労働基準法の記事

<アルバイトを始める前に労働条件を確認>

働き始めてから、「最初に聞いた話と違っていた」ということにならないように、会社から契約書など書面をもらい、労働条件をしっかり確認しましょう。特に次の6項目については必ず確認しましょう。

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

・契約期間の定めがある契約を更新するときのきまり(更新があるか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・勤務時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、 残業の有無、休憩時間、休日・ 休暇、 交替制勤務のローテーションなど)

・バイト代(賃金)はどのように支払われるのか(バイト代の決め方、計算と支払いの方法、支払日)

・辞めるときのきまり(退職・解雇に関すること)

※労働条件を確認する書類には、雇用契約書、労働契約書の他に、雇い入れ通知書、労働条件通知書などがあります。

 

<バイト代は、毎月、決められた日に、全額支払われるのが原則>

労働基準法では、バイト代などの賃金について「賃金の支払いの5原則」というルールがあります。バイト代は、通貨で、全額を、労働者に直接、毎月1回以上、 一定の期日に 支払われなければなりません。

また、バイト代などの賃金は都道府県単位ごとに「最低賃金」が定められており、これを下回ることはできません。

 

<ペナルティによる減給の制限>

遅刻を繰り返すなどにより職場の秩序を乱すなどの規律違反をしたことを理由に、就業規則に基づいて、制裁として、本来受けるべき賃金の一部が減額されることがあります(これを減給といいます)。

しかし、事業主(会社)は規律違反をした労働者に対して無制限に減給することはできません。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

また、複数にわたって規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給制なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。

 

<アルバイトでも残業手当があります>

労働基準法では、法定労働時間を超えて残業をさせる場合、事業主はあらかじめ、労使協定(「36(さぶろく)協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

また、残業に対しては、割増賃金 (残業手当)を次のように支払うよう定めています。

・1日8時間または週40時間を超えた場合は、通常の賃金の25%以上の割増賃金

※ 労働者10人未満の商業、接客娯楽業等は週44時間

・1か月に60時間を超える残業の割増率は50%(ただし、中小企業は猶予)

午後10時から午前5時までに働いた場合は25%以上の割増賃金(深夜手当)が支払われます。

(満18歳になるまでは、午後10時から午前5時までの時間帯に働けません。)

 

<アルバイトでも条件を満たせば有給休暇が取れる>

年次有給休暇とは、あらかじめ働くことになっている日に仕事を休んでも、賃金がもらえる休暇のことで、いわゆる 「有休」や「年休」のことです。

年次有給休暇は、正社員、パート、アルバイトなどの働き方に関係なく、次の条件を満たす場合、取ることができます。

・週1日以上または年間48日以上の勤務

・雇われた日から6か月以上継続勤務

・決められた労働日数の8割以上出勤

 

<アルバイトでも仕事中のけがは労災保険が使える>

正社員、アルバイトなどの働き方に関係なく、また、1日だけの短期のアルバイトも含めて、労災保険の対象です。

仕事が原因の病気やけが、通勤途中の事故で病院に行くときは、健康保険を使えません。※健康保険証を提示しないことになります。

病院で受診するときに、 窓口で労災保険を使うことを申し出てください。

原則として治療費は無料となります。

また、仕事が原因のけがなどで仕事を休み、バイト代をもらえない場合は、休業補償制度があります。

 

<アルバイトでも会社の都合で自由に解雇はできない>

アルバイトだからといって、簡単に解雇できるものではありません。解雇は、会社がいつでも自由に行えるというものではなく、社会の常識に照らして納得が得られる理由が必要なのです。

 

<困ったときの相談窓口>

アルバイトをして労働条件など、労働関係で困った場合は、全国の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働 相談コーナー」にご相談ください。

相談は無料です。

また、夜間・土日の相談は、「労働条件相談ほっとライン」 を活用してください。

 

労働条件相談ほっとライン

0120-811-610

月~金:午後5時~午後10時

土・日:午前10時~午後5時

 

2017.10.06.現在

<労働基準法の規定>

労働基準法は、その5条で強制労働を禁止し、次の罰則規定を置いています。

 

第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

 

<強制労働の意味>

「今どき強制労働なんて」と思われてしまうかもしれません。「強制労働」というと、ピラミッド建設に駆り出される奴隷のようなイメージを抱いてしまうのでしょう。

しかし、労働基準法の規定を見ると、次のように書かれています。

 

(強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

 

ここにいう不当に拘束する手段には、長期労働契約(14条)、労働契約不履行に関する賠償予定(16条)、前借金相殺(17条)、強制貯金(18条)などがあります。〔昭和63年3月14日基発第150号通達〕

カッコの中の「〇条」というのは、労働基準法の条文を示しています。

 

<辞めさせてくれない会社>

自分の勤務先がブラック企業であることに気づき、退職を申し出たけれども辞めさせてもらえないという労働相談が増えています。

辞めさせてもらえないというのは、具体的には「辞めるなら違約金を支払え」と本人や身元保証人に迫るようです。

これなどは、労働基準法16条の「労働契約不履行に関する賠償予定」があることを示していて、「退職するな!働き続けろ!」というわけですから、強制労働の禁止に違反していると思われます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

法律は、法律のことを知っている人の味方です。

法律のことを良く知らない人は、良く知っている人を味方に付けて身を守りましょう。

労働関係法令についていえば、信頼できる社労士を味方に付けるのが安心です。不安に思うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.24.解決社労士

<労働基準法の役割>

労働基準法は、労働者が人間らしく生きていけるようにするための、労働条件の最低基準を定めています。

このことは、労働基準法1条に次のように定められています。

 

(労働条件の原則)

第一条  労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

労働基準法と聞くと、使用者側にいろいろと罰則をちらつかせて義務付けているイメージを持たれますが、この条文では、「労働関係の当事者」つまり使用者と労働者の両方に、労働条件の維持向上を求めています。

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法2条1項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、少子化によって労働者が不足している現状では、労働者側が優位に立っているようにも思われます。

また、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

<労働条件の遵守>

続けて労働基準法2条は2項に次の規定を置いています。

 

2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

 

ここでも「労働者及び使用者は」と規定し、労働条件を守ることについては、労働者も使用者も対等であることを示しています。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、労働条件が決まっていなければ守りようがありません。また、文書化されていなくて、口頭で説明されているだけでは不明確です。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

このように労働条件の明示は、使用者だけに義務付けられています。

ここでいう「厚生労働省で定める方法」というのは基本は書面ですが、電子化された文書によることもできることされています。口頭ではダメです。

そして、明示された労働条件が実際と違っていたら、これを理由に労働者から使用者に対して退職を通知できます。

 

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

ブラック企業で退職を申し出たら、「退職させてもらえない」とか、「違約金の支払いを求められた」とか、不当なことを言われたという話を耳にします。

しかし大抵のばあいは、この労働基準法15条2項を根拠に退職を通知できるケースでしょう。

 

このように、労働条件の正しい明示は使用者の義務ですから、口頭による説明しか無いのであれば、労働者としては「知りませんでした」「忘れました」という言い訳が許されることになってしまいます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「労働条件なんてよくわからないから決めない」「労働条件通知書を渡して違法性を指摘されたら困る」という経営者の方は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.23.解決社労士

<労働基準法11項>

法律の第1条というのは、注目されないものです。しかしその法律の目的や、大原則が規定されていますから、これを踏み外すとお話になりません。

労働基準法11項には、次のように規定されています。

「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」

この規定は、憲法(日本国憲法)251項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定に基づいています。

そもそも労働基準法ができたのは、主に憲法272項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」という規定があるからです。

つまり、資本家は労働者から搾取するものであり、国は労働者を資本家から守る義務を負うというところから出発しています。

 

<労働基準法12項>

これもまた注目されていませんが、労働基準法12項には、次のように規定されています。

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」

これを踏み外す危険も大きいと思います。

たとえば人手不足の折、会社の偉い人が「うちの会社は週休2日制だけど、労働基準法は1日でOKだと規定しているから、それでいいんじゃねぇの?」と言いかねません。

確かに労働基準法35条には、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と規定されています。

たしかに、新たに会社を設立した場合には、週休1日制でスタートしても違法ではありません。しかし、週休2日制の会社が労働基準法35条を理由に週休1日に変更したら、労働基準法12項に違反します。

法律というのは、どれか1つの規定に違反していなくても、別の規定に違反すれば違法となることがありますから、木を見て森を見ずというのでは失敗します。

それぞれの法律の目的、あるいはそれを超えて、法律の気持ちというものを捉えていないと、条文一つひとつを見て勘違いしてしまうことは避けられません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社労士は、数多くある労働関係法令一つひとつの気持を把握しています。

経営者が「いいこと考えた!」と思ったときは、落とし穴に落ちたときかも知れません。他社に先駆けて何か工夫しようと思いついたときには、実行に移す前に信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.17.解決社労士

<休憩時間の自由な利用>

労働基準法は、休憩時間について、次のように規定しています。

 

(休憩)

第三十四条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

2  前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

 

3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 

このように、労働基準法34条3項は、使用者に対し休憩時間を自由に利用させることを義務づけています。

 

<通達による休憩時間利用の制約>

労働基準法などの法律は、立法府である国会が制定しています。そして、これを具体的に適用する基準として、行政府が次のような通達を発しています。

 

事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない。〔昭和22年9月13日基発第17号通達〕

 

休憩時間中の外出について、所属長の許可を受けさせることも、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない。〔昭和23年10月30日基発第1575号通達〕

 

<休憩時間利用の制約についての裁判所の判断>

法律の適用について、その合法性(合憲性)が裁判で争われた場合、最終的には最高裁判所が判断を示します。

たとえば、目黒電報電話局事件について、最高裁判所は次のような判断を示しています。

 

一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法三四条三項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法三四条三項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。〔最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社内で、休憩時間の自由な利用に対する制約があった場合、それが法的に許されるかどうかを判断するには、法律の条文を読んで、自分なりに解釈するという方法では危険なのです。

数多くの通達を確認し、関連する裁判例をよく読んで、具体的な制約に当てはめたうえで、専門的に判断する必要があるのです。

顧問の社労士を置いておくことは、会社がつまらないことで足元をすくわれないようにするため、ぜひ必要なことだと思います。

 

