労働基準法の記事

2021/09/16|1,117文字

 

1時間単位の年次有給休暇https://youtu.be/NvhWqWPb2j8

 

<年5日の年次有給休暇の確実な取得>

年次有給休暇は、働く人の心身のリフレッシュを図ることを目的として、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされています。

しかし、同僚への気兼ねや請求することへのためらい等の理由から、取得率が50%前後と低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

このため労働基準法が改正され、平成31(2021)年4月から、すべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。

 

<取得義務の例外>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

例えば、基準日前から次の基準日後まで、1年以上にわたって休職していて、期間中に一度も復職しなかった場合には、使用者にとって義務の履行は不可能です。

こうした場合には、法違反を問われることはありません。

 

<取得義務の履行が困難なケース>

次の基準日までの日数が少ないタイミングで、休職や育児休業などから復帰した場合には、年次有給休暇を取得できる労働日が少ないので、取得義務を果たすのが難しくなります。

しかし、この場合でも、年5日の年次有給休暇を取得させうる労働日がある場合には、年次有給休暇を取得させる義務を免れることはできません。

半日単位の年次有給休暇を取得してもらうなど、工夫して義務を果たすことになります。

仕事の進捗に問題が発生するような場合には、年次有給休暇の取得義務を果たしつつ、休日出勤を命ずるという裏技を使うこともあるでしょう。

なお、次の基準日までの日数が極端に少なく、取得させるべき年次有給休暇の残日数が、次の基準日の前日までの労働日の日数を超える場合には、「年5日」を達成できなくても、その労働日のすべてを年次有給休暇に充てることで足ります。

 

<解決社労士の視点から>

上記のように、かなり厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

休職や育児休業などが見込まれた時点で、前もって年次有給休暇を取得しておいてもらったり、復帰後の年次有給休暇取得を勤務予定に組み込んだりと、年次有給休暇の取得義務を見据えた勤務計画を立てておく必要があるでしょう。

2021/08/31|1,538文字

 

労働契約https://youtu.be/dcnpbjVePB0

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法第2条第1項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、労働者は生活がかかっているので、使用者に対する遠慮があります。

また、少子化によって労働者が不足している業種では、労働者側が優位に立つこともあるでしょう。

さらに、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

いずれにせよ、労働者と使用者が対等の立場で話し合い、制服代やそのクリーニング代、筆記用具などについて労働者の負担とすることは、そのような内容の労働契約になるのであって、法令の規定に触れることはありません。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、制服代や備品代の負担も労働条件の一つです。

労働条件を口頭で説明されただけでは不明確ですから、主なものは文書にして労働者に交付することが使用者に求められています。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

次に示すのがその内容ですが、制服代や備品の負担は、(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 に含まれます。

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないまま雇い入れてしまったなら、これらを負担させることは労働条件の明示義務違反になります。

 

(1)労働契約の期間に関する事項 (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項 (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項 (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。) (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項 (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項 (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 (9)安全及び衛生に関する事項 (10)職業訓練に関する事項 (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 (12)表彰及び制裁に関する事項 (13)休職に関する事項

 

<就業規則の項目にも>

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則に規定する事項として法定されています。〔労働基準法第89条第5号〕

「負担をさせる定めをする場合」には、就業規則に規定を置かなければなりませんし、定めをしない場合には、就業規則に規定を置きようがありません。

就業規則に規定が無いにもかかわらず、うっかり労働者に負担させてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。

 

労働者の負担になることは、法令で規制されている可能性を考えて、社会保険労務士などの専門家に確認してから行うようにすることをお勧めします。

2021/08/26|1,245文字

 
これって労働時間?https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<長時間労働の基準>

所轄の労働基準監督署長に届出ている三六協定の範囲内で、時間外労働や休日労働が可能です。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも、法定労働時間を基準として、以下を守らなければなりません。

・時間外労働が年720時間以内

・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

・時間外労働と休日労働の合計について、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均がすべて1か月あたり80時間以内

・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月まで

以上の基準をすべて守らなければ、労働基準法違反となり罰則の適用もありえます。

 

<長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果>

令和3(2021)年8月20日、労働基準局監督課過重労働特別対策室室長と中央過重労働特別監督監理官の連名で、長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果が公表されました。

これは、長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、監督指導の結果を取りまとめたものです。

 

【令和2年4月から令和3年3月までの監督指導結果のポイント】

(1) 監督指導の実施事業場: 24,042 事業場

(2) 主な違反内容[(1)のうち、法令違反があり、是正勧告書を交付した事業場]

 ① 違法な時間外労働があったもの: 8,904 事業場(37.0%)

  うち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が

  月 80 時間を超えるもの: 2,982 事業場(33.5%)

  うち、月 100 時間を超えるもの: 1,878 事業場(21.1%)

  うち、月 150 時間を超えるもの: 419 事業場( 4.7%)

  うち、月 200 時間を超えるもの: 93 事業場( 1.0%)

 ② 賃金不払残業があったもの: 1,551 事業場( 6.5%)

 ③ 過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの: 4,628 事業場(19.2%)

(3) 主な健康障害防止に関する指導の状況[(1)のうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場]

 ① 過重労働による健康障害防止措置が

  不十分なため改善を指導したもの: 9,676 事業場(40.2%)

 ② 労働時間の把握が不適正なため指導したもの: 4,301 事業場(17.9%)

 

<解決社労士の視点から>

時間外労働について、違法の基準が変わっていること、また、その基準が複雑であることから、違法とされる事業場が4割近くあります。

「平均」の管理については、手計算で行うことが難しく、システムに頼らざるを得ないでしょうし、給与計算の締日の中間点で警告が出るようにしておかないと、適法性を保つのは困難だと思われます。

また、かつてはブラック企業の特徴とされていた賃金不払残業が、6.5%にまで低下しています。

令和時代に入ってもなお、サービス残業がある会社では、人材の確保が難しく、また、各方面からの信頼も得られませんので、やがて事業の継続は困難となるでしょう。

2021/08/17|1,028文字

 

<休職期間中の産前休業>

産前休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第1項:産前休業】

使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。

 

このように、産前休業は法定された休業ですが、妊娠中の女性からの請求を待って発生するものです。

ですから、何らかの事情により、本人から産前休業の請求が無いまま休職期間が満了すれば、自動退職(自然退職)となることもあるわけです。

しかし、一般には本人からの請求があって、休職期間中に産前休業が開始されることになります。

この場合には、法定の制度である産前休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

むしろ、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<休職期間中の産後休業>

産後休業について、労働基準法は次のように規定しています。

 

【労働基準法第65条第2項:産後休業】

使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

 

このように、産後休業は産前休業と同様に法定された休業ですが、出産した女性からの請求を待たずに当然に発生するものです。

ですから、休職期間中に産後休業が開始された場合には、法定の制度である産後休業が、会社の制度である休職に優先して適用されます。

つまり、休職期間の満了をもって自動退職(自然退職)とはなりません。

やはり、産休の期間とその後30日間は解雇が制限されます。〔労働基準法第19条本文〕

 

<解決社労士の視点から>

休職に優先して産休が適用されることによって、残っていた休職期間がどうなるのか、法令には規定がありません。

これについては、各企業の就業規則に任されていることになります。

産休や育休が終了してから、休職期間の残された期間が進行する、期間がリセットされ改めて休職期間がスタートするなど、就業規則に定めることになります。

休職期間が短縮されたり終了したりというのは、産休や育休の取得による不利益取扱ですから許されません。

休職中の産休はレアケースですが、産休を取得する社員が多い職場では、予め就業規則に規定しておいてはいかがでしょうか。

2021/08/16|1,334文字

 

労働者本人の同意https://youtu.be/TA8e1cofsFE

 

<本人が同意しているのなら>

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。

ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法の規定とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうに思えます。

しかし、採用されたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

<任意規定と強行規定>

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。

ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。

つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに明示されていません。

その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。

そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

<労働基準法の性質>

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

<解決社労士の視点から>

退職予定の正社員から「引継ぎ書と業務マニュアルを完成させたいので残業させてください。これは、私が納得のいくものを作成したいという我がままですから、残業代は要りません」という申し出を受けて、会社側がOKを出したとします。

この退職予定者が、毎日残業し休日出勤までして、見事な引継ぎ書と業務マニュアルを残して退職していったとします。

この場合でも、退職後に残業代の支払を求められたら会社は拒めません。

社員は、退職すれば心理的に自由になります。

そして、労働者としての権利を最大限に主張できるのです。

退職した時点では、残業代を放棄するつもりだったのに、その後経済的に困って会社に請求してくるというのは、典型的なパターンになっています。

円満退社の場合でも、決して油断はできないということです。

2021/08/13|1,586文字

 

<周知の意味>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

会社で「周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<就業規則についての義務>

労働基準法には、次のように規定されています。

 

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 

つまり、従業員が10名以上の会社では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。

しかし、従業員が10名未満の会社が就業規則を作成し届け出るのは任意です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法第106条第1項〕

従業員が10名以上の会社で、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出たとしても、周知しなければ効力が発生しません。ここは重要なポイントです。

 

<労使協定の周知義務>

よくある勘違いに、「うちには労働組合が無いので労使協定は関係ない」というのがあります。

しかし、労働組合が無い会社では、「労働者の過半数を代表する者」が選出され、この過半数代表者との間で労使協定が交わされます。

労使協定というと、三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が特に有名です。〔労働基準法第36条〕

この協定書を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければ、法定労働時間を超える残業は1分たりともさせられません。

無届での残業は違法残業となってしまいます。

労働基準法には、他にも多くの労使協定が規定されています。

特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。

しかし、必要に応じて協定を交わし、周知することが会社に義務付けられています。

 

<周知の方法>

周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。

 

<労働基準法の要旨の周知>

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、会社が作成するのですから、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。

しかも、労働基準法第106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」としています。

 

<解決社労士の視点から>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。

パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的に1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、自社の従業員に合った上手い説明が見つからない場合には、国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

2021/07/26|1,372文字

 

正社員登用者の年次有給休暇https://youtu.be/UCBrjOY97Bw

 

<就業規則の定め>

休職は、労働基準法などに規定がなく、各企業の定める就業規則に従って運用されます。

モデル就業規則の最新版(令和3(2021)年4月版)は、休職について次のように規定しています。

 

【休職】

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

① 業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき                    年以内

② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

                           必要な期間

2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。

3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

<休職前の年次有給休暇取得>

就業規則には、一定の期間欠勤が続くと休職となり、あるいは休職を命じられるという規定が多いでしょう。

この場合、年次有給休暇を取得すれば欠勤にはなりませんから、休職となることを嫌って、ある程度の日数の年次有給休暇を取得してから、欠勤が発生するようになるのが通常です。

また、社会保険料や住民税の控除ができる程度の給与を確保するためにも、年次有給休暇の取得が有効です。

本人の考え方次第ですが、欠勤や休職をなるべく避けたいということで、年次有給休暇をすべて使い果たしてから欠勤が発生することもあります。

 

<休職中の年次有給休暇取得>

休職中は労働義務がありません。

労働義務が無い日について、年次有給休暇を取得する余地はありませんから、休職期間に年次有給休暇を取得することはできません。

法令には規定がありませんが、同趣旨の通達があります(昭和31.2.13基収489号)。

これは、就業規則で毎年三が日が休日の企業で、三が日に年次有給休暇を取得できないのと同じです。

したがって、休職期間を年次有給休暇の残日数分だけ延長ということもありません。

 

<復帰後の年次有給休暇取得>

休職期間の満了とともに、あるいは期間満了前に休職事由が消滅して職務に復帰した場合には、年次有給休暇の残日数を限度に取得することができます。

特に私傷病を理由に休職となった場合には、治療の必要から通院のために年次有給休暇を取得する必要性は高いのですが、休職前にすべての年次有給休暇を取得し尽くしていると、この必要に応じることができません。

休職するにあたって、復帰の可能性が高いのであれば、通院のための年次有給休暇を残しておく必要性も高いといえます。

 

<解決社労士の視点から>

休職者が、復帰できるかできないかは結果論です。

企業の方から「年次有給休暇を◯日残しておいたほうが良い」といったアドバイスをするのは適切ではありません。

あくまでも、本人の意思で年次有給休暇の取得を申し出るようにしてもらうべきです。

また、病気休暇の制度があれば、業務外の傷病による休職の場合には、病気休暇の取得も併せて考えます。

年次有給休暇も病気休暇も本人の権利ですから、企業側から不確実な見込みでアドバイスすることは避けましょう。

2021/07/14|1,903文字

 

労働基準監督官の行動規範https://youtu.be/gmncel00ZWc

 

<労働基準監督署への申告>

労働基準監督署への申告については、労働基準法に次の規定があります。

 

【監督機関に対する申告】

第百四条 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。

 

申告事案は、最低労働基準を定めた労働基準法などに違反するとして、労働者が労働基準監督署に救済を求めるものですから、労働基準監督署では、労働者が置かれた状況に配慮し、懇切・丁寧な対応に留意しつつ、迅速・的確に処理を行っています。

 

<令和2(2020)年の申告>

申告受理件数は3,965件で、前年と比べ159件(3.9%)減少しました。

直近10年間の申告受理件数の推移をみると、平成23(2011)年の6,460件をピークとして、その後減少が続いていましたが、平成29(2017)年に増加に転じ、平成30(2018)年も引き続き増加していたところ、平成31年(令和元年)以降再び減少に転じています。

申告を内容別にみると、賃金不払が 3,075 件(前年比 6.1%減)で最も多く、業種別では、接客娯楽業(22.3%)、商業(16.1%)、保健衛生業(11.8%)の順となっています。

次いで、解雇が 622 件(前年比 11.7%増)となっており、業種別では、同じく接客娯楽業(27.5%)、商業(15.4%)、保健衛生業(10.3%)の順となっています。

具体的な申告事例としては、次のようなものが公表されています。

 

<賃金不払>

退職した労働者から、退職月の賃金が一部支払われていないとの申告を受け、調査したところ、退職月の賃金額が約定した金額を下回る東京都最低賃金の金額まで減額されていたことが判明した。(その他の事業)

 

労働者が、会社側と感情的に対立したまま退職し、会社側が賃金の一部を支払わないということがあります。

しかし、賃金の全額を支払わないことは、労働基準法違反の犯罪となりますから、会社側がこうした手段に出ることは避けなければなりません。

 

<休業手当不払>

パート労働者から、会社から休業を命じられて休業しているにもかかわらず、休業手当が支給されないとの申告を受け、調査したところ、正社員以外には休業手当を支給していないことが判明した。(接客娯楽業)

 

労働基準法に規定されている労働者の権利には、正社員限定とされているものがありません。

非正規社員には、同一労働同一賃金についての認識も強まっていますので、不公平な格差は是正されなければなりません。

 

<割増賃金不払>

退職した労働者から、在職中の割増賃金が支払われていなかったとの申告を受け、調査したところ、1か月単位の変形労働時間制を採用していないにもかかわらず、1か月単位の変形労働時間制を採用したものとして時間外労働として計算していたことが判明した。(教育・研究業)

 

1か月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制など、変形労働時間制は法定の手続を踏み、それぞれの制度に特有の正しい賃金計算が必要です。

なんとなく、それらしき制度を運用し、誤った賃金計算を行えば、当然に労働基準法違反となってしまいます。

 

<解雇>

解雇された労働者から、即時解雇されたにもかかわらず、解雇予告手当が支払われていないとの申告を受け、調査したところ、解雇予告手当の支払いを行わないまま即時解雇したことが判明した。(接客娯楽業)

 

解雇予告手当の支払が不要なのは、労働基準法に示された例外に該当する場合だけです。

会社側の裁量で支払わないことは許されません。

即時解雇であれば、特殊なケースを除き、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払が必要となります。

 

<労働時間>

労働者から、違法な時間外労働を行っているとの申告を受け、調査したところ、36協定の上限時間を超えて、月100時間を超える時間外労働、または2か月平均で80時間を超える時間外労働を行わせていたことが判明した。(その他の事業)

 

36協定違反や労働基準法の上限を超える時間外労働は違法です。

こうしたことが発生する恐れがある場合には、緊急避難的に会社全体の業務量を削減する必要があるかもしれません。

また、採用の強化や定着率の向上も大事です。

 

<解決社労士の視点から>

そもそも業界の常識が、労働基準法違反ということも多々あります。

常識を疑い、法令などの情報源に遡って確認することが、経営者に求められています。

2021/07/11|934文字

 

労災保険は自動加入https://youtu.be/LHPgv8RJ0RI

 

<送検状況の公表>

令和3(2021)年6月29日、東京労働局管内での令和2年度の送検状況が公表されました。

労働基準法や労働安全衛生法などには罰則があり、この罰則に触れる行為は犯罪ですから、刑法犯同様に送検されることがあるわけです。

公表内容から、東京労働局と管下の労働基準監督署が、どのような事件を送検しているのか、実態を把握することができます。

 

<送検状況の概要>

令和2(2020)年4月から令和3(2021)年3月までの1年間に、管下の労働基準監督署(支署)では、70件(前年度に比べ30件増加)の司法事件が東京地方検察庁に送検されました。

その内容を見ると、危険防止措置に関する違反が19件となっているなど、労働安全衛生法違反の事案が大幅に増加しています。

また、賃金・退職金不払に関する違反(16件)、割増賃金不払に関する違反(8件)も多く見られます。

業種別で見ると、建設業(19件)が最も多く、次いで商業及び清掃・と畜業が11件となっています。

 

<違反事項の内容>

労働基準法・最低賃金法違反により送検されたのは34件で、主な送検事項は、賃金・退職金不払に関する違反が16件、割増賃金不払に関する違反が8件、労働時間・休日に関する違反が5件でした。

労働安全衛生法違反により送検されたのは36件で、主な送検事項は、危険防止措置に関する違反が19件(このうち、墜落・転落災害に関する違反が14件)、労災隠しが4件でした。

 

<今後の対応>

東京労働局及び管下の労働基準監督署(支署)では、法違反を原因として重大な労働災害を発生させたものや、同種の法違反を繰り返し、遵法状況に悪影響を及ぼすもの等、重大・悪質な事案に対しては、引き続き、送検も含め厳正に対処していくとしています。

 

<解決社労士の視点から>

最近になって、全国的に労災事故が増加傾向にあります。

こうした中で、法違反が原因での重大な労災事故は、1発アウトで送検されることもあります。

また、労基署の立入検査(臨検監督)を受け、交付された是正勧告書に応じて改善報告書を提出したにもかかわらず、再び同じ違法行為を行ってしまえば、悪質と認定される可能性は極めて高くなります。

こうしたことに留意して、遵法経営を目指しましょう。

2021/06/29|1,385文字

 

<祝日の移動>

令和3(2021)年のカレンダーの大半は、前年の11月に作成され祝日が誤ったまま出荷されています。

祝日の変更が、令和2(2020)年11月27日の臨時国会で決定され、令和3(2021)年に限り、海の日が東京五輪の開会式前日に当たる7月22日に、スポーツの日が開会式当日の7月23日に、山の日が閉会式当日の8月8日に移動したためです。

この影響で、8月9日が振替休日となり、例年の海の日(7月第3月曜日)、スポーツの日(10月第2月曜日)、山の日(8月11日)が平日になりました。

祝日移動の目的は、新型コロナウイルス感染拡大を踏まえ、東京五輪開催に伴う交通混雑の緩和にあります。

 

<給与支給日への影響>

たとえば、令和3(2021)年7月20日は火曜日ですが、木曜日の22日が海の日、金曜日の23日がスポーツの日ですから、22日から25日までが連休です。

毎月20日締切、当月25日支払としている企業で、就業規則が「支払日が休日に当たる場合は、その前日に繰り上げて支払う」と規定していれば、給与支給日は締日の翌日の7月21日ということになります。

 

<労働基準法の規制>

賃金は毎月一定の期日を定めて、定期的に支払わなければならないという、賃金の一定期日払の原則があります。〔労働基準法第24条〕

賃金の支払日が毎月変動すると、労働者の生活が不安定になるからです。

それでも、その日が休日で賃金の振込みができないこともあります。

この場合に、民法の規定によればその支払日は繰下げとなります。〔民法第142条〕

しかし、就業規則で繰上げるものとすることも可能で、実際に多くの企業が繰上げとしています。

いずれにせよ、賃金の支払日は就業規則の絶対的必要記載事項です。

 

<債務不履行による損害賠償>

給与の支払が遅れたことによる損害賠償については、民法第415条に規定があります。

 

【債務不履行による損害賠償】

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

給与については、会社が債務者、従業員が債権者ということになります。

現在の法定利率が年3%ですから、月給30万円の場合の損害額は約25円となります。

( 300,000円 × 3% ÷ 365日 = 24.7円 )

もっとも、急な祝日の変更によって、給与の支払が遅れるのは「取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるもの」と言えるでしょう。

そうであれば、そもそも会社の損害賠償責任は無いことになります。

 

<解決社労士の視点から>

給与の支払が遅れるというのは、本来はあってはならないことで、厳密には一定期日払の原則(労働基準法第24条)に反しています。

これには30万円以下の罰金も規定されています。〔労働基準法第120条第1項〕

しかし今回の祝日移動は、コロナ下のオリンピック対応のため、国により急遽行われた臨時のものです。

就業規則の規定通りに給与を支給できず1日遅れになったとしても、企業の刑事責任・民事責任を問えないケースが多いのではないでしょうか。

2021/06/27|1,901文字

 

<休暇の通勤手当>

通勤手当は、労働基準法などにより、企業に支払が義務付けられているものではありませんが、支払われる場合には、通勤に必要な経費や負担を基準にその金額が決められているのが一般です。

休暇の場合には、出勤しないわけですから、年次有給休暇を取得した場合の賃金に通勤手当が含まれるというのは、矛盾があるようにも思われます。

  

<労働基準法の定め>

「就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない」〔労働基準法第39条第7項本文〕

つまり、解雇予告手当などを計算する場合に用いられる法定の平均賃金、または、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金が原則となります。

ただし、労使協定を交わせば、健康保険法第40条第1項の標準報酬月額の30分の1を、1日分の年次有給休暇の賃金として支給することもできます。

また、この金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これに従います。〔労働基準法第39条第7項但書〕

 

<労働基準法施行規則>

労働基準法の規定だけでは明確にならない場合は、次の規定が適用されます。

 

労働基準法施行規則

第二十五条 法第三十九条第七項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次の各号に定める方法によつて算定した金額とする。

一 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額

二 日によつて定められた賃金については、その金額

三 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額

四 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額

五 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額

六 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額

七 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額

2 法第三十九条第七項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金若しくは前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。

3 法第三十九条第七項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額は、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)をその日の所定労働時間数で除して得た金額とする。

 

<解決社労士の視点から>

年次有給休暇の賃金の計算方法には、次の3つがあるということです。

1.労働基準法第12条で定める「平均賃金」

2.所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金

3.健康保険法第99条で定める「標準報酬日額」

 

このうち、1.3.に通勤手当が含まれていることは明らかです。

しかし、2.に通勤手当が含まれるか否かは不明確です。

これについては、次の規定があります。

 

「使用者は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」〔労働基準法附則第136条〕

 

この条文について、通勤手当を支給しないことが「賃金の減額」にあたると解釈すれば、通勤手当を支給しなければなりません。

 

さて基本に戻って、通勤手当は労働基準法などにより企業に支払が義務付けられているものではありません。

ですから、就業規則に「通勤手当は実際に出勤した日についてのみ支給する」という規定があれば、年次有給休暇の賃金についても、通勤手当を計算に含めなくて良いことになります。

反対に、こうした規定が無ければ、不明確なことは労働者の有利に解釈するのが労働法全体の趣旨ですから、通勤手当を計算に含める必要があるでしょう。

2021/06/26|1,029文字

 

ブラック就業規則https://youtu.be/fUVYZrve4OU

 

<通常の場合>

年次有給休暇を取得する場合には、労働者から取得する日を指定するのが原則です(時季指定権)。

一方、労働者が指定した日の年次有給休暇取得が、事業の正常な運営を妨げる場合には、会社からその日の取得を拒むことができます(時季変更権)。

労働者から、いきなり「今日休みます」と言われたのでは、会社は時季変更権を使う余地がありません。

ですから、前もっての指定が必要なのです。

 

<円満退職の場合>

転職先が決まっている、家族と共に転居するなど、労働者の都合により、退職日が決まっていて変更できない場合があります。

この場合、退職日より後の日に年次有給休暇を取得することはできませんから、一般には退職日までの間の出勤予定日に取得することになります。

しかし、会社に長い間貢献した人が退職していくにあたって、それが円満退社であれば、せめて最後に残った年次有給休暇をすべて取得させてあげたいところです。

この場合、残った年次有給休暇の日数が多ければ、日付を遡って取得させることもありえます。

ただし、前年度にさかのぼると、労働保険料の計算や税金の計算などがやり直しになりますので注意が必要です。

場合によっては、社会保険料の計算もやり直しとなります。

そこで、お勧めしたいのは、年次有給休暇の買上げです。

通常は、買上げは許されないのですが、退職にあたって買上げることは、休暇取得の妨げにならないので許されています。

それでも、年次有給休暇の取得は労働者の権利ですから、退職者と会社とで話し合って決めることが必要です。

 

<円満ではない退職の場合>

会社と感情的に対立していて、退職にあたって様々な要求をしてくる労働者がいます。

年次有給休暇については、「普段あまり取得できなかったので、退職にあたっては、残さずすべてを取得させてほしい」「残った年次有給休暇を買い取ってほしい」という話が出てきます。

年次有給休暇をすべて取得し尽くすというのは、退職日との関係で日程的に

無理が無ければ可能な話ですし、労働者としての正当な権利を行使するに過ぎません。

しかし、年次有給休暇の買上げは、「会社が残日数の一部または全部の買上げを行うことができる」に過ぎず、労働者の側から権利として主張することはできません。

ただ、引継ぎをきちんと終わらせない恐れがある、あるいは未払残業代やパワハラを理由とする慰謝料を請求してくる可能性が高いなどの事情があれば、経営判断で年次有給休暇の買上げをすることも考えられます。

2021/05/09|1,959文字

 

<フレックスタイム制のイメージ>

フレックスタイム制では、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めるので、その労働者は次のように考えるかも知れないわけです。

朝、目覚めたとき「今日は出勤しようか、それとも休もうか」

起きてから「いつ出勤しようか」

家を出て通勤の途中で「やはり映画を観に行こうか」

会社に到着して仕事を始めてから「やる気が起きないから帰ろう」

しかし、これでは仕事が回りません。

労働基準法が、このような制度を法定した筈がありません。

 

<働き方改革の推進>

平成31(2019)年4月、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、フレックスタイム制の清算期間の上限が1か月から3か月に延長されました。

