企業が費用を負担する義務がある。 精密検査や治療に進む場合:健康保険の適用範囲となり、自己負担が発生する。 |
企業によっては、福利厚生の一環として再検査費用の一部または全額を補助する制度を設けているところもあります。
<労働者の負担と心理的影響>
再検査の通知を受けた労働者は、以下のような負担を感じることがあります。
時間的負担:業務時間内に再検査を受ける必要がある場合、業務調整が必要。
経済的負担:費用が自己負担となる場合、金銭的な負担が発生。 心理的負担:健康不安や、職場での評価への影響を懸念。 |
これらの負担を軽減するためには、企業側の配慮が不可欠です。
たとえば、再検査のための有給休暇の取得を認めたり、費用補助を行ったりすることで、従業員の不安を和らげることができます。
<実務の視点から>
健康診断の再検査は、従業員の健康を守るための重要なステップです。企業には法的義務こそないものの、安全配慮義務の観点から、再検査の受診を促し、必要な支援を行うことが求められます。
また、再検査に伴う労働者の負担を軽減するためには、費用補助や柔軟な勤務対応、心理的サポートなど、企業の積極的な関与が不可欠です。
健康経営の一環として、再検査対応を制度化し、従業員が安心して働ける環境を整備することが、企業の持続的成長にもつながるでしょう。