労働基準法の記事

<同居の親族のみを使用する事業>

同居の親族のみを使用する事業には、労基法が適用されません。

同居は、同一の家屋に住んでいるだけではなく、実質的に生計を一にしているか否かで判断されます。

同居の親族ではない人を1人でも雇用すれば、労基法が適用されます。

しかもこの場合、同居の親族であっても、働き方の実態が同居の親族ではない人と同様であれば、労働者と解されることがあり、労基法が適用されます。

 

<家事使用人>

家事使用人には労基法が適用されません。

家事使用人であるかどうかは、従事する作業の種類・性質などを踏まえて、具体的にその人の働き方の実態により決定されます。

会社に雇われていても、その役職員の家庭で、その家族の指揮命令のもとで家事一般に従事している人は、家事使用人に当たります。

家政婦紹介所や家事サービス代行会社などに雇われて、各家庭をまわり家事を行う場合には、行った先の家庭の人の指示は受けないので、家事使用人には当たりません。

個人開業医の見習看護師、旅館の女性従業員、個人事業の見習・内弟子などが「家事に従事する」あるいは「事業を手伝う」などの場合は、「本来の業務は何か」によって判断されます。

 

<国外や外国企業の労働者>

商社・銀行等の国外支店・出張所などの労働者には、労基法が適用されません。労基法は行政取締法規であり、国内にある事業にのみ適用されます。

国外の作業場が事業としての実態を備えている場合にも、労基法は適用されません。

しかし、国外の作業場が独立した事業としての実態がなく、国内の業者の指揮下にある場合には、国外の事業も含めて労基法が適用されます。

ただし、現地にいて労基法違反を犯した者は処罰の対象とはならず、国内の使用者に責任がある場合にはその者が処罰の対象となります

海外出張者については、労基法が適用されます。

 

<外国人、外国人が経営する会社、外国籍の会社>

外国人であっても日本の国内の事業場で働く労働者であれば、労基法は全面的に適用されます。

外国人が経営する会社、外国籍の会社であっても日本国内に所在する事業場であれば労基法が適用されます。

 

2019.04.24. 解決社労士 柳田 恵一

<民法の適用>

労働契約も契約の一種ですから、原則として民法が適用されます。

この民法には、任意規定と強行規定が混在していて、その区分は条文に明記されていないことが多いので、最高裁の判例などで確認しなければなりません。判例が無ければ、学者の学説などを参考にして判断することになります。

任意規定というのは、法令に規定があっても当事者がそれに反する意思表示をすれば、法令の規定よりも当事者の意思表示が優先されるものをいいます。当事者が何も意思表示をしない場合でも、任意規定が適用されることによって、契約の内容が補充されます。

強行規定というのは、法令の規定のうちで,当事者の意思にかかわりなく適用される規定をいいます。当事者が強行規定とは別の意思表示をしても、それは無効とされ、自動的に強行規定の内容に修正されます。

結局優先順位は、任意規定 < 契約など当事者の合意 < 強行規定 となります。

つまり、従業員から承諾する旨の一筆をもらったとしても、強行規定に反する内容であれば、無効になってしまうということです。

 

<労働基準法の適用>

労働基準法には「労働者の保護」という確固たる目的があり、この目的を確実に果たすため、その規定は原則として強行規定です。

民法とダブって規定されている内容については、特別法である労働基準法が、一般法である民法に優先して適用されます。

ですから、労働基準法に反する内容について、労働者から一筆もらっても効力がありません。

 

<憲法の趣旨の適用>

憲法は国の最高法規です。〔日本国憲法第98条第1項〕

ですから、この憲法に反する法令などは効力がありません。

憲法は、基本的には国家に対する命令ですから、国民に直接適用されるわけではありませんが、その趣旨は、私人間の契約にも効果が及ぶものと解されています。

そのため、職業選択の自由〔日本国憲法第22条第1項〕を侵害するような契約は、その効力を否定されます。

たとえば、一定の期間退職を禁止する、退職にあたって違約金の支払いを必要とする、退職後にライバル企業に転職することを禁止するといったことは、職業選択の自由を侵害しますから、基本的には、たとえ労働者が合意しても、憲法の趣旨に反して無効となります。

会社としては、退職する従業員から念のため一筆もらっておいても、無効となることが大半なのです。

最高裁の判例でも、ライバル企業への転職の制限について、期間とエリアを限定し、しかも、十分な経済的代償措置を取った場合に限り、労働者の合意が有効だと判断しています。

 

<合意の有効性>

労使関係では、たとえ労働者が合意していても、その合意が無効となってしまうケースは意外と多いものです。

「本人が同意すれば大丈夫」というのは、ありがちな素人考えです。

社員から一筆もらう場合には、よくよくその効力を確認したうえで行いましょう。

 

2019.04.11.解決社労士

【労働基準法39条1項】

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

 

全労働日は、その期間の所定労働日数の合計です。

出勤日を予め決めておかず、出られるときに出てもらうなどしていると、全労働日が計算できないので、「八割以上出勤」したかどうか分からなくなります。

この場合には、従業員全員が「八割以上出勤」したことにすれば、労働基準法に違反しません。

 

【労働基準法39条2項】

使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。

 

【図表1】週5以上勤務または週4勤務で30時間以上勤務

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

【労働基準法39条3項】

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者

二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

 

所定労働日数が週4日で所定労働時間が週30時間未満の場合と、所定労働日数が週4日未満(週3日以下)の場合には、次の計算により付与日数が決まります。

 

上の表の付与日数 × 1週間の所定労働日数 ÷ 5.2

 

※1日未満の端数は切り捨てです。

 

所定労働日数に比例して付与されるので、「比例付与」と呼ばれています。

計算結果は、次の表のようになります。

 

【図表2】比例付与

週所定

労働日数

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年6月 2年6月 3年6月 4年6月 5年6月 6年6月以上

5日

217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日

169日から

216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日

121日から

168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日

73日から

120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日

48日から

72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

週により所定労働日数にバラツキがある場合には、年間所定労働日数(1年あたりの所定労働日数)で計算します。

 

【労働基準法39条4項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第一号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第二号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。一 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲

二 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(五日以内に限る。)

三 その他厚生労働省令で定める事項

 

年次有給休暇の取得は1日単位が本来の形です。

たとえば、子供の学校行事に参加したい、病院に行きたいなどの場合に、丸々1日休むのではなくて、必要な時間だけ休むというのでは、ゆっくりと休めません。

ただ、場合によっては年次有給休暇を、何回かに分けて取得した方が便利なこともあります。

そこで、労働者と使用者とで話し合って協定を交わせば、時間単位の年次有給休暇を取れるルールにできることになっています。

労働者と使用者とで話し合って交わした協定は、「労使協定」と呼ばれます。

 

【労働基準法39条5項】

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

 

「時季」というのは、長期間連続して年次有給休暇を取得する場合の表現のようです。1日だけであれば、「その日」という意味です。

「事業の正常な運営を妨げる場合」というのは、厳しく限定して解釈されています。

「人手が足りないからダメ」というわけにはいきません。年次有給休暇は労働基準法で定められた全国共通のものですから、使用者は全従業員が年次有給休暇を100%取得することを想定して、人員体制を整えておくことが求められています。

この厳格な前提に立ったうえで、なお想定外の事情が発生してしまい、どうしても事業の正常な運営ができなくなる場合には、別の日に年次有給休暇を取得させることができます。

 