もし、フレックスタイム制が現実離れした使い物にならない制度であれば、廃止されている筈ですが、労働者ひとり一人の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で選択できるようにするための制度であり、働き方改革の趣旨に適っているため拡充されたのです。

実際、フレックスタイム制は生活と業務との調和が図れる便利な制度です。

 

<労働基準法の規定>

フレックスタイム制に関する労働基準法の規定は次の通りです。

 

第32条の3第1項 使用者は、就業規則その他これに準ずるものにより、その労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねることとした労働者については、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、その協定で第二号の清算期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、同条の規定にかかわらず、一週間において同項の労働時間又は一日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。

一 この項の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲

二 清算期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、三箇月以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)

三 清算期間における総労働時間

四 その他厚生労働省令で定める事項

 

ここで、条文にある「労働者」というのは、単数と複数を区別しない日本語の特性から「労働者たち」という意味であると考えられます。

そうであれば、業務開始時刻と業務終了時刻に使用者が介入してはならないということであって、業務都合と私生活とのバランスを考えつつ、労働者間で相談して決めることは差し支えないわけです。

このように考えても法の趣旨に反しませんし、むしろこのように考えないと運用が極めて困難になってしまいます。

個々の労働者が自分だけの考えで、始業・終業時刻を決めるというのは現実的ではありません。

やはり相談しながら決めることになります。

 

<フレックスタイム制の法的要件>

フレックスタイム制に関する条文は長いですが、法的要件は次のとおりです。

・業務開始時刻と業務終了時刻は労働者たちが決めることにして、これを就業規則などに定めます。

・一定の事項について、会社側と労働者側とで労使協定を交わし、協定書を保管します。

・清算期間が1か月を超える場合には、協定書を労働基準監督署長に届け出る必要があります。〔労働基準法第32条の3第4項→第32条の2第2項〕

 

<フレックスタイム制の運用条件>

上記の法的要件を満たせば、問題なく運用できるというわけではありません。

まず対象労働者は、業務都合と私生活とのバランスを考えて、業務開始時刻と業務終了時刻を自主的に決定できる人に限定する必要があります。

対象者は、特定の部署の全員あるいはその一部とすることもできますし、1人だけにすることもできます。

対象となる労働者が複数であれば、各個人の業務開始時刻と業務終了時刻について協議のうえ決定できるメンバーである必要があります。

また、各個人の業務開始時刻と業務終了時刻は前もって決定し、自部署と関連部署で情報共有する必要があります。

変更があった場合には、タイムリーに情報共有できる必要があります。

無料のスケジュール共有ツールを利用して、スマートフォンでチェックできるようにすれば便利です。

 

<解決社労士の視点から>

まずは、清算期間1か月のフレックスタイム制でワークライフバランスや生産性の向上を目指すことをお勧めします。

上手くいかないときは、対象労働者の中に制度活用の難しいメンバーがいないか、情報共有が不十分ではないかの2点をチェックし、必要に応じ労使協定の内容を見直してはいかがでしょうか。

2021/04/29|1,237文字

 

<旧パートタイム労働法などの改正>

平成27(2015)41日付で旧パートタイム労働法、施行規則、指針が改正されました。

6年以上も前のことです。

 パートタイム労働者とは「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される正社員など通常の労働者に比べて短い労働者」のことをいいます。

労働条件は、労働条件通知書などの書面により労働者に通知しておくことが、事業主に義務づけられています。

パートタイム労働者を雇ったときは、事業主に次のようなことについての説明義務があります。〔旧パートタイム労働法第14条第1項〕

・賃金制度の具体的な内容

・教育訓練の具体的な内容

・利用できる福利厚生施設

・正社員への転換を推進する措置の具体的な内容 

また採用後も、パートタイム労働者から次のようなことについて質問があれば、事業主はきちんと理解できるように説明する義務があります。〔旧パートタイム労働法第14条第2項〕

・どのような要素をどのように考慮して賃金を決定したか

・参加できる教育訓練の内容がどうしてそのように決まっているのか

・利用できる福利厚生施設の範囲がどうしてそのように決まっているのか

・正社員への転換推進措置は何を考慮してそのように決まったのか

 ところが、具体的なことが何一つ決まっていないということもありえます。

こうした状態では、法律違反ということとは別に、職場としての魅力が無いため、退職者が多い一方で、新人を採用できないことになりかねません。

 遵法経営の点からも、人材不足解消の点からも、なるべく経費をかけずに改善を進める必要があります。

 
<同一労働同一賃金の法制化>

パートタイム・有期雇用労働法により、令和3(2021)年4月1日から中小企業を含めすべての企業で、採用時の説明義務が拡大されています。

まず、対象者が増えています。

フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者(パートタイム労働者)に加えて、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者(契約社員など)も対象となっています。

つぎに、説明内容が増えています。

新規採用者には、賞与、手当、退職金、休暇、福利厚生など待遇の各項目について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを説明します。

そして、それぞれの違いについて理由を説明します。

この「待遇の違いの内容と理由」が客観的に合理的なものであることが求められます。

 

YouTube「合理的」の意味

https://youtu.be/E-BgYSjxLZI

 

<解決社労士の視点から>

サービス残業が問題視され減少したのと同様に、採用時の説明義務を果たさない企業も減少していくでしょう。

サービス残業が労働基準法違反の犯罪であり罰則が適用されうるのに対して、「説明不足」には罰則がありません。

しかし、採用したつもりの新人が、会社の説明に納得できず出勤しないリスクがあります。

新人としては、なぜ採用を辞退するのか、「説明不足」の会社に説明するのは無駄だと考えるからです。

働き方改革の流れに乗れないのであれば、一度、社会保険労務士に相談することをお勧めします。

2021/04/21|1,812文字

 

YouTube三六協定届出後の対応

https://youtu.be/ak4DF0JLQ4E

 

<様式の変更>

令和2(2020)年4月、働き方改革関連法の影響で三六協定届の様式が変更になったばかりです。

しかし、令和3(2021)年4月にも、今度は政府の押印省略の方針を受けて様式が変更となりました。

これ以降に届出する場合には、ネットで最新版の様式をダウンロードして使用しなければなりません。

 

<労働者の過半数を代表する者>

三六協定を締結する際に、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合が無い場合は、労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)を選出し、労働者側の締結当事者とする必要があります。

管理監督者(労働基準法第41条第2号)は過半数代表者になれません。

また、三六協定を締結するための過半数代表者であることを明らかにしたうえで、投票、挙手などにより民主的に選出する必要があります。

こうした要件を満たさず、過半数代表者の選出が適正に行われていない場合には、三六協定を締結し労働基準監督署長に届け出ても無効となります。

このことを担保するため、三六協定届の最新様式には、届出日記入欄の上に次の文言が追加されています。

 

上記協定の当事者である労働組合が事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は上記協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること。□(チェックボックスに要チェック)

上記労働者の過半数を代表する者が、労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者ではなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。□(チェックボックスに要チェック)

 

使用者が過半数代表者の選任に干渉してはいけないのですが、会社は過半数代表者本人に三六協定の内容を熟知させ、また、労働者の意見や希望を使用者に伝える役割を自覚させなければなりません。

これを行わなければ、過半数代表者の役割が果たされません。

 

<健康・福祉確保措置>

三六協定に特別条項を置けば、一定の範囲内で限度時間を超えて労働させることが可能です。しかしこの場合、「限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置」の欄には、以下の措置の中から選択し「(該当する番号)」にその番号を記入したうえで、その具体的内容を「(具体的内容)」に記入することになります。

 

1 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること

2 労働基準法第37条第4項に既定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること

3 就業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること

4 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること

5 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること

6 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること

7 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること

8 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること

9 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保険指導を受けさせること

10 その他

 

どれか1つでも選択すれば、三六協定届は受け付けてもらえます。

しかし、実際に限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康・福祉確保措置を実施しなければ、その時間外労働は違法になってしまいます。

会社にとって無理のない措置を選択し、確実に実行するのが得策です。

 

<制限の遵守>

本来であれば労働基準法により罰せられる法定時間外労働や法定休日労働が、三六協定の範囲内で罰せられないことになります。

当然ですが、三六協定の範囲を超える法定時間外労働や法定休日労働を労働者に行わせることは、労働基準法違反の犯罪となります。

各事業場は本部に任せきりではなく、自分たちが遵守すべき基準について主体的に確認する必要があります。

また、本部は各事業場に任せきりではなく、各事業場で基準を理解し遵守しているか確認する必要があります。

これらを怠ることは、三六協定届を提出せずに残業させているに等しい状況を生むことになります。

三六協定届を提出した後の対応もしっかり行いましょう。

 

解決社労士

2021/04/18|1,435文字

 

YouTube解決社労士のご紹介

https://youtu.be/qUAFJ0sjnDg

 

<再雇用時の賃金>

正社員が定年に達すると同時に再雇用された場合、年収は何割までダウンしても違法にならないか、世間相場や業界での一般的な水準はどの程度かといった、それ自体あまり意味を持たない質問を受けることがあります。

これは、働き方改革以前から問題とされてきましたが、同一労働同一賃金との関連でクローズアップされています。

 

<長澤運輸事件最高裁判決>

平成30(2018)年6月1日の長澤運輸事件最高裁判決は、まさに定年後再雇用時の賃金引下げが争われた事件に対する司法判断です。

運輸業の会社でトラックの運転手として定年を迎えた労働者が、定年退職とともに有期労働契約の嘱託社員として再雇用されました。

このとき、仕事内容に変更が無いのに、賃金が約2割引き下げられたことによって、正社員との間に不合理な待遇差が発生し、旧労働契約法第20条に違反するとして会社を訴えたのです。

この判決で、最高裁は次のような判断を示しました。

賃金項目が複数ある場合には、項目ごとに支給の趣旨・目的が異なるので、賃金の差異が不合理か否かについては、賃金の総額を比較するだけでなく、その賃金項目の趣旨・目的を個別に考慮すべきである。

精勤手当は欠かさぬ出勤を奨励する趣旨を持つものであり、嘱託社員は正社員と職務内容が同一である以上、皆勤を奨励する必要性に相違はなく、定年の前後で差異を設けることは不合理である。

精勤手当が計算の基礎に含まれる超過手当(時間外労働手当)についても同様である。

これ以外の賃金項目については、それぞれの趣旨・目的から、差異を設けることが不合理ではない。

 

<最高裁判決の趣旨>

令和2(2020)年は、同一労働同一賃金の最高裁判決が5つ出ました。

大阪医科大学事件、メトロコマース事件、それと日本郵便事件が3つです。

これらの裁判でも、改正前の労働契約法20条を巡って争われました。

退職金、賞与、手当、休暇などについて、それぞれの裁判で差異が不合理か否か争われました。

そして、どの判決でも、各項目の支給の趣旨・目的から、その差異が不合理か否か検討され判決が下されたのです。

賞与一つをとっても、企業によって支給の趣旨・目的が異なります。

その趣旨・目的によって、正社員と非正規社員とで支給の差異について、次のように判断が分かれうることになります。

1.非正規社員にも正社員と同額が支給されるべきである。

2.非正規社員にも正社員と同じ基準で支給されるべきである。

3.非正規社員には正社員の支給額の一定割合を支給すべきである。

4.非正規社員には支給しなくても不合理ではない。

大阪医科薬科大学で、非正規社員に賞与を支給しないのは不合理ではないからといって、別の企業でも同じことがいえるとは限らないのです。

 

<解決社労士の視点から>

定年後再雇用時の年収水準そのものについては、最高裁判所が明確な基準を示していません。

各業界で平均的な下げ幅であれば容認されるのだとすると、平均を下回る半数近い企業は不合理だとされかねません。

むしろ、個別の手当等について、定年の前後でその支給に差を設ける場合に、それぞれの趣旨・目的から、不合理ではないかが厳しく審査されることになりました。

ですから、個別の手当等について、不合理といえない範囲で差異を設けた結果、年収が3割減少した、4割減少したというのは容認されることになります。

肝心の基本給については、今後の司法判断の積み重ねによって明らかになっていくものと思われます。

2021/04/15|1,980文字

 

<地方労働行政運営方針の意義>

厚生労働省は、令和3(2021)年4月1日付で「令和3年度地方労働行政運営方針」を策定しました。

各都道府県労働局は、この運営方針を踏まえつつ、各局の管内事情に即した重点課題や対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な行政運営を図ることにしています。

労働基準監督署の労働基準監督官は、監督指導実施計画に沿って臨検監督(実地調査)を行っていますが、この計画も「行政運営方針」に基づいています。

労働基準行政で優先順位の高いものほど、重点項目の上のほうに記載されていますから、会社の所轄労働基準監督署が監督(調査)に入るとしたら、何を見られるかが把握しやすいといえます。

 

<令和3年度の運営方針の特徴>

労働行政の最大の課題として、長期化する新型コロナウイルス感染症への対応を掲げています。

今後は、新型コロナウイルス感染症が社会経済活動に様々な影響を及ぼす中で、現下の厳しさがみられる雇用情勢と、労働市場の変化の双方に対応した機動的な雇用政策を実施していくこと、人材ニーズに柔軟に対応した人材開発やテレワークなどの多様な働き方の定着などに取り組むとしています。

さらに、構造的な課題の少子高齢化の中で、労働供給の確保や生産性向上等に引き続き取り組む必要があること、人生100年時代を迎え、どのような生き方や働き方であっても安心できる社会を創っていくことも必要なことを確認しています。

このため、働き方改革関連法の着実な施行等が大事であることを強調しています。

年次有給休暇の管理と取得させる義務の履行、時間外労働時間の法的規制の遵守、同一労働同一賃金への対応などが、企業にとっても重点課題となるでしょう。

 

<ウィズ・ポストコロナ時代の雇用機会の確保>

1.雇用の維持・継続に向けた支援

新型コロナウイルス感染症の影響等により休業させられた労働者の雇用の維持・継続のため、雇用調整助成金により事業主を支援し、産業雇用安定助成金により在籍型出向を活用した雇用維持を促進します。

2.業種・地域・職種を越えた再就職等の促進

新型コロナウイルス感染症の影響等による求職者のニーズの多様化に対応するため、ハローワークに新たに専門の相談員を配置する等により、業種、地域、職種を越えた再就職等の支援を行います。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされ、就労経験のない職業に就く希望者を、一定期間試行雇用する事業主の賃金の一部をトライアル雇用助成金で助成します。

3.非正規雇用労働者の再就職支援

非正規雇用労働者等の早期再就職を支援するため、ハローワークに専門の相談員を配置し、担当者制による求職者の個々の状況に応じた体系的かつ計画的な就職支援の強化を図ります。

また、求職者等に向けた企業の職場情報の提供を行う職場情報総合サイト(しょくばらぼ)や職業の様々な情報が手軽に入手できる職業情報提供サイト(日本版O-NET)を活用し、求人・求職の効果的なマッチングを図ります。

4.女性活躍・男性の育児休業取得等の推進

不妊治療のための休暇制度・両立支援制度の利用促進に取り組む中小企業事業主に対する助成金の利用を促進し、不妊治療を受けやすい職場環境の整備を推進します。

また、女性活躍推進法の行動計画策定義務対象企業が101人以上に拡大されることを踏まえ、中小企業事業主に対する女性活躍推進アドバイザーによる個別支援等を行います。

 

<ウィズコロナ時代に対応した労働環境の整備、生産性向上の推進>

1.「新たな日常」の下で柔軟な働き方がしやすい環境整備

適正な労務環境下での良質なテレワークの普及促進を図るため、テレワーク相談センターによる働き方改革推進支援センターと連携した個別相談対応やセミナーの開催等により、テレワークを実施する中小企業への支援を行います。

また、良質なテレワークを導入・実施し、人材確保や雇用管理改善の観点から効果をあげた事業主への支援(人材確保等支援助成金の支給)を行います。

2.ウィズコロナ時代に安全で健康に働くことができる職場づくり

職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、「取組の5つのポイント」やチェックリスト等を活用した職場における感染防止対策の取組を推進するとともに、新型コロナウイルス感染症に係る労災補償については、迅速かつ的確な調査及び決定を行います。

3.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けて、働き方改革推進支援センターによるワンストップ窓口で、労務管理等の専門家による個別訪問支援等に加え、新たに業種別団体等に対し専門家チームによる支援を実施します。

また、賃金引上げや非正規雇用労働者のキャリアアップを図るため、各種助成金の活用も含めた支援を行います。

 

解決社労士

2021/03/23|1,786文字

 

YouTubeこれって労働時間?

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<就業規則にタイムカードで管理するという規定だけがある場合>

厚生労働省のモデル就業規則には、労働時間の管理について次の規定があります。

 

(始業及び終業時刻の記録)

第15条 労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業及び終業の時刻を記録しなければならない。

 

こうした規定が就業規則にある場合には、原則としてタイムカード通りに勤務したものと見られます。

もし労働時間の実際の管理がタイムカードによらないのであれば、就業規則違反とも言えますが、就業規則の変更手続を怠っているとも考えられます。

いずれにせよ、適法な状態ではないので速やかに是正すべきでしょう。

 

何か特別な事情があって、一部の労働者についてだけ就業規則とは異なる方法で労働時間の管理を行っている場合には、どのような範囲の人について、どのような場合に、タイムカードによらない管理をするのかについて、就業規則に定めておく必要があります。

 

就業規則がある場合に、就業規則の規定による労働時間の管理方法によらず、別の根拠で始業時刻や終業時刻を認定しようとしても、とても難しいのです。

 

始業時刻や終業時刻、休憩時間などの認定について、使用者側が労働者側の主張と違う考え方をとり、争いになることがあります。

労働者や退職者が未払賃金の支払を求めて労働審判や訴訟となった場合が典型です。

また、労働基準監督署の監督や会計検査院の調査などがあった場合には、就業規則通りに認定します。

使用者側が、これを否定して別の方法で認定してもらうのは至難の業です。

 

<タイムカードとは違う認定が可能な場合>

タイムカード通りに労働時間を認定したのでは、実際よりも長く計算されてしまうということがあります。

こうしたことを防ぎたいのであれば、就業規則に特別な規定を置き、それに沿った運用をすることで、本当の労働時間と計算上の労働時間との誤差を少なくすることができます

しかし、このためには就業規則と運用の整備や社員教育が必要です。

これは、高度に専門的な知識と技術が必要ですから、導入に当たっては、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

<タイムカードとは違う認定を可能にする就業規則>

就業規則に、タイムカードは職場への入場時刻と職場からの退出時刻を示しているということ、これは勤務時間の参考記録にはなるが、ここから直接労働時間を計算できるわけではないということを明示すべきです。

 

<たとえば残業時間の認定についての運用>

運用を整備しなければ、就業規則上の所定の終業時刻から退出時刻までが残業時間となってしまいます。

多くの会社では、このような状態になっています。

残業は、本来使用者から命じられて行うものですが、自己判断での残業が許されていたり、残業時間の管理がルーズだったりすれば、タイムカード通りに認定するしかなくなってしまいます。

 

まず、会社の上司など使用者から早出や残業を命じる場合には「残業指示書」により時間外勤務を命令します。

反対に、労働者が早出や残業の必要を感じて使用者に命令を求める場合には、あらかじめ「残業申請書」により申請し、使用者の命令があった場合には許されるという運用を徹底しなければなりません。

 

ただし、指示書や申請書が無いまま勝手に残業してしまった場合でも、働いたからには賃金を支払わざるを得ないというケースが多くあります。

しかし、これはルール違反ですから、きちんとした教育指導を前提として、懲戒処分の対象とすることもできます。

 

そして、早出や残業については、実際の勤務開始と勤務終了、そして行った業務を使用者に具体的に報告させる必要があります。喫煙や私用などで休憩した時間も申告させます。

使用者は、残業命令を出す場合や残業申請を許可する場合には、この報告内容を参考に判断することができますし、ダラダラ残業を阻止することもできます。

 

こうした運用についても、就業規則に規定しておくことが好ましいですし、ルール違反や虚偽の報告に対する懲戒処分を可能にするには、就業規則に具体的な懲戒規定が必要となります。

 

「残業代が一向に減らない」と悩んでいる経営者の方には、ぜひ取り組んでいただきたい課題です。

そして、こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談いただくことをお勧めします。

 

解決社労士

2021/03/22|1,574文字

 

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<自主点検表>

自主ですから「自社はどうなのか」ということで、自己点検に用いるのが本来の趣旨です。

しかし現実には、所轄の労働基準監督署から送られてきて、自己点検を迫られるのです。

「この点検表は、御社の労務管理が労働基準法等に照らして問題ないかを自ら点検し、問題があれば自主的に改善するきっかけとしていただくためのものです。それぞれの設問の回答のうち、御社に当てはまるものを選んでください」という、やんわりとした説明が加えられています。

しかし、「自主点検した結果は、別紙「労働条件に関する自主点検結果報告書」に転記の上、同封の返信用封筒を用いて◯月◯日までに、御返送いただきますようお願いします」ということになっていますから、決して自主的なものではありません。

 

<労働基準監督署の監督>

自主点検結果に違法な項目があれば、所轄の労働基準監督署から立入調査(臨検監督)が入ります。

「問題があれば自主的に改善するきっかけとしていただく」ということですから、自主点検結果報告書を提出してから一定の期間を経過していれば、改善済みになっている筈という建前です。

改善が滞っていれば、当然に行政指導が入ります。

指導が入れば、これに対して改善内容の報告をする義務があります。

かといって、自主点検結果報告書の提出を怠っても立入調査の対象となりますし、虚偽の報告に対しては罰則の適用もありえます。

 

<所定労働時間>

一般の事業では週40時間、労働者数10人未満の商業・接客娯楽業等の事業場では週44時間が所定労働時間の上限ですから、これを上回れば違法ということになります。

実態としては、所定労働時間を決めていないので答えようがないという中小企業もあります。

労働者の都合を踏まえ、話し合いで出勤日や労働時間を決定しているので、むしろ望ましい状況なのですが、法律の規定に照らすといけないことになってしまいます。

変形労働時間制など、労働基準法が準備している制度の利用が求められます。

 

<休日>

労働基準法では、週1日または4週4日が法定休日となっています。

このうち、4週4日には運用のルールがあるのですが、これを遵守していないこともあります。

また、飲食店などでは、月8日という休日の定め方をしている場合もあります。

これらは労働基準法違反なのですが、当事者にはピンと来ない部分です。

労働基準監督署の指導が入っても、対応に苦慮することになります。

しかし、労働基準監督署からは適法になるまで是正を求められます。

 

<三六協定>

三六協定を所轄の労働基準監督署長に届出していない企業、協定が期限切れのまま放置している企業も多数あります。

この場合、1分の残業が違法であり犯罪ということになります。

残業した労働者ではなく、残業させた使用者に罰則が適用されます。

これもついうっかりの手続ミスですが、「忘れていました」は言い訳になりません。

自主点検表でチェックした結果、忘れていることが判明したので、あわてて三六協定の届出をしましたということであれば、ギリギリセーフといったところです。

 

<最低賃金>

試用期間、固定残業代などで、うっかり最低賃金を下回ってしまうことがあります。

たとえ短期間でも、最低賃金を下回ることは、最低賃金法違反の犯罪ですから注意が必要です。

 

<就業規則>

働き方改革や少子高齢化対策で、法改正があまりにも頻繁です。

就業規則の内容を適法に維持するのは、困難を極めている状態です。

しかし、内容が適法で、しかも実態が就業規則通りであることが求められます。

 

<解決社労士の視点から>

自主点検表の最後には、「セミナー及び個別訪問の参加希望」の欄が設けられています。

労働法への完璧な対応に自信が無ければ、これに申し込むことによって、改善の猶予が与えられます。

可能な限り、これを希望するのが得策だと考えられます。

2021/03/21|1,401文字

 

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<割増になる理由>

労働基準法は、18時間、週40時間を法定労働時間として定め、この基準を超える労働に対しては、割増賃金の支払を義務づけています(労働基準法第37条)。

本来であれば自由である使用者と労働者との間の労働契約に、労働基準法による国家の介入があって、割増賃金の支払が義務づけられています。

これは長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するのが目的です。

 

<労働者の命と健康を守る>

1日8時間、週40時間を超えて、もっと長時間働きたい労働者もいます。

 

まず、今の仕事が気に入っていて、納得がいくまで働きたいという労働者がいます。

たとえば企画、制作、デザイン部門で働く若手は、納得のいく物ができるまで、じっくり時間をかけて取り組みたいと思います。

「残業代は要らないから、やりたいだけやらせて欲しい」という人もいます。

これは、一種の仕事中毒の状態でもあります。

ですから、会社が残業を抑制しなければ、命と健康がおびやかされます。

どんな仕事にも締切があり、個人的に納得がいくかどうかではなくて、会社として客観的に求める出来栄えのレベルがあるわけですから、このことをしっかりと教育して、一つひとつの仕事に厳格な制限時間を設け、生産性を高めるよう求めることが必要です。

 

また、出世のため一定の成果を上げたいので、十分な労働時間を確保したいという労働者がいます。

こういう労働者のいる会社は、人事考課の基準に問題があるかもしれません。

会社側から見れば、他の人よりも多くの人件費をかけて成果を出しても、生産性が上がるわけではなく会社の利益は増大しません。

残業手当が増えることは、会社にとって人件費の負担が増えることですから、人事考課にあたっては、残業時間が多いことをマイナス評価にするのが理にかなっています。

残業が多いと頑張っているように見えて評価が上がるという、昭和時代の人事考課は見直す必要があります。

 

<家庭生活や社会生活の時間を確保する>

たとえば、扶養家族が増え、家庭生活の維持のため収入を増やしたいという労働者がいます。

子供が生まれたとか、親を扶養に入れるようになったなどの事情があります。

本人としては、将来の昇給よりも、とりあえず残業代が欲しいと思っています。

この場合でも、本人の希望で残業することを理由に、残業代をカットしたり、割増しない賃金を支払ったりということはできません。

労働基準法の割増賃金は、本人の個人的な事情や希望とは関係なく義務付けられているものです。

むしろ、割増賃金とすることによって、少ない残業時間で多くの賃金を得られるようにして、家庭生活の時間を増やす狙いがあります。

 

さらに、学生は夏休みなどの長期休暇にたくさん働いておきたいと考えます。

しかし、長時間労働によって学業がおろそかになり、卒業できないという事態も現に発生しています。

やはり学生はしっかり勉学に励むための時間が必要です。

こうして、学生生活の時間を確保する必要があることは明らかです。

この趣旨から、アルバイトでも残業すれば割増賃金が発生するという労働基準法の規定には合理性があります。

 

労働基準法を順守しつつ、人件費を抑制し定着率を高めるには、採用の工夫と教育研修の強化が必須課題です。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2021/03/20|1,160文字

 

YouTubeこれって労働時間?

