振替休日 ― 代休との違いや問題点、誤った運用

2024/02/22|1,755文字

 

<振替休日とは>

振替休日とは、予め休日と定められていた日を出勤日とし、その代わりに、他の出勤日を休日とするときに、休日となった日のことをいいます。

これは裏返すと、予め出勤日と定められていた日を振替休日とし、その代わりに、他の休日を出勤日とすることだと表現することもできます。

 

<代休とは>

代休とは、予め休日と定められていた日を出勤日とし、休日出勤が行われた後で、その代償として、それより後の出勤日を休日と決めて休むことをいいます。

急に必要が生じたので、休日にとりあえず出勤してもらい、後になってから、代わりの休みを決定するという形になります。

 

<振替休日と代休の共通点>

振替休日も代休も、就業規則や労働契約で定められた休日に出勤する点が共通しています。休日は本来、労働が免除されている日ですから、従業員はこの日に休むことが原則として保障されています。根拠なく、休日に出勤するように求められることはありません。

このように、振替休日や代休は、本来の休日に出勤することを前提としますから、就業規則や労働条件通知書に、休日労働と振替休日や代休についての規定がなければ、行うことはできないのです。

 

<振替休日と代休の違い>

振替休日は、休日と出勤日を交換することであり、遅くとも本来の休日に出勤する前日までには、代わりの休みが決まっています。代休では、代わりの休みが決まらないまま休日出勤を行い、後日、代わりの休みを決めることになります。

振替休日であれば、代わりの休みを先に取っておいてから、本来の休日から出勤日に切り替わった日に勤務するということもありえます。しかし代休では、代わりの休みが、休日出勤よりも後の日になります。これは、振替休日が計画的に行われるものであるのに対し、代休が代わりの休みを決められないまま、とりあえず休日出勤が行われるものだからです。

 

<振替休日の目的>

振替休日は、会社にとって、法定休日の割増賃金を避けられる点で、人件費の増加を抑えることができます。

同一週内で、代わりの休みを設定すれば、1週間での労働時間の増加による割増賃金の発生を抑えることもできます。

従業員にとっても、出勤日と休日が予め分かっているので、ワーク・ライフ・バランスの面で有利です。

 

<振替休日のデメリット>

就業規則で、振替休日での「代わりの休み」を同一週内にする規定とすれば、人件費は抑えられるのですが、かなり窮屈な制度となってしまいます。

また、給与の締切日をまたがないように「代わりの休み」を設定するルールとしなければ、給与計算が面倒になってしまいます。しかし、給与の締切日近くになって、本来の休日に出勤する必要が生じたときには、「代わりの休み」が設定しにくくなってしまいます。

さらに、本来の休日に出勤する前に、「代わりの休み」が取れれば良いのですが、計画した「代わりの休み」に仕事が入って出勤した場合には、給与計算のやり直しや修正が発生してしまいます。振替休日ではなくなってしまうからです。

 

<就業規則の規定>

厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(令和5年7月版)は、振替休日について、次のように規定しています。

「業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。」

 

<誤った運用と問題点>

部下が上司に対して「この日、子供の用事で休みたいのですが、仕事が溜まっているので、年次有給休暇を取得するのではなく、代わりに来週の土曜日に出勤したいです」と打診して、了解を得たとします。

これは、「あらかじめ休日を他の日と振り替えた」ことになり、振替休日のようにも見えます。

しかし、「業務の都合」ではなく「個人の都合」であり、「会社が必要と認める場合」ではなく「個人が必要と認める場合」です。ですからこうしたことを安易に認めてしまうと、就業規則に規定のない出勤日の変更制度を作ることになります。

個人の都合で、自部署内あるいは他部署との業務の連動が弱くなったり、週40時間を超える労働時間の発生により残業代が増えたりという悪影響が出てきます。これを一人の部下にのみ認めるわけにもいかず、その部署のマイルールともなりかねません。

就業規則にない制度の創設を安易にしてはならないという好例でしょう。

PAGE TOP