【労働基準法39条6項】

使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第一項から第三項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち五日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。

 

労使協定を交わせば、予め取得日を決めておくことができます。

ただ、全員一斉に休暇とする場合、年次有給休暇が付与されていない従業員を欠勤扱いにして無給とするわけにはいきません。一般には、有給の特別休暇を与えるなどの配慮がされています。

 

【労働基準法39条7項】

使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。

 

年次有給休暇を取得した場合には、賃金が支払われます。年次有給休暇を取得したことによって、賃金が減ったのでは、年次有給休暇の仕組みを作った意味がありません。

具体的な計算方法については、就業規則などで定めることになります。計算方法は、この条文にいくつか示されていますので、このうちどれかを決めて定めることになります。

ですから、「労働基準法の定めるところによる」というわけにはいきません。

 

【労働基準法39条8項】

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

全労働日の八割以上出勤」か「全労働日の八割未満」かを判断する場合の話です。

法律により、労働者が休む権利を与えられている日は、休んでも出勤したものとして計算します。

労災で休んだ場合には、業務災害であれば出勤扱いになりますが、通勤災害であれば出勤扱いにはなりません。業務災害は勤務が原因の労災、通勤災害は通勤が原因の労災です。

 

2019.04.04.解決社労士

<休日>

労働基準法には、休日について次の規定があります。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

○2 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

 

つまり、日曜日から土曜日までの1週間で1日の休日を与えるか、4週間ごとに4日の休日を与えればよいということになります。

正社員、パート、アルバイトなどの区分にかかわらず、週6日勤務は違法ではありません。

 

<労働時間>

一方で、労働基準法には、労働時間について次の規定があります。

 

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。

○2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

つまり、労働時間には上限があって、日曜日から土曜日までの1週間で40時間、1日について8時間が限界ということになります。

 

労働時間とは、「労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」と定義されます。

これは、会社ごとに就業規則で決まったり、個人ごとに労働契約で決まったりするのではなく、客観的に決められている定義です。

 

週6日勤務の場合でも、1日6時間の勤務であれば、週36時間の勤務になりますから適法です。1日6時間40分であれば、6日間でちょうど40時間です。

また、週のうち5日は7時間勤務、1日は5時間勤務とすれば、週40時間の勤務になりますから、これも適法ということになります。

 

<特例事業場の例外>

事業場の規模が10人未満の、次の業種は、1週 44 時間、1日 8 時間となります。〔労働基準法第40条〕

この事業場を「特例事業場」といいます。

 

【特例事業場】

商業(卸小売業、理美容業など)

映画演劇業(映画の製作の事業を除く)

保健衛生業(診療所、歯科医院、社会福祉施設など)

接客娯楽業(旅館、飲食店など)

 

<職種による例外>

次の職種は、労働時間のほか、休憩、休日に関する労働基準法の規定は適用されません。

 

農業、畜産業、水産業従事者

管理監督者(イメージとしては取締役に近い仕事をしています)

機密の事務を取り扱う者(秘書など)

監視断続的労働、宿日直勤務を行う者で、労働基準監督署長の許可を受けた者

 

<三六(さぶろく)協定による例外>

労使の合意に基づく手続きによって、週40(44)時間を超える勤務を可能にしたり、例外的に週7日勤務する場合があるという取り決めをしたりすることができます。

労働基準法第36条第1項に規定があるので、三六協定と呼ばれます。

 

【労働基準法第36条第1項】

第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

 

この法定の手続きを取らずに残業させると、「違法残業」となります。

三六協定には最長でも1年間の有効期限があります。

期限切れの状態で残業が発生しても「違法残業」です。

もちろん、三六協定の上限を超える残業も違法です。

 

<年次有給休暇>

年次有給休暇の付与日数は、1週間の所定労働日数、1週間の所定労働時間、勤続年数によって決まります。

これを示す表には、週6日の欄が書かれていないこともありますが、週6日勤務の労働者には、週5日の欄が適用されます。

 

<就業規則にも注意>

パートやアルバイトに適用される就業規則に、「週5日までの勤務」という規定がある場合には、これによる制限を受けますから週6日勤務はできません。

会社として必要ならば、法定の手続きを経て、就業規則を変更する必要があります。

 

<働き方改革との関係>

働き方改革の本質は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革に関する現在までの動向をもとに考えると、その本質は「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」といえるでしょう。

それぞれの企業にとっては、「働き方の効率と社員の向上心を高めて、企業の利益を伸ばす改革」ともいえます。

中小企業であっても、従業員の希望を少し叶えて、会社の利益を伸ばす作戦であることを納得し、積極的に働き方改革に取り組まなければなりません。

 

会社からの強制で週6日勤務にすることは、働き方改革とは逆の方向に進むことになります。

しかし、労働者側の都合で週6日勤務を希望し、会社がこれを認める形ならば働き方改革の推進になります。

子育て中で朝遅めの出勤、夕方早めの退勤の方が、都合が良いという人もいます。

家が近くて出勤が苦にならないとか、満員電車を避けて通勤したいとか、1日の勤務時間が短いパート・アルバイトなので勤務日数を増やしたいとか、様々なニーズに応えるのは働き方改革の流れに沿ったものとなります。

 

2019.03.03.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームでご依頼を受けております。

<所定労働日数についての勘違い>

「所定」は「定まる所」つまり「決めたこと」「決まっていること」ですから、所定労働日数というのは就業規則や労働契約で決められている労働日数です。

月給制の人について、1か月の所定労働日数がある場合、これを下回ったら欠勤控除が必要で、これを上回ったら休日出勤手当が必要だという勘違いが起こりやすいようです。

 

<所定労働日数の意味>

所定労働日数は、月給の時間単価を計算するのに必要です。

月給を月間所定労働時間で割って時間給を計算し、時間外労働1時間当たりの賃金を、時間給 × 1.25などとして計算します。

この場合、月間所定労働時間 = 1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数で計算されるのが一般です。

 

<所定労働日数を決めなくても大丈夫か>

賃金が時間給の場合や、月給制でも労使協定を交わしてフレックスタイム制を使っていれば、賃金計算には困りません。

しかし、所定労働日数が決まっていないと、年次有給休暇の付与日数が決まりません。

 

労働基準法で、年次有給休暇の付与日数は次の【図表1】のとおりです。週所定労働日数が4日以上で、週所定労働時間が30時間以上の場合には、週所定労働日数が5日以上の欄が適用されます。

 

【図表1】

週所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
5日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

4日以上 5日未満

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

3日以上 4日未満

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

2日以上 3日未満

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

1日以上 2日未満

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

 

これは法定の日数ですから、就業規則にこれと異なる規定があれば、労働者に有利である限りそれに従います。

【図表1】の中の週所定労働日数は、一般には「4日」「3日」などと表示されていますが、たとえば「4日」というのは「4日以上5日未満」という意味です。

月間所定労働日数さえ決まっていれば、週所定労働日数は次の計算式で求められます。

週所定労働日数 = 月間所定労働日数 × 12か月 ÷ 52週

こうして求められた週所定労働日数を、【図表1】に当てはめて年次有給休暇の日数を確定することができます。

 

会社によっては、所定労働日数を年間で決めている場合もあります。

この場合、次の【図表2】が用いられます。

 

