労働契約(雇用契約)だけが割増で残業代を支払うことになっている理由

2024/11/05|1,160文字

 

<残業手当の理由>

労働基準法は、18時間、週40時間を労働時間の基準として定め、この基準を超える労働に対しては、割増賃金の支払を義務づけています(労働基準法第37条)。

本来であれば自由である使用者と労働者との間の労働契約に、労働基準法による国家の介入があって、割増賃金の支払が義務づけられています。

これは長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するのが目的です。

 

<仕事が遅いと給与が増える>

同じ初任給の新人Aと新人B2人に全く同じ単純作業を任せたとします。

たとえば、A4サイズ2枚の資料を三つ折りにして封筒に詰めるというような作業です。

これを新人Aと新人Bに同じ分量ずつ行ってもらいます。

新人A6時間で終わらせ、余った2時間で別の仕事をして残業せずに帰ったとします。

新人B10時間かかってしまい、2時間の割増賃金が発生したとします。

この場合、新人Bの給与は、新人Aの給与よりも多くなります。

「仕事が遅いのは自分のせいだから残業代は支払わない」というのは、労働基準法に違反します。

 

<請負の場合なら>

A4サイズ2枚の資料を三つ折りにして封筒に詰める作業1万枚分を外注に出したとします。

この場合気になるのは、納期を守ってもらえるのか、仕上がりは綺麗かということです。

どんな人が何人で何時間作業するのかは気になりません。

請負代金には影響しないのです。

 

<雇用契約と請負契約との違い>

雇用の場合には、働き手に対して使用者が口出しできます。

それどころか、教育指導もできますし配置転換もできます。

一方、請負の場合には、働き手の顔ぶれを確認して「上手なやり方を指導させなさい」「他の人に交代させなさい」という口出しはできません。

つまり雇用の場合には、書類の封筒詰めなら不得意な新人Bには分担させず、新人Aに任せるなり、新人Bに上手なやり方を指導するなりして、残業代を削減できるということです。

少なくとも、作業開始の1時間後に、「どうも新人Bは苦手のようだ」と気づいて役割分担を変更することはできます。

 

<残業代を削減するための教育>

教育指導の強化は、生産性の向上に直結します。

また、自分を育ててくれる会社に対しては、愛社精神も高まり「ずっとこの会社で働いていこう」という気持を生み出します。

最近、企業では教育がおろそかにされています。

しかし、教育こそが企業の利益の源泉となります。

とはいえ必要な教育は、外部の研修に参加させたり、資格を取得させたりではありません。

ひとり一人が担当している具体的な業務を効率的にこなし、さらに改善できるようにするには、職場ごとのカスタマイズされた教育が必要です。

自社でまかない切れない場合には、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

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