2017.08.13.解決社労士

<一斉休憩の原則>

労働基準法の前身は工場法でした。工場では、労働者に一斉に休憩を与えるのが効率的です。

現在、休憩時間は事業場ごとに一斉に与えなければならないというのが、工場だけではなく原則的なルールとなっています。〔労働基準法34条2項本文〕

つまり、労働者に対して交代で休憩時間を与えることは、原則として認められません。

 

<事業の種類による例外>

運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等では、労働基準法のこの規定の適用が除外されています。〔労働基準法40条1項、労働基準法施行規則31条〕

つまり、これらの事業では、労働者に一斉に休憩を与える必要がありません。

 

<その他の事業での例外>

上記の例外に含まれない事業でも、労使協定を締結すれば、休憩時間を一斉に与える必要はなくなり、交代で休憩時間を与えることもできるようになります。〔労働基準法34条2項但書き〕

しかも、この労使協定は36協定などと違って、労働基準監督署長への届出が不要です。

それでも、無ければ労働基準監督署の監督(調査)が入ったときには指摘されますから、一斉に休憩を取らせない事業場では、労使協定書を作成して保管しておきましょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

36協定書の届出すらしていない会社もありますが、必要な労使協定が無いのは違法ですから、一度、信頼できる社労士にご相談のうえ、作成して保管しておくことを心からお勧めします。

 

2017.08.06.解決社労士

<36協定の抜け道のハズが>

新国立工事で自殺した男性が、上限月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。

本来、会社と労働者との間で適法な36協定を交わし、所轄の労働基準監督署への届け出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は1か月に1分でも違法です。

この会社では、時間外労働の上限が月80時間と言われています。この内容での36協定書の届け出があって、手続きは適法なのに運用が違法だったということになるのでしょう。

 

<違法な慣習の発生メカニズム>

社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。

これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。

もし「いいこと考えた」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえないという可能性すらあります。

 

<違法な慣習の例>

違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。所轄の労働基準監督署は就業規則の届けを受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。

違法な慣習としては、次のような例があります。

・正社員には年次有給休暇を取得させない。

・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。

・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。

・妊娠したら退職するルールがある。

・日給制、日給月給制、年俸制で残業手当を支給しない。

・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。

・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。

・遅刻に対する「罰金」の定めがある。

・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。

まだまだキリがないですね。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

今日まで何も問題が無くても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。

たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、「パパママ育休プラス」「子の看護休暇」を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。

面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。

 

2017.08.04.解決社労士

<管理監督者の処遇>

良く知られていることですが、管理監督者には残業代の支給が必要ありません。〔労働基準法41条〕

役職手当や管理職手当などの名目で、一般社員とは一線を画した高額の手当が支給されているので、これを含む固定給をベースに計算した残業手当を支給しなくても、十分な総支給額になるから問題ありません。

 

<責任の重い管理監督者>

管理監督者には強大な権限が与えられている一方で、その役割や責任も重いものです。

しかし、自覚の不十分な新米管理監督者は、「残業手当が出ないから毎日早く帰ろう」「時間管理が無いから遅刻しても大丈夫」「土日は趣味と家族サービスに充てよう」といった甘い考えをもってしまう危険があります。

パートやアルバイトに使われている労働条件通知書をカスタマイズして、管理監督者向けに説明する文書を作成し、これを用いて説明するとともに署名してもらうなどして、自覚を促しておく必要があるでしょう。

そして、もし管理監督者にふさわしくない言動が見られたら、もう一度、この文書を示して問題点を指摘すべきです。

 

<管理監督者の基準>

管理監督者といえるかどうかは、その人の肩書ではなく、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などの実態により判断されます。

管理監督者といえるための最低限必要な条件は、すべて満たしていることが必要です。

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

・その地位にふさわしい待遇がなされていること

実態として、部長という肩書の社員の中でも、これらの条件を満たしているのは極わずかでしょう。

社員でありながら、実質的には取締役のような立場にある人だけが、管理監督者といえるのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

権限ばかりを振りかざし、役割と責任を果たさないブラック管理監督者が出て来ないよう態勢を整えるには、信頼できる社労士にご相談ください。

ただし、権限を与えられず、役割と責任を押し付けられている「名ばかり管理監督者」に、残業代を支給しないのは違法ですので、くれぐれもご注意ください。

 

2017.07.20.解決社労士

<「基準」の意味>

もちろん「最高」の水準を意味するものではありません。しかし、「標準」や「目安」を示しているわけでもないのです。

労働基準法の「基準」とは、この一線を踏み越えると違法になるというギリギリの「最低」水準や「限度」、「禁止事項」のことを言っています。

ですから、会社独自の判断で労働基準法に示された「基準」よりも労働者に有利なことをするのはかまいません。たとえば、入社とともに年次有給休暇を14日付与するなどがその例です。

 

<「基準」の個別性>

労働基準法の「基準」は項目ごとに定められています。

「うちの会社は残業手当を多めに支給しているから、有給休暇は取らせなくてもいいだろう」など、全体のバランスで調整することはできません。

 

<違約金・賠償額の予定禁止>

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」〔労働基準法16条〕

かつては、中途で退職したり、会社に損害を与えたりした場合は、労働者だけでなくその家族も違約金を払う、損害賠償を行なうなどの契約が見られました。

しかし、これは労働者の退職の自由を奪うことになるので、労働基準法が罰則付きで明確に禁止したのです。

 

<「罰金」のあるブラック企業>

ところが実際には、遅刻したら罰金3千円、お皿を割ったら1枚につき千円など、気軽に労働基準法違反を犯している会社もあります。

そもそも「罰金」というのは、国家権力が科すものですから、民間企業が従業員から罰金を取るというのは明らかにブラックなわけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社内での「常識」に従って昔から行われていることが、実は労働基準法違反ということだってあります。

労働基準監督署への三六協定書の届出など形式的な面だけでなく、社内で行われていること全体について適法性が確保されているのか、労働条件審査を受けてみてはいかがでしょうか。

人事部では問題ないつもりでいても、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.02.解決社労士

<ブラック疑惑>

マスコミやネットで、ブラック企業の話題が一般化し、自分の勤務先もブラックではないかという疑いを持つ従業員が増えてしまいました。

 

<疑惑のポイント>

ブラック企業の疑いを抱かれるのは、次のようなポイントです。

・賞与が支給されない

・退職金の制度が無い

・通勤手当が一部または全く支給されない

・慶弔休暇が無い

・週休二日制ではない

さらには、次のようなことまで…

・休職の制度が無い

・半日や時間単位の年次有給休暇取得ができない

・病欠を後から年次有給休暇に振り替えることができない

これらは、法令によって労働者の権利とされているものではありません。比較的多くの会社で、事実上行われているにすぎません。

つまり、これらのことを実施するかどうかは、それぞれの会社の判断に任されていて、法令によって強制されているわけではないのです。

たとえば「賞与が支給されない会社はブラック企業」などとは言えません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社がブラックの疑いを晴らすためには、労働条件審査と教育・研修が役立ちます。

専門家による客観的な労働条件審査により、労務管理上のあらゆる観点からの適法性がチェックできます。

また、就業規則や社内ルールと労働法について、従業員をきちんと教育すれば、会社が正しいことを理解してもらえるでしょう。

具体的なことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.30.解決社労士

<国の政策に対する無知>

産前産後休業というのは、労働基準法による国全体の制度です。また、育児休業というのは、育児介護休業法による国全体の制度です。ですから、会社の状況に左右されません。むしろ、会社は従業員が産休や育休を取得する前提で、人材を確保しておかなければなりません。

たとえ就業規則や社内ルールに、産休や育休についての定めが無くても、その会社には法令通りに産休や育休の規定が適用されます。

日本で少子高齢化が深刻化し、出産や育児に対する法的配慮が強化されています。このことを知らずに会社を経営しているというのは危険です。

当たり前ですが、産休や育休に対応できない会社の評判は口コミ情報で低下していきます。

経営者が、国の政策を踏まえて経営していかなければ、その会社の未来はありません。

 

<解雇が困難であることに対する無知>

産休・育休を取らせないということは、そのまま勤務させるということではありません。退職を迫るということです。これは不当解雇にあたります。

妊娠や出産を理由として解雇するのが不当解雇にあたるということについては、法令に具体的な定めがあります。〔男女雇用機会均等法9条3項〕

不当解雇になるということは、解雇が無効になるということです。経営者は解雇したつもりになっていても、その従業員には従業員としての権利が続くということです。

そして実際に勤務していなくても、勤務できないことについて会社側に責任があるわけですから、会社には賃金支払義務が残ります。それだけでなく、会社はその従業員に辛い思いをさせたのですから、慰謝料も支払うことになるでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

その昔は、結婚退職が働く女性のハッピーエンドだったかもしれません。しかし、それは遥か昔のことです。

経営者は、時代の流れに乗らなければ生き残れません。会社が流れに乗り切れず、ブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

2017.05.28.解決社労士

<極めて限定されている管理監督者>

管理監督者といえるかどうかは、その人の肩書ではなく、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などの実態により判断されます。

管理監督者といえるための最低限必要な条件はすべて満たしていることが必要です。

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

・その地位にふさわしい待遇がなされていること

実態として、部長という肩書の社員でも、これらの条件を満たしているのは極わずかでしょう。

 

<労働時間等に関する規定の適用除外>

労働基準法には、次のような規定があります。

「第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

第2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」

管理監督者には、第四章の労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇、第六章の年少者、第六章の二の妊産婦等の中の労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されないということです。

 

<使用者の立場での労基法適用>

労働基準法の規定からすると、管理監督者は明らかに使用者です。

「第10条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」

管理監督者は、労働者としての保護規定の一部が適用されないうえ、使用者としての義務を負っています。

 

<深夜手当の支払>

最高裁判所の判決に、「管理監督者については、深夜手当を支払う必要はあるけれども、管理監督者に該当する労働者の所定賃金が労働協約、就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、深夜手当を支払う必要がない場合もある」というのがあります。〔最二小判平成21年12月18日〕

これを受けて、管理監督者であっても深夜手当の支払いは必要であるといわれます。

しかし厚生労働省は、管理監督者の条件に「出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと」を掲げていますから、この条件を満たす本当の管理監督者であれば、午後10時から翌日午前5時の間に何時間働いたかを集計することは困難です。

結局、厳密な意味での深夜手当を計算して支給することはできず、概算でこれに代わる手当を支給する形になります。

 