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<残業手当の理由>

労働基準法は、18時間、週40時間を労働時間の基準として定め、この基準を超える労働に対しては、割増賃金の支払を義務づけています(労働基準法第37条)。

本来であれば自由である使用者と労働者との間の労働契約に、労働基準法による国家の介入があって、割増賃金の支払が義務づけられています。

これは長時間労働を抑制して、労働者の命と健康を守り、家庭生活や社会生活の時間を確保するのが目的です。

 

<仕事が遅いと給与が増える>

同じ初任給の新人Aと新人B2人に全く同じ単純作業を任せたとします。

たとえば、A4サイズ2枚の資料を三つ折りにして封筒に詰めるというような作業です。

これを新人Aと新人Bに同じ分量ずつ行ってもらいます。

新人A6時間で終わらせ、余った2時間で別の仕事をして残業せずに帰ったとします。

新人B10時間かかってしまい、2時間の割増賃金が発生したとします。

この場合、新人Bの給与は、新人Aの給与よりも多くなります。

「仕事が遅いのは自分のせいだから残業代は支払わない」というのは、労働基準法に違反します。

 

<請負の場合なら>

A4サイズ2枚の資料を三つ折りにして封筒に詰める作業1万枚分を外注に出したとします。

この場合気になるのは、納期を守ってもらえるのか、仕上がりは綺麗かということです。

どんな人が何人で何時間作業するのかは気になりません。

請負代金には影響しないのです。

 

<雇用契約と請負契約との違い>

雇用の場合には、働き手に対して使用者が口出しできます。

それどころか、教育指導もできますし配置転換もできます。

一方、請負の場合には、働き手の顔ぶれを確認して「上手なやり方を指導させなさい」「他の人に交代させなさい」という口出しはできません。

つまり雇用の場合には、書類の封筒詰めなら不得意な新人Bには分担させず、新人Aに任せるなり、新人Bに上手なやり方を指導するなりして、残業代を削減できるということです。

少なくとも、作業開始の1時間後に、「どうも新人Bは苦手のようだ」と気づいて役割分担を変更することはできます。

 

<残業代を削減するための教育>

教育指導の強化は、生産性の向上に直結します。

また、自分を育ててくれる会社に対しては、愛社精神も高まり「ずっとこの会社で働いていこう」という気持を生み出します。

最近、企業では教育がおろそかにされています。

しかし、教育こそが企業の利益の源泉となります。

とはいえ必要な教育は、外部の研修に参加させたり、資格を取得させたりではありません。

ひとり一人が担当している具体的な業務を効率的にこなし、さらに改善できるようにするには、職場ごとのカスタマイズされた教育が必要です。

自社でまかない切れない場合には、信頼できる国家資格者の社会保険労務士(社労士)にご相談ください。

 

解決社労士

2021/03/15|852文字

 

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<公民権の保障>

労働基準法に次の規定があります。

 

(公民権行使の保障)

第七条 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

 

公民としての権利とは、選挙権、被選挙権、最高裁裁判官の国民審査権〔日本国憲法第79条〕、住民の直接請求権〔地方自治法第74条〕などをいいます。

ただし、他人の選挙運動に対する応援や、訴えを提起する権利はこれに含まれないものとされています。

 

公の職務とは、国会・地方議会議員、労働委員会委員および審議会委員としての職務、裁判所の証人としての出廷や公職選挙法上の選挙立会人の職務などをいいます。

労働審判制度における労働審判員の職務、裁判員法に基づく裁判員の職務もこれに含まれます。

 

<公民としての権利の保障>

基本は投票権ですが、投票日当日に出勤する予定でも、期日前投票制度があるので選挙権を行使できないというケースは稀です。

その稀なケースとして考えられるのは、投票日は出勤しない予定、あるいは残業しない予定だったのが、急な予定変更によって、勤務中に職場を抜け出さないと投票できないような場合です。

この場合でも、本人が「投票に行きたい」と請求しなければ、使用者側は期日前投票で投票済みかは詮索できないので、行かずじまいということになるでしょう。

 

<公の職務執行の権利の保障>

たとえ会社に知らせずに国会議員に立候補して当選した場合でも、懲戒解雇処分はできません。

これは、権利の侵害になるからです。

しかし、議員活動をするにあたり休職を命じ、あるいは欠勤が多いことを理由に普通解雇とすることは違法ではありません。

 

<解決社労士の視点から>

会社の実情に合わせ、公民権の行使を就業規則にどう定めるかは、かなり専門的な話になります。

こうしたことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士にご相談ください。

2021/03/11|2,211文字

 

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<労働法の遵守レベル>

労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、パート有期労働法、育児介護休業法など、企業が遵守すべき労働法の範囲は、驚くほど広くなっています。

労働法の遵守を監視するのは、主に労働基準監督署の役割です。

だからと言って、すべての企業に対し、直ちに完璧に遵守するよう求めてはいません。

労働基準監督署の労働基準監督官は、労働基準監督官行動規範に則り行動することになっています。

この行動規範の中の「中小企業等の事情に配慮した対応」という項目では、次のように述べられています。

 

監督官は、中小企業等の事業主の方に対しては、その法令に関する知識や労務管理体制の状況を十分に把握、理解しつつ、きめ細やかな相談・支援を通じた法令の趣旨・内容の理解の促進等に努めます。また、中小企業等に法令違反があった場合には、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、事業主の方による自主的な改善を促します。

 

裏を返せば、大企業では、その社会的責任から法令遵守が徹底されていなければならないということになるでしょう。

以下、私の関わってきた企業の実態を参考に、労働法の遵守レベルを示してみたいと思います。

下に行くほど、高い遵守レベルであるとは言えるのですが…

 

<ブラックレベル>

罰則が適用されることを覚悟しています。

経営者が「労働法を遵守していては、会社の経営が成り立たない」と公言しています。

従業員の賃金は、最低賃金を下回っていることもあります。

従業員の中には、会社に対し「こんな自分を雇ってくれた」という恩義を感じている人もいます。

また、「この会社を辞めたら他に雇ってくれる所は無い」と思い込んでいます。

従業員は視野が狭くなり、自分の会社のことしか見えなくなっています。

「みんな頑張っているんだから、自分も頑張らなきゃ」と感じます。

こうした従業員の搾取の上に、会社の経営が成り立っています。

経営者は、もし会社や使用者に罰則が適用され会社の存続が危うくなったら、一度会社を清算して新会社を設立すれば良いと考えています。

しかし、たとえば雇用関係助成金について「平成31(2019)年4月1日以降に申請した雇用関係助成金について、申請事業主の役員等に他の事業主の役員等として不正受給に関与した役員等がいる場合は申請することができない」ということになっています。

この場合、雇用調整助成金などの申請ができないことになります。

 

<グレーレベル>

罰則の適用を避けたいと考えています。

法令のある条文に罰則が規定されていても、実際に適用された実績が殆ど無ければ、適用される可能性は低いと考え、対応を後回しにします。

その反面、適用実績が多い罰則には触れないよう対応しています。

しかし、「罰則」というのは刑事面の話で、民事面には直結していません。

そのため、退職者から未払残業代の請求やパワハラ・セクハラを理由とする慰謝料の請求など、民事裁判を提起されると大きなダメージを受けます。

 

<他社並みレベル>

同規模の同業他社と同レベルであれば安心だと考えます。

法改正や労働訴訟の動向などには関心を寄せず、他社事例の収集に熱心です。

いかにも日本企業らしい対応レベルです。

しかし、その会社に特有の問題が発生した場合には、他社事例が見当たらず、対応方針が立たないなどの弱点があります。

また、過重労働やサービス残業の一斉摘発のような動きがあると、他社と共に一網打尽にされることになります。

 

<ホワイトレベル>

罰則に触れないようにしています。

いわゆるホワイト企業の水準です。

同業他社がどうであれ、自社は法令違反や訴訟を避けたいと考えています。

そのための社員教育が充実しています。

労働時間の管理が適正に行われ、時間外割増賃金が1分単位で支給されます。

従業員の会社に対する信頼、社員間の信頼、お客様、お取引先、金融機関からの信頼もあり、従業員の定着率が高く、人材の採用が容易です。

こういう状態を保つには、それなりの経費がかかることも事実です。

 

<パールレベル>

努力義務を果たすようにしています。

罰則が無くても、法令に「◯◯するよう努めなければならない」と書いてあれば、これに対応します。

知名度が高く一般消費者が顧客である大企業には、このレベルに達している企業があります。

他社の模範となるような企業ですが、高い収益力が背景となっています。

 

<プラチナレベル>

努力義務を超える水準を保とうとします。

すべての従業員について年次有給休暇の取得率を70%以上にする、月給は据え置きで所定労働日数や所定労働時間を減らすなど、ハイレベルな施策を推進しています。

プライベートの時間が増加した従業員に「居場所を与える」配慮もされます。

ここまで来ると、労働法の遵守レベルという話ではなくなっています。

ともすると、年5日を超えて年次有給休暇の取得を義務付けたり、年次有給休暇の取得率が低い従業員の評価を下げたり、始末書を書かせたりという、労働者の権利を侵害するような暴挙に出る危険をはらんでいます。

有期契約労働者が、契約の更新によって勤続5年に達すると、自動的に正社員に登用される制度が運用されることもあります。

これは、本人の意向を無視しているわけですから、必ずしも望ましい制度とはいえません。

「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という孔子の言葉を思い出していただきたいです。

 

解決社労士

2021/03/10|2,173文字

 

YouTube年次有給休暇と出勤率

https://youtu.be/UHsJHrJymP0

 

<年次有給休暇を使わせる義務>

年5日以上の年次有給休暇を取得させる義務が規定される前から、労働基準法には次の規定があります。

 

(年次有給休暇)

第三十九条 5 使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない

 

この規定の中の与えなければならないというのは、文脈からすると、権利を与えるということではなく、使わせるという意味であることが明らかです。

そして、この義務に違反した場合の罰則としては、次の規定があります。

 

第百十九条 次の各号の一に該当する者は、これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 

たとえば、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えれば、法律上は懲役刑もありうるということになります。

それが悪質であって、労働基準監督官が使用者を逮捕し送検して有罪判決が下されれば、その使用者が前科者となるわけです。

 

しかし、刑罰の存在と、年次有給休暇請求の効力とは別問題です。

刑罰は国家権力と使用者との関係で規定されるもので、年休請求により年休が使えることになるかどうかという使用者と労働者との間の民事的な関係には、直接的には影響しないのです。

 

ということは、「再来週の水曜日に年休を使いたいのですが」と申し出た従業員に対して、使用者が「有給休暇を使うなんてダメだ」と答えた場合、その従業員が当日会社を休んだ場合にどうなるかは別に考える必要があります。

結論としては、年次有給休暇を使ったことにはなりません。

無断欠勤になってしまいます。

 

従業員としては、使用者に対して年次有給休暇を取得させるように説得を試み、それでもダメなら、所轄の労働基準監督署やその他の相談機関に相談するしかありません。

 

<年次有給休暇を使った人の解雇>

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するなど、不利益な取扱いをすることは、次の規定によりやんわりと禁止されています。

 

第百三十六条 使用者は、第三十九条第一項から第四項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

 

この条文の解釈については、最高裁判所が次のような判断を示しています。

 

労基法第136条それ自体は会社側の努力義務を定めたものであって、労働者の年休取得を理由とする不利益取扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を持つとは解釈されない。

また、先のような措置は、年休を保障した労基法第39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが、労基法第136条の効力については、ある措置の趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度年休の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年休を取得する権利の行使を抑制し、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効(民法第90条)とはならない

沼津交通事件 最二小判平5.6.25

 

年次有給休暇を使ったことを理由に解雇するというのは、解雇により労働者が失う経済的利益の程度、年休の取得に対する事実上の抑止力は甚だしいですし、労基法が労働者に年休権を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものですから、公序に反して無効(民法第90条)になるでしょう。

 

それにしても、年次有給休暇を使わせておいて、後から解雇を言い出すのはおかしな話です。

 

<年次有給休暇の使い過ぎを理由とする契約更新の拒否>

下の方に示すように、労働契約法に有期契約労働者の契約更新についての規定があります。

この規定では、何回か契約が更新されている人と、契約更新に対する期待が客観的に是認できる人に限定されていますが、前回と同じ条件での契約更新を権利として認めています。

 

この規定の解釈にも、先ほどの沼津交通事件判決の趣旨が及びます。

たとえば、契約更新にあたって「あなたは年次有給休暇の残日数が少ない。年休の使い過ぎなので、契約は更新できない」などという理由で、契約更新を拒否できないということになるでしょう。

 

(有期労働契約の更新等)

第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

解決社労士

2021/02/23|1,936文字

 

YouTube労働条件を確認しましょう

https://youtu.be/QzMHmif7cgY

 

<アルバイトを始める前に労働条件を確認>

働き始めてから、「最初に聞いた話と違っていた」ということにならないように、会社から契約書など書面をもらい、労働条件をしっかり確認しましょう。

特に次の6項目については必ず確認しましょう。

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

・契約期間の定めがある契約を更新するときのきまり(更新があるか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・勤務時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、 残業の有無、休憩時間、休日・ 休暇、 交替制勤務のローテーションなど)

・バイト代(賃金)はどのように支払われるのか(バイト代の決め方、計算と支払いの方法、支払日)

・辞めるときのきまり(退職・解雇に関すること)

※労働条件を確認する書類には、雇用契約書、労働契約書の他に、雇い入れ通知書、労働条件通知書などがあります。

 

<バイト代は、毎月、決められた日に、全額支払われるのが原則>

労働基準法では、バイト代などの賃金について「賃金の支払の5原則」というルールがあります。

バイト代は、通貨で、全額を、労働者に直接、毎月1回以上、 一定の期日に 支払われなければなりません。

また、バイト代などの賃金は都道府県ごとに「最低賃金」が定められており、これを下回ることはできません。

 

<ペナルティによる減給の制限>

遅刻を繰り返すなどにより職場の秩序を乱すなどの規律違反をしたことを理由に、就業規則に基づいて、制裁として本来受けるべき賃金の一部が減額されることがあります(これを減給といいます)。

しかし、事業主(会社)は規律違反をした労働者に対して無制限に減給することはできません。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

また、複数にわたって規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給制なら月給の金額)の10分の1が上限です。

 

<アルバイトでも残業手当があります>

労働基準法では、法定労働時間を超えて残業をさせる場合、事業主はあらかじめ、労使協定(「36(さぶろく)協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

また、残業に対しては、割増賃金 (残業手当)を次のように支払うよう定めています。

・1日8時間または週40時間を超えた場合は、通常の賃金の25%以上の割増賃金

※ 労働者10人未満の商業、接客娯楽業等は週44時間

・1か月に60時間を超える残業の割増率は50%(ただし、中小企業は猶予)

午後10時から午前5時までに働いた場合は25%以上の割増賃金(深夜手当)が支払われます。

(満18歳になるまでは、午後10時から午前5時までの時間帯に働けません。)

※「残業」と言っていますが、正確には「時間外労働」です。早出も「時間外労働」ですから、「残業代」が支払われます。

 

<アルバイトでも条件を満たせば有給休暇が取れる>

年次有給休暇とは、あらかじめ働くことになっている日に仕事を休んでも、賃金がもらえる休暇のことで、いわゆる 「有休」や「年休」のことです。

年次有給休暇は、正社員、パート、アルバイトなどの働き方に関係なく、次の条件を満たす場合、取ることができます。

・週1日以上または年間48日以上の勤務

・雇われた日から6か月以上継続勤務

・決められた労働日数の8割以上出勤

 

<アルバイトでも仕事中のけがは労災保険が使える>

正社員、アルバイトなどの働き方に関係なく、また、1日だけの短期のアルバイトも含めて、労災保険の対象です。

仕事が原因の病気やけが、通勤途中の事故で病院に行くときは、健康保険を使えません。※健康保険証を提示しないことになります。

病院で受診するときに、 窓口で労災保険を使うことを申し出てください。

原則として治療費は無料となります。

また、仕事が原因のけがなどで仕事を休み、バイト代をもらえない場合は、休業補償制度があります。

 

<アルバイトでも会社の都合で自由に解雇はできない>

アルバイトだからといって、簡単に解雇できるものではありません。

解雇は、会社がいつでも自由に行えるというものではなく、社会の常識に照らして納得が得られる理由が必要なのです。

 

<困ったときの相談窓口>

アルバイトをして労働条件など、労働関係で困った場合は、全国の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働 相談コーナー」にご相談ください。

相談は無料です。

また、夜間・土日の相談は、「労働条件相談ほっとライン」 を活用してください。

 

労働条件相談ほっとライン

0120-811-610

月~金:午後5時~午後10時

土・日:午前10時~午後5時

 

解決社労士

2021/02/06|1,126文字

 

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<求人広告と労働条件との関係>

求人広告は、あくまでも広告に過ぎません。

これに応募したからといって、必ず採用されるわけではありません。

また、求人広告に「月給20万円~25万円」などと書いてあって、具体的な金額は採用面接の中で決まるという場合もあります。

さらに、事務職で応募したところ、「他の応募者で採用枠が埋まってしまったけれど、営業職に欠員が1名出たのでいかがでしょうか」と打診されて、これに応じるというのは普通に行われていることです。

このように、求人広告と実際の労働条件とが異なる場合に、採用側が新たな労働条件を明示していれば問題ないのです。

そして、職業安定法第5条の3第3項も、平成30(2018)年1月1日付で、この内容を盛り込む形に改正されました。

 

<説明が不十分なケース>

採用面接の中で、たとえば上記のように「他の応募者で採用枠が埋まってしまったけれど、営業職に欠員が1名出たのでいかがでしょうか」と打診された応募者が、過度の緊張のあまり内容をよく理解しないまま「はい」と生返事してしまうことがあります。

この場合でも、採用側が新たな労働条件を書面で明示していて、応募者が後からその書面を確認していれば問題ないのです。

しかし面接者が「あれだけ具体的に説明したし、理解してもらえただろう」と満足して、説明の内容を書面で交付しないのはいけません。

 

<問題のあるケース>

採用が決まって労働契約を締結する際の労働条件明示義務については、30万円以下の罰金が定められています。〔労働基準法第120条〕

これは、労働基準法違反の犯罪なのです。

労働契約の締結は口頭でもできますが、雇い主は労働者に対して、労働条件を書面で明示する義務を負っているのです。

ところが、最初の給与支払額を見て不審に思った労働者が会社に確認すると「あなたの場合には能力不足だから給与は半分しか支払えない」などの回答が返ってくるケースがあります。

また、求人広告では正社員募集だったのに、後から契約期間6か月の契約社員だと言われたりもします。

これらは、入社にあたって労働条件の明示が無いので犯罪なのです。

 

<解決社労士の視点から>

特にブラック企業というわけではないのに、入社にあたって「労働条件通知書」などを交付しない会社もあります。

経営者が労働基準法の規定を知らないだけのこともあります。

また、労働条件の決め方に迷っている場合もあります。

しかし、新人から「実際の労働条件が求人広告と違う」という話が出るのは大いに問題です。

つまらないことで罰則を適用されたり、会社の評判が落ちたりしないように、労働条件の決め方、変え方、通知の仕方については、信頼できる社労士にご相談ください。

2021/02/02|788文字

 

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<親の口座への振込>

アルバイトの親から「バイト代を私の口座に振り込んで欲しい」というご要望があっても、会社は応じることができません。

アルバイト本人から「バイト代が自分の口座に入ると遊びに使ってしまう。将来のために貯金したいので、親の口座に振り込んで欲しい」と言われたら、これには応じたくなるでしょうか。

しかし、本人からの話であっても、親から言わされているだけかもしれません。

世の中には、子どもを食い物にする親もいるのです。

 

<賃金直接払いの原則>

労働基準法に次の規定があります。

 

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(以下略)

 

つまり、親子だろうと夫婦だろうと、労働者本人に代わって賃金を受け取らせてはいけないというルールがあるのです。

社員夫婦が会社に現れて、「夫に給料が振り込まれるとすぐにギャンブルで使ってしまうので、妻の口座に振り込んで欲しい」という連名の要望書を提出しようとも、会社は応じることができません。

アルバイトが自分名義の口座を持っていないのなら、現金で支払うか新たに口座を開設してもらうか、いずれにせよ直接本人に支払わなければなりません。

 

<国税滞納処分なら>

賃金直接払いの原則にも例外はあります。

たとえば、労働者が国の税金を滞納し国税徴収法による国税滞納処分を受けた場合や民事執行法に基づく差押えがされた場合には、賃金の一部を国や債権者に支払うということがあります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

労働者の便宜を図っているつもりが、法令違反ということがあります。

特に労働関係法令は、労働者保護の要請という原則が強く反映されていますので注意が必要です。

会社が足元をすくわれないように、労働条件審査あるいは簡易な経営労務チェックを受けることをお勧めします。

詳しくは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/30|1,111文字

 

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<営業手当の意味>

営業手当は、営業という業務を担当することにより、他の業務には無い負担があるため、その負担に応じて支給される所定労働時間内の業務に対する手当です。

洋服代や靴代、精神的負担など、その理由は様々です。

ですから、所定労働時間外の残業代の代わりにはなりません。

また、営業手当に残業代を含めるということもできません。

 

<よくある言い訳>

会社が営業手当を残業代の代わりに支給する、あるいは残業代を含めて支給するときの言い訳としては、「営業社員は勤務時間を把握できないから」というのが多いでしょう。

しかし、これが本当なら営業社員はサボり放題です。

なぜなら、会社は営業社員の勤務時間を把握しないのですし、営業手当を支給しているから把握しなくても良いと思って安心しているからです。

きちんと勤務時間を把握し、営業成績を正しく評価し、個人ごとの生産性を人事考課に反映させて、給与や賞与にメリハリをつけなければサボりは防げません。

反対に、過重労働による過労死の危険もあります。

営業成績の上がらない社員は、サボりどころか長時間労働に走ります。

営業成績の良い社員がたくさん働いているとは限らないのです。

万一、営業社員が過労死あるいは自殺したときに、過重労働ではなかったという証拠が無ければ、遺族から慰謝料など多額の損害賠償を請求された場合に反論のしようがありません。

 

<退職者から未払い残業代を請求されたら>

残業代は25%以上の割増賃金なのですが、そのベースとなる賃金には営業手当が含まれます。

会社としては、残業代の代わりに営業手当を支給していたつもりでも、その営業手当を加えた賃金の25%以上割増で計算することになるのです。

会社にとっては、まるで残業代が複利計算になっているような感じを受けます。

恐ろしいのは、会社側に勤務時間のデータが無いために、退職者の手帳の記録などが証拠となりうることです。

退職者の記録が誤っていることを一つひとつ立証するのは、とても無理なことでしょう。

そして、退職者は過去3年分の残業代を請求することになります。

労働基準法の規定する消滅時効期間は2年でしたが、令和2(2020)年4月に民法が改正されたことで、3年に延長されました。

やがて、5年に延長されるかもしれません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

営業社員の誰かが退職して、過去の未払残業代を請求してきたら、在籍している営業社員の全員が同じことを考えても不思議ではありません。

たしかに、残業代の代わりに営業手当を支給する制度を適法に行う方法もあります。

しかし、これは導入も運用もむずかしいのです。

詳しいことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/28|1,401文字

 

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<給与の支払時期>

民法の雇用の節に、報酬の支払時期について次の規定があります。

 

(報酬の支払時期)

第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。

 

つまり、給与は後払いが原則です。

実際、新人を採用すると共に給与を支払うというのはごく少数派でしょう。

時給制や日給月給制ならもちろん、月給制で欠勤控除がある場合には締めてみないと金額が確定しません。

また、そもそも給与は労働の対価ですから、雇い主としては働きぶりを見てからでないと納得して支払えないのも事実です。

それでは、まず働いてもらって働きぶりを評価し、その評価に応じて給与を支払うということも許されるのでしょうか。

 

<労働条件の明示>

労働基準法には、次のように定められています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

このように、まず給与を決めて労働者に示したうえで働いてもらうルールだということです。

そして、示した給与と支払われる給与が違うなら、労働者はそれを理由に退職できます。

ここで、示した給与と支払われる給与が違うというのは、時間給や基本給などの単価が違っていたり、計算方法が違っていたりすることです。

 

<納得のいく給与決定>

このような法的制約のもとで、労使共に納得のいく給与を決定するには、かなり詳細で客観的な人事考課基準が必要でしょう。

入社にあたっては、予測される働きぶりを人事考課基準に当てはめて給与を決定します。

その後は、一定の期間を区切ってその期間の働きぶりを参考に、次の一定の期間の予測される働きぶりを人事考課基準に当てはめて給与を決定します。

ここで注意したいのは、過去の働きぶりをそのまま給与に反映させるのではなく、将来の予測だということです。

言い換えれば、社員に対する会社の期待です。

このように考えることで、転勤や昇格などの人事異動にも正しく対応できることになります。

また、働いてみてもらったら給与に見合った働きができなかったとしても、最初の約束をひっくり返して減給できるわけではないことも当然です。

それは、働きぶりの予測の精度が低かったということになります。

もちろん、人事考課と給与の決定時期について予め具体的な説明をしておいて、それを約束通りに運用するのであれば、合理的な仕組の運用である限り許されるわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

小さな会社では、ひとり一人の社員の生活に必要な金額を考えて、給与の額を決定するということも行われます。

すると結果的に、給与に見合った働きのできない社員だけが残ることになります。

なぜなら、給与以上の働きをする社員は、働きに見合った給与を支給する会社に転職するからです。

やはり給与は、社員の働きに応じて支給するのが大原則です。

働き以上の給与をもらえる社員だけが残り、「いい人材が集まらない」という感想を抱くのは、人事考課制度が適正に運用されていないからです。

会社の現状にふさわしい人事考課をお考えでしたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/25|1,182文字

 

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<違法な就業規則は存在する>

就業規則を作成した時には適法だったものの、法改正が繰り返されて違法だらけの就業規則になってしまうということはあります。

国際情勢、国内情勢、市場動向は変化していますし、政府が継続的に強化している少子高齢化対策や働き方改革に沿った法改正は、驚くほど頻繁に、そして大幅に進んでいますから、1年間放置した就業規則が適法性を保っていたら、運が良いと感じてしまいます。

 

<違法な就業規則の届出>

うっかり法令違反の就業規則を労働基準監督署長に届け出たとします。

何も指摘されないこともありますし、たまたま法令違反が見つかって指摘を受けることもあります。

違法な規定を含む就業規則であって、それが発見されたとしても「次回は直しておいてくださいね」ということで、そのまま受け付けてもらえるのが通常です。

このとき、きちんと控えを持って行けば、就業規則を届け出たことの証として、「受付」の印を押してもらえます。

あくまでも「受付」であって、「受理」や「承認」ではないのです。

提出したので受け付けましたというだけのことです。

 