【図表2】

年間所定

労働日数

勤 続 期 間

6月 1年 6月 2年 6月 3年 6月 4年 6月 5年 6月 6年 6月以上
217日以上

10日

11日

12日

14日

16日

18日

20日

169~216日

7日

8日

9日

10日

12日

13日

15日

121~168日

5日

6日

6日

8日

9日

10日

11日

73~120日

3日

4日

4日

5日

6日

6日

7日

48~72日

1日

2日

2日

2日

3日

3日

3日

所定労働日数を半年間で決めているのなら2倍し、3か月間で決めているのなら4倍すれば良いのです。

 

結論として、所定労働日数が全く決まっていないとすると、年次有給休暇の日数が確定しません。

これでは、平成31(2019)年4月1日から、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになるのに、対応できないので困ったことになってしまいます。

やはり、明確に確定することが求められているのです。

 

2019.01.26.解決社労士

<行動規範の根拠>

平成31(2019)年1月11日、厚生労働省が「労働基準監督官行動規範」を策定し公表しました。

この行動規範は、「労働施策基本方針」(平成30(2018)年12月28日)の、第2章 労働施策に関する基本的な事項 1 労働時間の短縮等の労働環境の整備 (1)長時間労働の是正 の中で示された次の一節に対応するものです。

 

労働基準監督制度の適正かつ公正な運用を確保することにより、監督指導に対する企業の納得性を高め、労働基準法等関係法令の遵守に向けた企業の主体的な取組を効果的に促すこととし、そのための具体的な取組として、監督指導の実施に際し、全ての労働基準監督官がよるべき基本的な行動規範を定めるとともに、重大な違法案件について指導結果を公表する場合の手続をより一層明確化する。

 

この行動規範が策定されたのは、働き方改革を強力に推進するための基盤づくりが目的だと思われます。

以下にその内容を見ていきましょう。枠内は原文をそのまま引用しています。

 

<基本的使命>

私たち労働基準監督機関は、労働条件の最低基準を定める労働基準法や労働安全衛生法等の労働基準関係法令(以下、法令という。)に基づき、働く方の労働条件の確保・改善を図ることで、社会・経済を発展させ、国民の皆さまに貢献することを目指します。

 

働き方改革は、「働き手の不安を解消し満足度を高めるための多面的な施策により、労働生産性( 付加価値額 / 実労働時間 )を向上させる変革」だといえます。

この中の「多面的な施策」は、働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)に示されています。

平成31(2019)年4月1日以降は、現行法の内容に加えて、あるいは現行法に代えて、新法や改正法の適用による労働条件の確保・改善が行われることになります。

この行動規範は、労働基準監督機関が法令に基づいて、労働条件の確保・改善を図るものであることを再確認しています。

 

<法令のわかりやすい説明>

労働基準監督官(以下、監督官という。)は、事業主の方や働く方に、法令の趣旨や内容を十分に理解していただけるよう、できる限りわかりやすい説明に努めます。

 

使用者は法令の周知義務を負っています。〔労働基準法第106条第1項〕

これを助けるため、労働基準監督署などには、事業主向け、労働者向けのパンフレットなどが配置されていて、自由に持ち帰ることができるようになっています。

それでもなお、会社の実情に応じた具体的な理解まではむずかしいですから、労働基準監督官からできる限りわかりやすい説明をしていただけるということです。

 

<事業主の方による自主的改善の促進>

監督官は、法令違反があった場合は、違反の内容や是正の必要性を丁寧に説明することにより、事業主の方による自主的な改善を促します。また、法令違反の是正に取り組む事業主の方の希望に応じ、きめ細やかな情報提供や具体的な取組方法についてのアドバイスなどの支援に努めます。

 

労働基準監督官には、法令違反のあった使用者を逮捕し送検する権限が与えられています。〔労働基準法第102条〕

しかし、法令違反を発見した場合でも、すぐにこうした手続きに入るのではなく、まず事業主に自主的な改善を促します。

さらに、どうしたら違法状態を解消できるかについて、労働基準監督官が具体的なアドバイスをしてくれます。

 

<公平・公正かつ斉一的な対応>

監督官は、事業主の方や働く方の御事情を正確に把握し、かつ、これを的確に考慮しつつ、法令に基づく職務を公平・公正かつ斉一的に遂行します。

 

労働基準監督官の職務遂行には、公正であることが求められます。

法令に基づき、画一的な扱いをすべきところは、平等の理念に従い斉一的に行い、また、具体的な事情の違いに配慮すべきところは、公平の理念に従い妥当な結果を導けるように対応します。

 

<中小企業等の事情に配慮した対応>

監督官は、中小企業等の事業主の方に対しては、その法令に関する知識や労務管理体制の状況を十分に把握、理解しつつ、きめ細やかな相談・支援を通じた法令の趣旨・内容の理解の促進等に努めます。また、中小企業等に法令違反があった場合には、その労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて、事業主の方による自主的な改善を促します。

 

中小企業等の事業主には、法令についての正しい知識や理解が不足しているために、悪意なく法令違反が発生していることもあります。

こうした事情を踏まえて、労働基準監督官は大企業の場合よりも手厚い指導を行います。

ただし「法令遵守では経営が成り立たない」など、働く人の労働条件の確保・改善を正面から否定するような考えに応じることはありません。あくまでも、法令遵守に向けた自主的な改善を促すのが、労働基準監督官の役割です。

 

2019.01.21.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

 

<労働基準局長の通達>

平成30(2018)年12月28日、厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに、働き方改革を推進するための関係法律整備に関する法律による改正後の労働基準法関係の解釈について、指針となる通達が出されました。

フレックスタイム制については、次のような内容となっています。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)と割増賃金との関係>

清算期間が1か月を超える場合、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させたときには、時間外労働が発生するので、三六協定の締結と割増賃金の支払いが必要となります。

こうしたときには、清算期間の途中であっても、それぞれの期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を支払わなければなりません。

 

<時間外・休日労働協定(三六協定)の協定事項 >

フレックスタイム制で三六協定を締結する際、改正後の労働基準法でも、1日について延長できる時間を協定する必要は無く、1か月と1年について協定すればよい。

 

<月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の適用>

清算期間が1か月を超える場合、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間については、清算期間の途中であっても、それぞれの期間に対応した賃金支払い日に割増賃金を支払わなければなりません。

この時間外労働時間が、月60時間を超える場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間については、その最終の期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に加えて、その清算期間の総実労働時間から、①その清算期間の法定労働時間の総枠と②その清算期間中のその他の期間に時間外労働時間として取り扱った時間を控除した時間が、時間外労働時間として算定されます。

この時間外労働時間が、月60時間を超える場合には、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

<改正労働基準法36条6項2号,3号の適用>

 

【改正労働基準法36条6項2号,3号】

6項 使用者は、第1項の協定(三六協定)で定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、 次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。2項 1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間

 100時間未満であること。

3項 対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間

 80時間を超えないこと。

 

清算期間が1か月を超える場合のフレックスタイム制では、清算期間を1か月ごとに区分した各期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に対して、この規定が適用されます。

また、清算期間を1か月ごとに区分した各期間の最終の期間については、その最終の期間を平均して1週間当たり50時間を超えて労働させた時間に加えて、その清算期間の総実労働時間から、①その清算期間の法定労働時間の総枠と②その清算期間中のその他の期間に時間外労働時間として取り扱った時間を控除した時間が、時間外労働時間として算定され、この時間に対してこの規定が適用されます。

 

<留意事項>

フレックスタイム制は、労働者があらかじめ定められた総労働時間の範囲内で始業と終業の時刻を選択し、仕事と生活の調和を図りながら働くための制度であり、長時間の時間外労働を行わせることは、フレックスタイム制の趣旨に合致しないことに留意しなければなりません。

