労働時間の定義については、会社オリジナルのマイルールを設定することができません。公定のルールを再確認しましょう。

2024/03/30|1,360文字

 

<労働時間把握の重要性>

企業には、労働時間の適正な把握と記録の保管が義務づけられています。

かつては、残業時間を正しく集計して、残業代を正しく支払う目的だけが強く認識されていました。

しかし、平成31(2019)年4月からは、働き方改革の一環で、従業員の健康管理の側面から、労働安全衛生法により労働時間の適正な把握が法的義務となり、産業医の機能も強化されています。(【参考条文】参照)

さらに、社会保険の適用拡大が進むなか、所定労働時間と実労働時間との乖離の問題もクローズアップされています。

 

<そもそも労働時間とは>

このように、労働時間の適正な把握と記録の保管が企業に義務づけられていたとしても、労働時間に該当するかしないかの基準が誤っていたのでは、前提が崩れてしまいます。

そこで、労働時間の定義は、数多くの裁判例をも踏まえて、通達により公定されているのです。

つぎに、ポイントを厚生労働省の『建設業時間外労働の上限規制わかりやすい解説』から引用しておきます。

 

・労働基準法における労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間のことをいいます。使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たります。

・労働者が必ずしも現実に活動していなくとも、使用者の指揮命令下にある時間であれば労働時間に当たります。

・労働時間か否かは個別判断になりますが、労働時間の考え方そのものは、業種によって異なるものではありません。

 

<問題となりやすいケース>

たびたび訴訟の対象となっているケースには、次のようなものがあります。

 

  • 手待ち時間

使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間は、労働時間に当たります。

昼食に出かける際、会社支給のスマホの携帯を義務づけられ、社内や取引先などから連絡があった場合には、直ちに応答するよう指示されていれば、これは労働時間であって休憩時間ではありません。

 

  • 通勤の時間

直行直帰を含め、通勤時間については、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に当たりません。

 

  • 着替え、作業準備等の時間

使用者の指示により、業務に必要な準備行為(着用を義務づけられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行う時間は、労働時間に当たります。

作業開始前の朝礼の時間、作業開始前の準備体操の時間、現場作業終了後の掃除時間は、一部の特殊な例外を除き労働時間に当たります。

 

【参考条文】

労働安全衛生法第66条の8の3

事業者は第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。

 

労働安全衛生規則第52条の7の3

第1項 法第66条の8の3の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。

第2項 事業者は前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、3年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

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