<違法な規定の効力>

労働契約も契約の一種です。

契約は、当事者が話し合って自由に内容を決めることができるという原則があります。

契約自由の原則と言います。

ところが、労働契約の場合には、使用者の立場が強く労働者は弱者であるというふうに考えられています。

実のところはケースバイケースですが、それでも労働関係法令は労働者が弱いという前提に立って法体系ができています。

このことから、本来は自由であるはずの労働契約に法律が介入し、労働者を保護するという役割を担っています。

就業規則は、その会社の労働者に共通な労働条件を定めています。

就業規則には、いろいろ定められているのですが、労働者に共通な労働条件の規定は、必ず含まれているといえます。

そして、就業規則と個別の労働契約とを比べた場合に、違う部分があれば、労働者に有利な方が有効とされます。

さらに、その部分が法律より不利ならば、法律の規定が優先されます。

結局、就業規則と個別の労働契約と法令とを比べて、労働者に一番有利なものが有効になるのです。

 

<違法な規定は効力が無い>

このように、就業規則が法律に違反していたり、個別の労働契約よりも労働者に不利であったりすれば、その規定は無視されるわけです。

このことが判っているので、労働基準監督署では就業規則の届出を受け付ける時に、法律違反が無いかじっくりとチェックしなくても問題無いことになります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

このような事情から、「労働基準監督署に受け付けてもらったから安心」とはいえません。

知らないうちに、違法な就業規則を運用し適用しているというリスクがあるのです。

このようなリスクを回避するには、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/21/1,135文字

 

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<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、会社も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<報償責任という考え方>

こうした場合に、会社は事故を起こした従業員に対して、損害のすべてを賠償するよう求めることはできないとされています。

それは、会社は従業員に働いてもらって売上と利益を上げているのだから、損失が発生した場合には、その損失を負担するのが公平だという報償責任の法理が働くからです。

会社に生じた利益のすべてが従業員に分配されるわけではないのに、損害についてだけ従業員に負担させるのは不合理だというわけです。

 

<賠償金の給与天引き>

最初から違法な賠償額の予定があったわけではなく、客観的に適正な賠償額が確定したとします。

この場合でも、賠償金を給与から控除するには、また別の問題があります。

労働基準法には次の規定があるからです。

 

(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

 

原則として、賃金は全額を支払わなければなりません。

法令、労働協約、労使協定に定めがあるものは例外的に控除が許されます。

法令により控除が許されるのは、所得税、住民税、社会保険料、財形貯蓄などです。

賠償金は、控除の根拠が法令に規定されていません。

労働協約で組合費、労使協定で共済会費、社宅家賃の控除が定められていることは普通にあります。

賠償金も、労使協定などで定められていれば控除が可能です。

ただし、会社側からの強制で労使協定を交わしたのなら無効です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

万一に備えて、規定を整備しておくことは重要です。

三六協定と呼ばれる労使協定も、残業がありうるのなら交わして所轄の労働基準監督署長への届出が必要です。

届出なしに残業が1分でもあれば違法です。

つまらないことで足元をすくわれることがないように、手続的なことはきちんと行いましょう。

ただ、やるべきことは会社によって違いますので、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/17|687文字

 

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<会社に損害が発生するケース>

従業員が業務上、自動車の運転をしていて、人身事故や物損事故を起こした場合には、使用者責任(民法第715条)により、被害者に対して会社が賠償責任を負うこともあります。

その他、自動車の修理代や自動車保険料の増額分、営業上の損失も発生します。

 

<ルール設定の必要性>

こうした事態に備えて、従業員の会社に対する損害賠償のルールを設定しておかないと、その都度、損害賠償の範囲を検討したり、事故を起こした従業員への説明と交渉で多大な労力と時間が必要になります。

明確かつ客観的な規定を就業規則に置いておけば、万一の場合に役立つに違いありません。

 

<就業規則の規定>

ところが、厚生労働省のモデル就業規則を見ても、このような規定は見当たりません。

交通事故に限らず、従業員の会社に対する損害賠償の規定が無いのです。

実は、予め賠償額や損失の負担割合のルールを決めておくことは、労働基準法違反となり、ルールを定めるだけで最高刑懲役6月の罰則があります。〔労働基準法第16条、第119条第1号〕

こうした規定は、労働者を不当に拘束するものとして禁止されているのです。

さらに進んで、「賠償金の支払いが完了するまでは退職を認めない」などということになれば、強制労働の禁止に違反し、これには最高刑懲役10年の罰則があります。〔労働基準法第5条、第117条〕

どちらも、労働基準法違反の犯罪になってしまうわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

あれば便利なルールでも、定めること自体が違法ということもあります。

就業規則の作成にあたっては、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/16|1,615文字

 

YouTube「合理的」の意味

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<労働基準法の規定>

労働基準法によると、解雇する場合には30日前に予告しなければならないのが原則です。

30日前に予告する代わりに、12日分の解雇予告手当を支払うとともに18日前に予告するなど、足して30日になるという方法も取れます。

30日分の解雇予告手当を支払うとともに即日解雇も可能です。

この場合には、「後日支払う」という約束ではなく、現実に支払っておくことが必要です。

そして、試用期間中の労働者に対しては、最初の14日間に限り、解雇予告も解雇予告手当も不要です。

労働基準法には、こうした規定しかありません。

ですから、入社から14日間は解雇の条件が緩いという誤解が生じます。

 

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

 

2 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

 

3 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。

 

第二十一条 前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。

一   日日雇い入れられる者

二   二箇月以内の期間を定めて使用される者

三   季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者

四   試の使用期間中の者

 

<試用期間についての判例>

試用期間については、最高裁判所が解約権留保付労働契約だと言ったために、何か特別な契約期間であるかのように思われがちです。〔昭和44年12月12日三菱樹脂事件判決〕

しかし、最高裁判所が試用期間について述べたのは、判決を下すのに必要があって述べたわけではなく、傍論として、ついでに語っただけです。

試用期間であれば、本採用後よりも解雇のハードルが低くなる趣旨のことを述べていますが、具体的に、どの項目についてどの程度低くなるのかは語っていません。

結局、試用期間も本採用後も労働契約の期間であることに変わりはなく、両者の違いを明確に説明することはできません。

それでも、試用期間であれば、本採用後とは違った扱いができるという勘違いは、多くの企業に存在しています。

 

<解雇の制限>

試用期間の最初の14日間でも、解雇権濫用であれば不当解雇とされます。

不当解雇なら、使用者が解雇したつもりになっていても、その解雇は無効です。

一方、労働者は解雇を通告されて、解雇されたつもりになっていますから出勤しません。

しかしこれは、解雇権を濫用した使用者が悪いのです。

何か月か経ってから、労働者が解雇の無効に気付けば、法的手段に訴えて会社に賃金や賞与を請求することもあります。

これを使用者側から見れば、知らない間に労働者に対する借金が増えていったということになります。

これは労働契約法に、次のように規定されています。

 

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

一部の企業に端を発した法令の拡大解釈や、最高裁判所の判決に対する誤解が、いつの間にか「常識」となってしまうこともあるのです。

さらに、昨日まで正しかった常識も、法改正や判例変更によって、不適法になることがあります。

正しいことは、信頼できる社労士にご確認ください。

 

解決社労士

2021/01/15|797文字

 

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<労働基準法の規定>

労働基準法は、その第5条で強制労働を禁止し、次の罰則規定を置いています。

 

第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

 

<強制労働の意味>

「今どき強制労働なんて」と思われてしまうかもしれません。「強制労働」というと、ピラミッド建設に駆り出される奴隷のようなイメージを抱いてしまうのでしょう。

しかし、労働基準法の規定を見ると、次のように書かれています。

 

(強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

 

ここにいう不当に拘束する手段には、長期労働契約(第14条)、労働契約不履行に関する賠償予定(第16条)、前借金相殺(第17条)、強制貯金(第18条)などがあります。〔昭和63年3月14日基発第150号通達〕

ここで、カッコの中の「〇条」は、労働基準法の条文を示しています。

 

<辞めさせてくれない会社>

自分の勤務先がブラック企業であることに気づき、退職を申し出たけれども辞めさせてもらえないという労働相談が増えています。

辞めさせてもらえないというのは、具体的には「辞めるなら違約金を支払え」と本人や身元保証人に迫るようです。

これなどは、労働基準法第16条の「労働契約不履行に関する賠償予定」があることを示していて、「退職するな!働き続けろ!」というわけですから、強制労働の禁止に違反していると思われます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

法律の世界は、法律のことを知っている人の味方です。

法律のことを良く知らない人は、良く知っている人を味方に付けて身を守りましょう。

労働関係法令についていえば、信頼できる社労士を味方に付けるのが安心です。

不安に思うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/14|1,500文字

 

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<労働基準法の役割>

労働基準法は、労働者が人間らしく生きていけるようにするための、労働条件の最低基準を定めています。

このことは、労働基準法第1条に次のように定められています。

 

(労働条件の原則)

第一条  労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

労働基準法と聞くと、使用者側にいろいろと罰則をちらつかせて義務付けているイメージが強いと思います。

しかし、この条文では、「労働関係の当事者」つまり使用者と労働者の両方に、労働条件の維持向上を求めています。

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものとされています。

このことは、労働基準法第2条第1項に次のように規定されています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょう。

しかし、少子化によって労働者が不足している現状では、労働者側が優位に立っているようにも思われます。

また、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

<労働条件の遵守>

続けて労働基準法第2条は第2項に次の規定を置いています。

 

2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

 

ここでも「労働者及び使用者は」と規定し、労働条件を守ることについては、労働者も使用者も対等であることを示しています。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、労働条件が決まっていなければ守りようがありません。

また、文書化されていなくて、口頭で説明されているだけでは不明確です。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

このように労働条件の明示は、使用者だけに義務付けられています。

ここでいう「厚生労働省で定める方法」というのは基本は書面ですが、電子化された文書によることもできることされています。

いずれにせよ口頭ではダメです。

そして、明示された労働条件が実際と違っていたら、これを理由に労働者から使用者に対して退職を通知できます。

 

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

ブラック企業で退職を申し出たら、「退職させてもらえない」とか、「違約金の支払いを求められた」とか、不当なことを言われたという話を耳にします。

しかし大抵のばあいは、この労働基準法第15条第2項を根拠に退職を通知できるケースと考えられます。

 

このように、労働条件の正しい明示は使用者の義務ですから、口頭による説明しか無いのであれば、労働者としては「知りませんでした」「忘れました」という言い訳が許されることになってしまいます。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「労働条件なんてよくわからないから決めない」「労働条件通知書を渡して違法性を指摘されたら困る」という経営者の方は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/12|1,057文字

 

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<労働基準法第1条第1項>

法律の第1条というのは、注目されないものです。

しかし、その法律の目的や、大原則が規定されていますから、これを踏み外すとお話になりません。

労働基準法第1条第1項には、次のように規定されています。

「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」

この規定は、憲法(日本国憲法)第25条第1項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定に基づいています。

そもそも労働基準法ができたのは、主に憲法第27条第2項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」という規定があるからです。

つまり、資本家は労働者から搾取するものであり、国は労働者を資本家から守る義務を負うというところから出発しています。

 

<労働基準法第1条第2項>

これもまた注目されていませんが、労働基準法第1条第2項には、次のように規定されています。

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」

これを踏み外す危険も大きいと思います。

たとえば人手不足の折、会社の偉い人が「うちの会社は週休2日制だけど、労働基準法は1日でOKだと規定しているから、それでいいんじゃねぇの?」と言いかねません。

労働基準法第35条には、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と規定されています。

たしかに、新たに会社を設立した場合には、週休1日制でスタートしても違法ではありません。

しかし、週休2日制の会社が労働基準法第35条を根拠に週休1日に変更したら、労働基準法第1条第2項に違反します。

法律というのは、どれか1つの規定に違反していなくても、別の規定に違反すれば違法となることがありますから、木を見て森を見ずというのでは失敗します。

それぞれの法律の目的、あるいはそれを超えて、立法趣旨というものを捉えていないと、条文一つひとつを見て勘違いしてしまうことは避けられません。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社労士は、数多くある労働関係法令一つひとつの立法趣旨を把握しています。

経営者が「いいこと考えた!」と思ったときは、落とし穴に落ちたときかも知れません。

他社に先駆けて何か工夫しようと思いついたときには、実行に移す前に信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/11|1,547文字

 

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<労働契約法の規定>

労働契約法第8条に、「労働者と使用者との合意で労働契約の内容である労働条件を変更できる」と規定されています。

また、その第9条と第10条に、就業規則の変更によって労働者の不利益に労働条件を変更する場合のことが規定されています。

 

<缶コーヒーなら>

コンビニでいつもの缶コーヒーを買おうとしたら、レジの店員さんから「これは130円の缶コーヒーですが、今月はお店の売上が足りないので、店長から150円で売るように言われています。150円で買っていただけますでしょうか」と言われたとします。これに応じて150円で買う人は少数派でしょう。

「嫌です。130円で売ってください」と言ったり、別のコンビニに買いに行ったりという反応が想定されます。

こんなお店には、レジの店員さんに対して「これは130円の缶コーヒーだが、今月はお店の売上が足りないそうだから、120円にしてくれたら3本買おう」と言うお客様が来るかもしれません。

 

<給与だと>

給与明細書を見たら、支給額が大幅に減額されていたとします。

上司から「あなたの基本給は25万円だけれど、最近は会社の利益が減少傾向にあるので、社長から基本給は20万円で我慢するように言われています。今月も頑張って働いてくれるかな」と言われたとします。

「嫌です」と言えば、「それじゃクビだ!」と言われるかもしれません。

もちろん、不当解雇なら会社と争うこともできるでしょう。

しかし今日辞めて、明日から別の会社で働き始めるのは、予め準備していなければできることではありません。

反対に労働者の側から「基本給を5万円上げてくれないと、明日から出勤しません」というのも、余程の自信がない限り言えないことです。

 

<不利益変更禁止が強調される理由>

缶コーヒーの売買契約であれ、労働契約であれ、一方の当事者が自分に有利に契約内容を変更するのは自由ではありません。

それが許されるなら、そもそも契約が成立しません。

労働条件の不利益変更というのは、使用者から労働者に一方的に変更を申し出る場合を想定していますので、禁止されるのは当然のことと言えます。

ただ、コンビニでのお客様とお店との売買契約は1回きりのことです。

しかも、商品の引き渡しと代金の支払いが同時です。

後から問題になることが少ない性質を持っています。

ところが労働契約は、労働者と使用者との継続的な関係ですし、給与は後払いですから、何かとトラブルが発生しやすく長引きやすいのです。

そこで、労働者の保護という労働関係法令全体の趣旨を踏まえ、特に労働条件の不利益変更禁止の原則が強調されているわけです。

 

 

【参考】労働契約法

 

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

解決社労士

2021/01/09|1,380文字

 

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<休憩時間の自由な利用>

労働基準法は、休憩時間について次のように規定しています。

 

(休憩)

第三十四条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

2  前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

 

3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 

このように、労働基準法第34条第3項は、使用者に対し休憩時間を自由に利用させることを義務づけています。

 

<通達による休憩時間利用の制約>

労働基準法などの法律は、立法府である国会が制定しています。

そして、これを具体的に適用する基準として、行政府が次のような通達を発出しています。

 

事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない。〔昭和22年9月13日基発第17号通達〕

 

休憩時間中の外出について、所属長の許可を受けさせることも、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない。〔昭和23年10月30日基発第1575号通達〕

 

<休憩時間利用の制約についての裁判所の判断>

法律の適用について、その合法性(合憲性)が裁判で争われた場合、最終的には最高裁判所が判断を示します。

たとえば、目黒電報電話局事件について、最高裁判所は次のような判断を示しています。

 

一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法三四条三項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法三四条三項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。〔最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社内で、休憩時間の自由な利用に対する制約があった場合、それが法的に許されるかどうかを判断するには、法律の条文を読んで、自分なりに解釈するという方法では危険なのです。

数多くの通達を確認し、関連する裁判例をよく読んで、具体的な制約に当てはめたうえで、専門的に判断する必要があるのです。

顧問の社労士を置いておくことは、会社がつまらないことで足元をすくわれないようにするため、ぜひ必要なことだと思います。

 

解決社労士

2021/01/05|1,450文字

 

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<労働条件>

労働条件は、原則として労働契約の内容です。

ただし、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

法令には、労働基準法、最低賃金法、賃金支払確保法、男女雇用機会均等法などが含まれます。

労働協約は、労働組合法に従って締結された、労働組合と使用者(またはその団体)との取り決めをいいます。

 

<労働契約の原則>

労働契約法第3条は、労働契約の原則を次のように定めています。

 

【労働契約の原則】

1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。

5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。

 

労働基準法は、使用者に多くの義務を課し違反に対して罰則を設けている一方で、労働者に対する罰則はありません。

これに対して、労働契約法は、労働者と使用者の両方に義務を課しているものの、罰則は設けられていません。

違反があった場合には、損害賠償等により民事的に解決されます。

 

<労働条件の決定と明示>

結局、労働条件は、労働契約の内容として労使の合意により決定されるのですが、法令、労働協約、就業規則よりも不利な点は、これらによって修正されます。

労働契約は、口約束でも成立します。〔民法第623条〕

しかし、労働者にとっては生活がかかっていますし、使用者にとっては賃金その他の経費を含め合計数億円に達する大取引ですから、トラブル回避のためにも、使用者が労働者を採用するときは、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません。〔労働基準法第15条第1項〕

明示された労働条件が事実と相違する場合には、労働者は、即時に労働契約を解除することができます。〔労働基準法第15条第2項〕

労働条件通知書や労働契約書で、「残業なし」と明示されているのに残業を命じられたら、すぐに退職を申し出ることができるわけです。

 

<労働条件の変更>

労使の合意により、労働契約を変更することによって、労働条件を変更できます。〔労働契約法第3条第1項〕

変更についても、法令、労働協約、就業規則より不利な点は、これらによって修正されます。

労働基準法は、労働者を採用するときだけ、賃金・労働時間その他の労働条件を書面などで明示するよう求めていますが、労働条件を変更する場合にも、トラブル回避のためこれを行っておくべきです。

労働条件の変更のうち、労働者にとって不利益な変更を特に「不利益変更」と呼んでいます。

不利益変更の場合には、労働者の同意の有無が争点となりやすいものです。

しかも、この同意は労働者の「自由な意思による同意」であることが必要です。

使用者は、労働者の真意に基づく同意があったことを証明できるよう、「同意書」のような書面を証拠として残しておくべきです。

この書面には、労働条件の変更内容と同意した旨の他、具体的な変更理由を表示しておくことによって、労働者から「勘違いしていた」「だまされた」などの主張が出されても、納得のうえ同意したことを説明できるようにしておくべきでしょう。

 

解決社労士

2021/01/04|984文字

 

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<残業時間の繰越>

建設業で働くある男性が、月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。

この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。

本来、適法な三六協定を交わし、かつ、所轄の労働基準監督署長への届出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は、たとえ1分間でも違法です。

 

<違法な慣習の発生メカニズム>

社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。

これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。

もし「いいこと考えた」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえない可能性があります。

 

<違法な慣習の例>

違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。

所轄の労働基準監督署は就業規則の届を受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。

違法な慣習としては、次のような例があります。

・正社員には年次有給休暇を取得させない。

・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。

・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。

・妊娠したら退職するルールがある。

・日給制、年俸制で残業手当を支給しない。

・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。

・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。

・遅刻に対する「罰金」の定めがある。

・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

今日までは何事も起こらなくても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。

たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、「パパママ育休プラス」「子の看護休暇」を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。

面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2021/01/03|659文字

 

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<一斉休憩の原則>

労働基準法の前身は工場法でした。

工場では、労働者に一斉に休憩を与えるのが効率的です。

現在、休憩時間は事業場ごとに一斉に与えなければならないというのが、工場だけではなく原則的なルールとなっています。〔労働基準法第34条第2項本文〕

つまり、労働者に対して交代で休憩時間を与えることは、原則として認められません。

 

<事業の種類による例外>

運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等では、労働基準法のこの規定の適用が除外されています。〔労働基準法第40条第1項、労働基準法施行規則第31条〕

つまり、これらの事業では、労働者に一斉に休憩を与える必要がありません。

 

<他の事業での例外>

上記の例外に含まれない事業でも、労使協定を締結すれば、休憩時間を一斉に与える必要はなくなり、交代で休憩時間を与えることもできるようになります。〔労働基準法第34条第2項但書〕

しかも、この労使協定は三六協定などと違って、労働基準監督署長への届出が不要です。

それでも、無ければ労働基準監督署の監督(調査)が入ったときには指摘されますから、一斉に休憩を取らせない事業場では、労使協定書を作成して保管しておきましょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

三六協定書すら届出していない会社もありますが、必要な労使協定が無いのは違法ですから、一度、信頼できる社労士にご相談のうえ、作成して保管しておくことを強くお勧めします。

 

解決社労士

2021/01/01/|1,382文字

 

YouTubeコロナハラスメント

https://youtu.be/Y0ga4SznnTM

 

<「やむを得ない」の意味>

「やむを得ない」の「やむ」は「やめる」、「得ない」は「できない」という意味ですから、「やむを得ない」の意味は、「そうするよりほかに方法がない。しかたがない」という意味になります。

「やむ負えない」「やむ終えない」「やむ追えない」などの誤った表記も見られますが、これらは「やむおえない」ですから、そもそも誤りです。

「やもおえない」「やもうえない」という誤りも、耳にすることがあります。

かつては、「已むを得ない」と表記されていましたが、当用漢字で「止むを得ない」が一般的になりました。

 

<労働基準法の「やむを得ない」>

労働基準法により、解雇の予告や解雇予告手当の支払が無いまま解雇することは、犯罪となり罰則の適用もありえます。

しかし、「やむを得ない」事由のために事業の継続が不可能となった場合には、犯罪にはなりません。

 

【解雇の予告:労働基準法第20条第1項】

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合または労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合においては、この限りでない。

 

条文には、「やむを得ない」事由の例として、天災事変が示されています。

簡単に「やむを得ない」と判断できないことは明白です。

実際、通達(昭和63年3月14日 基発150号、婦発47号)には、「やむを得ない」場合に該当する例として、次のものが挙げられています。

 

【やむを得ない場合の例】

・事業主の故意や重大な過失に基づかず、事業場が火災により焼失した場合

・震災によって工場、事業場の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能となった場合

 

反対に、「やむを得ない」とはいえない場合の例として、次のものが挙げられています。

 

【やむを得ないとはいえない場合の例】

・国税の滞納処分を受け事業廃止となった場合

・取引先が休業状態となり、これが原因で事業が金融難に陥った場合

 

<コロナ禍による場合>

コロナ禍による業績の落ち込みから、正社員の整理解雇や非正規社員の雇い止め等を検討している企業もあります。

事業の継続が不可能となった場合には、コロナ禍が「やむを得ない」事由に該当するといえるのかが問題となります。

しかし、現時点では、厚生労働省などから、コロナ禍により事業の継続が不可能となった場合について、何らかの発表は見られません。

むしろ、助成金・補助金の特例、融資の拡大、税制上の措置、社会保険料の特例軽減などの緊急対応策により、事業の継続を維持するように促している状態です。

少なくとも、これらの緊急対応策を利用し尽くしてもなお、事業主の責任を問われない原因で、事業の継続が不可能となった場合でなければ、解雇の予告や解雇予告手当の支払が無いまま解雇することが許される「やむを得ない」事由があったとは、認められないのではないでしょうか。

さらに、コロナ禍による業績の落ち込みを理由とする解雇は、整理解雇にあたります。

整理解雇が有効となるためには、厳格な要件を満たす必要があります。

まずは、希望退職者の募集や退職勧奨など、労使の合意によって可能な対応を優先することをお勧めします。

 

解決社労士

2020/10/24|1,340文字

 

<付加金の規定>

付加金は、労働基準法に規定されています。

 

【労働基準法第114条:付加金の支払】

第百十四条 裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から五年以内にしなければならない。

 

このような形で規定されていますから、ついつい具体的な内容を確認せず、見逃してしまいがちです。

第二十条(解雇予告手当)、第二十六条(休業手当)、三十七条(割増賃金)、第三十九条第九項(年次有給休暇の賃金)と書いてあれば、大変わかりやすいと思います。

解雇予告手当、残業代などの割増賃金、年次有給休暇の賃金は、退職者から会社に対して請求されることがあったのに加えて、最近では新型コロナウイルスの影響による休業の影響で、休業手当の請求が増えてきています。

特に休業手当は、支払実績がほとんど無いことから、会社側が計算方法を誤ってしまい、退職者から不足分を請求される恐れがあります。

 

<支払義務の発生>

条文の本文が「裁判所は」から始まり、「命ずることができる」で終わっています。

このことから、付加金が登場するのは、訴訟となったときに限定されることが分かります。

また、必ず付加金の支払が命ぜられるわけではなく、命ずる場合があるという規定になっています。

さらに、「労働者の請求により」という規定ですから、労働者が請求しなければ、裁判所は付加金の支払を命ずることができません。

 

<付加金の性質>

付加金は「使用者が支払わなければならない金額についての未払金」について発生しますから、全く支払われない場合だけでなく、金額が不足する場合にも支払が命ぜられます。

そして、その金額は未払金と「同一額」です。

労働基準法によって、労働者の権利が100%守られるというレベルを超えて、会社側に支払義務が生じてしまうことから、付加金は会社に課せられた義務の違背に対する制裁であると解されます。

 

<支払わずに済ませる方法>

裁判の口頭弁論が終結する前に、会社側が未払金と遅延損害金を支払ってしまえば、会社の未払は解消してしまいますから、裁判所が付加金の支払を命ずることはできなくなります。

また、第1審の判決を不服として、会社が控訴した場合には、控訴審の口頭弁論終結時までに、会社側が未払金と遅延損害金を支払ってしまえば、会社の未払は解消してしまいますから、やはり裁判所が付加金の支払を命ずることはできなくなります。

ただし、この場合には、遅延損害金が増額しますから、第1審が確定した場合よりも、訴訟費用や人件費などと合わせて、会社の負担が増えてしまうことがあります。

 

<実務的には>

付加金の制度は、「付加金を支払うくらいなら、残業手当や休業手当をきちんと支払ったほうが得だ」と思わせるために存在すると考えられます。

退職者が身勝手な態度をとることもあります。

会社の経営が苦しいこともあります。

それでも、付加金の趣旨を思い出して、正しく支払っていただきたいものです。

 