 

2019.01.15.解決社労士

<労働基準法第1条>

労働基準法第1条には、労働条件の原則が定められています。

法令の第1条には、その法令の目的が掲げられていることが多く、この条文も労働基準法全体の目的を示しているとみることができます。

 

【労働条件の原則】

第一条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

この条文を素直に読めば、「人たるに値する生活を営むための必要」というのは、人間らしい生活をするのに必要な収入が得られることを意味しているでしょう。

また、「労働条件を低下させる」というのは、賃金の実質的な時間単価を低下させることを意味するものと考えられます。

このことからすると、時間外労働や休日労働は割増賃金となりますから、労働者が希望して積極的に残業や休日出勤を行い、より多くの賃金を獲得するのは労働基準法第1条と矛盾するものではないでしょう。

ところが、労働基準法は改正され、平成31(2019)年4月1日から一部の事業・業務と中小企業を除いて、残業時間の上限規制が行われます。

生活費を残業手当に頼っていた労働者にとって、この法改正は「労働条件を低下させる」ことにならないのか、「人たるに値する生活を営むための必要」を満たさなくなるのではないかという不安をもたらし兼ねないものです。

 

<憲法との関係>

労働基準法が制定されたのは、日本国憲法第27条第2項の規定を受けてのことです。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

また、労働基準法第1条が「人たるに値する生活」と言っているのは、日本国憲法第25条第1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を受けてのことでしょう。

 

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

第二次世界大戦が終わったのが昭和20年、日本国憲法の公布が昭和21年、労働基準法の公布が昭和22年です。この当時、「人たるに値する生活」「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉の解釈として、経済的な側面が中心になったのは当然のことでしょう。

 

<働き方改革との関係>

過労死、過労自殺、メンタルヘルス不調といった問題がクローズアップされ、過重労働や長時間労働の予防が急務となっています。

割増賃金さえきちんと支払えば、企業が労働者をどれだけ働かせても問題ないとは考えられない時代になりました。長時間労働は解消されなければなりません。

しかし残業手当が減って、労働者の賃金の時間単価が減ったのでは、労働基準法第1条第2項が労働関係の当事者に「労働条件を低下させてはならない」と命じていることに違反してしまいます。この条文は、労働関係の当事者である使用者と労働者の両方に、労働条件の向上を図るように努めなさいと言っているのですから、労使で話し合って、労働時間を減少させつつ売上や利益が減少しないように工夫することが求められています。

このように、労働基準法第1条の「人たるに値する生活」「労働条件」の意味合いは、経済的な側面だけでなく、社会的な側面や健康的な側面に拡大されてきたとみることができるでしょう。

 

2019.01.02.解決社労士

<年次有給休暇を取得させる義務>

年次有給休暇は、労働者の所定労働日数や勤続年数などに応じた法定の日数以上を与えることになっています。

与えるというのは、年次有給休暇を取得する権利を与えるということです。

実際に労働者の方から「この日に年次有給休暇を取得します」という指定が無ければ、使用者の方から積極的に取得させる義務は無いのです。

これが現在の労働基準法の内容です。

ところが、平成31(2019)年4月1日からは、労働者からの申し出が無くても、使用者が積極的に年次有給休暇を取得させる義務を負うことになります。

 

法改正後は、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、年次有給休暇のうち5日については、基準日から1年以内の期間に労働者ごとにその取得日を指定しなければなりません。

これには例外があって、労働者の方から取得日を指定した日数と、労使協定によって計画的付与がされた日数は、年5日から差し引かれます。

つまり、基準日から次の基準日の前日までの1年間で、年次有給休暇の取得について、次の3つの合計が5日以上となる必要があります。

 

・労働者からの取得日の指定があって取得した年次有給休暇の日数

・労使協定により計画的付与が行われた年次有給休暇の日数

・使用者が取得日を指定して取得させた年次有給休暇の日数

 

<姑息(こそく)な手段>

従業員に年次有給休暇を取得させていなかった企業は対応に困ります。

これまで、お盆休みや年末年始休みとしていた日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇を取得させようかなどと考えます。

元々の休みである「休日」に「休暇」を取らせることはできないので、こんなことを思いつくわけです。

これは、対象となる従業員の合意があれば、合意した従業員についてのみ可能です。

また、就業規則がある企業なら、一定の条件の下、就業規則の変更により可能です。

ただし、「本心による合意ではなかった」「不合理な変更だった」などと民事訴訟を提起される恐れはあります。

こうしたことは、後掲の労働契約法8条から10条に定められています。

 

<働き方改革の趣旨>

働き方改革の定義は、必ずしも明確ではありません。

しかし、働き方改革実現会議の議事録や、厚生労働省から発表されている数多くの資料をもとに考えると「従業員満足度向上により、労働意欲と健康状態を回復させて、労働生産性を高める急速かつ多面的な施策」といえるでしょう。

働き方改革の手段は、従業員の満足度を高めるものであることが必要です。

 

<趣旨に反する対応の結果>

「来年度から、各企業には年次有給休暇を取得させる義務が課される」

このことは、ニュースや口コミで多くの従業員が知っています。

この期待に反して、元々の休日を出勤日に変更し、これらの日に年次有給休暇をあてるような対応をすれば、従業員は「うちの会社らしい対応だ」「あの社長ならやると思った」など不満たらたらです。

労働意欲や会社への帰属意識は低下し、労働生産性が下がることは目に見えています。

これは、働き方改革の目的に反する結果が生じることになるわけです。

やはり真面目に働き方改革に取り組むべきでしょう。

 

【参考】労働契約法

(労働契約の内容の変更)

第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

 

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

 

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 

2018.12.05.解決社労士

東京都社会保険労務士会 武蔵野統括支部 働き方改革研究会 代表

大きな案件や専門性の高い業務は、30名を擁する働き方改革研究会の選抜チームで受任しております。

<ガイドライン>

平成30(2018)年11月6日、厚生労働省、国土交通省、全日本トラック協会がガイドラインを公表しました。

これは、トラック事業者と荷主が連携して実施した、トラック運送事業における荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化など長時間労働の抑制を図るためのパイロット事業の成果を取りまとめたものです。

 

<改善のステップ>

取引環境と長時間労働の改善に向けた取組みの手順が、7つのステップで示されています。

 

【ステップ1】荷主企業と運送事業者の双方で、ドライバーの労働条件改善の問題意識を共有し、検討の場を設ける

● 荷主とトラック運送事業者が意見交換できる場(可能であれば 関係者が同席する会議体)を設置する

● 問題意識の共有のため、定期的な意見交換を実施する

 

【ステップ2】労働時間、特に荷待ち時間の実態を把握する

● 労働時間、特に荷待ち時間や荷役時間を正確に把握する方法を 検討する

● 時間管理のためのツールの導入を検討する

 

【ステップ3】荷待ち時間の発生等、長時間労働になっている原因を検討、把握する

● 発荷主の生産・出荷スケジュールや附帯作業などを検証する

● トラック運送事業者の運行計画、配車計画などを検証する

● 着荷主の受け入れ体制や附帯作業などを検証する

 

【ステップ4】荷主企業、運送事業者の双方で、業務内容を見直し改善に取り組む

● 把握、検証した長時間労働の原因について関係者間で協議する

● 荷主、トラック運送事業者それぞれができることを検討する

 

