労働基準法の記事

<強制労働の禁止>

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則が一番重いものです。

使用者が、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制した場合に適用されます。

これは、強制労働の禁止〔労働基準法5条〕に違反した場合の規定です。

 

<家出少年・家出少女に対する実例>

家出少年・家出少女をマンションに軟禁し、強制的に働かせたうえで、その収入を巻き上げるという明らかな犯罪行為が報道されます。

このようなことが一般の企業で行われるとは考えられません。

 

<学生アルバイトに対する実例>

学生アルバイトを深夜までこき使い、正社員のするような仕事までさせておいて、「あなたには管理監督者の仕事まで任せているのだから残業手当は出ない」と説明しているという報道もありました。

学業よりも仕事を優先させて働かせ、結局、退学に追い込んでしまうという話もあります。

たしかに、監禁や身体の自由を不当に拘束する手段に出てはいませんが、弱みにつけこみ、誤った常識を押し付けて、脅迫や精神の自由を不当に拘束する手段を使っています。

 

<ありがちな実例>

店長から店員へ次のような電話があって、その店員が断り切れずに出勤したら、強制労働になります。

「おい!お前今日は休みだったよな。人が足らないんだ。出ろよ。来なかったら承知しねえぞ!」

店長は使用者ですし、これも労働基準法の禁止する強制労働にあたるのですが、さてニュースにならないということは、実際には行われていないのでしょうか。

それとも…

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

店長が労働基準法違反で逮捕されたのではお話になりません。

遅くとも役職者になったなら、最低限の労働法知識を身につけないといけません。

社員教育についても、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.19.解決社労士

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。そして、新人の入社の時に書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

こう考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法27条2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養を外れてしまうので辞退します」という申し出があったとします。店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら拒めません。〔労働基準法24条1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、会社に束縛されています。しかし、退職すれば自由になります。そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです。

 

2016.07.08

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われる人がいるそうです。

本気で言っているとは思えません。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示して、いろいろ義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者の逮捕>

労働者が労働基準法違反の罪を犯すということ自体がないのですから、逮捕や起訴などもないのです。

ただし、就業規則に違反すれば、会社での評価は下がるかもしれませんし、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それを心配した上司が、部下に対してたとえ話をしたのでしょうか。

 

2016.05.22.

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、1947年(昭和22年)5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的にそって規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人のえらい人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。私たちが「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。〔憲法25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法25条〕

このように、憲法25条から30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法27条2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法12条〕

 

2016.05.03.

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2016.03.25.