<名ばかり管理監督者>

管理監督者扱いされていて残業手当も支給されていないような社員が、自分の判断で出勤したり休んだり、遅く出勤したり早退したり、また、取締役と同レベルで経営に口出ししたときに、懲戒処分や降格が検討されるようであれば、その人は「名ばかり管理監督者」です。

こうしたことを理由に不当解雇をしてしまうと、会社は過去2年分の残業手当などの他に慰謝料の請求をされても仕方がないのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社内で管理監督者扱いされている社員が、本当の管理監督者なのか、それとも「名ばかり」なのかは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.24.解決社労士

<労働法違反の公表>

厚生労働省ホームページの「長時間労働削減に向けた取組」のコーナーに労働法違反で書類送検された事案などが公表されました。(平成29年5月10日)

これは、原則として1年間公開されるそうですから、お取引先やお客様の目に触れる可能性があります。

 

<安全面の問題>

労働安全衛生関連の法令違反が大半を占めています。

・作業現場そのものに危険があったもの

・免許や教育研修無しに作業にあたらせたもの

不当な経費節減や手抜きが摘発されています。

 

<賃金の問題>

毎年、最低賃金が上昇していますから、これに追いつかず、いつの間にか最低賃金法違反ということもあります。

・外国人や技能実習生にも最低賃金が適用され、本人の同意は無関係であること

・固定(定額)残業代設定の段階で、最低賃金法違反がありうること

・固定(定額)残業代の基準を上回る残業代を別に支給すべきこと

このような点についての理解不足が多いようです。

代休と休日出勤割増や、深夜割増についても誤解が見られます。

 

<労働時間の問題>

三六協定の未届け、三六協定を上回る残業という形での違法残業が書類送検されています。

三六協定は労使協定ですから、就業規則と同様に労働者に周知しなければなりません。

ところが違反のある企業では、労働者自身が1か月間で何時間まで働いても違法にならないのか、まったく認識していないケースも多いように思われます。

 

<ウソの報告>

労働基準監督署や労働局にウソの報告書を提出して書類送検されている企業があるのは不思議です。

税務署が脱税の手口を熟知しているのと同じように、労働基準監督署などは法令違反のごまかし方を熟知しています。企業側のしろうとが知恵比べをしてもかないません。

また、正直な報告書の提出では「過失」を主張できる場合も多いのですが、ウソの報告書を提出すると「故意」に行っていたと推定されても仕方ありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

知っていて法令違反をしているのは論外ですが、適法性について疑問があれば所轄の労働基準監督署に確認することをお勧めします。

藪蛇(やぶへび)になることを恐れるのであれば、少し離れたエリアの労働基準監督署に相談しても良いでしょう。

それも危ないと感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.14.解決社労士

<労働条件通知書の交付義務>

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。新人なら、1回目は雇い入れ通知書で、2回目からは契約更新の時や、時給変更、出勤日変更の時から労働条件通知書というパターンもあります。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」〔労働基準法15条〕

これが労働基準法の定めです。そして、罰則もあります。

「三十万円以下の罰金に処する。」〔労働基準法1201号〕

しかし、たまたま摘発されて30万円の罰金を科せられたとしても、日常的に面倒な書類を交付するよりは、30万円の罰金で済むならその方が楽という考え方をする経営者もいるでしょう。

 

<労働条件通知書の保管義務>

労働条件通知書は3年間の保管義務があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。」〔労働基準法109条〕

そして、こちらにも罰則規定があります。

「三十万円以下の罰金に処する。」〔労働基準法1201号〕

結局、3年間に1回でも労働条件の交付をサボれば、罰則が適用されうるということです。

 

<現実の問題として>

たとえば、同じお店で5人のアルバイトがいて、この人たちはベテランなので、時給が1,500円だったとします。

そして1人が辞め、代わりに新人が時給1,000円で入ります。2年後、この新人が辞めて、辞めた時も時給1,000円だったとします。

さて、この後、辞めたアルバイトが労働基準監督署に駆け込み「私は時給1,500円で雇われたのに、この2年間、時給1,000円で計算された給与しかもらっていません!」と言い張ったならどうでしょう。

お店側が、「いやいや時給1,000円の約束で雇っていました」と主張できる証拠はあるのでしょうか。

いくらベテランアルバイトたちが、「あの新人は時給1,000円でした」と言っても、お店に有利な証言をしているに過ぎないと思われます。

「時給1,000円で計算した給与を異議なく受け取っていた」と主張しても、「それはクビになりたくなくて。」と反論されればそれまでです。

 

<労働法上の形式的な義務>

労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法などなど、経営者に課せられた義務は把握するだけでも大変な状況です。

しかし、形式的な義務を果たすことは、経営者を護ることにもつながります。

人道的な義務や、人情で果たすべき義務の前に、この形式的な法定の義務を果たすことは、商売を続けるのに必要なことです。

経営者としての想いとは別に、法律上、守らなければ足元をすくわれることがあります。

不安を抱えないで、事業を継続するために、信頼できる社労士にご相談ください。社労士は公務員ではありませんから、親身になってご相談させていただきます。

 

2017.04.22.解決社労士

<労働基準法を守っていたらつぶれる会社>

ビューティークリニックの女性経営者が、労働基準法を順守していたら会社がつぶれるというような発言をして、マスコミを騒がせました。もう2年以上も前のことです。

法律は国会で審議・可決され成立するのですが、法律案の段階で多くの専門家が関わりますので、順守できないような法律が施行されることは稀です。たとえ施行されたとしても、改正案が準備され、実態に合わせて改正されていきます。

特に労働基準法などの労働法で、会社の負担が過大になるような規定ができてしまうと、会社の経営が苦しくなり、結局、労働者の処遇が低下したり、整理解雇が必要になったりして、労働者の保護にはなりません。労働者の保護を目的とする労働法は、このバランスに配慮して作られています。

ですから、労働基準法を守るとつぶれてしまうような会社というのは、経営者が本業以外に気を取られているとか、社会のニーズに対応していないとか、今の時代には合っていないとか、根本的な問題を抱えているのでしょう。

労働基準法の中でも、労働時間や休日についての基本的な規定は、過重労働による過労死を防ぐのに役立ちます。以下の規定が守られていない会社では、守れない原因の原因、そのまた原因を突き止めて、一つひとつ解消する努力が求められます。

 

<法定労働時間>

形式的な労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。

実質的な労働時間は、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間をいい、必ずしも実際に作業に従事していることは必要ありません。何もしていなくてもその場を離れることができない手待ち時間は労働時間となります。この実質的な労働時間は、客観的に決まるものですから、就業規則などにより違うルールにすることはできません。

 労働時間の長さは、週40時間以内、18時間以内に制限されています。〔労働基準法32条〕

 

<法定休日>

休日とは、労働契約で労働義務がないとされている日のことをいいます。

使用者は労働者に、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。〔労働基準法35条〕

カレンダーで色の違う日付が休日というわけではありません。就業規則などにより、職場ごとに決められます。

1日のうちの一部でも仕事をさせれば、たとえ30分位の短時間であったとしても、その日は休日を与えたことにはなりません。

 

<法定時間外労働・法定休日労働>

法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合や、法定休日に働かせる場合には、あらかじめ労働者の過半数代表者(過半数の労働者で組織される労働組合がある場合にはその労働組合)との間に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。〔労働基準法36条〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「そうは言っても、うちの会社には特別な事情があって、こんな規定は守れない」という会社があれば、ブラック企業の汚名を着せられないうちに、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.03.解決社労士

<空欄のある労働条件通知書の有効性>

労働条件通知書は、使用者から労働者に対して主要な労働条件を書面で通知するための書類です。そして、労働条件は労働契約の中心的な内容となっています。

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、書面に不備があっても労働契約の効力には影響しません。〔民法623条〕

たとえ労働契約書や労働条件通知書が無くても、労働契約は有効に成立するのです。

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は、使用者から労働者に書面で通知する必要があります。

1. 労働契約の期間

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、パートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

つまり、これらの事項は労働条件通知書に漏れていても大丈夫です。ただし、パートタイマー(短時間労働者)については、1.3.の事項がパートタイム労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<空欄があることによるトラブル>

労働条件通知書は、使用者の労働者に対する一方的な通知書ですから、1部だけ作成して労働者に交付すれば良い書面です。この点が、労働契約書とは違うところです。

しかし、もし空欄があった場合、交付を受けた労働者が勝手に空欄を補充するとこれがトラブルの元になります。ですから、使用者もコピーを1部保存するのが良いでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

就業規則が無い会社では、就業規則の代わりに労働条件通知書にかなり詳細な内容を記載する必要があります。

決まっていないからと言って空欄のままにしておくことは、法定の要件を満たしていなかったり、トラブルの火種となったりします。

そうは言っても、決め方がわからないなど迷うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.25.解決社労士

<強制労働の禁止>

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則が一番重いものです。

使用者が、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制した場合に適用されます。

これは、強制労働の禁止〔労働基準法5条〕に違反した場合の規定です。

 

<家出少年・家出少女に対する実例>

家出少年・家出少女をマンションに軟禁し、強制的に働かせたうえで、その収入を巻き上げるという明らかな犯罪行為が報道されます。

このようなことが一般の企業で行われるとは考えられません。

 

<学生アルバイトに対する実例>

学生アルバイトを深夜までこき使い、正社員のするような仕事までさせておいて、「あなたには管理監督者の仕事まで任せているのだから残業手当は出ない」と説明しているという報道もありました。

学業よりも仕事を優先させて働かせ、結局、退学に追い込んでしまうという話もあります。

たしかに、監禁や身体の自由を不当に拘束する手段に出てはいませんが、弱みにつけこみ、誤った常識を押し付けて、脅迫や精神の自由を不当に拘束する手段を使っています。

 

<ありがちな実例>

店長から店員へ次のような電話があって、その店員が断り切れずに出勤したら、強制労働になります。

「おい!お前今日は休みだったよな。人が足らないんだ。出ろよ。来なかったら承知しねえぞ!」

店長は使用者ですし、これも労働基準法の禁止する強制労働にあたるのですが、さてニュースにならないということは、実際には行われていないのでしょうか。

それとも…

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

店長が労働基準法違反で逮捕されたのではお話になりません。

遅くとも役職者になったなら、最低限の労働法知識を身につけないといけません。

社員教育についても、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.19.解決社労士

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

 

<労働条件明示の理由>

労働条件の明示が労働基準法に規定されているのはなぜでしょうか。

労働契約は、使用者の「働いてください。給料を支払います」という意思表示と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思表示が合致することによって成立します。