【ステップ5】荷主、トラック運送事業者間での応分の費用負担を検討する

● 作業効率化のために必要な機器やソフトウェアの導入、作業手 順の見直し等を検討する

● 関係者間で応分の費用負担を検討する

 

【ステップ6】改善の成果を測定するための指標を設定する

● 改善効果を測るための数値目標を設定する

● 問題点と改善に向けた意識を関係者間で共有する

 

【ステップ7】指標の達成状況を確認、評価することでさらなる改善に取り組む

● 設定した数値目標を定期的にモニタリングする

● 数値目標の達成度合いについて関係者間で共有する

 

<改善に向けた対応>

次の項目について、改善に向けた具体的な対応の内容が示されています。

 

 1 予約受付システムの導入
 2 パレット等の活用
 3 発荷主からの入出荷情報等の事前提供
 4 幹線輸送部分と集荷配送部分の分離
 5 集荷先や配送先の集約
 6 運転以外の作業部分の分離
 7 出荷に合わせた生産・荷造り等
 8 荷主側の施設面の改善
 9 十分なリードタイムの確保による安定した輸送の確保
10 高速道路の利用
11 混雑時を避けた配送
12 発注量の平準化
13 モーダルシフト(フェリーなどの内航海運や鉄道の利用への切替え)

 

荷主さんの協力が無ければ改善は進みません。このガイドラインは、自社の改善目標を提示し、荷主さんに協力を依頼する内容を明らかにするために役立つでしょう。

 

2018.11.15.解決社労士

<消えない誤解>

「部長や課長は管理監督者だから、労働基準法41条によると残業手当や休日手当は付かないし、休憩時間も要らないわけで、タイムカードも要らないわけだ」

こんな誤解がいまだに解けないのは何故でしょう。

 

<魔法のことば>

「管理監督者」には2つの意味があります。

 

【2つある管理監督者の意味】

法 令

分 野

管理監督者の意味

労働基準法など

労働条件、労務管理 労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者

労働安全衛生法など

メンタルヘルスを含む健康管理、安全、衛生 職場環境や部下の健康、労働安全、労働衛生に配慮すべき管理職

 

ネットでは「管理監督者」で、次のようなものが検索されます。

・労働基準法における 管理監督者の範囲の適正化のために – 厚生労働省

・しっかりマスター労働基準法 管理監督者編 – 東京労働局

・「管理監督者」 – 確かめよう労働条件 – 厚生労働省

・「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A – 厚生労働省

これらは、主に労働基準法の解釈に関することが書かれています。

 

ところが、「管理監督者研修」では、次のようなものが検索されます。

・心の健康づくりの研修のために (管理監督者編) – 人事院

・メンタルヘルス対策って、 具体的には何するの? – 愛知県

・管理監督者・職場リーダーのためのラインケアセミナー – 東京労働基準協会

これらの中で「管理監督者」は、労働基準法の規定とは無関係に、「管理職」という意味で使われています。

後ろに「研修」を加えただけで、「管理監督者」の意味が違ってくるのは面白いですね。

 

<使い分け>

「管理監督者」について規定しているのは、労働基準法41条2号の条文です。

 

【労働時間等に関する規定の適用除外】

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

 

この中の「監督若しくは管理の地位にある者」というのが、「管理監督者」の語源です。

 

一方、労働安全衛生法は、労働者の安全・衛生を管理する者として、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等について定めています。

しかし、職場における労働者の安全と健康について第一に責任を負っているのは事業者とされています。

労働安全衛生法には、次の規定があります。

 

【事業者等の責務】

第三条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

 

ここで、事業者とは誰かというと、会社であれば会社そのものです。

実際には、経営者の他、経営者から権限を与えられ責任を負わされる管理職が、事業者である会社の手足となって労働者の安全と健康の確保に努めるわけです。

 

こちらの方は、素直に「管理職」と表現するのが良いと思います。

 

結局、労働基準法41条の厳しい条件を満たすような取締役に準ずる労働者に限定して「管理監督者」と呼び、その他の部長や課長などは「管理職」と呼んで混乱を避けるようにしてはいかがでしょうか。

 

2018.11.05.解決社労士

<労働契約の成立条件>

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、労働条件通知書を交付しなくても、労働契約そのものの効力には影響しません。〔民法623条〕

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし、労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は使用者から労働者に書面で通知する必要があります。〔労働基準法15条1項〕

これを怠ると、1人につき30万円以下の罰金という罰則もあります。〔労働基準法120条〕

 

【書面による通知義務がある事項】

1. 労働契約の期間2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、パートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

労働条件のうち次の事項は、書面によらず口頭で通知しても良い事項です。とはいえ、トラブルが発生すれば、言った/言わないの争いとなりやすいわけですから、何らかの証拠を残しておく必要はあります。

 

【口頭による通知義務がある事項】

1. 昇給に関する事項2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

 

これらの事項は労働条件通知書に漏れていても大丈夫です。ただし、パートタイマー(短時間労働者)については、1.~3.の事項がパートタイム労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<労働条件のメールによる通知>

厚生労働省は労働基準法に基づく省令を改正して、平成31(2019)年4月からは、書面に代えて電子メールやファクスなどによる労働条件の通知を可能にする予定です。

ただし、これは希望した労働者だけに限った措置とされ、労働者が電子メールなどでの受け取りを拒む場合には、これまで通り書面で交付する必要があります。

労働者からの希望があったという証拠を残しておかずに、電子メールによる労働条件通知を行った場合、これもまた言った/言わないの争いとなりやすいわけですから、何らかの証拠を残しておく必要があります。

 

2018.10.22.解決社労士

<不幸な「名ばかり管理監督者」>

残業手当、休日出勤手当といった時間外割増賃金を支給されない役職者が多数います。

その根拠とされるのが次の条文です。

 

【労働基準法41条】

この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

この「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するのはどのような人なのか、労働基準法の中には説明がありません。

会社の中で素人的にイメージされるのは、何となく「役職者」「管理職」でしょうか。

このように解釈すれば、新入社員であれ誰であれ、役職さえ付けて管理職扱いにすれば、残業手当などを支給しなくても構わないことになりますから、会社にとっては都合の良い解釈です。

小さな企業の中では、正社員の全員にリーダー、チーフ、班長など、手頃な役職名を付けて、割増賃金を支給しないという現象も見られました。

最近でも、「管理職」には残業手当を支給しないこととしている大企業や大手グループ企業について、その違法性を指摘するニュースが流れています。

 

実は、労働基準法の中には、「役職者」「管理職」という用語が1回も登場しません。

これひとつを取ってみても、「役職者」「管理職」を「監督若しくは管理の地位にある者」と解釈することには無理があります。

 

<「監督若しくは管理の地位にある者」の条件>

管理監督者と認められるためには、次の3つの条件が、すべて満たされていなければなりません。

 

【管理監督者の条件】

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること。つまり、大きな権限を与えられていて、多くの事案について上司に決裁を仰ぐ必要が無い立場にあること。

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと。つまり、出退勤時間が自らの裁量に任されていること。遅刻や早退をしたら、給料や賞与が減らされるような立場では、管理監督者とはいえません。

・その地位にふさわしい待遇がなされていること。つまり、一般社員と比較して一段上の待遇がなされていること。部下が長時間労働をすると、あるいは高い評価を得ると、年収が逆転しうるのでは管理監督者とはいえません。

 

