2023/09/09|1,383文字
<労働契約>
ある人が、ある会社に「会社の指示で働きます」と約束して、会社がその人に「それなら給料を払います」と約束すれば、これが労働契約です。
契約の中には、特別な方式を必要とするものもありますが、労働契約は口約束でも成立します。
しかし労働契約は、人の自由や生活を大きく左右する重要な契約です。
ですから、働く人を保護するためにも、雇う側は「どういう条件で働くのか」を書面の交付などによって示す義務があります。
中には、この義務を果たさない会社もあって、さまざまなトラブルを生じています。
<契約の成立>
誰かと取引するときには、どんな条件で取引するのかという約束をします。
この約束が「契約」です。
契約書を作らずに、こうしよう、ああしようと口約束をしただけでも、契約は成立します。
自動販売機で缶コーヒーを買うのは売買契約です。
このときには、口約束すらありません。
そして、契約が成立すれば、お互いにその内容を守らなければなりません。
もし、相手が契約に違反したら、きちんと守るように求めたり、違反によって発生した損害賠償を請求したりすることができます。
逆に、自分が違反すれば、相手から契約を守るよう求められたり、損害賠償を請求されたりします。
ですから、契約で何が決まっていたかということは、自分が相手に対して何を要求できるか、あるいは自分が何をしなければならないのかを決めるための、大事な基準となるのです。
自動販売機で缶コーヒーを買ったのに出てこなかったら、そして投入したお金も戻ってこなかったら、当然に返金を請求できるわけです。
このことは、自動販売機にお金を投入する前から決まっていたわけです。
<労働者の保護>
労働契約を結ぶと、労働者として法律による特別な保護を受けることができるようになります。
ここが「業務請負契約」や「業務委託契約」などとは違うところです。
もちろん、契約書のタイトルが「業務請負契約書」や「業務委託契約書」であっても、実質的な内容が労働契約であれば、労働契約としての効力を持ちます。
そして労働契約が成立したら、その内容を勝手に変えることはできません。
労働契約で、給料の額や出勤日・出勤時間、担当する仕事、働く期間などの労働条件が決まっていれば、労働者も雇い主も、その条件を一方的に変えることはできないのが原則です。
もし、労働契約で決められている労働条件を変更したければ、相手にお願いして、契約内容を変更することに同意してもらわなければなりません。
同意が無ければ、今まで通りの労働条件で仕事をすることになります。
ですから働き始めた後で、労働条件について、労働者と雇い主で意見の違いやトラブルが発生したときには、労働契約でどう決まっていたかということが、とても重要になるのです。
<社労士(社会保険労務士)の役割>
労働条件をどのように定めたら、働く人と雇い主にとって都合が良いのか、またトラブルを未然に防げるのか、さらに違法や不当の問題を避けられるのかについては、信頼できる社労士にご相談ください。
万一、トラブルになってしまった場合でも頼りになります。
当事者の主張内容を法的観点から整理し、その正当性、反論可能性を明らかにしたうえで、実体と証明の両面からのご対応をご提案いたします。
人の感情に配慮して、お互いに怨みを残さない解決を目指すのが社労士の使命です。