しかし、具体的な労働条件が決まっていなければ、使用者からアルバイトに「明日は私の自宅のトイレと浴室の掃除をしてもらいます」ということも、絶対に無いとは言えません。こうなると、労働者ではなくて奴隷扱いになりかねません。

もちろん、これは極端なたとえ話ですが、労働基準法が明示を義務付ける労働条件は、すべて限定されないと労働者が困る事項ばかりです。

 

<労働条件が不明確だと下がる定着率>

労働者が不安を感じ、定着しない理由となります。定着率の低い会社は、労働条件があやふやになっていることが多いものです。不安の内容としては、次のようなものが挙げられます。

・契約期間、契約更新の有無…これが不明確だと、次の仕事を探す必要性も、探し始めて大丈夫かどうかもわかりません。契約期間の終了が近づくと、労働者は不安ですし、中には次の仕事を見つけて自分から退職する人も出てきます。

・就業の場所…これが不明確だと、どこで働くのか、勤務地が変わることがあるのか、不安になります。例外的に転勤する人が出た場合、転勤を恐れて退職する人も出てきます。

・業務内容…これが不明確だと、仕事の範囲がわかりません。「こんな仕事までする約束ではなかった」と感じた人は退職を考えます。

・出勤日と始業終業時刻…ただ単に「シフト制」とするなど、不明確になっていると私生活との調整がむずかしくなります。また、どれだけ働いて、どれだけの収入が得られるのかもわからないのでは、勤務時間の安定した仕事を求めて退職するのは仕方のないことです。

この状態だと、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。つまり、「うちは有給休暇を取らせないよ」と自白していることにもなります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

実際、その日によって勤務時間帯が変わるなど、労働条件をどのように明示すれば良いのか迷うケースもあります。

労働条件が良くわからないために、新人が定着しないのでは、経費、時間、労力、精神力のムダです。

こんなときは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.01.10.解決社労士

<労働法に関する行政監督制度>

労働基準法などの実効性を高めるため、行政監督制度が設けられています。

厚生労働大臣のもとに、国に1つの厚生労働省労働基準局、各都道府県に1つの労働局、都道府県をいくつかのエリアに分けて設置される労働基準監督署があります。

たとえば、東京都立川市にある立川労働基準監督署は、立川市、昭島市、府中市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、武蔵村山市、東大和市の10市を管轄しています。

 

<労働基準監督官と署長>

労働基準監督官は、労働基準法など労働法の施行のための行政取締や刑事処分にかかわり、事業場を臨検し、帳簿や書類の提出を求め、必要な尋問を行う権限や、労働基準法違反の罪に対する捜査権、逮捕権など司法警察員としての権限をもっています。

労働基準監督署長も、労働基準法のもとで臨検、尋問、許可、認定など様々な権限をもっています。

この他、労働基準監督署長や労働基準監督官は、必要があると認めるときには使用者や労働者に報告や出頭を命じることができます。

 

<労働基準監督署の機能の限界>

労働基準監督署は、強力な権限をもっていますが、それは労働基準法や労働安全衛生法などに根拠のある場合に限られています。

たとえば、解雇権濫用の有無の判断など、労働者や企業にとって切実な問題であっても、監督権限を行使することはできません。残念ながら、これらの機関は直接の紛争解決権限をもっているわけではないのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

直接訪問した場合でも、電話による問い合わせの場合でも、社労士であることを名乗ると、労働局や労働基準監督署の皆さんはとても親切です。本当に頼りになります。

会社の人事部門で働いていた時に比べて、一段上の対応をしてくださっているように思われます。おそらく話の通じる専門家として見てくださっているのでしょう。

年金事務所や協会けんぽでも同様のことを感じます。もし、行政の相談窓口などに問い合わせても、今一つ納得できない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。社労士から改めて問い合わせると、深い回答が得られるものです。

 

2016.12.21.

<結論>

試用期間中は家族手当を支給せず、本採用となってから支給を開始するという規定や運用は、原則として問題がありません。

ただし、家族手当を支給しないことによって、1時間あたりの賃金が最低賃金の基準を下回ってしまうと、最低賃金法違反となりますから、ここは確認が必要です。

 

<試用期間の法規制>

労働基準法には、「試用期間」という用語は無くて、「試みの使用期間」〔12条3項5号〕、「試の使用期間中の者」〔21条4号〕という用語で2回登場します。

そして、労働基準法の予定する試用期間は14日までです。ですから、会社が試用期間を3か月としても、労働基準法上は15日目からは試用期間として認められません。

認められないとどうなるかと言うと、正当な理由があって辞めてもらう場合にも、解雇予告手当の支払いとともに解雇通告することが必要です。あるいは、30日以上前もって予告するわけです。解雇予告手当20日分と、10日前の予告で、合わせて30日という方法も認められています。〔20条2項〕

たとえ試用期間中であっても、正当な理由があって解雇予告手当を支払わずに即日解雇できるのは、原則として入社14日目までということになります。

 

<試用期間であっても必要な事(法定事項)>

健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険は、試用期間中か本採用後かという区分がありませんので、法定の基準を満たせば入社とともに加入します。

これは、市区役所に出生届を提出しなくても、赤ちゃんが生まれれば、その生まれた事実に変わりはないのと同じです。つまり、加入手続きをしなくても保険料の未払いが発生するだけです。その証拠に、会社に調査が入って手続きもれが発覚すれば、さかのぼって多額の保険料を支払うことになります。

給与について言えば、残業手当、深夜手当、法定休日出勤手当のように、法定のものは試用期間中であっても支給しなければなりません。ただし、役員待遇で入社するなど、いきなり管理監督者の立場に立つ人は例外です。

 

<試用期間であれば必要ない事(会社がプラスアルファで決めた事)>

家族手当の他、精勤手当、賞与など、基本の給与とは別に会社がプラスアルファで支給するものは、試用期間中は支給しない規定と運用でも、原則として問題ありません。ただ、最低賃金法違反に注意するだけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

正しい給与計算を代行するだけが社労士の仕事ではありません。

適法な給与規定の作成と運用も社労士の仕事です。

さらに、社員が納得してやる気になる給与体系を構築するのも、社労士の仕事です。

もし、やる気のないブラック社員がいたり、新人が定着しないという問題を抱えているのなら、給与体系の見直しが必要かもしれません。

信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.25.

<制裁規定の制限>

減給処分の制限として、次の規定があります。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」〔労働基準法91条〕

就業規則などに具体的な規定が無いのに減給処分をすれば、懲戒権の濫用となり無効とされます。〔労働契約法15条〕

規定があったとしても、何か一つの不都合な事実に対して、減給処分は平均賃金の1日分の半額が限度です。

そして、この平均賃金の計算方法は法定されています。

たとえば、直近の給与の締日までの3か月で、カレンダー上の日数が91日のとき、この間の給与の総合計が91万円であれば、1日分は1万円、その半額は5千円です。これが減給処分の限度です。

 

<具体的に計算すると>

月給30万円で、月間所定労働日数が22日だとすると、1日あたりの給与は、

30万円÷22日=13,636円 と計算されます。

3回遅刻すると、これだけの給与が減額されるわけです。

一方で、月給30万円であれば平均賃金の1日分は約1万円、その半額は約5千円ですから、この5千円を大きく上回る13,636円を減額することは、制裁規定の制限を超えてしまいます。

 

<例外的に欠勤控除として許される場合>

もし1日8時間勤務の場合で、3回の遅刻を合わせて8時間以上になるのなら、

1日分の給与を減額しても制裁の意味を持ちません。

なぜなら、欠勤控除をする場合よりも、給与の減額が少ないからです。

ただし、欠勤控除をしたうえで、それとは別に減給処分として1日分の給与を減額するならば、制裁規定の制限を超えてしまいます。

 

<制度としての合理性>

1分の遅刻を3回でも、3時間の遅刻を3回でも、同じく1日分の給与を減額するルールならば、明らかに不公平です。

出勤の途中で遅刻しそうだと思った社員は、喫茶店でくつろいでから3時間遅刻して出勤するかもしれません。また、病気だとウソをついて年次有給休暇を取得するかもしれません。

遅刻3回で1日分の給与を減額するルールというのは、ブラック社員を生み出す原因となりかねないのです。

 

懲戒処分を適正に規定し運用するというのはむずかしいものです。だからといって、懲戒処分が無ければ問題社員を野放しにしてしまいます。

懲戒処分の役割は、不都合な行為をした社員を懲らしめることよりも、まじめな社員が安心して働ける会社にすることの方が大きいといえます。

会社に合った規定と運用をお考えでしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.02.

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。こうしたことから、労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものだからです。

 

<ひな形の活用を!>

厚生労働省のホームページで、この労働条件通知書のひな形をダウンロードできます。契約形態に応じて10種類用意されていますから、各労働者に適合するものを利用しましょう。この時点で面倒に思ったり迷ったりするのであれば、お近くの社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

なお、ひな形はA4サイズ2枚ですが、記載要領もA4サイズ2枚です。ひな形というのは、印刷してすぐに使えるわけではありません。特に労働条件通知書では空欄が多いですから、あらかじめ使用者のほうで案を作成しておいて、労働者に確認しながら修正して完成させるという一手間がかかります。この案を作成する段階と、完成版のチェックの段階で、記載要領と照らし合わせて確認する必要があります。

労働条件通知書は、トラブル防止のために作ることが義務づけられています。ですから、下手な労働条件通知書はトラブルのもとになります。実際には、退職前後の労働者と会社との間で紛争の火種となります。そうならないために、表現の工夫が必要なのです。

 

<表現の工夫>

まず、「よくわからない」「決まっていない」という理由で、法定の項目をカットしてしまうと労働基準法違反となり、罰則が適用されることは、労働条件通知書を交付しないのと同じですから注意しましょう。労働基準法に違反する内容とならないようにすることも大切です。

ここでは、常用、有期雇用型について、特に工夫が必要なポイントをご紹介します。

1.「契約の更新は次により判断する。」

 誰が判断するのか書いておかないと、労働者から「私はそうは思いません」と反論されてしまいますから、「契約の更新は次により使用者が判断する。」あるいは「契約の更新は次により会社が客観的に判断する。」と記載することをお勧めします。

