2023/10/23|984文字
<労災保険での失敗>
採用面接をしていて、応募者から次のような話を聞いたことがあります。
その応募者が働いていた会社では、就業規則に「労災保険はアルバイトに適用しない」という規定があって、アルバイトに労災事故が発生しても、実際に手続をしていなかったそうです。
ある日、アルバイトが出勤の途中でひき逃げされ、ご本人は意識を失い救急車で病院に運ばれて、ご家族が駆けつけました。
アルバイトの父親から、その会社に電話しました。
急な欠勤のお詫びと、労災手続を速やかにして欲しいとの依頼です。
ところが、その会社の社員から自信たっぷりに「うちの会社はアルバイトに労災保険を適用しません」という話をされます。
そこでこの父親が、所轄労働基準監督署の労災課に相談して、会社に調査が入り、労災保険料の不足と、今までの労災隠しが発覚しました。
そして、多額の出費と手続のやり直しの手間が発生し、会社に対する不信から退職者も多数出て、経営が危うくなったということです。
<社内の常識>
社内での長年の常識が、実は法令違反ということもあります。
所轄労働基準監督署に届けてあるのだから、その就業規則に規定されていることは、すべて合法であり問題無いと思ったら大間違いです。
労働基準監督署は、届け出のあった就業規則に違法な部分を見つければ、その是正を指導します。
しかし、私の経験からしても、就業規則の作成や変更を労働基準監督署の窓口に届け出たときに、1時間以上かけてじっくりとチェックされたのは、100回以上の中でたったの1回です。
通常は、ざっと見てくださって、気づいたところをコメントしてくださる程度です。
ですから届の控に「受付」のハンコを押してもらっても、内容が保証されたわけではないのです。
また、就業規則を届け出てから2~3年もすれば、法改正によっていつの間にか違法になってしまう規定が出てくるものです。
<社労士(社会保険労務士)の立場から>
なぜ不適法な就業規則が作成されたのか、その経緯は不明です。
しかし、少なくとも専門家のチェックを経ないまま、所轄労働基準監督署に届け出が行われ、そのまま長年にわたって運用されてしまったのでしょう。
それでも、何かキッカケが無ければ発覚しないものです。
就業規則の作成、変更、運用については、是非、信頼できる社労士(社会保険労務士)にチェックさせることをお勧めします。