イメージとしては、あと一歩で取締役という立場にあり、強い権限を持っている人が本当の管理監督者です。

責任ばかりが重くて、権限が与えられていないような社員は、管理監督者であるはずがありません。

 

2018.10.21.解決社労士

<みなし規定の効果>

法令の中に「みなす」「推定する」という言葉が使われています。

日常会話の中では厳密に区別されませんが、条文の解釈としては大きな違いが出てきます。

「みなす」という表現が使われている規定は、「みなし規定」と呼ばれます。

ある事実があった場合に、一定の法的効果を認めるという規定です。

その事実さえあれば、自動的に法的効果が発生します。

「例外的な事情があって法的効果を否定したい」と考えて証拠を集めても、法的効果を否定することができません。

「推定する」という表現が使われている「推定規定」であれば、実際はその推定が不合理であることを証明して、法的効果の発生を阻止することができるのですが、「みなし規定」では覆すことができないのです。

 

<労働法とみなし規定>

労働法では、主に労働者を保護するために「みなし規定」が置かれています。

たとえば、労働基準法38条2項には次の規定があります。

 

坑内労働については、労働者が坑口に入つた時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。

 

つまり、賃金を計算するときには、労働者が坑口に入った時刻から坑口を出た時刻までのすべての時間を労働時間として計算しなければなりません。

たとえ、1日2時間の休憩時間を設けていたとしても、休憩が無かったものとして計算します。

日当を設定する場合には、1時間あたりの最低賃金に、このルールで計算した労働時間をかけ合わせて、最低賃金法違反にならないかチェックする必要があります。

 

また、年次有給休暇の付与基準である出勤率について、労働基準法39条8項は次の規定を置いています。

 

労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第一号に規定する育児休業又は同条第二号に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

 

つまり、法律によって休業することが認められた日については、すべて出勤したものとみなして出勤率を計算することになります。

 

労働契約法にも、有期労働契約の無期転換(18条1項)と更新(19条)に「みなす」という規定があります。

 

「常識的に見て」「実際には」などの理由で法的効果を否定できないところに、みなし規定の怖さがあります。

 

2018.09.10.解決社労士

<法定三帳簿>

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿等は、会社に備えておかなければならない重要な書類として「法定三帳簿」と呼ばれます。

会社は、1人でも雇えば、これらの書類を作らなければなりません。

「出勤簿等」と言っているのは、始業時刻・終業時刻を記した出勤簿に代えてタイムカードなど別の記録でもか構わないからです。

これらには、法律に定められた事項を記入し、3年間保管しておくことが義務づけられています。〔労働基準法107~109条〕

なお、民法が改正され施行を待つばかりとなっていますが、民法の規定に合わせて労働基準法が改正されれば5年間の保管が義務付けられるようになります。

これを怠っている会社は、「適法ではない」ということになります。

 

<労働者名簿の項目>

労働者氏名、生年月日、履歴、性別、住所、従事する業務の種類、雇い入れ年月日、退職・死亡年月日と理由・原因です。

人事異動があれば、ここに記録されます。

本籍やマイナンバーはこれらの項目に含まれていません。

 

<賃金台帳の項目>

労働者氏名、性別、賃金計算期間、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、基本給、手当の種類と額、控除項目と額です。

ここにもマイナンバーは含まれていません。

 

<出勤簿等の内容>

出勤簿やタイムカード、会社側で記録した始業・終業時刻の書類、残業命令書・報告書、労働者が記録した労働時間報告書などです。

残業は会社の命令によって行うものであり、労働者の勝手な判断で行うものではありません。労働者が勝手に残業しても、残業手当は発生しないのが正しいのです。これを明らかにしておくために、残業命令書が運用されている会社があります。

 

<この他に必要な書類>

法定三帳簿の他に、労働条件通知書、三六協定などの労使協定書、健康診断の結果など、労働法関連の書類だけでも、会社が作成や保管を義務づけられている書類は多数あります。特に健康診断の結果は、保管期間が5年間です。

労働条件通知書を作成・交付しないのは、明らかに違法なのですが、知らない経営者が多いのも事実です。

どうやって労働条件を決めたら良いのか迷うところかあるのなら、社会保険労務士に相談してでも決めなければなりません。

 

<マイナンバーは別管理で>

賃金台帳や労働者名簿などにマイナンバー(個人番号)を記載しておけば便利なように思われます。

しかし、マイナンバーは用途を具体的に限定して収集した個人情報ですから、他の目的で使用することがある帳簿に記載しておくことは、適正な管理とはいえません。別に管理することが求められています。

 

2018.08.16解決社労士

平成30(2018)731日、全国の労働局や労働基準監督署が、平成29年にトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導や送検等の状況について、厚生労働省が取りまとめ公表しました。

厚生労働省では、引き続き、自動車運転者を使用する事業場に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努め、労働基準関係法令違反の疑いがある事業場に対しては監督指導を実施するなど、自動車運転者の適正な労働条件の確保に取り組んでいくそうです。

また、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していくとのことです。

なお、労働基準関係法令違反が認められたのは、監督指導実施事業場のうち84%にあたる4,564事業場に上ります。

 

【平成29年の監督指導・送検の概要】

 

■ 監督指導を実施した事業場は5,436事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは、4,564事業場(84.0%)。また、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)違反が認められたのは、3,516事業場(64.7%)。             

 

■ 主な労働基準関係法令違反事項は、(1)労働時間(58.2%)、(2)割増賃金の支払(21.5%)、(3)休日(4.6%)。

  

■ 主な改善基準告示違反事項は、(1)最大拘束時間(49.1%)、(2)総拘束時間(44.0%)、(3)休息期間(34.0%)。

 

■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは61件。

 

自動車を運転するのが仕事という方々は、本当に運転好きの方が多いですね。

 

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法や改善基準告示とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうにも思えます。

しかし、運転業務を続けたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意をしてしまうかもしれません。たとえ、同意書や誓約書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに書いてありません。その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法272項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

結論として、労働基準法や改善基準告示とは違う条件で働かせてしまうと、会社など使用者が違法行為を行ったことになってしまいます。たとえ自動車運転者が同意しても、望んでいたとしても、送検されることすらあるのです。

 

2018.08.08.解決社労士

<休日出勤にはならない休日の労働>

日曜日や祝日は、カレンダーでは赤い数字で表示されます。

これらは、日常用語としての「休日」にあたります。

しかし、この「休日」に出勤したからといって、必ずしも休日出勤となり割増賃金が発生するというわけではありません。

スーパーマーケットやパチンコ店など店舗での接客業では、日曜日にお客様が多いため、時給が100円プラスされるということがあります。

これは、労働基準法などの規定によるものではなく、従業員の公平やシフトの組みやすさなどを考えて会社が独自に行っているものです。

ですから、時給が100円プラスの日に時間外労働が発生すれば、100円をプラスしたうえで割増賃金を計算しなければなりません。

 

<法定休日の労働>

会社は、社員に少なくとも週1日、または、4週で4日の休日を与えなければなりません。これが、法定休日です。〔労働基準法35条1項、2項〕

週1日の法定休日が与えられる社員が、日曜日から土曜日まで7日間連続で出勤すれば、法定休日の労働時間について、35%以上の割増賃金が発生します。

これが「法定休日出勤手当」です。

この場合に、どの日が法定休日なのか予め就業規則などでルールを決めておかないと、給与を計算するときに困ってしまいます。

就業規則には、従業員が読んでわかりやすい表現で明確に定めておきましょう。

原則として、法定休日出勤手当は勤務時間分の手当を支給するのですが、1時間の勤務でも丸々 1日の所定労働時間分支給している会社もあります。

これは、労働基準法の基準を上回る支給ですから、全従業員一律の基準で支給していれば問題ありません。

 