2.始業・終業の時刻等

 勤務形態によっては、毎日バラバラということもあります。

 いくつかのパターンにまとめられるのであれば、標準勤務時間として、いくつかの始業・終業・休憩時間をならべて記入しましょう。

 それも無理であれば、何時から何時までの間で何時間勤務(休憩何分)かを記入します。平均的なことを記入するわけです。

 どちらの場合にも、1日の標準的な所定労働時間を記入しなければなりません。これが無ければ、年次有給休暇を取得しても、その分の賃金が計算できませんから、記入が無ければ「年次有給休暇を取得させるつもりが無い」という解釈になってしまいます。これだけで違法です。

 ここは、始業・終業の時刻等が毎日バラバラのパターンが想定されていないので、記入欄が無く注意が必要です。

3.所定時間外労働の有無

 ここで「有」を選択した場合で、1日8時間、1週40(44)時間を超えて残業することがある場合には、所轄の労働基準監督署長に三六協定書を提出しているわけですから、その範囲内で、「1日何時間まで」「1週何時間まで」などの記入をしておきましょう。

 後になってから、残業が多すぎるなどの不満が出ないように、あらかじめ確認しておく項目です。

 これも記入欄が無いので注意が必要です。

4.休日

 特定の曜日などで決まっていない場合には、「週当たり」または「月当たり」の日数を記入します。

 これが無いと、年次有給休暇を付与する条件としての出勤率が計算できませんから、やはり記入が無ければ「年次有給休暇を取得させるつもりが無い」という解釈になってしまいます。これだけで違法です。

5.自己都合退職の手続

 ひな形では、(退職する  日以上前に届け出ること)となっていますが、言った言わない、取り消したのではないか、などのトラブルを防止するために、(退職する  日以上前に所定の「退職届」で届け出ること)としておくことをお勧めします。もちろん、「退職届」の準備が必要です。

以上、ちょっとした工夫でトラブルを防止できるポイントをご紹介いたしました。

 

2016.11.01.

<周知義務について説明されていること>

「労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、各種労使協定等を労働者に周知しなければなりません。 周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。」

これは、労働基準法106条の説明として良く目にするものです。

 

<本当に知りたいのは>

しかし、周知する立場の経営者や人事担当者は、「法令の要旨」をどのようにまとめたら良いのかということを知りたいのです。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。しかも、労働基準法106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」と言っていますから、悩んでしまいます。

 

<お勧めなのは>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的には1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、上手い説明が見つからない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.19.

<労働条件の明示>

人を雇うときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。労働契約は口約束でも成立するのですが、特に重要な項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。〔労働基準法15条〕

書面の名称としては、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などが一般的です。

ここで使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。

 

<書面の交付による明示が必要な事項>

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)

・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般的に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多いです。

※これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。〔労働契約法42項〕

 

<労働契約の禁止事項>

労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

その主なものとしては、次の例があります。

・労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと。〔労働基準法16条〕

たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

・労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。〔労働基準法17条〕

労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。

・労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること〔労働基準法18条〕

社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは厳格な法定の要件のもと許されています。

 

<採用内定>

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。

したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります。〔労働契約法16条〕

内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法20条(解雇の予告)、22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する必要があります。

 

2016.08.21.

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

労働基準法も試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法12条3項5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示していれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、最低賃金法違反となります。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法なのですが、計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、174時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×174時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が174時間であれば、

150,000円÷174時間=862円

ですから平成28年7月現在、最低賃金がこれを上回る東京都と神奈川県では違法となってしまいます。

 

<さらに定額残業代を含む場合>

月給に定額残業代を含むのであれば、求人の段階からこれを明示する必要があります。

たとえば、月間所定労働時間が174時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、

150,000円=P+P÷174時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、

残業代抜きの基本給が131,155円、20時間分の残業代が18,845円となります。

すると、今度は131,155円が最低賃金の基準となりますから、

131,155円÷174時間=753.8円

ですから平成28年7月現在、最低賃金がこれを上回る北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県では違法となってしまいます。

 

2016.07.28.

 

<実は短い試用期間>

試用期間を定める場合、3か月から6か月が主流でしょうか。

ところが、試用期間で解雇予告手当の支払が不要なのは、入社14日目までで、15日目以降の解雇には解雇予告手当が必要となります。〔労働基準法21条〕

もちろん、30日以上前もって解雇の予告をしておけば、この解雇予告手当の支払は不要です。〔労働基準法20条〕

しかし、試用期間を3か月とした場合、実際には2か月以内に本採用とするかしないかの判断が必要となります。遅れれば、その日数分の解雇予告手当が必要となります。

 

<解雇予告手当の効力発生時期>

解雇予告手当は、支払った日に効力が発生します。

ということは、15日に「今月いっぱいで解雇します」と通告して、25日に給与に合算して支払うと、25日に効力が発生することになります。すると、退職日が10日遅れ、翌月10日が退職日になり、翌月分の社会保険料が発生するなど、ややこしいことになってしまいます。

労働基準法など労働者を守る法律では、本人の同意があっても、同意することによって本人が不利益をこうむる場合には、原則として同意がなかったものとして扱われます。

「月末で解雇だけど、解雇予告手当は25日に給料と一緒に払ってもいいかな?」「別にいいですよ」という口頭のやり取りは危険で、同意の内容が書面に残っていて、しかも同意することにもっともな事情が認められなければ、後になって本人の気が変わっても対処できません。

解雇予告手当は給与ではありませんから、給与計算担当者が面倒に思ったとしても、解雇予告と同時に支払いましょう。

 

2016.07.19.

<「労働法」ということば>

「労働法」といっても、「労働法」という名前がついた一つの法律があるわけではありません。

労働問題に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

したがって、雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければいけないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

そうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法は定められています。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2016.07.14.

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。そして、新人の入社の時に書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

こう考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法27条2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養を外れてしまうので辞退します」という申し出があったとします。店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら拒めません。〔労働基準法24条1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、会社に束縛されています。しかし、退職すれば自由になります。そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです。

 

2016.07.08

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法33条1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法33条1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

熊本の震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は、条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2016.07.02.

<法定休日の原則>

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えます。〔労働基準法35条1項〕

これが原則です。

毎週というのは、特に就業規則などに定めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。ですから、この7日間に1日も休みがないというのは、労働基準法違反です。

ただし、三六協定を交わしていれば、その範囲内で法定休日に出勤しても、使用者が罰せられることはありません。

 

<法定休日の例外>

前項の規定には、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については適用しないという例外規定があります。〔労働基準法35条2項〕

これが4週間に4日以上の休日を与える変形休日制です。

この制度を採用するには、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。ここで起算日というのは、4週間(28日間)を数えるときの最初の日をいいます。これが決まっていなければ、どの4週間で4日以上の休日にするのかわからないので不都合です。

労働基準法の規定は、どの4週間を区切っても4日の休日が与えられていなければならない趣旨ではありません。〔昭和29年9月20日基発第1384号通達〕

 

<この制度を採用した場合の賃金計算の注意点>

これは休日についての合法性の話ですから、賃金計算とは別問題です。

出勤日数が多い週には、労働時間の合計が1週間の法定労働時間を超えることになります。この場合、1日での時間外労働とは別に、1週間での時間外労働が発生しますので、25%以上の割増賃金が必要です。

結論として、休日については融通の利く制度なのですが、割増賃金が増える可能性があるのです。

 

2016.06.28.

<1か月単位の変形労働時間制の狙い>

会社としては、割増賃金支払いの基準が変わることで人件費の削減が期待できます。

また、労働者としては、日々の勤務時間数に変化が出ることでメリハリができ、勤務時間の短い日にプライベートを充実させたりリフレッシュしたりできます。

 

<基本的なしくみ>

1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日と労働日ごとの労働時間を設定します。そのようにシフトを組むわけです。

こうすることにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりしても、条件を満たすシフトの範囲内では、時間外割増賃金が発生しない制度です。〔労働基準法32条の2〕

ここで特例措置対象事業場とは、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業をいいます。

 

<必要な手続き>

労使協定または就業規則に必要な事項を定め、締結した労使協定や作成・変更した就業規則を、所轄労働基準監督署に届け出ます。

常時使用する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出となります。

これは簡単な手続きで済みます。

 

<定めることが必要な事項>

・対象労働者の範囲

法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。

・対象期間と起算日

対象期間と起算日は、具体的に定める必要があります。たとえば、毎月1日を起算日として、1か月平均で1週間あたり40時間以内とするなどです。

・労働日と労働日ごとの労働時間

シフト表などで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。

一度定めたら、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。

・労使協定の場合にはその有効期間

労使協定を定める場合、労使協定の有効期間は対象期間より長くなります。適切に運用するためには、見直しの機会を考えて、3年以内にすることが望ましいでしょう。

 

<1か月単位の変形労働時間制がうまくいく条件>

メリットの多い制度ですが、導入する意味があるのは「少なくとも月1回は8時間を下回る勤務時間の日があること」です。

実態として、毎日少なくとも8時間は勤務し、日によっては8時間を超えて勤務することがあるというのであれば、この制度を導入しても、会社にも労働者にもメリットがありません。

スーパーマーケットなどの小売業や、カラオケ店などの接客娯楽業では、正社員について、この制度を導入するメリットがない実態が見られます。前提として、正社員の仕事をパート社員やアルバイト社員にも割り振ることができるよう、教育に力を入れる必要があります。

「1か月単位の変形労働時間制を導入するため」という目的で、正社員による正社員以外への教育を強化すれば、それ自体が生産性の向上になるのですから、ぜひ取り組むことをお勧めします。

 

2016.06.25.

<労働基準法施行規則32条>

あまり知られていないと思いますが、休憩時間を与えなくてもよい職種があります。

運輸交通業または郵便・信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶、航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者には休憩時間を与えないことができます。

乗務員でこれらに該当しない者については、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が「一般の休憩時間」に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。

郵便・信書便、電気通信の事業に使用される労働者で屋内勤務者30人未満の郵便窓口業務を行う日本郵便株式会社の営業所(郵便局)で郵便の業務に従事する者には休憩時間を与えないことができます。

 

<一般の休憩時間>

こうした特殊な業務の労働者を除き、「一般の休憩時間」を与えなければなりません。

「一般の休憩時間」とは、「労働時間が6時間を超える場合には少くとも45分、8時間を超える場合には少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える」というものです。〔労働基準法34条1項〕

使用者としては、労働者から「休憩なんて要りませんよ」と言われていたので与えなかったところ、退職してから「休憩を与えられていませんでした」と訴えられたら、反論の余地がないということです。

労働法が保障する労働者の権利の中には、労働者が放棄できないものがあるのです。ですから、安易に「本人が同意しているから」「念書を書いてもらったから」大丈夫とはいえないこともあるのです。

 

2016.06.23.