解決社労士

2020/10/23|971文字

 

<「基準」の意味>

労働基準法の「基準」は、「最高」の水準を意味するものではありません。

そして、「標準」や「目安」を示しているわけでもないのです。

労働基準法の「基準」とは、この一線を踏み越えると違法になるというギリギリの「最低」水準や「限度」、「禁止事項」のことを言っています。

ですから、会社独自の判断で労働基準法に示された「基準」よりも労働者に有利なことをするのはかまいません。

たとえば、入社とともに年次有給休暇を14日付与するなどがその例です。

 

<「基準」の個別性>

労働基準法の「基準」は項目ごとに定められています。

「うちの会社は残業手当を多めに支給しているから、年次有給休暇は取らせなくてもいいだろう」など、全体のバランスで調整することはできません。

 

<違約金・賠償額の予定禁止>

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」〔労働基準法第16条〕

かつては、中途で退職したり、会社に損害を与えたりした場合は、労働者だけでなくその家族も違約金を払う、損害賠償を行なうなどの契約が見られました。

しかし、これは労働者の退職の自由を奪うことになるので、労働基準法が罰則付きで明確に禁止したのです。

 

<「罰金」のあるブラック企業>

ところが実際には、遅刻したら罰金3千円、お皿を割ったら1枚につき千円など、気軽に労働基準法違反を犯している会社もあります。

そもそも「罰金」というのは、国家権力が科すものですから、民間企業が従業員から罰金を取るというのは明らかにブラックなわけです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

社内での「常識」に従って昔から行われていることが、実は労働基準法違反ということがあります。

不幸にして、客観的な第三者からの指摘が無いままに、違反を繰り返している状態です。

仕事ができる人は、常に自分の中の常識を疑っています。

経営者が、自分の中の常識を疑わなくなれば、会社は社会の変化についていけません。

労働基準監督署への三六協定書の届出など形式的な面だけでなく、社内で行われていること全体について適法性が確保されているのか、労働条件審査を受けてみてはいかがでしょうか。

経営者や人事部が問題を感じていなくても、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/19|724文字

 

<ブラック企業の疑い>

マスコミやネットでは、新型コロナウイルス感染症拡大のニュースが大きなウエイトを占めています。

次いで、政治のニュースが多いでしょうか。

働き方改革やブラック企業の問題は、後回しにされている感があります。

情報が減ったことで、自分の勤務先もブラックではないかという疑いを持つ従業員が増えてしまいました。

 

<疑惑のポイント>

ブラック企業の疑いを抱かれるのは、次のようなポイントです。

・賞与が支給されない

・退職金の制度が無い

・通勤手当が一部または全く支給されない

・慶弔休暇が無い

・週休二日制ではない

さらには、次のようなことまで…

・休職の制度が無い

・半日や時間単位の年次有給休暇取得ができない

・病欠を後から年次有給休暇に振り替えることができない

これらは、法令によって労働者の権利とされているものではありません。

比較的多くの会社で、事実上行われているにすぎません。

つまり、これらのことを実施するかどうかは、それぞれの会社の判断に任されていて、法令によって強制されているわけではないのです。

たとえば「賞与が支給されない会社はブラック企業」などとは言えません。

もちろん、就業規則に規定されているものは、従業員の権利として確立しているものです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

会社がブラックの疑いを晴らすためには、従業員の待遇を改善する他、労働条件審査と教育・研修が役立ちます。

専門家による客観的な労働条件審査により、労務管理上のあらゆる観点からの適法性がチェックできます。

また、就業規則や社内ルールと労働法について、従業員をきちんと教育すれば、会社が正しいことを理解してもらえるでしょう。

具体的なことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/10/16|1,614文字

 

<ダブルワークと労働基準法>

労働基準法には、次の規定があります。

 

【労働基準法第38条第1項:時間計算】

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

ここで、「事業場を異にする場合」には、事業主を異にする場合をも含む(昭和23(1948)年5月14日付基発第769号通達)とされています。

つまり、労働時間は通算されるのが原則です。

しかし、ダブルワークについては、この規定の解釈について、さまざまな疑義が出されていました。

令和2(2020)年9月1日付で、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長に宛てられた通達(基発0901第3号)は、こうした疑義のいくつかに答えるものです。

 

<労働時間が通算されない場合>

今回の通達では、労働基準法第38条第1項の規定による労働時間の通算が行われない場合について、そもそも法が適用されない場合と、法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合を、次のように確認しています。

 

・法が適用されない場合

フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事等

 

・法は適用されるが労働時間規制が適用されない場合(法第41条と第41条の2)

農業・畜産業・養蚕業・水産業、管理監督者・機密事務取扱者、監視・断続的労働者、高度プロフェッショナル制度

 

<労働時間が通算して適用される規定>

通達は、労働時間が通算される規定について、次のように説明しています。

「法定労働時間(法第32条・第40条)について、その適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。

時間外労働(法第36条)のうち、時間外労働と休日労働の合計で単月100時間未満、複数月平均80時間以内の要件(同条第6項第2号および第3号)については、労働者個人の実労働時間に着目し、その個人を使用する使用者を規制するものであって、その適用にあたっては、自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます。

時間外労働の上限規制(法第36条第3項から第5項までおよび第6項(第2号および第3号に関する部分に限る))が適用除外(同条第11項)または適用猶予(法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項または第142条)される業務・事業についても、法定労働時間(法第32条・第40条)についてはその適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間が通算されます」

 

<通算されない規定>

通達は、労働時間が通算されない規定について、次のように説明しています。

「時間外労働(法第36条)のうち、法第36条第1項の協定(以下「36協定」という)により延長できる時間の限度時間(同条第4項)、36協定に特別条項を設ける場合の1年についての延長時間の上限(同条第5項)については、個々の事業場における36協定の内容を規制するものであって、それぞれの事業場における延長時間を定めることになります。

また、36協定において定める延長時間が、事業場ごとの時間で定められていることから、それぞれの事業場における時間外労働が36協定に定めた延長時間の範囲内であるか否かについては、自らの事業場における労働時間と他の使用者の事業場における労働時間とは通算されません。

休憩(法第34条)、休日(法第35条)、年次有給休暇(法第39条)については、労働時間に関する規定ではなく、その適用において自らの事業場における労働時間および他の使用者の事業場における労働時間は通算されません」

 

<実務でのポイント>

ダブルワークにおける労働時間の通算は、当事者である労働者から不満が出やすいものです。

労働者から、通達とは異なる見解が主張された場合には、会社から通達の内容を丁寧に説明する必要があります。

 

解決社労士

2020/10/14|986文字

 

<国の政策に対する無知>

産前産後休業というのは、労働基準法による国全体の制度です。

また、育児休業というのは、育児介護休業法による国全体の制度です。

どちらも、会社の規模にも状況にも左右されません。

大企業では十分な産休・育休が与えられるでしょうから、法令の基準は中小企業に対して最低のものとして設定されたものといえます。

会社は従業員が産休や育休を取得する前提で、人材を確保しておかなければなりません。

たとえ就業規則や社内ルールに、産休や育休についての定めが無くても、その会社には法令通りに産休や育休の規定が適用されます。

日本で少子高齢化が深刻化し、出産や育児に対する法的配慮が強化されています。

このことを知らずに、昭和の感覚で会社を経営している経営者は危険です。

当たり前ですが、産休や育休に対応できない会社の評判は口コミ情報で低下していきます。

経営者が、国の政策を踏まえて経営していかなければ、その会社の未来はありません。

 

<解雇が困難であることに対する無知>

産休・育休を取らせないということは、そのまま勤務させるということではありません。

退職を迫るということです。

これは不当解雇にあたります。

妊娠や出産を理由として解雇するのが不当解雇にあたるということについては、法令に具体的な定めがあります。〔男女雇用機会均等法第9条第3項〕

不当解雇になるということは、解雇が無効になるということです。

経営者は解雇したつもりになっていても、その従業員には従業員としての権利が続くということです。

そして実際に勤務していなくても、勤務できないことについて会社側に責任があるわけですから、会社には賃金支払義務が残ります。

それだけでなく、会社はその従業員に辛い思いをさせたのですから、慰謝料も支払うことになるでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。

ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

その昔は、結婚退職が働く女性のハッピーエンドだったかもしれません。

しかし、それは遥か昔のことです。

経営者は、時代の流れに乗らなければ生き残れません。

会社が流れに乗り切れず、ブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。

信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

解決社労士

2020/10/08|1,279文字

 

<極めて限定されている管理監督者>

管理監督者といえるかどうかは、その人の肩書ではなく、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などの実態により判断されます。

就業規則に「当社の管理監督者は課長職以上をいう」などと規定しても、そのようになるわけではありません。

管理監督者は、社内ルールで自由に決定できるものではなく、客観的に決まってくるものだからです。

管理監督者といえるための最低限必要な条件はすべて満たしていることが必要です。

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

・その地位にふさわしい待遇がなされていること

実態として、部長という肩書の社員でも、これらの条件を満たしているのは極わずかでしょう。

 

<労働時間等に関する規定の適用除外>

労働基準法には、次のような規定があります。

「第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

第2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」

管理監督者には、第四章の労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇、第六章の年少者、第六章の二の妊産婦等の中の労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されないということです。

 

<使用者の立場での労基法適用>

労働基準法の規定からすると、管理監督者は明らかに使用者です。

「第10条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」

管理監督者は、労働者としての保護規定の一部が適用されないうえ、使用者としての義務を負っています。

 

<深夜手当の支払>

最高裁判所の判決に、「管理監督者については、深夜手当を支払う必要はあるけれども、管理監督者に該当する労働者の所定賃金が労働協約、就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、深夜手当を支払う必要がない場合もある」というのがあります。〔最二小判平成21年12月18日〕

これを受けて、管理監督者であっても深夜手当の支払いは必要であるといわれます。

現在では、管理監督者であっても、健康管理上の必要から労働時間の把握が必須とされています。

午後10時から午前5時までの労働時間を把握していないという言い訳はできなくなっています。

 

<名ばかり管理監督者>

管理監督者扱いされていて残業手当も支給されていないような社員が、自分の判断で出勤したり休んだり、遅く出勤したり早退したり、また、取締役と同レベルで経営に口出ししたときに、懲戒処分や降格が検討されるようであれば、その人は「名ばかり管理監督者」です。

こうしたことを理由に不当解雇をしてしまうと、会社は過去3年分の残業手当などの他に慰謝料の請求をされても仕方がないのです。

社内で管理監督者扱いされている社員が、本当の管理監督者なのか、それとも「名ばかり」なのかは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/09/13|1,284文字

 

<代休制度>

労働基準法などに、代休についての規定はありません。

したがって、会社は労働者に代休を与える義務が無く、労働者には会社に代休を請求する権利が無いということになります。

つまり、会社が労働者に休日出勤をさせたとしても、後から代わりの休日を与えなくてもよいわけです。

 

<割増賃金の支払義務>

これだけで話が終わってしまうと、労働者は休日に働き損になってしまいます。

そうならないために、会社は労働者に対して割増賃金を支払う義務を負っています。〔労働基準法第37条第1項本文〕

たとえば、1日8時間労働で平日に5日勤務し、所定休日の土曜日に勤務した場合には、週40時間を超える土曜日の労働時間が、25%以上の割増賃金の対象となります。

法定休日の日曜日に勤務した場合には、35%以上の割増賃金の対象となります。

つまり、125%以上、135%以上の賃金支払が必要となります。

もちろん、所定休日や法定休日は、各企業の就業規則の定めに従います。

これらの割増賃金は、「代休を与えるから支払わなくてもよい」ということにはなりません。

支払わなければ、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金という罰則もあります。

 

<代休の運用>

休日労働に対する割増賃金の支払義務を果たしたうえで、会社が任意に代休付与を行うことは、法令により禁止されていませんので、就業規則に制度を定めることもできます。

しかし、休日労働を行った労働者に対して、恩恵的に代休を与えることは、実質的には賃金の二重払いになりますから、現実的ではありません。

これを避けるには、欠勤控除で対応することになりますが、一般には、労働者側が年次有給休暇の取得を申し出て、欠勤控除を避けるのではないでしょうか。

1日の休日労働に対し、半日に分け2回の代休を与えて欠勤控除を行うことも、労働者の了解を得れば問題ないと考えられます。

労使で話し合いのうえ、就業規則に定めるべきことです。

 

<代替休暇>

代休と混同されやすいものとして、代替休暇があります。

1か月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の健康を確保するため、50%以上の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。

この労使協定の中で、代替休暇を与えることができる期間を定めるのですが、これは「法定時間外労働が1か月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月以内」とされています。

代休制度を設ける場合にも、代休取得日をこの範囲内にすべきでしょう。

また、代替休暇の制度を設けたとしても、個々の労働者に対して代替休暇の取得を義務づけることはできません。

代休の場合にも、個々の労働者が実際に代休を取得するか否かは、労働者の希望により決定するものとすべきでしょう。

 

なお、中小企業については、令和5(2023)年4月まで、60時間を超える法定時間外労働に対する50%以上の率で計算した割増賃金の支払いが猶予されていますから、代替休暇制度の導入もこれ以降となります。

 

解決社労士

2020/09/03|1,438文字

 

<労働条件通知書の交付義務>

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。

新人なら、1回目は雇い入れ通知書で、2回目からは契約更新の時や、時給変更、出勤日変更の時から労働条件通知書というパターンもあります。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」〔労働基準法第15条〕

これが労働基準法の定めです。

「労働契約の締結に際し」という規定ですから、法的な義務があるのは入社した時の労働条件通知書だけです。

しかし、契約更新後の条件があやふやだと、訴訟トラブルの原因になりますから、更新の度に労働条件通知書を交付するのが通例です。

「三十万円以下の罰金に処する」という罰則もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

たまたま摘発されて30万円の罰金を科せられたとしても、日常的に面倒な書類を交付するよりは、30万円の罰金で済むならその方が楽という考え方をする経営者もいるでしょう。

 

<労働条件通知書の保管義務>

労働条件通知書は3年間の保管義務があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない」〔労働基準法第109条〕

そして、こちらにも罰則規定があります。

「三十万円以下の罰金に処する」〔労働基準法1201号〕

結局、労働条件通知書の交付をサボれば、3年間は摘発されやすいわけですし、1人につき30万円の罰金というのは大変な金額になることもあります。

 

<現実の問題として>

たとえば、同じお店で5人のアルバイトがいて、この人たちはベテランなので、時給が1,500円だったとします。

そして1人が辞め、代わりに新人が時給1,200円で入ります。

2年後、この新人が辞めて、辞めた時も時給が1,200円だったとします。

さて、この後、辞めたアルバイトが労働基準監督署に駆け込み「私は時給1,500円で雇われたのに、この2年間、時給1,200円で計算された給与しかもらっていません!」と言い張ったならどうでしょう。

お店側が、「いやいや時給1,200円の約束で雇っていました」と主張できる証拠はあるのでしょうか。

いくらベテランアルバイトたちが、「あの新人は時給1,200円でした」と言っても、お店側の味方をして、お店に有利な証言をしているに過ぎないと思われます。

「時給1,200円で計算した給与を異議なく受け取っていた」と主張しても、「それはクビになりたくなくて」と反論されればそれまでです。

 

<労働法上の形式的な義務>

労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パート・有期労働法などなど、経営者に課せられた義務は把握するだけでも大変な状況です。

しかし、形式的な義務を果たすことは、経営者を護ることにもつながります。

人道的な義務や、人情で果たすべき義務の前に、この形式的な法定の義務を果たすことは、商売を続けるのに必要なことです。

経営者としての想いとは別に、法律上、守らなければ足元をすくわれることがあります。

不安を抱えないで、事業を継続するために、信頼できる社労士にご相談ください。

社労士は公務員ではありません。

親身になってご相談させていただきます。

 

解決社労士

2020/08/25|1,662文字

 

YouTube

https://youtu.be/2UlD66LICBo

 

<1分>

残業手当の計算をするにあたり、残業時間は1分単位で計算します。

「15分未満を切り捨て」などは、賃金全額払の原則に反します。〔労働基準法第24条〕

タイムレコーダーは、1分単位で労働時間を記録していますから当然といえば当然です。

現在の技術水準からすれば、秒単位での記録も可能でしょう。

しかし、そこまでは求められていません。

 

<45分・60分>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては最低45分、8時間を超える場合においては最低60分の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。〔労働基準法第34条第1項〕

労働時間が6時間以下であれば、休憩時間が無くてもかまいません。

しかし、食事の時間帯を挟む場合には、食事を摂るのに必要なだけの休憩時間が与えられるルールとなっているのが一般です。

 

<8時間>

1日の法定労働時間は8時間です。〔労働基準法第32条第2項〕

変形労働時間制を取らない限り、これを超えて労働させれば違法です。

ただし、所轄の労働基準監督署長に三六協定の届出を行えば、その範囲内での時間外労働は罰せられません。〔労働基準法第36条第1項〕

 

<40時間>

1週間の法定労働時間は40時間です。〔労働基準法第32条第1項〕

(小規模な特例措置対象事業では44時間)

変形労働時間制を取らない限り、これを超えて労働させれば違法です。

ただし、所轄の労働基準監督署長に三六協定の届出を行えば、その範囲内での時間外労働は罰せられません。〔労働基準法第36条第1項〕

「1週間」というのは、日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

しかし、就業規則で、これとは別の7日間を1週間とすることもできます。

 

<42時間・45時間>

1年単位の変形労働時間制により労働する労働者について、三六協定を締結する場合、1か月の法定労働時間を超える労働時間の上限は42時間です。

これに該当しない労働者については、45時間が上限となります。

変形労働時間制というのは、勤務時間帯を柔軟にして、労働時間を削減する制度ですから、上限に差が設けられているのです。

これらは、特別条項が適用されない場合の上限です。〔労働基準法第36条第4項〕

 

<80時間>

法定時間外労働の上限は、法定休日労働の時間と合わせて、複数月平均80時間以内に制限されています。〔労働基準法第36条第6項第3号〕

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

実務的には、過去5か月の時間外労働の実績から、「今月は何時間までの残業が許されるか」を毎月計算して管理することになります。

 

<100時間>

法定時間外労働の上限は、法定休日労働の時間と合わせて、1か月100時間未満に制限されています。〔労働基準法第36条第6項第2号〕

100時間なら1発アウトということになります。

 

<320時間・360時間>

1年単位の変形労働時間制により労働する労働者について、三六協定を締結する場合、1年の法定労働時間を超える労働時間の上限は320時間です。

これに該当しない労働者については、360時間が上限となります。

変形労働時間制というのは、勤務時間帯を柔軟にして、労働時間を削減する制度ですから、上限に差が設けられているのです。

これらは、特別条項が適用されない場合の上限です。〔労働基準法第36条第4項〕

 

<720時間>

三六協定の特別条項によって、上記の年320時間または360時間を超えて労働させる1年の時間外労働の上限です。

 

<基準を守っても負う責任>

以上に掲げた基準のすべてについて、懲役や罰金の罰則が定められています。

労働者の承諾があったとしても、違法が適法に変わるということはありません。

しかも、これらの厳しい制限をしっかり守っていたとしても、労働契約法第5条の安全配慮義務を尽くしていることにはなりません。

民事責任を問われ、多額の賠償責任を負わされることもあるわけです。

人を雇うということは、それだけ責任が重いのです。

 

解決社労士

2020/08/24|1,417文字

 

<労働基準法を守っていたらつぶれるという会社>

ビューティークリニックの女性経営者が、労働基準法を順守していたら会社がつぶれるというような発言をして、マスコミを騒がせたことがありました。

法律は国会で審議・可決され成立するのですが、法律案の段階で多くの専門家が関わりますので、普通の人や普通の会社が順守できないような法律が施行されることは稀です。

たとえそのような法令が施行されたとしても、やがて実態に合わせて改正されていきます。

特に労働基準法などの労働法で、会社の負担が過大になるような規定ができてしまうと、会社の経営が苦しくなり、結局、労働者の処遇が低下したり、整理解雇が必要になったりして、労働者の保護にはなりません。

労働者の保護を目的とする労働法は、このバランスに配慮して作られています。

最近の労働基準法改正では、一度に大きく改正しないで、少しだけ改正して様子を見ることも行われています。

ですから、労働基準法を守るとつぶれてしまう会社というのは、経営者が本業以外に気を取られているとか、顧客のニーズに対応していないとか、今の時代には合っていないとか、根本的な問題を抱えているのでしょう。

労働基準法の中でも、労働時間や休日についての基本的な規定は、過重労働による過労死を防ぐのに役立ちます。

以下の規定が守られていない会社では、守れない原因の原因、そのまた原因を突き止めて、一つひとつ解消する努力が求められます。

 

<法定労働時間>

形式的な労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。

実質的な労働時間は、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間をいい、必ずしも実際に作業に従事していることは必要ありません。

何もしていなくても、その場を離れることができない手待ち時間は労働時間となります。

この実質的な労働時間は、客観的に決まるものですから、就業規則などにより違うルールにすることはできません。

労働時間の長さは、週40時間以内、18時間以内に制限されています。〔労働基準法第32条〕

 

<法定休日>

休日とは、労働契約で労働義務が無いとされている日のことをいいます。

使用者は労働者に、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。〔労働基準法第35条〕

カレンダーで色の違う日付が休日というわけではありません。

就業規則などにより、職場ごとに決められます。

1日のうちの一部でも仕事をさせれば、たとえ30分位の短時間であったとしても、その日は休日を与えたことにはなりません。

 

<法定時間外労働・法定休日労働>

法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合や、法定休日に働かせる場合には、あらかじめ労働者の過半数代表者(過半数の労働者で組織される労働組合がある場合にはその労働組合)との間に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。〔労働基準法第36条〕

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

従業員一人ひとりの労働条件が、文書で明示されていない職場もあります。

もちろん違法ですし、労働基準法に罰則もあります。

また、労働時間を客観的に記録し保管していない職場もあります。

これも違法ですし、罰則があります

こうした規制は、労働者を守るためですが、会社を守るためでもあります。

何をどうしたら良いのか迷ったら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

解決社労士

2020/08/22|1,753文字

 

<残業制限と三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

この三六協定は、社内で人事の仕事に関わらない人にも知られている有名な労使協定です。

ところが、人事部門の担当者でも思わぬ勘違いをしていることがあります。

 

<時間外労働の意味>

時間外労働については、一般に考えられている「残業」と、法律上の「時間外労働」が異なっている場合があるので注意が必要です。

一般に「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超えて労働した時間のことを指しています。

一方、法律上の「時間外労働」とは、上記の労働基準法第32条で定められた「法定労働時間」を超えて労働した時間のことをいいます。

三六協定にいう「時間外労働」も、法律上の「時間外労働」を指しています。

ですから、「所定労働時間」が「法定労働時間」よりも短い場合には、「所定労働時間」を超えて労働した「残業」の合計が、三六協定の上限を超えるように見えても、「法定労働時間」で計算すれば制限の範囲内ということがあります。

こうした勘違いが多いからでしょう、三六協定の新しい書式には「所定労働時間を超える時間数(任意)」という欄が設けられていて、注意を喚起しています。

 

<特別条項の適用対象>

臨時的な特別の事情の発生に備えて、三六協定に特別条項を設けることができます。

この場合、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」を踏めば、限度時間を超えて労働させることができます。

しかし、これには年6回(6月)という回数制限があります。

この特別条項の適用や回数制限は、全社的にあるいは部署単位で行われることもありますが、本来的には個人ごとに行われるべきものです。

個人ごとの管理にすると、やや煩雑にはなりますが、時間外労働の幅が広がりますから、個人単位での管理をお勧めします。

 

<協定書と協定届の兼用>

就業規則であれば、これを所轄の労働基準監督署長に届け出る場合、就業規則とは別に「就業規則届」「意見書」が必要です。

しかし、三六協定の場合には「三六協定書」と「三六協定届」の両方を作成して手続を行うのではなく、「三六協定届」が「三六協定書」を兼ねています。

このことから、「三六協定届」では、協定の当事者である労働組合や労働者の過半数を代表する者の署名または記名・押印が必要とされるわけです。

 

<三六協定を守っていても>

かつては、三六協定の適正な届出をして、その内容を遵守していれば、労働基準監督署から行政指導を受けることはあっても、違法になることはありませんでした。

これは、残業時間について、法律による上限が定められていなかったためです。

ところが、働き方改革の一環で労働基準法が改正され、平成31(2019)年4月1日からは残業時間の上限が設けられました。

 

【労働基準法による残業の上限】

原則 = 月45時間かつ年360時間(1日あたり約2時間) 

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合であっても、

・年720時間以内

・休日労働の時間と合わせて複数月平均80時間以内

・休日労働の時間と合わせて月100時間未満

ただし、月45時間を超えられるのは年6回までという制限があります。

複数月平均80時間以内というのは、過去2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のどの平均も80時間以内ということです。

 

三六協定の遵守とは別に、この労働基準法の基準も超えないように注意しなければ違法となってしまいます。

労働時間の管理を失敗しないよう、細心の注意を払わなければなりません。

 

解決社労士

2020/08/19|1,751文字

 

<残業制限と三六協定>

会社は従業員に、1日実働8時間を超えて働かせてはなりません。また、日曜日から土曜日までの1週間で、実働40時間を超えて働かせてはなりません。〔労働基準法第32条〕

この制限に違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。〔労働基準法第119条〕

ですから、基本的にこの制限を超える残業は「違法残業」ということになります。

しかし会社は、労働組合や労働者の過半数を代表する者と書面による協定を交わし、これを労働基準監督署長に届け出た場合には、協定の定めに従って1日8時間を超え、また週40時間を超えて従業員に働かせても罰せられないのです。

このことが、労働基準法第36条に規定されているため、ここで必要とされる協定のことを三六協定と呼んでいます。

ところが、所轄の労働基準監督署長に三六協定書を届け出て、その控えを会社に保管し、社内に周知していても、労働基準法違反となってしまうことがあります。

 

<選出手続の失敗>

「労働者の過半数を代表する者」を選出するにあたっては、次のような条件があります。

うっかり、これらの条件に違反していると、三六協定の締結そのものが無効となり、法定労働時間を超える残業がすべて違法となってしまいます。

・管理監督者を除く一般の労働者から選出すること。

・「労働者の過半数を代表する者」の具体的な役割を説明したうえで選出すること。

・会社から適任者を打診するなどの関与をせず民主的に選出すること。

社員親睦会の代表者が、自動的に「労働者の過半数を代表する者」となるような、選出そのものが行われないのは、当然に無効となってしまいます。

 

