2024/03/23|1,004文字
<所定労働日数が不明>
年次有給休暇の付与日数は、原則として、1週間の所定労働日数と勤続期間によって決まります。
所定給付日数が何日なのか不明であれば、そもそも年次有給休暇が何日付与されるのかも決まりません。
また年次有給休暇は、入社後最初の半年間、その後は1年ごとの出勤率が8割以上の場合に付与されます。
この出勤率というのは、予め決まっている労働日に対する実際に出勤した日の割合です。
しかし、所定労働日数が不明であれば、出勤率を計算することはできません。
つまり、付与する/しないの判断がつかないのです。
所定労働日数などの労働条件は、入社時に、会社から従業員に書面で通知されていなければ違法です。
これは、会社の規模とは無関係です。
それでも、年次有給休暇を取得させる気の無い会社では、「労働条件通知書」などを交付していません。
<人件費の削減>
年次有給休暇を取得させないというのは、不当に人件費を削りたいわけです。
ですから、従業員の数もギリギリあるいは不足しています。
「人手が足りないから有給休暇を取得させられない」という言い訳が聞かれます。
しかし、年次有給休暇は労働基準法によって国が労働者に与えた権利ですから、会社の状況に左右されて権利の内容が変わることはありません。
むしろ、会社は従業員が100%年次有給休暇を取得する前提で、人材を確保しておかなければなりません。
ウイルス感染症の流行などに備えて、多めに人員を確保しておくという会社独自の政策的な配慮は、その会社に任されていることです。
しかし、年次有給休暇を取得させるのに十分な人員を確保しておくことは、事業を展開する以上、会社に法的に義務付けられていることです。
人件費を削りたいのは経営者です。
お客様、従業員、取引先、出資者、金融機関は喜びません。
ライバル会社は少し喜ぶかもしれません。
当たり前ですが、会社の評判は口コミ情報によって低下していきます。
経営者が、人件費を削減するのではなく、売上を伸ばす努力を進めるべきだと気付かなければ、その会社の未来はありません。
<実務の視点から>
「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。
ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。
会社がブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。
信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。