<休憩時間の長さ>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。〔労働基準法34条1項〕

したがって、出社したらすぐに休憩とか、休憩してからすぐに退社というのはできません。また、8時間勤務で全く残業がないのなら休憩時間は45分と定めてもOKです。

若いアルバイトの中には、休憩時間をけずって働きたいという人もいます。しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防する意味もありますから、本人の希望で短縮することはできないのです。

では、反対に延長はどうでしょうか。実働8時間休憩4時間という労働契約でも、その休憩時間が実際に仕事から離れて自由に使える時間であれば、法的な問題にはならないでしょう。ただ、そうした条件で採用を希望する人はまれでしょうし、途中でこういう労働条件とすることが本人にとって不都合であれば、労働条件の不利益変更の問題となりえます。

 

<休憩時間の分割>

たとえば、1時間の休憩時間を40分1回と10分2回に分けて与えることは許されます。禁煙のオフィスで働く喫煙者などは、このほうが助かります。

しかし、3分の休憩を20回与えるなど、実質的に見て休憩時間とはいえないような与えかたはできません。そこは常識の範囲内で、疲労回復という休憩時間の趣旨にそって考えましょう。

 

<休憩時間の一斉付与>

休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。〔労働基準法34条2項〕

ただし、お店などでは誰かしら接客する人がいないと不都合ですから、この労使協定がなくても、次の業種では一斉付与の例外が認められています。

運送業(旅客または貨物)、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業

反対に、これ以外の業種ではきちんと労使協定を交わしておきましょう。書類作成をサボるだけで、労働基準法違反というのはばかばかしいです。

 

<休憩時間の自由な利用>

使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。〔労働基準法34条3項〕

「何かの必要に備えて自分の席にいなさい」ということであれば、これは休憩時間にはなりません。待機時間は労働時間です。

使用者が休憩中の外出を制約できるかについては、事業場内において自由に休憩できるかぎりは、外出許可制をとっても差しつかえないとされています。〔昭23年10月30日基発1575号通達〕

 

2016.06.17.

<会社を辞めるのは労働者の権利?自由?>

正当な理由によって、労働契約の期間途中で辞めたり、期間満了時に辞めたりしたことで、会社の業務に何らかの支障が生じたとしても、突き詰めれば、それは会社側の人事管理に原因があるのですから、労働者に法的な責任は生じません。

ただし、期間を定めて働いている契約の途中で、自分側の都合で一方的に辞めると、損害賠償責任が発生することはあります。

その場合の賠償額は、残りの期間働かなかったことによって、実際に会社が失った利益にとどまります。さらにその後のことまで、責任を負うことはありません。

また、期間を定めずに働いていたときは、就業規則などに規定された予告期間さえ守れば、理由は何であれ、辞めることによって法的な責任が生じることはありません。

 

<強制労働の禁止>

暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって就労を強制することは禁止されています。〔労働基準法5条〕

この違反には、10年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。〔労働基準法117条〕

退職を思いとどまらせるための説得が禁止されているわけではありませんが、繰り返し長時間にわたって取り囲んだり、拒否しているのに繰り返し家に押しかけたりするなど、社会的相当性を超える威圧的な方法・手段で行えば違法な監禁や強要となります。〔刑法220条、223条〕

また、会社が辞めたいという労働者に、損害賠償請求や告訴することを告げることは、労働者に実際にそのような責任を発生させる事情があったのならば別ですが、具体的な事実や根拠もなく行ったときは、違法な恐喝や脅迫となります。〔刑法222条、249条〕

不当な脅しには毅然とした対応が必要ですが、こうしたことは犯罪ですから、もし身の危険を感じるようならば、最寄りの警察署に相談しましょう。

 

2016.06.07.

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法120条1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。つまり、生理なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるわけです。

 

<実態としては>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、業務に支障が出たり、女性の当然の権利だから別に遠慮は要らないのだという態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

さらに、偶発的なことではありますが、女性上司がお見舞いに行ったら不在で、翌日に確認したら「入院していた」と言っていたが、その事実はなく、遊びに行っていたことが判明したというケースでは、事前事後のウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<結論として>

生理休暇をとった事実で、昇格、昇給、賞与支給にあたっての評価を下げることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

こうしたことから、生理休暇の濫用ばかりにとらわれることなく、適正な評価制度の正しい運用こそ、望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2016.05.30.

<予定外の長期入院で月給が下がるのは>

月給制の従業員が入院したら、入院期間に応じて毎月少しずつ基本給が下がっていくシステムというのは聞いたことがありません。

これでは、会社の従業員に対する冷たさが見え見えです。そういう会社では働きたくないです。

また、不合理であり社会通念上も相当性がないので、法的に許されない不利益変更となります。

 

<年俸制なら許されるのか>

ではなぜ「年俸制の従業員が長期入院したとき年俸を下げてもよいのか」という疑問が出るのでしょうか。

これは、年俸が過去の実績を踏まえつつ、今後1年間でどれだけ会社に貢献してくれそうかという予測評価に基づいているためでしょう。

プロ野球の選手は、一般の労働契約とは違うと思いますが、サラリーマンにも応用できそうだということで、年俸制を採用している会社があります。

そして一度決めた年俸は、長期入院にもかかわらず、会社から支払いが続くというものです。

しかし、これは会社が独自に決めたルールです。年俸制なら欠勤控除できないという法令の規定はありません。そもそも、労働基準法などに年俸制の規定はありません。

予想外の長期入院が発生したときに不都合を感じるような給与支払いのルールを作っておいたことが失敗なのです。

 

<ではどうしたらよいのか>

年俸制であっても、労働基準法の縛りがあります。毎月1回以上定期に賃金を支払わなければなりません。残業手当、深夜手当、休日出勤手当も支払う必要があります。

しかし、欠勤控除してはいけないというルールはありません。実は法令には規定がないのですが、労働契約の性質から「労働者が働かなければ会社に賃金の支払い義務はない」という「ノーワークノーペイの原則」があります。

欠勤控除しないのは、会社がそういうルールにしているからです。

ですから、年俸制を実施している会社で、就業規則に欠勤控除の規定がなければ定めればよいのです。もちろん、就業規則がないのなら一から作る必要があります。

ただし、長期入院にもかかわらず、通常の賃金を支払い続けていたという例が過去にあった場合には、就業規則の不利益変更が疑われます。この場合には、弁護士や社会保険労務士などの専門家と、所轄の労働基準監督署に相談しながら慎重に事を進める必要があります。

 

2016.05.24.

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われる人がいるそうです。

本気で言っているとは思えません。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示して、いろいろ義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者の逮捕>

労働者が労働基準法違反の罪を犯すということ自体がないのですから、逮捕や起訴などもないのです。

ただし、就業規則に違反すれば、会社での評価は下がるかもしれませんし、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それを心配した上司が、部下に対してたとえ話をしたのでしょうか。

 

2016.05.22.

<効力の優先順位は?>

「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」〔労働基準法13条〕

これが労働基準法の規定です。

「達しない」ということばがポイントです。

労働契約で法律よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして法律に従うという意味です。

逆に、労働契約の中に法律よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結局、法律と労働契約を比べて、違いがある部分については、労働者に有利な方が有効となります。

 

<具体例>

たとえば、試用期間が終わり本採用となってから6か月後に年次有給休暇が付与されるという労働契約は法律よりも不利です。たとえ本人が同意していても、法律の基準により試用期間の初日から6か月後に付与されます。

またたとえば、1日7時間勤務の会社で、7時間を超えて勤務したら時間外割増賃金として25%を加えるという労働契約は法律より有利です。なぜなら労働基準法は、8時間の法定労働時間を超える残業に割増賃金を義務づけているからです。この場合には、労働契約が優先されます。

 

<労働契約が無い場合>

働いている限り、労働契約が無いということはありません。口頭であっても、それなりの約束はあるはずです。

ですから、正確には「労働契約書」が無い場合ということになります。たとえ契約書ではなくても、労働条件を会社から一方的に通知する「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」でもよいのですが、何も無ければ労働基準法に定める条件が適用されることになります。

ただ、何時から何時まで、どこで、どのような仕事をするのか、休憩時間はどうなのかということは、法律に規定がありません。これでは働く人があまりにも不安定ですから、会社には労働条件を書面で交付するなどの義務があります。30万円以下の罰金という罰則もあるのです。

それでも交付していない会社は、無意識のうちにブラック企業になっていますので働かないのが無難です。

 

2016.05.08.

満18歳に満たない人の労働条件には、法令の制限が多数あります。

たとえ本人や親がOKと言っても、違反は違反です。罰則もあります。

 

<高校生の時給>

最低賃金法の制限があります。高校生でも同じ最低賃金です。

試用期間でも最低賃金を下回ることはできません。例外的に都道府県労働局長の許可を受けたときは、最大2割減額できるというのが最低賃金法に規定されています。〔最低賃金法7条〕

しかし、実際に相談してみたところ、「許可していません」と言われてしまいましたので無理なのでしょう。

 

<17歳までの労働時間>

1日8時間を超える勤務はできません。平均ではなく、どの日も8時間までです。

1週間で40時間を超える勤務はできません。1週間とは、就業規則に定めがなければ、日曜日から土曜日までの7日間で計算します。

日曜日から土曜日まで7日間連続で勤務することはできません。

フレックスタイム制などの変形労働時間制は使えません。

 

<17歳までの勤務時間帯>

午後10時以降翌日午前5時までは、勤務できません。

 

<17歳までの業務内容の制限>

重量物の取り扱いについては、次の表のとおりの制限があります。

年齢と性別

重量の制限

たまに持ち上げる場合

続けて持ち上げる場合

15歳まで

12キログラム未満

8キログラム未満

15キログラム未満

10キログラム未満

16・17歳

25キログラム未満

15キログラム未満

30キログラム未満

20キログラム未満

運転中の機械・動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査・修繕をさせ、運転中の機械・動力伝導装置にベルト・ロープの取付け・取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせることはできません。

毒劇薬、毒劇物その他有害な原料・材料または爆発性、発火性、引火性の原料・材料を取り扱う業務、著しくじんあい・粉末を飛散し、有害ガス、有害放射線を発散する場所または高温・高圧の場所における業務その他安全、衛生または福祉に有害な場所における業務に就かせることはできません。

坑内労働に就かせることはできません。

 

※以上の内容には例外もあるのですが、成人と同じようには扱えないということです。

 

2016.05.07.