<期限切れ>

三六協定の有効期間は、最長でも1年間です。

取引契約書のように、「甲乙いずれからも申出が無い場合には、従前と同一の内容をもって更新されるものとする」という自動更新の規定を置くことはできません。

所轄の労働基準監督署長への届出も、毎年行うことになります。

期限が過ぎてから届出を行っても、さかのぼって効力が認められることはありません。

うっかり、三六協定の更新を忘れると、違法残業が発生してしまいます。

 

<上限を超える残業>

三六協定では、法定労働時間を超える時間数として、1日、1か月、1年それぞれの上限を定めます。

1日単位のチェックは、従業員一人ひとりに説明しておいて、自己管理を求めるのが簡単です。

管理職も、自分の部下の残業時間について、管理を怠らないでしょう。

また、1か月単位の上限については、半月あるいは20日経過したところで、人事部門から各部門長や各従業員に対して「オーバーペースです」という警告が発せられる仕組ができている企業も多いと思われます。

しかし1年単位となると、従業員も部門長も、あまり意識していないため、年度末になってから、思いの外、残業が制限されてしまったり、あるいは、うっかり制限をオーバーしてしまったりということがありえます。

やはり、1年単位での時間外労働の集計も必須です。

 

<三六協定の対象者>

三六協定届には、労働者数の欄があり、カッコ書きで「満18歳以上の者」と書かれています。

これは、三六協定が満18歳未満の従業員には適用されないからです。

適用されないということは、満18歳未満の従業員は、三六協定が締結されても法定時間外労働が許されないことになります。

うっかり残業させてしまうことがないよう、十分に注意する必要があります。

 

<特別条項の回数制限>

臨時的な特別の事情の発生に備えて、三六協定に特別条項を設けることができます。

この場合、「限度時間を超えて労働させる場合における手続」を踏めば、限度時間を超えて労働させることができます。

しかし、これには年6回(6月)という回数制限があります。

年の前半で特別条項を5回使ってしまえば、後半では1回しか使えませんから、年度末の繁忙期に限度時間内の残業しかできずに困ることになります。

特に注意したいのは、年度の途中で人事異動がある場合です。

特別条項の回数制限は、個人ごとのカウントとなりますから、異動前に何度も限度時間を超えていると、異動後には限度時間を超えられない不都合を生じます。

これも、うっかり違反の大きなポイントですから注意しましょう。

 

解決社労士

2020/08/04|1,304文字

 

<空欄のある労働条件通知書の有効性>

労働条件通知書は、使用者から労働者に対して主要な労働条件を書面で通知するための書類です。

そして、労働条件は労働契約の中心的な内容となっています。

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、書面に不備があっても労働契約の効力には影響しません。〔民法第623条〕

たとえ労働契約書や労働条件通知書が無くても、労働契約は有効に成立するのです。

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし、労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は、使用者から労働者に書面で通知する必要があります。

1. 労働契約の期間

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切・支払の時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、パート・有期労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」などの明示が必要です。ここで、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」とは、事業主が短時間労働者 からの苦情を含めた相談を受け付ける際の受付先のことです。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

つまり、これらの事項は労働条件通知書から漏れていても大丈夫です。

ただし、パートタイマー(短時間労働者)については、1.3.の事項がパート・有期労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<空欄があることによるトラブル>

労働条件通知書は、使用者の労働者に対する一方的な通知書ですから、1部だけ作成して労働者に交付すれば良い書面です。

この点が、労働契約書とは違うところです。

しかし、もし空欄があった場合、交付を受けた労働者が勝手に空欄を補充すると、これがトラブルの元になります。

ですから、使用者もコピーを1部保存するのが良いでしょう。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

就業規則が無い会社では、就業規則の代わりに労働条件通知書にかなり詳細な内容を記載する必要があります。

決まっていないからといって空欄のままにしておくことは、法定の要件を満たしていなかったり、トラブルの火種となったりします。

そうはいっても、決め方がわからないなど迷うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

また、「雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」は、社内に置くこともできますが、社会保険労務士とすることが推奨されています。

 

解決社労士

2020/06/24|793文字

 

<強制労働の禁止>

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則が一番重いものです。

使用者が、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制した場合に適用されます。

これは、強制労働の禁止〔労働基準法第5条〕に違反した場合の規定です。

 

<家出少年・家出少女に対する実例>

家出少年・家出少女をマンションに軟禁し、強制的に働かせたうえで、その収入を巻き上げるという明らかな犯罪行為が報道されます。

このようなことが一般の企業で行われるとは考えられません。

 

<学生アルバイトに対する実例>

学生アルバイトを深夜までこき使い、正社員のするような仕事までさせておいて、「あなたには管理監督者の仕事まで任せているのだから残業手当は出ない」と説明しているという報道もありました。

学業よりも仕事を優先させて働かせ、結局、退学に追い込んでしまうという話もあります。

たしかに、監禁や身体の自由を不当に拘束する手段に出てはいませんが、弱みにつけこみ、誤った常識を押し付けて、脅迫しながら精神の自由を不当に拘束する手段を使っています。

 

<ありがちな実例>

店長から店員へ次のような電話があって、その店員が断り切れずに出勤したら、強制労働になりえます。

「おい!お前今日は休みだったよな。人が足らないんだ。出ろよ。来なかったら承知しねえぞ!」

店長は使用者ですし、これも労働基準法の禁止する強制労働にあたるのですが、ニュースにならないということは、実際には行われていないのでしょうか。

それとも…

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

店長が労働基準法違反で逮捕されたのではお話になりません。

遅くとも役職者になったなら、最低限の労働法知識を身につけないといけません。

社員教育についても、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/05/03|1,326文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で1人につき1回30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

30万円単位の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

 

<労働条件明示の理由>

労働条件の明示が労働基準法に規定されているのはなぜでしょうか。

労働契約は、使用者の「働いてください。給料を支払います」という意思表示と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思表示が合致することによって成立します。

しかし、具体的な労働条件が決まっていなければ、使用者からアルバイトに「明日は私の自宅のトイレと浴室の掃除をしてもらいます」ということも、絶対に無いとは言えません。

こうなると、労働者ではなくて奴隷扱いになりかねません。

もちろん、これは極端なたとえ話ですが、労働基準法が明示を義務付ける労働条件は、すべて限定されないと労働者が困る事項ばかりです。

 

<労働条件が不明確だと下がる定着率>

労働条件が不明確であれば、労働者は不安を感じ、退職しやすい理由となります。

定着率の低い会社は、労働条件があやふやになっていることが多いものです。

不安の内容としては、次のようなものが挙げられます。

●契約期間、契約更新の有無

これが不明確だと、次の仕事を探す必要性も、探し始めて大丈夫かどうかもわかりません。

契約期間の終了が近づくと、労働者は不安ですし、中には次の仕事を見つけて自分から退職する人も出てきます。

●就業の場所

これが不明確だと、どこで働くのか、勤務地が変わることがあるのか、不安になります。

例外的に転勤する人が出た場合、転勤を恐れて退職する人も出てきます。

●業務内容

これが不明確だと、仕事の範囲がわかりません。

「こんな仕事までする約束ではなかった」と感じた人は退職を考えます。

●出勤日と始業終業時刻

ただ単に「シフト制」とするなど、不明確になっていると私生活との調整がむずかしくなります。

また、どれだけ働いて、どれだけの収入が得られるのかもわからないのでは、勤務時間の安定した仕事を求めて退職するのは仕方のないことです。

この状態だと、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。

つまり、「うちは有給休暇を取らせないよ」と自白していることにもなります。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

実際、その日によって勤務時間帯が変わるなど、労働条件をどのように明示すれば良いのか迷うケースもあります。

労働条件が良くわからないために、新人が定着しないのでは、経費、時間、労力、精神力のムダです。

こんなときは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

今は、新型コロナウイルス感染症関連で、助成金が話題となっています。

元々の労働条件が書面で明確化されていないのに、「従業員を休ませた」という証明はできません。

労働条件の明示は、助成金の受給にも大きな役割を果たすのです。

 

解決社労士

2020/04/13|892文字

 

YouTube労働基準監督官の行動規範

https://youtu.be/gmncel00ZWc

 

<労働法に関する行政監督制度>

労働基準法などの実効性を高めるため、行政監督制度が設けられています。

厚生労働大臣のもとに、国に1つの厚生労働省労働基準局、各都道府県に1つの労働局、都道府県をいくつかのエリアに分けて設置される労働基準監督署があります。

たとえば、東京都立川市にある立川労働基準監督署は、立川市、昭島市、府中市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、武蔵村山市、東大和市の10市を管轄しています。

 

<労働基準監督官と署長>

労働基準監督官は、労働基準法など労働法の施行のための行政取締や刑事処分にかかわり、事業場を臨検し、帳簿や書類の提出を求め、必要な尋問を行う権限や、労働基準法違反の罪に対する捜査権、逮捕権など司法警察員としての権限をもっています。

労働基準監督署長も、労働基準法のもとで臨検、尋問、許可、認定など様々な権限をもっています。

この他、労働基準監督署長や労働基準監督官は、必要があると認めるときには使用者や労働者に報告や出頭を命じることができます。

 

<労働基準監督署の機能の限界>

労働基準監督署は、強力な権限をもっていますが、それは労働基準法や労働安全衛生法などに根拠のある場合に限られています。

たとえば、解雇権濫用の有無の判断など、労働者や企業にとって切実な問題であっても、監督権限を行使することはできません。

残念ながら、これらの機関は直接の紛争解決権限をもっているわけではないのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場>

直接訪問した場合でも、電話による問い合わせの場合でも、社労士であることを名乗ると、労働局や労働基準監督署の皆さんはとても親切です。

本当に頼りになります。

会社の人事部門で働いていた時に比べて、一段上の対応をしてくださっているように思われます。

おそらく話の通じる専門家として見てくださっているのでしょう。

年金事務所や協会けんぽでも同様のことを感じます。

もし、行政の相談窓口などに問い合わせても、今一つ納得できない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

社労士から改めて問い合わせると、深い回答が得られるものです。

 

解決社労士

2020/04/05|1,038文字

 

令和2年4月1日付で、民法の債権に関する規定が改正されたことに対応して、労働基準法も改正されました。

 

<賃金請求権の消滅時効期間>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

改正前の民法では、賃金請求権の消滅時効期間が1年間でした。

これでは、労働者の権利保護が不十分だということで、労働基準法によって2年間に修正されていました。

ところが、改正民法では消滅時効期間が原則5年間とされたため、労働基準法との間で逆転が生じてしまうことになりました。

このままだと、労働基準法の労働者保護の趣旨に反してしまうので、段階的に消滅時効期間を延長し、民法の原則に合わせることとなりました。

実際の改正民法では、債権の消滅時効が次のように規定されています。

 

【債権等の消滅時効】

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

 

労働基準法では10年の基準は使わず、5年の客観的な基準のみを使うことになりました。

 

<記録の保存>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

たとえば、未払賃金の消滅時効期間も3年間→5年間と延長されましたので、会社が賃金台帳や労働者名簿を保管する期間も、これに合わせて延長されていきます。

 

<付加金>

「原則5年間とする。ただし、当面3年間とする」

未払賃金の請求訴訟では、本来の賃金とこれに対する利息の他に、本来の賃金と同額の付加金を請求することができます。

未払賃金の消滅時効期間が3年間→5年間と延長されましたので、これに上乗せされる付加金も消滅時効期間が延長されます。

 

<年次有給休暇請求権、災害補償請求権、帰郷旅費、退職時の証明、金品の返還の請求権の消滅時効期間>

「2年間のままとする」

年次有給休暇については、消滅時効期間を延長すると、「すぐに取得しなくても消滅しない」という理由から、取得が抑制される恐れがあるという理由で、変更なしとなりました。

他のものについては、延長する必要がないという判断です。

 

<退職手当の請求権の消滅時効期間>

「5年間のままとする」

退職手当は、退職金のことですが、これも延長する必要がないという判断です。

 

<適用開始>

改正法施行日(令和2年4月1日)以後に賃金支払日が到来する賃金請求権について、新たな消滅時効期間が適用されます。

付加金の請求期間についても同様の取扱となります。

 

解決社労士

2020/03/30|1,650文字

 

<通達の発出>

令和2年3月17日、厚生労働事務次官が、都道府県労働局長に宛てて依命通達(令和2年3月17日厚生労働省発基0317第17号)を発出しました。

これは、新型コロナウイルス感染症による経済活動への影響から、中小企業・小規模事業者で労働基準関係法令への対応が困難となる状況が発生していることを受け、中小企業等に与える影響への配慮の徹底を指示するものです。

直接的には、中小企業への配慮を依頼する内容となっていますが、労働基準法の解釈・適用について、実態を踏まえた柔軟な対応をなしうることを示しているもので、大企業にとっても参考になるものです。

具体的には、次の事項を指示しています。

 

<中小企業等への配慮>

・中小企業等に対する相談・支援にあたっては、労働基準関係法令に係る違反が認められた場合においても、新型コロナウイルス感染症の発生および感染拡大による影響を十分勘案し、労働基準関係法令の趣旨を踏まえた自主的な取組みが行われるよう、きめ細かな対応を図ること。

・中小企業等の置かれた状況に応じ、時差出勤やテレワークについて必要な周知等を行うこと。

ポイント:法令違反があっても、必要な知識を与え、自主的な改善を求める。

 

<労働基準法第33条第1項の解釈>

 

【労働基準法第33条第1項】

災害その他避けることのできない事由によつて、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。

 

・感染患者を治療する場合、高齢者等入居施設において新型コロナウイルス感染症対策を行う場合および感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液、医療機器等を緊急に増産または製造する場合等が対象になり得るものであること。

・このほか、人命・公益を保護するために臨時の必要がある場合には、状況に応じた迅速な運用を図ること。

・あくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものであり、やむを得ず月80時間を超える時間外・休日労働を行わせたことにより疲労の蓄積の認められる労働者に対しては、医師面接等を実施し、適切な事後措置を講じる必要があること。

ポイント:「臨時の必要がある場合」は限定されており、長時間労働で疲労が蓄積した労働者には、適切な事後措置が必要である。

 

<1年単位の変形労働時間制>

・新型コロナウイルス感染症対策のため、当初の予定どおりに1年単位の変形労働時間制を実施することが企業の経営上著しく不適当と認められる場合には、特例的に、1年単位の変形労働時間制の労使協定について、労使で合意解約をし、または協定中の破棄条項に従って解約し、改めて協定し直すことも可能であること。

・解約までの期間を平均して1週40時間超労働させた時間について割増賃金を支払うなど、協定の解約が労働者にとって不利になることのないよう留意すること。

ポイント:1年単位の変形労働時間制についての労使協定を合意解約し、また、協定のやり直しも可能だが、割増賃金の支払などで労働者に不利益が発生しないようにする必要がある。

 

<36協定の特別条項>

・36協定の「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」に、繁忙の理由が新型コロナウイルス感染症とするものであることが明記されていなくとも、一般的には、特別条項の理由として認められるものであること。

・現在、特別条項を締結していない事業場においても、法定の手続きを踏まえて労使の合意を行うことにより、特別条項付き36協定を締結することが可能であること。

ポイント:36協定の特別条項に新型コロナウイルス感染症についての記載が無くても、「繁忙の理由」として扱える。また、特別条項の無い36協定が届出済であっても、特別条項付きの36協定に切り替えることができる。

 

解決社労士

2020/03/10|958文字

 

<本採用後の家族手当支給>

試用期間中は家族手当を支給せず、本採用となってから支給を開始するという就業規則やその運用は、原則として問題がありません。

ただし、家族手当を支給しないことによって、1時間あたりの賃金が最低賃金の基準を下回ってしまうと、最低賃金法違反となりますから、ここは確認が必要です。

 

<試用期間の法規制>

労働基準法には、「試用期間」という用語は無くて、「試みの使用期間」〔第12条第3項第5号〕、「試の使用期間中の者」〔第21条第4号〕という用語が登場します。

そして、労働基準法の予定する試用期間は14日までです。

ですから、会社が試用期間を3か月としても、15日目からは労働基準法上の試用期間として認められません。

認められないとどうなるかというと、正当な理由があって辞めてもらう場合にも、解雇予告手当の支払とともに解雇通告することが必要です。

あるいは、30日以上前もって予告するわけです。

解雇予告手当20日分と、10日前の予告で、合わせて30日という方法も認められています。〔第20条第2項〕

たとえ試用期間中であっても、正当な理由があって解雇予告手当を支払わずに即日解雇できるのは、原則として入社14日目までということになります。

 

<試用期間であっても必要な事(法定事項)>

健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険は、試用期間中か本採用後かという区分がありませんので、法定の基準を満たせば入社とともに加入します。

これは、市区役所に出生届を提出しなくても、赤ちゃんが生まれれば、その生まれた事実に変わりはないのと同じです。

つまり、加入手続をしなくても保険料の未払が発生するだけです。

その証拠に、会社に調査が入って手続もれが発覚すれば、さかのぼって多額の保険料を支払うことになります。

給与についていえば、残業手当、深夜手当、法定休日出勤手当のように、法定のものは試用期間中であっても支給しなければなりません。

ただし、役員待遇で入社するなど、いきなり管理監督者の立場に立つ人は例外です。

 

<試用期間であれば必要ない事>

家族手当の他、精勤手当、賞与など、基本の給与とは別に会社がプラスアルファで支給するものは、試用期間中は支給しない規定と運用でも、原則として問題ありません。

ただ、最低賃金法違反に注意するだけです。

 

解決社労士

2020/02/15|1,098文字

 

<制裁規定の制限>

減給処分の制限として、次の規定があります。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」〔労働基準法第91条〕

就業規則などに具体的な規定が無いのに減給処分をすれば、懲戒権の濫用となり無効とされます。〔労働契約法第15条〕

規定があったとしても、何か一つの不都合な事実に対して、減給処分は平均賃金の1日分の半額が限度です。

そして、この平均賃金の計算方法は法定されています。

たとえば、直近の給与の締日までの3か月で、カレンダー上の日数が91日のとき、この間の給与の総合計が91万円であれば、1日分は1万円、その半額は5千円です。

これが減給処分の限度です。

 

<具体的な計算例>

月給30万円で、月間所定労働日数が22日だとすると、1日あたりの給与は、

30万円 ÷ 22日 = 13,636円 と算出されます。

3回遅刻して1日分の給与がカットされるとすると、これだけの給与が減額されるわけです。

一方で、月給30万円であれば平均賃金の1日分は約1万円、その半額は約5千円ですから、この5千円を大きく上回る13,636円を減額することは、制裁規定の制限を超えてしまいます。

 

<欠勤控除として許される場合>

もし1日8時間勤務の場合で、3回の遅刻を合わせて8時間以上になるのなら、1日分の給与を減額しても制裁の意味を持ちません。

なぜなら、欠勤控除をする場合よりも、給与の減額が少ないからです。

ただし、欠勤控除をしたうえで、それとは別に減給処分として1日分の給与を減額するならば、制裁規定の制限を超えてしまいます。

 

<制度としての合理性>

1分の遅刻を3回でも、3時間の遅刻を3回でも、同じく1日分の給与を減額するというルールでは、明らかに不公平です。

出勤の途中で遅刻しそうだと思った社員は、喫茶店でくつろいでから3時間遅刻して出勤するかもしれません。

また、病気だとウソをついて年次有給休暇を取得するかもしれません。

遅刻3回で1日分の給与を減額するルールというのは、ブラック社員を生み出す原因となりかねないのです。

 

懲戒処分を適正に規定し運用するというのはむずかしいものです。

だからといって、懲戒処分が無ければ問題社員を野放しにしてしまいます。

懲戒処分の役割は、不都合な行為をした社員を懲らしめることよりも、まじめな社員が安心して働ける会社にすることの方が大きいといえます。

会社に合った規定と運用をお考えでしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2020/02/14|1,968文字

 

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法第15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などその名称はさまざまです。

名称はどうであれ、交付しないのは違法で、30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法第120条〕

1人につき30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは、労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も、取得した場合の給与計算の方法も不明です。

月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。

こうしたことから、労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものだからです。

 

<ひな形の活用>

厚生労働省のホームページで、この労働条件通知書のひな形をダウンロードできます。

契約形態に応じて10種類用意されていますから、各労働者に適合するものを利用しましょう。

2020年4月1日の法改正に対応する場合、現在のA4サイズ2枚の形式では、対応し切れなくなる可能性も高いです。

この時点で面倒に思ったり迷ったりするのであれば、お近くの社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

ひな形というのは、そのまま印刷してすぐに使えるわけではありません。

ひな型には空欄が多いですから、あらかじめ使用者が案を作成しておいて、労働者に確認しながら修正して完成させるという手間がかかります。

この案を作成する段階と、完成版のチェックの段階で、記載要領と照らし合わせて確認する必要があります。

労働条件通知書は、トラブル防止のために作ることが義務づけられています。

ですから、下手な労働条件通知書はトラブルのもとになります。

実際には、退職前後の労働者と会社との間で紛争の火種となります。

そうならないために、表現の工夫が必要なのです。

 

<表現の工夫>

まず、「よくわからない」「決まっていない」という理由で、法定の項目をカットしてしまうと労働基準法違反となり、罰則が適用されることは、労働条件通知書を交付しないのと同じですから注意しましょう。

労働基準法に違反する内容を入れないことも大切です。

ここでは、常用、有期雇用型について、特に工夫が必要なポイントをご紹介します。

1.「契約の更新は次により判断する。」

 誰が判断するのか書いておかないと、労働者から「私はそうは思いません」と反論されてしまいますから、「契約の更新は次により使用者が判断する。」あるいは「契約の更新は次により会社が客観的に判断する。」と記載することをお勧めします。

2.始業・終業の時刻等

 勤務形態によっては、毎日バラバラということもあります。

 いくつかのパターンにまとめられるのであれば、標準勤務時間として、いくつかの始業・終業・休憩時間をならべて記入しましょう。

 それも無理であれば、何時から何時までの間で何時間勤務(休憩何分)かを記入します。平均的なことを記入するわけです。

 どちらの場合にも、1日の標準的な所定労働時間を記入しなければなりません。これが無ければ、年次有給休暇を取得しても、その分の賃金が計算できませんから、記入が無ければ「年次有給休暇を取得させるつもりが無い」という解釈になってしまいます。これだけで違法です。

 ここは、始業・終業の時刻等が毎日バラバラのパターンが想定されていないので、記入欄が無く注意が必要です。

3.所定時間外労働の有無

 ここで「有」を選択した場合で、1日8時間、1週40(44)時間を超えて残業することがある場合には、所轄の労働基準監督署長に三六協定書を提出しているわけですから、その範囲内で、「1日何時間まで」「1週何時間まで」などの記入をしておきましょう。

 後になってから、残業が多すぎるなどの不満が出ないように、あらかじめ確認しておく項目です。

 これも記入欄が無いので注意が必要です。

4.休日

 特定の曜日などで決まっていない場合には、「週当たり」または「月当たり」の日数を記入します。

 これが無いと、年次有給休暇を付与する条件としての出勤率が計算できませんから、やはり記入が無ければ「年次有給休暇を取得させるつもりが無い」という解釈になってしまいます。これだけで違法です。

5.自己都合退職の手続

 ひな形では、(退職する  日以上前に届け出ること)となっていますが、言った言わない、取り消したのではないか、などのトラブルを防止するために、(退職する  日以上前に所定の「退職届」で届け出ること)としておくことをお勧めします。もちろん、「退職届」の用紙は準備が必要です。

 

解決社労士

 

2020/01/30|805文字

 

<周知義務について説明されていること>

「労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、各種労使協定等を労働者に周知しなければなりません。 周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。」

これは、労働基準法第106条の説明として良く目にするものです。

 

<本当に知りたいのは>

しかし、周知する立場の経営者や人事担当者は、「法令の要旨」をどのようにまとめたら良いのかということを知りたいのです。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。

しかも、労働基準法第106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」と言っていますから、悩んでしまいます。

 

<お勧めなのは>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。

パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的には1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、上手い説明が見つからない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

解決社労士

2019/12/30|805文字

 

YouTube労働基準監督官の行動規範

https://youtu.be/gmncel00ZWc

 

<労働基準監督官の任務>

労働基準監督官の基本的任務は、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働法で定められている労働者の労働条件や安全・健康の確保・改善を図るための各種規定が、工場、事業場等で遵守されるよう、事業者などを監督することにあります。

労働基準監督官は、監督を実施し法令違反が認められた場合には、事業主などに対し文書で指導し是正させるのです。

また、危険性の高い機械・設備等について労働基準監督署長が命ずる使用停止などの行政処分の実行も行っています。

 

<労働基準監督官の権限>

こうした任務を全うするため、労働基準監督官には労働法により臨検(立入調査)権限を始め、帳簿・書類などの検査権限、関係者への尋問権限など多くの権限が与えられています。〔労働基準法第101条、第103条、労働安全衛生法第91条、第98条、最低賃金法第32条など〕

また、労働基準監督官には、司法警察員としての職務権限があるため、重大・悪質な法令違反を犯した事業者などに対しては、司法警察権限を行使して、刑事事件として犯罪捜査を行うこともあります。〔労働基準法第102条、労働安全衛生法第92条、最低賃金法第33条など〕

 

<立入調査>

労働基準監督官の監督は、各種情報に基づき問題があると考えられる事業場を選定して行われています。

例えば、労働災害発生の情報や労働者からの賃金不払、解雇等の申告・相談をきっかけとして、また、問題が懸念される事業場などをあらかじめ選定した上で計画的に、監督が実施されています。

なお、事業場のありのままの現状を的確に把握するため、原則として予告することなく事業場に監督を行っています。

臨検(立入調査)の拒否・妨害や尋問に対する陳述の拒否・虚偽の陳述、書類の提出拒否・虚偽を記載した書類の提出については、罰則が設けられています。〔労働基準法第120条、労働安全衛生法第120条、最低賃金法第41条など〕

 

解決社労士

2019/11/23|1,521文字

 

<労働条件の明示>

人を雇うときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。

労働契約は口約束でも成立するのですが、特に重要な項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。〔労働基準法第15条〕

書面の名称としては、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などが一般的です。

ここで使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。

顧問社労士も使用者に含まれます。

 

<書面の交付による明示が必要な事項>

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)

・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多いです。

※これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。〔労働契約法第4条第2項〕

 

<労働契約の禁止事項>

労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

その主なものとしては、次の例があります。

・労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと。〔労働基準法第16条〕

たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。

これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

・労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。〔労働基準法第17条〕

労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。

・労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること〔労働基準法第18条〕

社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。

ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは厳格な法定の要件のもと許されています。

 

<採用内定>

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。

したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります。〔労働契約法第16条〕

内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。

採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する義務もあります。

 