<所定休日の労働>

週休2日制で、毎週日曜日が法定休日、木曜日がもう1日の休日という場合、この木曜日は「所定休日」になります。

この場合、仕事の都合で止むを得ず木曜日に出勤すれば、この日の出勤は所定休日の労働となります。

所定休日の労働は、8時間を超えなければ、必ずしも時間外割増賃金の対象とはなりません。

しかし、原則として週40時間を超える労働となった時間は、通常の残業同様に25%以上の割増賃金となります。

これが「所定休日出勤手当」です。

 

2018.07.30.解決社労士

平成30(2018)年6月29日、「アート引越センター」で知られる「アートコーポレーション」が18歳未満のアルバイトを深夜に働かせたとして、会社と従業員4人が書類送検されました。

高校生アルバイトなど満18歳を迎えるまでは、労働条件について注意すべき法令の制限が多数あります。

たとえアルバイト本人やその親が承諾しても、違反することに対する承諾は無効です。罰則もあります。

 

<高校生の時給>

最低賃金法の制限があります。高校生でも同じ最低賃金です。

試用期間でも最低賃金を下回ることはできません。例外的に都道府県労働局長の許可を受けたときは、最大2割減額できるというのが最低賃金法に規定されています。〔最低賃金法7条〕

しかし、労働基準監督署に確認してみたところ「うちでは許可していません」という説明を受けました。

 

<17歳までの労働時間>

1日8時間を超える勤務はできません。平均ではなく、どの日も8時間までです。

1週間で40時間を超える勤務はできません。就業規則に定めがなければ、日曜日から土曜日までの7日間で計算します。

日曜日から土曜日まで7日間連続で勤務することはできません。

また、フレックスタイム制などの変形労働時間制は使えません。

 

<17歳までの勤務時間帯>

午後10時以降翌日午前5時までは勤務できません。

 

<17歳までの業務内容の制限>

重量物の取り扱いについては、次の表のとおりの制限があります。

年齢と性別

重量の制限

たまに持ち上げる場合

続けて持ち上げる場合

15歳まで

12キログラム未満

8キログラム未満

15キログラム未満

10キログラム未満

16・17歳

25キログラム未満

15キログラム未満

30キログラム未満

20キログラム未満

運転中の機械・動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査・修繕をさせ、運転中の機械・動力伝導装置にベルト・ロープの取付け・取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせることはできません。

毒劇薬、毒劇物その他有害な原料・材料または爆発性、発火性、引火性の原料・材料を取り扱う業務、著しくじんあい・粉末を飛散し、有害ガス、有害放射線を発散する場所または高温・高圧の場所における業務その他安全、衛生または福祉に有害な場所における業務に就かせることはできません。

坑内労働に就かせることはできません。

 

※以上の内容には特別な例外もあるのですが、成人と同じようには扱えないということです。

 

2018.07.01.解決社労士

<労基法違反が7割!>

平成30(2018)620日、厚生労働省から外国人技能実習生の実習実施者に対する平成29年の監督指導・送検等の状況が公表されました。

外国人技能実習生を迎え入れる企業は、雇っているという感覚に陥ることがあります。しかし、技能実習生を迎え入れるというのは、あくまでも技能実習をさせるわけですから、雇い主ではなくて実習実施者という立場に立たされます。

全国の労働局や労働基準監督署により監督指導(調査)が行われた実習実施者のうち、労働基準関係法令違反が認められたのは実に70.8%に達しています。

 

<外国人技能実習制度>

外国人技能実習制度は、外国人が企業などでの実習を通して技術を習得し、母国の経済発展を担う人材となるよう育成することを目的としています。しかし、実習実施者では、労使協定を超えた残業、割増賃金の不払い、危険や健康障害を防止する措置の未実施などの労働基準関係法令に違反する事例が依然として存在しています。

外国人であっても、日本国内で働く人には、原則として日本の労働基準法などが適用されるのですが、適用されないという勘違いも多いようです。

 

<外国人技能実習生の保護>

全国の労働局や労働基準監督署は、実習実施者に対し、監督指導などを実施することで、技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保に取り組んでいます。

■ 労働基準関係法令違反が認められた実習実施者は、監督指導を実施した5,966事業場(実習実施者)のうち4,226事業場(70.8%)。

■ 主な違反事項は、(1)労働時間(26.2%)、(2)使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準(19.7%)、(3)割増賃金の支払(15.8%)の順に多かった。

■ 重大・悪質な労働基準関係法令違反により送検したのは34件。

全国の労働局や労働基準監督署は、監理団体や実習実施者に対し、労働基準関係法令などの周知・啓発に努めるとともに、労働基準関係法令違反の疑いがある実習実施者に対しては監督指導を実施するなど、引き続き、技能実習生の適正な労働条件と安全衛生の確保に重点的に取り組んでいくということです。

なお、度重なる指導にもかかわらず法令違反を是正しないなど重大・悪質な事案に対しては、送検を行うなど厳正に対応していくそうです。

 

2018.06.22.解決社労士

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法21項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、少子化によって労働者が不足している現状では、労働者側が優位に立っているようにも思われます。

また、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

いずれにせよ、労働者と使用者が対等の立場で話し合い、制服代やそのクリーニング代、筆記用具などについて労働者の負担とすることは、そのような内容の労働契約になるのであって、法令の規定に触れることはありません。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、制服代や備品代の負担も労働条件の一つです。

労働条件を口頭で説明されただけでは不明確ですから、主なものは文書にして労働者に交付することが使用者に求められています。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

明示すべき事項は労働基準法施行規則第5条第1項に規定されています。

次に示すのがその内容ですが、制服代や備品の負担は、(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 に含まれます。

労働者に対して制服代や備品の負担について明示しないまま雇い入れてしまったなら、これらを負担させることは労働条件の明示義務違反になります。

 

(1)労働契約の期間に関する事項 (2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項 (3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項 (4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項 (5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。) (6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項 (7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項 (8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項 (9)安全及び衛生に関する事項 (10)職業訓練に関する事項 (11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項 (12)表彰及び制裁に関する事項 (13)休職に関する事項

 

<就業規則の項目にも>

「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項」が就業規則に規定する事項として法定されています。〔労働基準法895号〕

「負担をさせる定めをする場合」には、就業規則に規定を置かなければなりませんし、定めをしない場合には、就業規則に規定を置きようがありません。

就業規則に規定が無いにもかかわらず、うっかり労働者に負担させてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。

 

労働者の負担になることは、法令で規制されている可能性を考えて、社会保険労務士などの専門家に確認してから行うようにすることをお勧めします。

 

2018.05.28.解決社労士

<本人が同意しているのなら>

労働契約というのは、使用者と労働者との合意によって成立します。ですから、労働条件も基本的には両者の合意によって決定されます。

このことからすれば、労働基準法の規定とは違う労働条件とすることについて、労働者本人が同意しているのであれば問題なさそうに思えます。

しかし、採用されたいがために「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」というような同意書に労働者が署名・捺印したとしても、本心かどうかは怪しいものです。

では、本人が心の底から同意していれば、その労働条件でかまわないのでしょうか。

 