<労働基準法での定義は?>

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法10条〕

これではよくわかりません。

 

<確実に「使用者」といえるのは?>

労働基準法10条に書いてある「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。他にもここに含まれる人はいるのでしょうか。

 

<社内の人に限られない?>

「使用者」というと、会社にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社労士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社労士は労働基準法10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

 

<結論として>

労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社労士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

 

2016.05.05.

<行政通達とは>

行政通達は、行政機関が行政上の取扱いの統一性を確保することを目的として定める指針です。その内容は、法令の解釈、運用・取扱基準や行政執行の方針などです。

 

<労働法の世界での行政通達の役割>

労働法の世界では、労働者を保護するための法令が多数制定されています。

しかし、現実の世界で生じる具体的な問題や紛争のすべてをカバーすることはできません。法令が予定していないことも起こるのです。

また、法令というのは、抽象的な表現を多く含んでいます。そのため、いくつもの解釈ができてしまうことがあります。これでは、法令の適用によって労働者と使用者の両方が納得する結論を出すことができません。

そのため、行政機関が法令の解釈・運用・取扱基準を示すことがあります。これは「行政通達」の形をとることが多いのです。

 

<行政通達の効力>

あくまでも行政機関内部の指針です。国民の権利・義務を直接に規制するものではありません。しかし、たとえば労働基準監督署が企業を指導する場合には、行政通達の基準に従って指導します。ですから、事実上の強制力をもっていると考えられます。

 

<行政通達に逆らえるのか>

たとえば、行政通達そのものの効力を争って、企業が裁判を起こしても門前払いとなります。

しかし、行政通達に従った指導によって、企業が不当な損害をこうむった場合には、国家賠償を求める形で争うことはできます。

反対にいえば、企業はそこまでする気がないのなら、行政通達に基づく指導に従わざるをえないということです。

 

2016.05.04.

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、1947年(昭和22年)5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的にそって規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人のえらい人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。私たちが「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。〔憲法25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法25条〕

このように、憲法25条から30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法27条2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法12条〕

 

2016.05.03.

<不退職の念書とは?>

「退職しません」という念書を従業員に書いてもらうことがあります。

これに効力はあるのでしょうか?

 

<優秀な社員に対して>

たとえば、優秀な社員をプロジェクトのリーダーに抜擢したものの、その社員にはたびたびヘッドハンティングの話が来ているようなので、プロジェクトが終わるまでは辞めないという念書を書いてもらって安心したいというケースです。

たとえ本人が同意のうえでも、こうした念書を書かせることは、憲法で保障されている職業選択の自由の侵害ですから、明らかに無効でしょう。

しかし、退職を禁止する期間を限定して、その間は特別手当を支給するという場合はどうでしょう。「○年○月末までの間、御社から月額5万円の特別手当を給与の一部として受領します。この間は、御社の業務に精励し退職いたしません」という念書です。見返りがあることから、よさそうにも見えます。

「途中で退職したら、それまでの特別手当は返金する」という内容だとグレーでしょうか。

 

<給与の過払いの場合>

たとえば、社員が会社の近くに転居したとき、本人は上司に「住所変更届」を出したのにもかかわらず、その上司がこの届を机の引き出しに保管して忘れていたので、長い間、高額な通勤手当をもらい続けていたというケースです。

あるいは、正社員と同姓同名のアルバイトに誤って賞与を振り込んでしまい、本人がバイクのローン返済に全額使ってしまったというケースです。

どちらも、本人が気づかないはずはないものの、会社側にも落ち度があります。

全額一度に返済してもらうことは無理なので、ご本人の希望により、毎月給与から1万円控除することにして、この間は退職しないという念書も考えられます。

正社員の通勤費であれば、金額にもよりますが、あまり負担なく返済できるでしょう。しかし、アルバイトが3年がかりで返済するという場合には、学校卒業後も退職しないという約束となってしまうこともあります。

 

<その効力は?>

「退職しません」という念書は、本人が同意していても、職業選択の自由の侵害、労働契約への不当な拘束になって、法的効力はありません。

それでも、心理的な拘束力はあるでしょう。ややグレーな話ですが、会社としてはこの心理的な拘束力に期待して念書を書いてもらうことがあるといえます。

もちろん従業員には、この念書に同意する義務はありません。

念書を使うときは、会社側も従業員側もよく考えてからにしましょう。

労働法の世界では、会社と従業員が心から同意していたとしても、客観的に見て労働者に不利益を生じうる念書は無効なのです。「年次有給休暇は取得しません」「残業手当はいただきません」という念書が有効だとしたら、労働基準法も骨抜きになってしまうのですから当然です。

 

<ではどうしたらよいのか?>

優秀な社員に退職して欲しくないケースでは、高額な特別手当や、臨時昇給などで、転職を検討されないようにするというのが王道でしょう。

給与の過払いのケースでは、あらかじめ就業規則に定めておくことができるのですから、従業員が負担にならない形での返金について定めておきたいです。

また、住所が変わったら通勤手当がいつからどうなるのかをきちんと教育しておけば、誤った支払いがあったとき本人が気づくでしょう。これは、アルバイトに賞与が支給されないということについても同じです。

 

2016.05.03.

<よくあるパターン>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなどのパターンは多いですね。ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。「月給÷所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して、安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入は?>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退するかたもいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2016.05.01.

<社内預金の趣旨>

労働契約に付随して、強制的に貯蓄金を管理する契約を行うことは禁止されています。 しかし、労働者が任意に貯蓄金の管理を使用者に委託する場合には、労使協定の締結・届出、貯蓄金管理規程の作成、利子をつけることなど一定の条件を満たすことにより、預金を受け入れる社内預金を行うことが認められています。〔労働基準法18条〕

 社内預金は福利厚生の一環とされますが、預金された資金は事業の運転資金として活用することができます。 ただし、原資はあくまでも労働者の賃金です。

したがって、預金の安全性の確保が最も重要な課題であり、保全措置を講ずること、利子は利率の最低限度である下限利率以上とすること、預金者一人当たりの預金額の限度を定めることなどが義務付けられています。 

 

<預金の保全>

預金の保全については、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後の1年間を通じて一定の保全措置を講ずることとされています〔賃金の支払の確保等に関する法律3条〕

その具体的内容は、賃確法施行規則2条で以下のように定められ、労使協定でどの方法によるのかを明確にする必要があります。ただし、複数を併用することも差し支えありません。

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約を締結すること

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務の額に相当する額につき、預金を行う労働者を受益者とする信託契約を信託会社または信託業務を営む金融機関と締結すること

・労働者の事業主に対する預金の払戻しに係る債権を被担保債権とする質権または抵当権を設定すること

・預金保全委員会を設置し、かつ、労働者の預金を貯蓄金管理勘定として経理することその他適当な措置を講ずること 

 

<預金保全委員会>

預金保全委員会の構成員の半数については、その事業主に使用されている労働者であって、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の推薦を受けたものとすることが必要です。

預金保全委員会には次に定める事項を行わせます。

・事業主から労働者の預金の管理に関する状況について報告を受け、必要に応じ、事業主に対して当該預金の管理につき意見を述べること

・労働者の預金の管理に関する苦情を処理すること

事業主は、3か月以内ごとに1回定期に、また預金保全委員会からの要求の都度、労働者の預金の管理に関する状況について預金保全委員会に対して書面により報告を行わなければなりません。

また事業主は、預金保全委員会の開催の都度遅滞なく、その議事の概要および預金保全委員会に報告した労働者の預金の管理に関する状況の概要を各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける等の方法によつて労働者に周知させることが義務づけられています。

さらに、預金保全委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存することが必要です。 

 

<保全措置を講じていない場合>

保全措置を講じていない事業主に対しては、労働基準監督署長が文書により保全措置を講ずべき旨の命令を出すことができます。〔賃確法4条、施行規則3条〕

また、保全措置が講じられていない事業場が倒産した場合の貯蓄金については、株式会社で会社更生法が適用される場合は、更生手続開始前6か月間の給料の総額に相当する額、またはその預り金の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権として優先的に扱われます。〔会社更生法130条〕

しかし、破産や民事再生の手続きを採った場合には、優先度の低い債権として扱われることになります。

 

2016.04.08.

<罰金とは?>

駐車場の入口付近に「無断駐車は罰金2万円」などの表示を見かけることがあります。また「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方に、お話をうかがったこともあります。

しかし、罰金は死刑や懲役と同じく刑罰の一種です。国家権力ではない個人や会社が罰金を取るということは、相手が誰であれ許されません。

ですから、駐車場の「罰金」の表示も、社内の「罰金」のルールも無効です。本当に徴収したら、何らかの犯罪となるでしょう。こちらは、「罰金」では済まされず懲役刑が科されるかも知れません。

もし社内ルールで「罰金」ということばを使っていたら、みっともないのですぐにやめましょう。

 

<労働法上は?>

就業規則ではなく内規だとしても、「罰金」は違約金の定めや損害賠償の予定の禁止に反して無効になります。〔労働基準法16条〕

また、給与から天引きすることは、賃金の全額払いの原則に反することになります。〔労働基準法24条1項本文〕

結局、労働法上も実際に徴収することは認められません。

またたとえ、使用者が労働者の故意または過失によってこうむった損害を回収したい場合であっても、実際に被った損害額のすべてについて、労働者に請求できるわけではありません。

なぜなら、その損害の発生について、使用者に全く責任がないというのは稀ですし、労働者を使用することによって利益を得ている分、その損失についてもある程度は負担するのが公平だからです。

 

<使用者から労働者に請求できる賠償額は?>

まず、労働者に損害賠償義務があるかどうかは、労働者が通常求められる注意義務を尽くしたかどうかによります。

そして、労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務を負うことになります。

労働者の負担割合がどの程度となるかは、具体的な事情によります。

裁判になれば「事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、使用者は、労働者に対して賠償の請求ができる」という判断になります。

たとえば長時間労働が続いて疲れている労働者が、注意散漫になって事故を起こしたような場合には、長時間労働をさせた使用者に大きな落ち度があり、使用者側の負担割合が相当程度大きくなります。

 

<例の会社の社員>

ところで「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方は、次のような話をしていました。

 

「遅刻しそうになったら、近くの喫茶店で時間をつぶして、落ち着いてから、会社に電話をして具合が悪いと言って、有給休暇にしてもらうといい。たとえ有給休暇はダメだと言われて給料が欠勤控除になっても、罰金1万円よりは安くつく」と先輩からアドバイスを受けました。

 

使用者側が違法なことをしていると、労働者側もこれに対抗しておかしなことをするようです。

これでは、会社と社員が共に成長するというのも「夢のまた夢」でしょう。

 

2016.03.31.