解決社労士

2019/10/28|1,293文字

 

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

本採用にするとき、働きぶりに見合った月給に引き下げるというのは、不利益変更禁止の原則があってむずかしいので、どうしてもこのようになります。

労働基準法も試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法第12条第3項第5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示してあれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、明らかに最低賃金法違反となります。

この場合の所定労働時間は、給与計算に使う基準です。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法なのですが、計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、173.8時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×173.8時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が173.8時間であれば、

150,000円÷173.8時間=863.06円

ですから、現在、最低賃金がこれを上回る埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県では違法となってしまいます。

 

<固定残業代がある場合> 

 最低賃金法施行規則第1条が「所定労働時間をこえる時間の労働に対して支払われる賃金」については最低賃金額に算入されないと定めています。

これにより、月給から固定残業代を差し引いた金額を所定労働時間で割って、最低賃金を下回れば明らかに違法ということになってしまいます。

 たとえば、月間所定労働時間が173.8時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、 

150,000円=P+P÷173.8時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、 

残業代抜きの基本給が131,137円、20時間分の残業代が18,863円となります。 

すると、この場合には131,137円が最低賃金の基準となり、 

131,137円÷173.8時間=754.53円

ですから、現在はどの都道府県でも最低賃金を下回ってしまい違法であることがわかります。

 

<試用期間の特例>

試用期間中の者については、特別な許可を得て、最低賃金を下回る月給にすることができる建前です。

最低賃金の減額の特例許可を受けたい場合、使用者は最低賃金の減額の特例許可申請書(所定様式)2通を作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する必要があります。

もっとも、許可基準は厳しいですから、まず許可されることはありません。

 

解決社労士 柳田 恵一

 

2019/10/16|674文字

 

<実質的には短い試用期間>

試用期間を定める場合、3か月から6か月が主流でしょうか。

ところが、試用期間で解雇予告手当の支払が不要なのは、入社14日目までで、15日目以降の解雇には解雇予告手当が必要となります。〔労働基準法第21条〕

もちろん、30日以上前もって解雇の予告をしておけば、この解雇予告手当の支払は不要です。〔労働基準法第20条〕

とはいえ、試用期間を3か月とした場合、実際には2か月以内に本採用とするかしないかの判断が必要となります。

遅れれば、その日数分の解雇予告手当が必要となります。

 

<解雇予告手当の効力発生時期>

解雇予告手当は、支払った日に効力が発生します。

ということは、15日に「今月いっぱいで解雇します」と通告して、25日に給与に合算して支払うと、25日に効力が発生することになります。

すると、退職日が10日遅れ、翌月10日が退職日になり、翌月分の社会保険料が発生するなど、ややこしいことになってしまいます。

労働基準法など労働者を守る法律では、本人の同意があっても、同意することによって本人が不利益をこうむる場合には、原則として同意がなかったものとして扱われます。

「月末で解雇だけど、解雇予告手当は25日に給料と一緒に払ってもいいかな?」「別にいいですよ」という口頭のやり取りは危険で、同意の内容が書面に残っていて、しかも同意することにもっともな事情が認められなければ、後になって本人の気が変わっても対処できません。

解雇予告手当は給与ではありませんから、給与計算担当者が面倒に思ったとしても、解雇予告と同時に支払いましょう。

 

解決社労士 柳田 恵一

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。

こうして、新人の入社の時にあらゆる同意書を書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

このような不合理な結果を考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法第27条第2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を保護することです。

労働者自身の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。

労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養から外れてしまうので受け取りを辞退します」という申し出があったとします。

店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。

しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら、権利が時効消滅していない限り拒めません。〔労働基準法第24条第1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。

それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら、権利が時効消滅していない限り会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、ある意味で会社に束縛されています。

しかし、退職すれば自由になります。

そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです

 

2019.10.08. 解決社労士 柳田 恵一

<労働法の実体>

「労働法」という名前の法律があるわけではありません。

労働に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。

その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければならないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、労働契約の内容を全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間労働など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

こうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法が存在するのです。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

法律というのは、不合理ですが、その法律を知っている人の役に立つのですが、知らない人の役には立ちません。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2019.10.06. 解決社労士 柳田 恵一

<法定休日の原則>

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えます。〔労働基準法第35条第1項〕

これが法定休日です。

毎週というのは、特に就業規則などに定めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。

ですから、この7日間に1日も休みが無いというのは、労働基準法違反です。

ただし、労使で三六協定を交わし、所轄の労働基準監督署長に届けていれば、その範囲内で法定休日に出勤しても、使用者が罰せられることはありません。

 

<法定休日の例外>

毎週少なくとも1日の休日という法定休日のルールは、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については適用しないという例外があります。〔労働基準法第35条第2項〕

これが4週間に4日以上の休日を与える変形休日制です。

これも法定休日です。

この制度を採用するには、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。

起算日というのは、4週間(28日間)を数えるときの最初の日をいいます。

これが決まっていなければ、どの4週間で4日以上の休日にするのか分からないので運用できません。

 

「毎年4月1日を起算日とする」という就業規則の規定は誤りです。

365日 ÷ (7日 × 4週)= 13.035…というように端数が出ますから、3月末に半端な期間ができてしまいます。

ですから、「2019年4月1日を起算日とする」などのように、特定の日を起算日として動かないようにしなければなりません。

 

<この制度を採用した場合の賃金計算の注意点>

これは法定休日の話ですから、賃金計算とは別問題です。

出勤日数が多い週には、労働時間の合計が1週間の法定労働時間を超えることになります。

この場合、1日での時間外労働とは別に、1週間での時間外労働が発生しますので、25%以上の割増賃金が必要です。

1日6時間勤務であっても、1週間毎日出勤する週には42時間勤務となりますから、40時間を上回る2時間が割増賃金の対象となります。

結論として、休日については融通の利く制度なのですが、割増賃金が増える可能性があるのです。

4週間に4日以上の休日を与える変形休日制を採る場合には、併せてフレックスタイム制などの変形労働時間制を採るのが合理的だといえるでしょう。

 

2019.09.24. 解決社労士 柳田 恵一

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法第32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法第35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法第33条第1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

過去の大震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2019.09.18. 解決社労士 柳田 恵一

<休業手当の支払が不要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けて労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。

ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません。

ここで「不可抗力」とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること、この2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

大雨・水害等により、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられますので、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられます。

ただ例外的に、ことさら不十分な施設・設備であった場合など、「使用者の責に帰すべき事由による休業」と判断すべき場合もあり得ます。

 

<休業手当の支払が必要な場合>

大雨・水害等により、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていないものの、取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことにより労働者を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たるでしょうか。

事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられています。

しかし、「施設・設備の直接的な被害」だけを基準に判断すべきことではありません。

具体的な事情として、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を考慮して、総合的に判断する必要があります。

 

<就業規則等に定めがある場合>

労働契約、労働協約、就業規則の定めにより、あるいは労使慣行によって、天災地変等の不可抗力による休業について休業中の時間についての賃金、手当等を支払うこととしている企業があります。

こうした企業が、「今回のケースでは支払わない」とすることは、労働条件の不利益変更に該当します。つまり、従来通りの賃金、手当等を支払わなければなりません。

将来的に支払わないことにするためには、労働者との合意など、労働契約、労働協約、就業規則等のそれぞれについて、適法な変更手続をとる必要があります。

 

2019.09.10. 解決社労士 柳田 恵一

<休憩時間の長さ>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。〔労働基準法第34条第1項〕

したがって、出社したらすぐに休憩とか、休憩してからすぐに退社というのはできません。

また、8時間勤務で全く残業が無いのなら休憩時間は45分と定めてもOKです。

若いアルバイトの中には、休憩時間を削ってまで働きたいという人もいます。

しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防する意味もありますから、本人の希望で法定以下に短縮することはできないのです。

では、反対に延長はどうでしょうか。

実働8時間休憩4時間という労働契約でも、その休憩時間が実際に仕事から離れて自由に使える時間であれば、法的な問題にはならないでしょう。

ただ、そうした条件で採用を希望する人は稀でしょうし、途中でこういう労働条件とすることが本人にとって不都合であれば、労働条件の不利益変更の問題となりえます。

 

<休憩時間の分割>

たとえば、1時間の休憩時間を40分1回と10分2回に分けて与えることは許されます。

喫煙者が喫煙室で休憩を取る場合などは、この方が助かります。

しかし、3分の休憩を20回与えるなど、実質的に見て休憩時間とはいえないような与え方はできません。

そこは常識の範囲内で、疲労回復という休憩時間の本来の趣旨に沿って考えましょう。

 

<休憩時間の一斉付与>

休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。〔労働基準法第34条第2項〕

ただし、お店などでは誰かしら接客する人がいないと不都合ですから、この労使協定がなくても、次の業種では一斉付与の例外が認められています。

運送業(旅客または貨物)、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業

反対に、これ以外の業種ではきちんと労使協定を交わしておきましょう。

書類の作成をサボるだけで、労働基準法違反というのはつまらないことです。

 

<休憩時間の自由な利用>

使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。〔労働基準法第34条第3項〕

「何かの必要に備えて自分の席にいなさい」ということであれば、これは休憩時間にはなりません。待機時間は労働時間です。

使用者が休憩中の外出を制約できるかについては、事業場内において自由に休憩できる限りは、外出許可制をとっても差しつかえないとされています。〔昭23年10月30日基発1575号通達〕

 

2019.09.08. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法施行規則第32条>

休憩時間を与えなくてもよい職種があります。

運輸交通業または郵便・信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶、航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者には休憩時間を与えないことができます。

乗務員でこれらに該当しない者については、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が「一般の休憩時間」に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。

郵便・信書便、電気通信の事業に使用される労働者で屋内勤務者30人未満の郵便窓口業務を行う日本郵便株式会社の営業所(郵便局)で郵便の業務に従事する者には休憩時間を与えないことができます。

 

<一般の休憩時間>

こうした特殊な業務の労働者を除き、「一般の休憩時間」を与えなければなりません。

「一般の休憩時間」とは、「労働時間が6時間を超える場合には少くとも45分、8時間を超える場合には少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える」というものです。〔労働基準法第34条第1項〕

その日の労働時間が6時間以下であれば、その日については休憩時間を与えないことができます。

使用者としては、労働者から「休憩なんて要りませんよ」と言われていたので与えなかったところ、退職してから「休憩を与えられていませんでした」と訴えられたら、反論の余地がないということです。

労働法が保障する労働者の権利の中には、労働者が放棄できないものがあるのです。

ですから、安易に「本人が同意しているから」「念書を書いてもらったから」大丈夫とはいえません。

 

<法定の基準を上回る定め>

以上はすべて法定の基準ですから、就業規則や労働契約に法定の基準より多くの休憩を与える規定があれば、労働者に有利である限りその規定が優先されます。

たとえば、6時間勤務の労働者に昼休みを1時間与えるなどは、法定の基準を上回るものとなります。

ただし、「労働者に有利である限り」という部分は、慎重な判断が必要です。

たとえば、昼休みが4時間ある場合には、就業の場所のすぐ近くに自宅があって、帰宅してくつろげる労働者なら問題ありませんが、いたずらに拘束時間が増えるだけの労働者にとっては不利になることもあります。

こうしたときには、不利になる労働者についてのみ、規定の効力が認められないケースもありますので注意しましょう。

 

2019.09.03 解決社労士 柳田 恵一

<辞めるのは権利か自由か>

正当な理由によって、労働契約の期間途中で辞めたり、期間満了時に辞めたりしたことで、会社の業務に何らかの支障が生じたとしても、突き詰めれば、それは会社側の人事管理に原因があるのですから、労働者に法的な責任は生じません。

ただし、期間を定めて働いている契約の途中で、自分側の都合で一方的に辞めると、損害賠償責任が発生することはあります。

その場合の賠償額は、残りの期間働かなかったことによって、実際に会社が失った利益にとどまります。

退職した後のことまで、責任を負うことはありません。

また、期間を定めずに働いていたときは、就業規則などに規定された予告期間さえ守れば、理由は何であれ、辞めることによって法的な責任が生じることはありません。

 

<強制労働の禁止>

暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって就労を強制することは禁止されています。〔労働基準法第5条〕

この違反には、10年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。〔労働基準法第117条〕

退職を思いとどまらせるための説得が禁止されているわけではありませんが、繰り返し長時間にわたって取り囲んだり、拒否しているのに繰り返し家に押しかけたりするなど、社会的相当性を超える威圧的な方法・手段で行えば違法な監禁や強要となります。〔刑法第220条、第223条〕

また、会社が辞めたいという労働者に、損害賠償請求や告訴することを告げることは、労働者に実際にそのような責任を発生させる事情があったのならば別ですが、具体的な事実や根拠もなく行ったときは、違法な恐喝や脅迫となります。〔刑法第222条、第249条〕

不当な脅しには毅然とした対応が必要ですが、こうしたことは犯罪ですから、もし身の危険を感じるようならば、最寄りの警察署に相談しましょう。

 

2019.08.04. 解決社労士 柳田 恵一

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法第68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法第120条第1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法第12条〕

これを受けて、労働契約法も「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」としています。〔労働契約法第3条第5項〕

憲法12条にある「公共の福祉」という言葉は分かりにくいですが、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

自分の権利を主張するあまり、他人の権利を侵害するようなことがあってはならないということです。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。

つまり、生理中なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるということです。

このように運用しなければ、会社の業務に支障を来たし、他の従業員に迷惑がかかる恐れがあるからです。

 

<生理休暇の実態>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、「たとえ業務に支障が出たとしても、当然の権利だから別に遠慮は要らない」という態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

もっとも、就業規則で有給とされていた規定を無給に変更することは、不利益変更になりますから安易に行うことはできません。

さらに、生理休暇を申し出た人がスキーに行っていたことが判明したようなケースでは、ウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<会社の対応>

生理休暇を取ったことを理由に、人事考課の評価を下げ、昇格、昇給、賞与支給で不利な扱いをすることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

生理休暇の濫用を問題視するのではなく、適正な評価制度の正しい運用こそが望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2019.07.25. 解決社労士 柳田 恵一

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われた人がいます。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示し、様々なことを義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

労働基準法は、労働者を守るための法律ですから当然でしょう。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

これによって、逃亡や証拠の湮滅(いんめつ)を防止するわけです。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者への制裁>

労働基準法には労働者に対する罰則が無いのですから、労働者が労働基準法違反の罪を犯すということもありません。

したがって、逮捕や起訴などもないのです。

しかし、就業規則に定められたルールに違反すれば、会社での評価は下がるかもしれません。

そうなると、賞与の支給額や昇給にも影響が出るでしょう。

また、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それでも、たとえば定期健康診断をサボり続けた場合に、厳重注意や譴責(けんせき)が限界でしょう。

労働基準法が罰則を定めていない趣旨からすると、減給や出勤停止などは重すぎるからです。

 

2019.07.22. 解決社労士 柳田 恵一

<予定外の長期入院で月給が下がるのは>

「年俸制の従業員が長期にわたって入院したら年俸を下げることはできるのか」というご質問を受けたことがあります。

月給制の従業員が長期間入院した場合に、入院期間に応じて毎月少しずつ基本給が下がっていくシステムというのは聞いたことがありません。

これは、明らかに不合理であり社会通念上も相当ではないので、法的に許されない不利益変更となります。

 

<年俸制なら許されるのか>

ではなぜ「年俸制の従業員が長期間入院したとき年俸を下げてもよいのか」という疑問が出るのでしょうか。

これは、年俸が過去の実績を踏まえつつ、今後1年間でどれだけ会社に貢献してくれそうかという予測評価に基づいているためでしょう。

プロ野球の選手は、球団との間で一般的な労働契約を交わしているわけではありません。

ところが、サラリーマンにも応用できそうだということで、年俸制を採用している会社もあります。

そして一度決めた年俸は、長期入院にもかかわらず、会社から支払いが続くというものです。

しかし、これは会社が独自に決めたルールです。

年俸制なら欠勤控除できないという法令の規定はありません。

そもそも、労働基準法などに年俸制の規定はありません。

また、厚生労働省が公表しているモデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)にも、年俸制を想定した規定はありません。

ですから、予想外の長期入院が発生したときに不都合を感じるような給与支払いのルールを、会社が独自に作っておいたのが失敗なのです。

 

<年俸制にするのなら>

年俸制であっても、労働基準法の縛りがあります。

毎月1回以上定期に賃金を支払わなければなりません。

残業手当、深夜手当、休日出勤手当など割増賃金を支払う必要もあります。

しかし、欠勤控除してはいけないというルールはありません。

法令には規定がないのですが、労働契約の性質から「労働者が働かなければ会社に賃金の支払い義務はない」という「ノーワークノーペイの原則」があります。

欠勤控除しないのは、会社がそういうルールにしているだけです。

ですから、年俸制を実施している会社で、就業規則に欠勤控除の規定がなければ定めればよいのです。

ただし、長期入院にもかかわらず、通常の賃金を支払い続けていたという前例が過去にあった場合には、就業規則の不利益変更が疑われます。

この場合には、社会保険労務士などの専門家に相談しながら、慎重に事を進める必要があるでしょう。

 

2019.07.17. 解決社労士 柳田 恵一

<効力の優先順位>

「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」〔労働基準法第13条〕

これが労働基準法の規定です。

「達しない」というのがキーワードです。

労働契約で法律よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして法律に従うという意味です。

逆に、労働契約の中に法律よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結局、法律と労働契約を比べて、違いがある部分については、労働者に有利な方が有効となります。

この場合、労働契約は個別の労働者との契約ですから、有利・不利の判断は個人別に行われます。

 

<具体例>

たとえば、試用期間が終わり本採用となってから6か月後に年次有給休暇が付与されるという労働契約は法律よりも不利です。

本人が同意していても、その同意は無効であって、法律の基準により試用期間の初日から6か月後に付与されます。

またたとえば、1日7時間勤務の会社で、7時間を超えて勤務したら時間外割増賃金として25%を加えるという労働契約は法律より有利です。

なぜなら労働基準法は、8時間の法定労働時間を超える残業に割増賃金を義務づけているからです。この場合には、労働契約が優先されます。

 

<労働契約が無い?>

働いている限り、労働契約が無いということはありません。口頭であっても、労働契約は有効です。〔民法第623条〕

ですから、正確には「労働契約書」が無い場合ということになります。

契約書ではなくても、労働条件を会社から一方的に通知する「労働条件通知書」でもよいのですが、何も無ければ労働基準法に定める条件が適用されることになります。

ただ、何時から何時まで、どこで、どのような仕事をするのか、休憩時間はどうなのかということは、法律に規定がありません。

これでは働く人があまりにも不安定ですから、会社には労働条件を書面で交付するなどの法的義務があります。

違反に対しては、30万円以下の罰金という罰則もあるのです。

交付されていない場合には、労働者から会社に確認してみる必要があるでしょう。うっかり忘れているだけかも知れません。

それでも交付されない場合には、早めに転職先を見つけるようお勧めします。

 

2019.07.08. 解決社労士 柳田 恵一

<労働基準法での使用者の定義>

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法第10条〕

ここに書いてある「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。

「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。

 

<社外にもいる使用者>

「使用者」というと、会社の中にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社労士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社労士は労働基準法第10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

 

<結論として>

労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社労士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

労働基準法の定義している「使用者」の範囲は、意外と広いのだということを覚えておきましょう。

 

2019.06.18. 解決社労士 柳田 恵一

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、昭和22(1947)年5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的に沿って規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人の偉い人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」の保障です。〔憲法第25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法第26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法第27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法第28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法第29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法第30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法第25条〕

このように、憲法第25条から第30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法第27条第2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。

それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法第12条、労働契約法第3条第5項〕

 

2019.06.16. 解決社労士 柳田 恵一

<試用期間の低賃金>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなど、試用期間だけ労働条件が異なるパターンは多いですね。

ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。

「月給 ÷ 所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

所定労働時間が決まっていないなど、法令を無視した条件を設定しないように注意したいものです。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。

解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。

しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

なお、14日以内なら無条件で解雇できるわけではなく、解雇の厳密な条件を満たしていなければ、不当解雇となって、会社が損害賠償責任を負うことは言うまでもありません。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、不当に人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。報告・連絡・相談を怠らないこと」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退する方もいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2019.06.14. 解決社労士 柳田 恵一

<30万円の罰金>

労働基準法には、「30万円以下の罰金」についての規定が50種類以上あります。

このうち、わかりやすいものとして次のようなものがあります。

・国籍や性別で賃金を差別する

・遅刻などに「罰金」を設ける

・業務災害による休業中に解雇する

・法定の休憩時間を与えない

・年次有給休暇を与えない

・満18歳に満たない者を午後10時から午前5時に働かせる

・労働条件通知書などにより労働条件を明示しない

・使用者側の都合で休業させたのに休業手当を支払わない

・法定の制限を超えて減給処分を行う

 

<犯罪の個数>

原則として、労働者1人に対する1回の行為が1個の犯罪としてカウントされます。

上記の国籍や性別で賃金を差別した場合については、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が規定されています。

たとえば、外国人や女性を採用するにあたって、日本人や男性よりも低い賃金で雇用し、これが5人続いたとします。そして、6か月にわたって低い月給を支給し続けたとします。この場合、5 × 6 = 30 で、30個の犯罪が成立していることになります。

これでも、懲役刑が科される場合には、9か月が上限となります。〔刑法第47条〕

しかし、罰金が科される場合には、単純に 30万円 × 30 = 900万円 が上限となります。〔刑法第48条第2項〕

労働基準法違反を承知で、長年にわたって多数の従業員に違法な扱いをしていると、数百個の犯罪が成立していることもあるのです。

 

<実際の罰則適用>

実際に罰金が適用されるのは、労働者からの申告を受けて労働基準監督署が摘発し、あるいは無作為抽出による定期的な監督に基づき勧告があって、使用者が指導に従わないような悪質な場合です。

この場合でも、数十万円の罰金に留まるのが一般です。

これは、書類送検されるような悪質な事件については、マスコミの報道により社会的な制裁が十分であることや、罰則よりも被害者や遺族に対する損害賠償の金額の方が遥かに多額であることなどが考慮されているようです。

 

<遵法経営が一番>

こうして見ると、労働基準法違反で罰金が科される場合、本当に怖いのは、罰金よりも社会的制裁や被害者への補償により、企業に莫大な損失が発生してしまうことだと考えられます。

「30万円以下の罰金」であっても、罰則に触れるようなことは、決して行わないよう注意を怠ってはなりません。

 

【刑法の規定】

(併合罪)第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。

 

(併科の制限)

第四十六条 併合罪のうちの一個の罪について死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は、この限りでない。

2 併合罪のうちの一個の罪について無期の懲役又は禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料及び没収は、この限りでない。

 

(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

 

(罰金の併科等)

第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。

2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。

 

2019.05.20. 解決社労士 柳田 恵一

<社内預金の趣旨>

労働契約に付随して、強制的に貯蓄金を管理する契約を行うことは禁止されています。

しかし、労働者が任意に貯蓄金の管理を使用者に委託する場合には、労使協定の締結・届出、貯蓄金管理規程の作成、利子をつけることなど一定の条件を満たすことにより、預金を受け入れる社内預金を行うことが認められています。〔労働基準法第18条〕

 社内預金は福利厚生の一環とされますが、預金された資金は事業の運転資金として活用することができます。 ただし、原資はあくまでも労働者の賃金です。

したがって、預金の安全性の確保が最も重要な課題であり、保全措置を講ずること、利子は利率の最低限度である下限利率以上とすること、預金者一人当たりの預金額の限度を定めることなどが義務付けられています。 

 

<預金の保全>

預金の保全については、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後の1年間を通じて一定の保全措置を講ずることとされています〔賃金の支払の確保等に関する法律第3条〕

その具体的内容は、賃確法施行規則第2条で以下のように定められ、労使協定でどの方法によるのかを明確にする必要があります。ただし、複数を併用することも差し支えありません。

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務を銀行その他の金融機関において保証することを約する契約を締結すること

・事業主の労働者に対する預金の払戻しに係る債務の額に相当する額につき、預金を行う労働者を受益者とする信託契約を信託会社または信託業務を営む金融機関と締結すること

・労働者の事業主に対する預金の払戻しに係る債権を被担保債権とする質権または抵当権を設定すること

・預金保全委員会を設置し、かつ、労働者の預金を貯蓄金管理勘定として経理することその他適当な措置を講ずること 

 

<預金保全委員会>

預金保全委員会の構成員の半数については、その事業主に使用されている労働者であって、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者の推薦を受けたものとすることが必要です。

預金保全委員会には次に定める事項を行わせます。

・事業主から労働者の預金の管理に関する状況について報告を受け、必要に応じ、事業主に対して当該預金の管理につき意見を述べること

・労働者の預金の管理に関する苦情を処理すること

事業主は、3か月以内ごとに1回定期に、また預金保全委員会からの要求の都度、労働者の預金の管理に関する状況について預金保全委員会に対して書面により報告を行わなければなりません。

また事業主は、預金保全委員会の開催の都度遅滞なく、その議事の概要および預金保全委員会に報告した労働者の預金の管理に関する状況の概要を各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける等の方法によつて労働者に周知させることが義務づけられています。

さらに、預金保全委員会における議事で重要なものに係る記録を作成して、これを三年間保存することが必要です。 

 

<保全措置を講じていない場合>

保全措置を講じていない事業主に対しては、労働基準監督署長が文書により保全措置を講ずべき旨の命令を出すことができます。〔賃確法第4条、施行規則第3条〕

また、保全措置が講じられていない事業場が倒産した場合の貯蓄金については、株式会社で会社更生法が適用される場合は、更生手続開始前6か月間の給料の総額に相当する額、またはその預り金の額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権として優先的に扱われます。〔会社更生法第130条〕

しかし、破産や民事再生の手続きを採った場合には、優先度の低い債権として扱われることになります。

 

2019.05.07. 解決社労士 柳田 恵一

<罰金の意味

駐車場の入口付近に「無断駐車は罰金2万円」などの表示を見かけることがあります。また「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方から、お話をうかがったこともあります。

しかし、罰金は死刑や懲役と同じく刑罰の一種です。刑罰権は国家に独占されていますから、国家権力ではない個人や会社が罰金を取るということは、相手が誰であれ法的に許されません。

ですから、駐車場の「罰金」も、社内の「罰金」のルールも無効です。

本当に徴収したら、詐欺罪、恐喝罪が成立したり、労働基準法違反となるでしょう。

場合によっては、「罰金」では済まされず懲役刑が科されるかも知れません。

もし社内ルールで「罰金」ということばを使っていたら、みっともないのですぐにやめましょう。

 

