2024/02/21|1,387文字
<モデル就業規則>
厚生労働省のホームページに掲載されている「モデル就業規則」の最初のほうに、次のような規定があります。
「この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」〔モデル就業規則第1条第2項〕
そして、この規定について、次のような説明があります。
「本規程例に労働者の就業に関するすべての事項が定められているわけではありません。本規程例に定めがない事項については、労基法等関係法令の規定によることになります」
このことは、すべての就業規則にあてはまることですから、念のための注意規定として、ほとんどすべての就業規則の最初のほうに置かれています。
ちなみに、「規定」というのは、第1条、第2条…という一つひとつの条文を指します。
そして、「規程」というのは、こうした条文が集まって「就業規則」「賃金規程」「退職金規程」のようにまとめられたものを言います。
<労働基準法の性質>
労働基準法の最初のほうに、次のような規定があります。
「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」〔労働基準法第1条第2項〕
つまり、労働基準法の基準は最低限のものだから、これを上回ることはかまわないが、下回ることは許さないと言っています。
<最低限の保障があること>
上記の2つのことから、まず言えることは、たとえば、就業規則に年次有給休暇の規定が無くても、労働基準法には規定があるので、労働基準法どおりの年次有給休暇が付与されるということです。
同じことは、産休、育休、介護休業、子の看護休暇、業務災害に対する補償など、あらゆることに当てはまります。
「うちの会社の就業規則には、産休の規定なんか無いから…」というときは、労働基準法の規定をチェックすれば良いのです。
<プラスアルファの保障>
もう一つ言えることは、たとえば、会社の就業規則に産休や育休の規定が無い場合には、その会社の従業員には、法令による最低限の権利しか保障されていないということです。
産休の期間を長く認めていたり、産休中に賃金の支払がある会社では、そのことについての規定が、就業規則の中に定められています。
つまり、規定が無ければ、プラスアルファの恩恵は無くて、最低限の保障となるわけです。
<就業規則の無い会社>
就業規則が無いということは、すべてのことについて「就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる」という規定を置いているようなものですから、何か不明なことがあるときは、関連する法令の条文を確認して判断することになります。
実際、経営者が従業員から権利を主張され、何とか言いくるめようとして抵抗し、訴訟トラブルに発展するというのは、こうしたケースが多いのです。
<実務の視点から>
やはり、小さな会社でも就業規則は必要です。
むしろ、従業員が少ないうちのほうが、就業規則の作成は容易です。
「うちは、アルバイトに年次有給休暇だとか、産休だとか無理だから…」という会社にも、労働基準法や労働安全衛生法などが適用されます。
いきなり請求されても困らないように、運用基準を決めておいてはいかがでしょうか。
なるべく早期に信頼できる社労士にご相談ください。