<親権者・後見人の権限>

親権者や後見人は、法定代理人として、未成年者が交わす労働契約などの法律行為に同意を与え、未成年者の財産を管理し、その財産に関する法律行為につき未成年者を代表する権限を有します。〔民法5条、824条、859条〕

 

<労働基準法による制限>

こうした民法の規定にもかかわらず、労働契約に関しては、本人の同意を得ても未成年者に代って締結できないこととされています。〔労働基準法58条〕

これはかつて、親が親権を濫用し、子が知らないうちに子に不利益な内容の労働契約を締結する事例が多く見られたことから、その弊害をなくすために設けられた規定です。

このことから、親権者等の法定代理人としての行為に限らず、未成年者の委任による任意代理の場合にも、未成年者に代わる労働契約の締結はできないものと考えられています。

また、親権者や後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならないとされています。〔労働基準法59条〕

 

<本人の意思に反する労働契約の解除>

労働契約が未成年者に不利と判断される場合に、親権者や後見人が本人の意思に反してでもこれを解除できるかという疑問があります。

この点について裁判例は、未成年者に不利であると認められる場合には、未成年者の意思に反しても未成年者の利益になるものとして契約解除はできるとしています。

その一方で、親権者等が雇い主を個人的に嫌いであるなどを理由に、労働契約の解除が不利である場合にまで解除するのは、解除権の濫用として否定される場合があります。

結局、未成年者を雇っている場合に、その親権者から労働契約の内容が不利であるとして解除されることがあるということです。

ですから、未成年者については、採用や雇用の継続について親権者等に確認をとっておく必要があるのです。

 

2016.03.29.

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2016.03.25.

<ブラックとは?>

ブラックは、自分が身を置く社会関係の中で、道義的に求められていることをせず、自分(自分たち)のやりたいようにしてしまう人(企業)であると定義します。

これは、他人から自分(自分たち)への干渉を極端に嫌う、自己中心的で無責任な態度です。倫理観が欠如していて、正しく行動することについては消極的で無気力です。

 

<ブラック企業とは?>

ブラック企業は、企業と労働者が身を置く労使関係の中で、道義的に求められている労働法の順守、誠実な行動、常識的な対応ということに配慮せず、やりたいようにやってしまう企業です。

そもそも労働法の規定はどうなっているか、どうするのが誠実で常識的な行動なのか、これを積極的に知ろうとはしません。

必ずしも悪意をもっているとは限らず、面倒くさいから考えない、コンプライアンスなんて知らないという企業も多いものです。

 

<ブラック企業の疑い>

「自分の働いている会社は、ブラック企業ではないか?」という疑問を抱く方が増えています。

その理由として、次のようなことが挙げられています。

・正社員とその他の従業員とで通勤費の計算方法が異なる

・支給される通勤費に上限額がもうけられている

・日曜日や祝日に出勤しても割増賃金が無い

・生理休暇をとった場合に無給となる

・父親の葬式で休んだら弔事休暇ではなく欠勤となった

・8時間勤務で休憩が50分

・退職金や賞与の支給が正社員に限定されている

・2年半勤務しても退職金が出なかった

・試用期間が3か月なのに10日間で解雇となった

どれもこれも就業規則に違反していない限り、必ずしも違法ではありません。

それでも「ブラック企業」と判断するということは、これらのことが常識に反するという考えなのでしょう。

 

<疑いを晴らすには?>

法律の規定がどうなっていて、会社のルールがどうなっているのか、それはなぜなのか、ということについて社員教育が必要です。

会社が正しいことをしていても、会社を疑う社員がいるようでは、生産性が上がりませんし、社員も会社も成長しません。

そして、この教育は会社を疑っている社員に対しては、効果が期待できません。少なくとも社外の講師による説明会など、客観性を確保した教育が必要となります。

それでも、社員の納得が得られない社内ルールがあったなら、それはその会社の社員の常識に反しているわけですから、見直しをお勧めします。

 

2016.03.17.

<原則の割増賃金>

使用者は、過重な労働に対する労働者への補償のため、原則として次の割増賃金を支払う義務があります。

・1日8時間または1週40時間を超えて時間外労働させた場合25%以上

・深夜(原則として午後10時~翌日午前5時)に労働させた場合25%以上

・週1日の法定休日に労働させた場合35%以上

 

<割増賃金の計算基礎>

割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当を含めなくてもかまいません。ただしこれは、名称ではなく内容により判断されます。

 

<割増の条件が重なった場合>

深夜に時間外労働を行った場合には、25%+25%=50%以上の割増賃金です。

法定休日に深夜労働を行った場合には、35%+25%=60%以上の割増賃金です。

しかし、法定休日に時間外労働を行った場合には、35%以上の割増賃金です。

 

<「限度時間」を超える時間外労働>

「限度時間」とは、「時間外労働の限度に関する基準」が定める時間のことで、1か月45時間、1年間360時間です。

「限度時間」を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25%以上)を超える率とするよう努めなければなりません。そして、具体的な割増率は三六協定に明記することになります。

たとえば、「限度時間」を超える時間外労働の割増率を30%とした会社の場合には、深夜労働と重なれば30%+25%=55%以上の割増賃金となります。

 

<1か月60時間を超える時間外労働>

1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、50%以上の割増賃金となります。

したがって、1か月60時間を超える時間外労働のうち、深夜労働と重なる部分は50%+25%=75%以上の割増賃金となります。

 

<中小企業の例外>

1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金は、中小企業については適用が猶予されていますので、「限度時間」を超える時間外労働の割増率が適用されています。

適用が猶予される中小企業の範囲は、次のとおり業種ごとに、資本金の額または出資の総額と常時使用する労働者数の限度が決められています。

小売業 ― 5,000万円以下 または 50人以下

サービス業 ― 5,000万円以下 または 100人以下

卸売業 ― 1億円以下 または 100人以下

その他 ― 3億円以下 または 300人以下

「資本金の額または出資の総額」と「企業全体での常時使用する労働者の数」のどちらかが基準以下であれば、中小企業として適用が猶予されることになります。

 

<猶予期間の終了>

猶予期間を終了させる労働基準法改正案が発表されています。

これが可決され成立すると、中小企業でも、平成31年4月1日からは1か月に60時間を超える時間外労働を行わせた場合、50%以上の割増賃金を支払う義務が課せられることになります。

 

2016.03.08.

<法定三帳簿とは?>

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等は、会社に備えておかなければならない重要な書類として「法定三帳簿」と呼ばれます。

会社は、一人でも雇えば、これらの書類を作らなければなりません。

これらには、法律に定められた事項を記入し、3年間保管しておくことが義務づけられています。〔労働基準法107~109条〕

これを怠っている会社は、「適法ではない」ということになりますから、雇用関係助成金ももらえません。

 

<労働者名簿の項目>

労働者氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇い入れ年月日、退職・死亡年月日と理由・原因です。

 

<賃金台帳の項目>

労働者氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、基本給、手当の種類と額、控除項目と額です。

 

<出勤簿等の内容>

出勤簿やタイムカード、会社側で記録した始業・終業時刻の書類、残業命令書・報告書、労働者が記録した労働時間報告書などです。

 

<この他に必要な書類は?>

法定三帳簿の他に、労働条件通知書、三六協定などの労使協定書、健康診断の結果(5年保管)など、労働法関連の書類だけでも、会社が作成・保管を義務づけられている書類は多数あります。

 

<マイナンバーは別管理で>

たとえば労働者名簿に、マイナンバー(個人番号)を記載しておけば便利なように思われます。

しかし、マイナンバーは用途を具体的に限定して収集した個人情報ですから、他のことにも使用する労働者名簿に記載しておくことは、適正な管理とは言えませんので、別に管理しましょう。

 

2016.01.29.

<休日労働と勘違いされる例>

日曜日や祝日の出勤が、休日労働というわけではありません。

パートさんが日曜日に出勤すると、時給が100円プラスされるというスーパーマーケットがあります。これは、会社が独自に行っているものです。

 

<所定休日の労働>

週休2日制で、毎週火曜日と木曜日が休日の社員が、仕事の都合で止むを得ず火曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。会社所定の休日に労働したからです。

所定休日の労働は、8時間を超えなければ、必ずしも時間外割増賃金の対象とはなりません。しかし、週40時間を超える労働となった時間は、通常の残業同様に25%以上の割増賃金となります。

 

<法定休日の労働>

会社は、社員に少なくとも週1日、または、4週で4日の休日を与えなければなりません。これが、法定休日です。〔労働基準法351項、2項〕

週1日の法定休日が与えられる社員が、日曜日から土曜日まで7日間連続で出勤すれば、法定休日の労働時間について、35%以上の割増賃金が発生します。

 

2016.01.15.

就業規則が無いのならせめて、雇い入れ通知書(労働条件通知書)を交付するか、雇用契約書を交わすかしましょうという記事を書いたところ、くわしく知りたいという、お問い合わせをいただきました。

 

<明示義務とは?>

働く人が、どこで何の仕事をして、いくらもらえるかなど、基本的なことを知らずに働かされたのでは困ります。

そこで、人を雇う時には、雇い主に、具体的な労働条件を、明確に示す義務があるのです。

 

<最低限必要な事項>

明示しなければならないことは、次のようにメチャクチャ多いのです。

契約期間、契約更新の基準(短期間の臨時雇用を除きます)、働く場所、仕事の中味、始業終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交代勤務について、賃金の決定の仕方、賃金の計算方法、賃金の支払の方法、賃金が何日締め何日払いか、昇給について、退職について(解雇の理由も)。

 

<面倒でも…>

これだけではなく、決まっていれば、明示を義務付けられる項目もあります。

明示しなければ、罰金もあるのですが、きちんとしておくことで、会社を守るために役立ちます。

定めたことが、明示されていれば、会社が主張できることも増えるのです。

 

2016.01.14.