経歴詐称が許されない理由

2023/04/28|983文字

 

<経歴詐称のリスク>

従業員の採用にあたっては、履歴書やジョブ・カードなどで学歴・職歴を確認するのが一般です。

住所、氏名、年齢などを偽れば、社会保険の手続きなどに支障が出るものの、経歴を偽っても発覚しにくいですし、際立った不都合も発生しません。

このため採用選考の段階で、採用されたいがために、経歴を偽るリスクは高いものです。

しかし採用の段階で、職歴などの確認をすることは手間がかかるので、厳密な調査はせず、就業規則に「重要な経歴を詐称して雇用されたときには解雇することがある」趣旨の規定を置き、応募者にはこれを説明しておくことが行われます。

 

<嘘はいけない>

採用にあたって、経歴を詐称するような人は、入社後も自分に都合の悪い事実は隠すかもしれませんし、嘘の報告をするかもしれません。

報連相を適正に行わない従業員は、会社の組織的な運営を困難にする恐れがあるのです。

しかし経歴に限らず、会社に嘘の申告をして採用された者については、同様のことが言えるのであって、経歴だけが重要ということではありません。

どのような嘘であっても、嘘はいけないのです。

 

<経歴詐称とは言うけれど>

よくよく考えてみると、会社は応募者がどの会社のどの部署でいつからいつまで勤務していたのかについて、関心があるわけではありません。

その経歴に相応しい知識・経験・スキルの蓄積に期待するのです。

実際、経歴の一部に詐称があったとしても、期待以上の知識・経験・スキルを発揮し会社に貢献する人について、解雇を検討することなどないでしょう。

 

<知識・経験・スキルの確認>

こうしてみると、会社は採用にあたって、応募者の経歴よりも知識・経験・スキルを具体的に確認する必要があるといえます。

たとえば、大企業の採用研修部門で5年間の勤務経験があるからといって安心してはいけません。

具体的な業務内容を聞いてみたら、採用については応募者の電話受付と面接・試験結果のパソコンへの入力、履歴書のスキャンを担当していたに過ぎず、研修については会場の予約、弁当の手配、資料のコピーを行っていただけということもあるのです。

抽象的な経歴のみを確認し、具体的な内容に踏み込まないことの危険性を示した例です。

就業規則についても「知識・経験・スキルについて、虚偽の申告をして雇用されたときには解雇することがある」趣旨の規定を置くほうが現実的でしょう。

 

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