<労働法の定め>

就業規則ではなく内規だとしても、「罰金」は違約金の定めや損害賠償の予定の禁止に反して無効になります。〔労働基準法第16条〕

また、給与から差し引くことは、賃金の全額払いの原則に反することになります。〔労働基準法第24条第1項本文〕

結局、労働法上も実際に徴収することは認められません。

またたとえ、使用者が労働者の過失によってこうむった損害を回収したい場合であっても、実際に被った損害額のすべてについて、労働者に請求できるわけではありません。

なぜなら、その損害の発生について、使用者に全く責任がないというのは稀ですし、労働者を使用することによって利益を得ている分、その損失についてもある程度は負担するのが公平だからです。

完璧な人はいないのですから、労働者の過失によって損害が発生することも覚悟のうえで雇っているというのが、法律上の考え方なのです。

 

<使用者から労働者に請求できる損害賠償額>

まず、労働者に損害賠償義務があるかどうかは、労働者が通常求められる注意義務を尽くしたかどうかによります。

そして、労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務を負うことになります。

労働者の負担割合がどの程度となるかは、具体的な事情によります。

裁判になれば「事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損失の分散についての使用者の配慮の程度、その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、使用者は、労働者に対して賠償の請求ができる」という判断になります。

たとえば長時間労働が続いて疲れている労働者が、注意散漫になって事故を起こしたような場合には、長時間労働をさせた使用者に大きな落ち度があり、使用者側の負担割合が相当程度大きくなります。

 

<罰金を免れる方法>

「遅刻は罰金1万円」というルールがある会社の方は、次のような話をしていました。

 

「遅刻しそうになったら喫茶店などで時間をつぶし、落ち着いてから会社の上司に電話をかける。朝から具合が悪く、出勤の途中で我慢できなくなったので病院に行きますと言って、年次有給休暇を使えばいい。たとえ休暇はダメだと言われて欠勤控除になっても、罰金1万円よりはマシです」

 

使用者側が違法なことをしていると、労働者側もこれに対抗しておかしなことをするようです。

これでは、会社と社員が共に成長するというのも「夢のまた夢」でしょう。

 

2019.04.29. 解決社労士 柳田 恵一

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2019.04.24. 解決社労士 柳田 恵一

<民法の適用>

労働契約も契約の一種ですから、原則として民法が適用されます。

この民法には、任意規定と強行規定が混在していて、その区分は条文に明記されていないことが多いので、最高裁の判例などで確認しなければなりません。判例が無ければ、学者の学説などを参考にして判断することになります。

任意規定というのは、法令に規定があっても当事者がそれに反する意思表示をすれば、法令の規定よりも当事者の意思表示が優先されるものをいいます。当事者が何も意思表示をしない場合でも、任意規定が適用されることによって、契約の内容が補充されます。

強行規定というのは、法令の規定のうちで,当事者の意思にかかわりなく適用される規定をいいます。当事者が強行規定とは別の意思表示をしても、それは無効とされ、自動的に強行規定の内容に修正されます。

結局優先順位は、任意規定 < 契約など当事者の合意 < 強行規定 となります。

つまり、従業員から承諾する旨の一筆をもらったとしても、強行規定に反する内容であれば、無効になってしまうということです。

 

<労働基準法の適用>

労働基準法には「労働者の保護」という確固たる目的があり、この目的を確実に果たすため、その規定は原則として強行規定です。

民法とダブって規定されている内容については、特別法である労働基準法が、一般法である民法に優先して適用されます。

ですから、労働基準法に反する内容について、労働者から一筆もらっても効力がありません。

 

<憲法の趣旨の適用>

憲法は国の最高法規です。〔日本国憲法第98条第1項〕

ですから、この憲法に反する法令などは効力がありません。

憲法は、基本的には国家に対する命令ですから、国民に直接適用されるわけではありませんが、その趣旨は、私人間の契約にも効果が及ぶものと解されています。

そのため、職業選択の自由〔日本国憲法第22条第1項〕を侵害するような契約は、その効力を否定されます。

たとえば、一定の期間退職を禁止する、退職にあたって違約金の支払いを必要とする、退職後にライバル企業に転職することを禁止するといったことは、職業選択の自由を侵害しますから、基本的には、たとえ労働者が合意しても、憲法の趣旨に反して無効となります。

会社としては、退職する従業員から念のため一筆もらっておいても、無効となることが大半なのです。

最高裁の判例でも、ライバル企業への転職の制限について、期間とエリアを限定し、しかも、十分な経済的代償措置を取った場合に限り、労働者の合意が有効だと判断しています。

 

<合意の有効性>

労使関係では、たとえ労働者が合意していても、その合意が無効となってしまうケースは意外と多いものです。

「本人が同意すれば大丈夫」というのは、ありがちな素人考えです。

社員から一筆もらう場合には、よくよくその効力を確認したうえで行いましょう。

 

2019.04.11.解決社労士

【労働基準法39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法に違反しません。

 

【労働基準法39条2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法39条3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

 

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

 

※1日未満の端数は切り捨てです。

 

所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法39条4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて、必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を、何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は、「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法39条5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法39条6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法39条7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法39条8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2019.04.04.解決社労士

<休日>

労働基準法には、休日について次の規定があります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

○2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

つまり、日曜日から土曜日までの1週間で1日の休日を与えるか、4週間ごとに4日の休日を与えればよいということになります。

正社員、パート、アルバイトなどの区分にかかわらず、週6日勤務は違法ではありません。

 

<労働時間>

一方で、労働基準法には、労働時間について次の規定があります。

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

つまり、労働時間には上限があって、日曜日から土曜日までの1週間で40時間、1日について8時間が限界ということになります。

 

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

週6日勤務の場合でも、1日6時間の勤務であれば、週36時間の勤務になりますから適法です。1日6時間40分であれば、6日間でちょうど40時間です。

また、週のうち5日は7時間勤務、1日は5時間勤務とすれば、週40時間の勤務になりますから、これも適法ということになります。

 

<特例事業場の例外>

事業場の規模が10人未満の、次の業種は、1週 44 時間、1日 8 時間となります。〔労働基準法第40条〕

この事業場を「特例事業場」といいます。

 

【特例事業場】

商業(卸小売業、理美容業など)

映画演劇業(映画の製作の事業を除く)

保健衛生業(診療所、歯科医院、社会福祉施設など)

接客娯楽業(旅館、飲食店など)

 

<職種による例外>

次の職種は、労働時間のほか、休憩、休日に関する労働基準法の規定は適用されません。

 

農業、畜産業、水産業従事者

管理監督者(イメージとしては取締役に近い仕事をしています)

機密の事務を取り扱う者(秘書など)

監視断続的労働、宿日直勤務を行う者で、労働基準監督署長の許可を受けた者

 

<三六(さぶろく)協定による例外>

労使の合意に基づく手続きによって、週40(44)時間を超える勤務を可能にしたり、例外的に週7日勤務する場合があるという取り決めをしたりすることができます。

労働基準法第36条第1項に規定があるので、三六協定と呼ばれます。

 

【労働基準法第36条第1項】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

 

この法定の手続きを取らずに残業させると、「違法残業」となります。

三六協定には最長でも1年間の有効期限があります。

期限切れの状態で残業が発生しても「違法残業」です。

もちろん、三六協定の上限を超える残業も違法です。

 

<年次有給休暇>

年次有給休暇の付与日数は、1週間の所定労働日数、1週間の所定労働時間、勤続年数によって決まります。

これを示す表には、週6日の欄が書かれていないこともありますが、週6日勤務の労働者には、週5日の欄が適用されます。

 

<就業規則にも注意>

パートやアルバイトに適用される就業規則に、「週5日までの勤務」という規定がある場合には、これによる制限を受けますから週6日勤務はできません。

会社として必要ならば、法定の手続きを経て、就業規則を変更する必要があります。

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

会社からの強制で週6日勤務にすることは、働き方改革とは逆の方向に進むことになります。

しかし、労働者側の都合で週6日勤務を希望し、会社がこれを認める形ならば働き方改革の推進になります。

子育て中で朝遅めの出勤、夕方早めの退勤の方が、都合が良いという人もいます。

家が近くて出勤が苦にならないとか、満員電車を避けて通勤したいとか、1日の勤務時間が短いパート・アルバイトなので勤務日数を増やしたいとか、様々なニーズに応えるのは働き方改革の流れに沿ったものとなります。

 

2019.03.03.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上 5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上 4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上 3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上 2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.01.26.解決社労士

YouTube労働基準監督官の行動規範

https://youtu.be/gmncel00ZWc

 

<行動規範の根拠>

平成31(2019)年1月11日、厚生労働省が「労働基準監督官行動規範」を策定し公表しました。

この行動規範は、「労働施策基本方針」(平成30(2018)年12月28日)の、第2章 労働施策に関する基本的な事項 1 労働時間の短縮等の労働環境の整備 (1)長時間労働の是正 の中で示された次の一節に対応するものです。

 

労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。

 

この行動規範が策定されたのは、働き方改革を強力に推進するための基盤づくりが目的だと思われます。

以下にその内容を見ていきましょう。枠内は原文をそのまま引用しています。

 

<基本的使命>

私たち労働基準監督機関は、労働条件の最低基準を定める労働基準法や労働安全衛生法等の労働基準関係法令(以下、法令という。)に基づき、働く方の労働条件の確保・改善を図ることで、社会・経済を発展させ、国民の皆さまに貢献することを目指します。

 

働き方改革は、「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」だといえます。

この中の「多面的な施策」は、働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)に示されています。

平成31(2019)年4月1日以降は、現行法の内容に加えて、あるいは現行法に代えて、新法や改正法の適用による労働条件の確保・改善が行われることになります。

この行動規範は、労働基準監督機関が法令に基づいて、労働条件の確保・改善を図るものであることを再確認しています。

 

<法令のわかりやすい説明>

労働基準監督官(以下、監督官という。)は、事業主の方や働く方に、法令の趣旨や内容を十分に理解していただけるよう、できる限りわかりやすい説明に努めます。

 

使用者は法令の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを助けるため、労働基準監督署などには、事業主向け、労働者向けのパンフレットなどが配置されていて、自由に持ち帰ることができるようになっています。

それでもなお、会社の実情に応じた具体的な理解まではむずかしいですから、労働基準監督官からできる限りわかりやすい説明をしていただけるということです。

 

<事業主の方による自主的改善の促進>

監督官は、法令違反があった場合は、違反の内容や是正の必要性を丁寧に説明することにより、事業主の方による自主的な改善を促します。また、法令違反の是正に取り組む事業主の方の希望に応じ、きめ細やかな情報提供や具体的な取組方法についてのアドバイスなどの支援に努めます。

 

労働基準監督官には、法令違反のあった使用者を逮捕し送検する権限が与えられています。〔労働基準法第102条〕

しかし、法令違反を発見した場合でも、すぐにこうした手続きに入るのではなく、まず事業主に自主的な改善を促します。

さらに、どうしたら違法状態を解消できるかについて、労働基準監督官が具体的なアドバイスをしてくれます。

 

<公平・公正かつ斉一的な対応>

監督官は、事業主の方や働く方の御事情を正確に把握し、かつ、これを的確に考慮しつつ、法令に基づく職務を公平・公正かつ斉一的に遂行します。

 

労働基準監督官の職務遂行には、公正であることが求められます。

法令に基づき、画一的な扱いをすべきところは、平等の理念に従い斉一的に行い、また、具体的な事情の違いに配慮すべきところは、公平の理念に従い妥当な結果を導けるように対応します。

 

<中小企業等の事情に配慮した対応>

監督官は、中小企業等の事業主の方に対しては、その法令に関する知識や労務管理体制の状況を十分に把握、理解しつつ、きめ細やかな相談・支援を通じた法令の趣旨・内容の理解の促進等に努めます。また、中小企業等に法令違反があった場合には、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、事業主の方による自主的な改善を促します。

 

中小企業等の事業主には、法令についての正しい知識や理解が不足しているために、悪意なく法令違反が発生していることもあります。

こうした事情を踏まえて、労働基準監督官は大企業の場合よりも手厚い指導を行います。

ただし「法令遵守では経営が成り立たない」など、働く人の労働条件の確保・改善を正面から否定するような考えに応じることはありません。あくまでも、法令遵守に向けた自主的な改善を促すのが、労働基準監督官の役割です。

 

2019.01.21.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

フレックスタイム制については、次のような内容となっています。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)と割増賃金との関係>

清算期間が1か月を超える場合、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させたときには、時間外労働が発生するので、三六協定の締結と割増賃金の支払いが必要となります。

こうしたときには、清算期間の途中であっても、それぞれの期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を支払わなければなりません。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)の協定事項 >

フレックスタイム制で三六協定を締結する際、改正後の労働基準法でも、1日について延長できる時間を協定する必要は無く、1か月と1年について協定すればよい。

 

<月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の適用>

清算期間が1か月を超える場合、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間については、清算期間の途中であっても、それぞれの期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を支払わなければなりません。

この時間外労働時間が、月60時間を超える場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間については、その最終の期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に加えて、その清算期間の総実労働時間から、①その清算期間の法定労働時間の総枠と②その清算期間中のその他の期間に時間外労働時間として取り扱った時間を控除した時間が、時間外労働時間として算定されます。

この時間外労働時間が、月60時間を超える場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

<改正労働基準法36条6項2号,3号の適用>

 

【改正労働基準法36条6項2号,3号】

6項 使用者は、第1項の協定(三六協定)で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、 次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。2項 1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間

 100時間未満であること。

3項 対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間

 80時間を超えないこと。

 

清算期間が1か月を超える場合のフレックスタイム制では、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に対して、この規定が適用されます。

また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間については、その最終の期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に加えて、その清算期間の総実労働時間から、①その清算期間の法定労働時間の総枠と②その清算期間中のその他の期間に時間外労働時間として取り扱った時間を控除した時間が、時間外労働時間として算定され、この時間に対してこの規定が適用されます。

 

<留意事項>

フレックスタイム制は、労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で始業と終業の時刻を選択し、仕事と生活の調和を図りながら働くための制度であり、長時間の時間外労働を行わせることは、フレックスタイム制の趣旨に合致しないことに留意しなければなりません。

 

2019.01.15.解決社労士

<労働基準法第1条>

労働基準法第1条には、労働条件の原則が定められています。

法令の第1条には、その法令の目的が掲げられていることが多く、この条文も労働基準法全体の目的を示しているとみることができます。

 

【労働条件の原則】

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

この条文を素直に読めば、「人たるに値する生活を営むための必要」というのは、人間らしい生活をするのに必要な収入が得られることを意味しているでしょう。

また、「労働条件を低下させる」というのは、賃金の実質的な時間単価を低下させることを意味するものと考えられます。

このことからすると、時間外労働や休日労働は割増賃金となりますから、労働者が希望して積極的に残業や休日出勤を行い、より多くの賃金を獲得するのは労働基準法第1条と矛盾するものではないでしょう。

ところが、労働基準法は改正され、平成31(2019)年4月1日から一部の事業・業務と中小企業を除いて、残業時間の上限規制が行われます。

生活費を残業手当に頼っていた労働者にとって、この法改正は「労働条件を低下させる」ことにならないのか、「人たるに値する生活を営むための必要」を満たさなくなるのではないかという不安をもたらし兼ねないものです。

 

<憲法との関係>

労働基準法が制定されたのは、日本国憲法第27条第2項の規定を受けてのことです。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

また、労働基準法第1条が「人たるに値する生活」と言っているのは、日本国憲法第25条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を受けてのことでしょう。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

第二次世界大戦が終わったのが昭和20年、日本国憲法の公布が昭和21年、労働基準法の公布が昭和22年です。この当時、「人たるに値する生活」「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉の解釈として、経済的な側面が中心になったのは当然のことでしょう。

 

<働き方改革との関係>

過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調といった問題がクローズアップされ、過重労働や長時間労働の予防が急務となっています。

割増賃金さえきちんと支払えば、企業が労働者をどれだけ働かせても問題ないとは考えられない時代になりました。長時間労働は解消されなければなりません。

しかし残業手当が減って、労働者の賃金の時間単価が減ったのでは、労働基準法第1条第2項が労働関係の当事者に「労働条件を低下させてはならない」と命じていることに違反してしまいます。この条文は、労働関係の当事者である使用者と労働者の両方に、労働条件の向上を図るように努めなさいと言っているのですから、労使で話し合って、労働時間を減少させつつ売上や利益が減少しないように工夫することが求められています。

このように、労働基準法第1条の「人たるに値する生活」「労働条件」の意味合いは、経済的な側面だけでなく、社会的な側面や健康的な側面に拡大されてきたとみることができるでしょう。

 

2019.01.02.解決社労士

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

 

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<姑息(こそく)な手段>

従業員に年次有給休暇を取得させていなかった企業は対応に困ります。

これまで、お盆休みや年末年始休みとしていた日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇を取得させようかなどと考えます。

元々の休みである「休日」に「休暇」を取らせることはできないので、こんなことを思いつくわけです。

これは、対象となる従業員の合意があれば、合意した従業員についてのみ可能です。

また、就業規則がある企業なら、一定の条件の下、就業規則の変更により可能です。

ただし、「本心による合意ではなかった」「不合理な変更だった」などと民事訴訟を提起される恐れはあります。

こうしたことは、後掲の労働契約法8条から10条に定められています。

 

<働き方改革の趣旨>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「従業員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。

働き方改革の手段は、従業員の満足度を高めるものであることが必要です。

 

<趣旨に反する対応の結果>

「来年度から、各企業には年次有給休暇を取得させる義務が課される」

このことは、ニュースや口コミで多くの従業員が知っています。

この期待に反して、元々の休日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇をあてるような対応をすれば、従業員は「うちの会社らしい対応だ」「あの社長ならやると思った」など不満たらたらです。

労働意欲や会社への帰属意識は低下し、労働生産性が下がることは目に見えています。

これは、働き方改革の目的に反する結果が生じることになるわけです。

やはり真面目に働き方改革に取り組むべきでしょう。

 

【参考】労働契約法

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

2018.12.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<ガイドライン>

平成30(2018)年11月6日、厚生労働省、国土交通省、全日本トラック協会がガイドラインを公表しました。

これは、トラック事業者と荷主が連携して実施した、トラック運送事業における荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化など長時間労働の抑制を図るためのパイロット事業の成果を取りまとめたものです。

 

<改善のステップ>

取引環境と長時間労働の改善に向けた取組みの手順が、7つのステップで示されています。

 

【ステップ1】荷主企業と運送事業者の双方で、ドライバーの労働条件改善の問題意識を共有し、検討の場を設ける

● 荷主とトラック運送事業者が意見交換できる場(可能であれば 関係者が同席する会議体)を設置する

● 問題意識の共有のため、定期的な意見交換を実施する

 

【ステップ2】労働時間、特に荷待ち時間の実態を把握する

● 労働時間、特に荷待ち時間や荷役時間を正確に把握する方法を 検討する

● 時間管理のためのツールの導入を検討する

 

【ステップ3】荷待ち時間の発生等、長時間労働になっている原因を検討、把握する

● 発荷主の生産・出荷スケジュールや附帯作業などを検証する

● トラック運送事業者の運行計画、配車計画などを検証する

● 着荷主の受け入れ体制や附帯作業などを検証する

 

【ステップ4】荷主企業、運送事業者の双方で、業務内容を見直し改善に取り組む

● 把握、検証した長時間労働の原因について関係者間で協議する

● 荷主、トラック運送事業者それぞれができることを検討する

 

【ステップ5】荷主、トラック運送事業者間での応分の費用負担を検討する

● 作業効率化のために必要な機器やソフトウェアの導入、作業手 順の見直し等を検討する

● 関係者間で応分の費用負担を検討する

 

【ステップ6】改善の成果を測定するための指標を設定する

● 改善効果を測るための数値目標を設定する

● 問題点と改善に向けた意識を関係者間で共有する

 

【ステップ7】指標の達成状況を確認、評価することでさらなる改善に取り組む

● 設定した数値目標を定期的にモニタリングする

● 数値目標の達成度合いについて関係者間で共有する

 

<改善に向けた対応>

次の項目について、改善に向けた具体的な対応の内容が示されています。

 

 1 予約受付システムの導入
 2 パレット等の活用
 3 発荷主からの入出荷情報等の事前提供
 4 幹線輸送部分と集荷配送部分の分離
 5 集荷先や配送先の集約
 6 運転以外の作業部分の分離
 7 出荷に合わせた生産・荷造り等
 8 荷主側の施設面の改善
 9 十分なリードタイムの確保による安定した輸送の確保
10 高速道路の利用
11 混雑時を避けた配送
12 発注量の平準化
13 モーダルシフト(フェリーなどの内航海運や鉄道の利用への切替え)

 

荷主さんの協力が無ければ改善は進みません。このガイドラインは、自社の改善目標を提示し、荷主さんに協力を依頼する内容を明らかにするために役立つでしょう。

 

2018.11.15.解決社労士

<消えない誤解>

「部長や課長は管理監督者だから、労働基準法41条によると残業手当や休日手当は付かないし、休憩時間も要らないわけで、タイムカードも要らないわけだ」

こんな誤解がいまだに解けないのは何故でしょう。

 

<魔法のことば>

「管理監督者」には2つの意味があります。

 

【2つある管理監督者の意味】

法 令

分 野

管理監督者の意味

労働基準法など

労働条件、労務管理 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者

労働安全衛生法など

メンタルヘルスを含む健康管理、安全、衛生 職場環境や部下の健康、労働安全、労働衛生に配慮すべき管理職

 

ネットでは「管理監督者」で、次のようなものが検索されます。

・労働基準法における 管理監督者の範囲の適正化のために – 厚生労働省

・しっかりマスター労働基準法 管理監督者編 – 東京労働局

・「管理監督者」 – 確かめよう労働条件 – 厚生労働省

・「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A – 厚生労働省

これらは、主に労働基準法の解釈に関することが書かれています。

 

ところが、「管理監督者研修」では、次のようなものが検索されます。

・心の健康づくりの研修のために (管理監督者編) – 人事院

・メンタルヘルス対策って、 具体的には何するの? – 愛知県

・管理監督者・職場リーダーのためのラインケアセミナー – 東京労働基準協会

これらの中で「管理監督者」は、労働基準法の規定とは無関係に、「管理職」という意味で使われています。

後ろに「研修」を加えただけで、「管理監督者」の意味が違ってくるのは面白いですね。

 

<使い分け>

「管理監督者」について規定しているのは、労働基準法41条2号の条文です。

 

【労働時間等に関する規定の適用除外】

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

この中の「監督若しくは管理の地位にある者」というのが、「管理監督者」の語源です。

 

一方、労働安全衛生法は、労働者の安全・衛生を管理する者として、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等について定めています。

しかし、職場における労働者の安全と健康について第一に責任を負っているのは事業者とされています。

労働安全衛生法には、次の規定があります。

 

【事業者等の責務】

第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 

ここで、事業者とは誰かというと、会社であれば会社そのものです。

実際には、経営者の他、経営者から権限を与えられ責任を負わされる管理職が、事業者である会社の手足となって労働者の安全と健康の確保に努めるわけです。

 

こちらの方は、素直に「管理職」と表現するのが良いと思います。

 

結局、労働基準法41条の厳しい条件を満たすような取締役に準ずる労働者に限定して「管理監督者」と呼び、その他の部長や課長などは「管理職」と呼んで混乱を避けるようにしてはいかがでしょうか。

 

2018.11.05.解決社労士

<労働契約の成立条件>

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、労働条件通知書を交付しなくても、労働契約そのものの効力には影響しません。〔民法623条〕

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし、労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は使用者から労働者に書面で通知する必要があります。〔労働基準法15条1項〕

これを怠ると、1人につき30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法120条〕

 

【書面による通知義務がある事項】

1. 労働契約の期間2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、パートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

労働条件のうち次の事項は、書面によらず口頭で通知しても良い事項です。とはいえ、トラブルが発生すれば、言った/言わないの争いとなりやすいわけですから、何らかの証拠を残しておく必要はあります。

 

【口頭による通知義務がある事項】

1. 昇給に関する事項2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

 

これらの事項は労働条件通知書に漏れていても大丈夫です。ただし、パートタイマー(短時間労働者)については、1.~3.の事項がパートタイム労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<労働条件のメールによる通知>

厚生労働省は労働基準法に基づく省令を改正して、平成31(2019)年4月からは、書面に代えて電子メールやファクスなどによる労働条件の通知を可能にする予定です。

ただし、これは希望した労働者だけに限った措置とされ、労働者が電子メールなどでの受け取りを拒む場合には、これまで通り書面で交付する必要があります。

労働者からの希望があったという証拠を残しておかずに、電子メールによる労働条件通知を行った場合、これもまた言った/言わないの争いとなりやすいわけですから、何らかの証拠を残しておく必要があります。

 

2018.10.22.解決社労士

<不幸な「名ばかり管理監督者」>

残業手当、休日出勤手当といった時間外割増賃金を支給されない役職者が多数います。

その根拠とされるのが次の条文です。

 

【労働基準法41条】

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

この「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するのはどのような人なのか、労働基準法の中には説明がありません。

会社の中で素人的にイメージされるのは、何となく「役職者」「管理職」でしょうか。

このように解釈すれば、新入社員であれ誰であれ、役職さえ付けて管理職扱いにすれば、残業手当などを支給しなくても構わないことになりますから、会社にとっては都合の良い解釈です。

小さな企業の中では、正社員の全員にリーダー、チーフ、班長など、手頃な役職名を付けて、割増賃金を支給しないという現象も見られました。

最近でも、「管理職」には残業手当を支給しないこととしている大企業や大手グループ企業について、その違法性を指摘するニュースが流れています。

 

実は、労働基準法の中には、「役職者」「管理職」という用語が1回も登場しません。

これひとつを取ってみても、「役職者」「管理職」を「監督若しくは管理の地位にある者」と解釈することには無理があります。

 

<「監督若しくは管理の地位にある者」の条件>

管理監督者と認められるためには、次の3つの条件が、すべて満たされていなければなりません。

 

【管理監督者の条件】

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること。つまり、大きな権限を与えられていて、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要が無い立場にあること。

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと。つまり、出退勤時間が自らの裁量に任されていること。遅刻や早退をしたら、給料や賞与が減らされるような立場では、管理監督者とはいえません。

・その地位にふさわしい待遇がなされていること。つまり、一般社員と比較して一段上の待遇がなされていること。部下が長時間労働をすると、あるいは高い評価を得ると、年収が逆転しうるのでは管理監督者とはいえません。

 

イメージとしては、あと一歩で取締役という立場にあり、強い権限を持っている人が本当の管理監督者です。

責任ばかりが重くて、権限が与えられていないような社員は、管理監督者であるはずがありません。

 

2018.10.21.解決社労士

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