<任意規定と強行規定>

法令の規定には、任意規定と強行規定とがあります。

任意規定とは、契約の中のある項目について当事者の合意が何も無い場合に、法令の規定が適用されてその空白が埋められるように設けられたものです。ですから、契約の当事者が任意規定とは違う合意をすれば、その合意の方が優先されて法的効力が認められます。

強行規定とは、当事者の合意があっても排除できない法律の規定です。つまり、強行規定とは違う合意をしても、この合意に法的効力はありません。

しかし、任意規定なのか、それとも強行規定なのかは、法令そのものに書いてありません。その規定の趣旨から、解釈によって判断されます。そして最終的な判断は、裁判所が行います。

一般に、契約書に関する法律の規定は、任意規定が多いとされています。

労働基準法の中の労働契約に関する規定も、任意規定なのでしょうか。

 

<労働基準法の性質>

憲法は労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法272項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまったのでは、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

こうしたことから、労働基準法の規定は、原則として強行規定であるというのが裁判所の判断です。

 

<思わぬしっぺ返し>

退職予定の正社員から「引継ぎ書と業務マニュアルを完成させたいので残業させてください。これは、私が納得のいくものを作成したいという我がままですから、残業代は要りません」という申し出を受けて、会社側がOKを出したとします。

この退職予定者が、毎日残業し休日出勤までして、見事な引継ぎ書と業務マニュアルを残して退職していったとします。

この場合でも、退職後に残業代の支払を求められたら会社は拒めません。

社員は、退職すれば心理的に自由になります。そして、労働者としての権利を最大限に主張できるのです。

退職した時点では、残業代を放棄するつもりだったのに、その後経済的に困って会社に請求してくるというのは、典型的なパターンになっています。

円満退社の場合でも、決して油断はできないということです。

 

2018.05.07.解決社労士

<周知の意味>

周知(しゅうち)というのは、広く知れ渡っていること、または、広く知らせることをいいます。

「周知の事実」といえば、みんなが知っている事実という意味です。

会社で「周知」という場合には、社内の従業員に広く知らせるという意味です。

 

<就業規則についての義務>

労働基準法には、次のように規定されています。

 

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

 

つまり、従業員が10名以上の会社では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。

しかし、従業員が10名未満の会社が就業規則を作成し届け出るのは任意です。

 

<会社の周知義務>

会社は、労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、労使協定を従業員に周知しなければなりません。〔労働基準法1061項〕

従業員が10名以上の会社で、就業規則を作成して労働基準監督署長に届け出たとしても、周知しなければ効力が発生しません。ここは重要なポイントです。

 

<労使協定の周知義務>

よくある勘違いに、「うちには労働組合が無いので労使協定は関係ない」というのがあります。しかし、労働組合が無い会社では、「労働者の過半数を代表する者」が選出され、この過半数代表者との間で労使協定が交わされます。

労使協定というと、三六協定(時間外労働・休日労働に関する協定)が特に有名です。〔労働基準法36条〕

この協定書を作成して、所轄の労働基準監督署長に届け出なければ、法定労働時間を超える残業は1分たりともできません。無届での残業は違法残業となってしまいます。

労働基準法には、他にも多くの労使協定が規定されています。特別なことを何もしなければ、これらの労使協定は要りません。しかし、必要に応じて協定を交わし、周知することが会社に義務付けられています。

 

<周知の方法>

周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。

 

<労働基準法の要旨の周知>

会社は、労働基準法の要旨も就業規則も周知しなければなりません。

たとえば、就業規則に「年次有給休暇は法定通り」と定めたならば、別に労働基準法の年次有給休暇の定めの内容を周知することになります。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、会社が作成するのですから、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。しかも、労働基準法106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」としていますから悩んでしまいます。

 

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的に1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、自社の従業員に合った上手い説明が見つからない場合には、国家資格者の社労士(社会保険労務士)にご相談ご用命ください。

 

2018.05.06.解決社労士

<管理監督者の特例>

労働基準法412号に、管理監督者には残業手当の支払いが不要である旨の規定があります。

 

第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者

二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

 

<深夜割増賃金の支払い>

管理監督者に対しても、深夜割増賃金(深夜手当)は支払う必要があるというのが判例です。〔最二小判平成211218日〕

また、この最高裁の判決は、管理監督者の賃金が就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、深夜手当を支払う必要がない場合もあると判示しています。

十分多額であれば、深夜割増賃金込みの給与にしても良いということです。

 

<管理監督者の条件>

管理監督者と認められるためには、ただ役職者だというだけではダメです。

タイムカードにより厳格な勤怠管理を受けており、自己の勤務時間について自由裁量を有していない場合には、管理監督者とは認められません。〔ほるぷ事件 東京地裁判決 平成981日 など〕

 

一方、タイムカードに打刻すべき義務を負っているものの、それはせいぜい拘束時間の長さを示すだけにとどまり、その間の実際の労働時間は自由裁量に任せられ、労働時間そのものについては必ずしも厳格な制限を受けていないというのなら管理監督者の条件を満たしうるとされています。〔医療法人徳州会事件  大阪地裁判決 昭和62331日〕

 

結局、厳密な労働時間の管理を受けている労働者は、管理監督者として扱うことができないわけです。

厚生労働省や労働局のパンフレット類やホームページなどでも、このことが詳しく説明されています。

 

<計算不能な深夜手当>

管理監督者の深夜手当を計算するには、午後10時から翌朝5時までの深夜時間帯の勤務時間を集計しなければなりません。

しかし、勤務時間を厳格に管理されている労働者は、管理監督者の条件を満たしていません。

つまり、管理監督者ならきちんと深夜手当を計算できないし、きちんと深夜手当を計算できる労働者は管理監督者ではないということになります。

 

そもそも、深夜時間帯の勤務時間を厳密に把握されているようでは、経営者と一体的な立場で仕事をしているとはいえません。

 

<誤った運用の実態>

役職名を付ければ残業代を支払わなくて良いという誤解に基づき、実際に一定以上の役職者に残業代を支払わないという運用が横行していました。

しかし、「名ばかり店長」という言葉で有名になった日本マクドナルド割増賃金請求事件判決(東京地方裁判所平成20128日判決)以降は、企業に対する「名ばかり管理職」からの未払い賃金請求訴訟が増え、労働者側が勝訴していく中で、企業側の認識と運用が改善されつつあります。

 

マスコミのいう「名ばかり店長」「名ばかり管理職」というのは、労働基準法の用語でいえば、「名ばかり管理監督者」ということになるでしょう。

その実態としては、それらしい肩書と責任が与えられ、権限と残業代は与えられないというものです。

 

厚生労働省や労働局のパンフレット類やホームページなどには、管理監督者の条件が詳しく説明されているのですが、その理解はむずかしく、具体的な事例に当てはめて判断するには、社会保険労務士(社労士)などへの相談が不可欠でしょう。

 

<管理監督者の規定は不要ではないか>

労働基準法の管理監督者の規定を削除しても不都合はないと考えられます。

一般の労働者として扱い、深夜手当だけでなく、残業手当や休日出勤手当を支給することにしても問題はないでしょう。

 

経営者と一体的な立場で仕事をしているのなら、会社と労働契約を交わす労働者ではなく、会社と委任契約で結ばれた取締役などの地位にあるのが自然です。

取締役ならば、労働者と兼務の立場にない限り、労働基準法の適用はありません。深夜手当、残業手当、休日出勤手当などの支払いもありません。

 

私個人の見解に過ぎませんが、「管理監督者」というのは、企業と労働者との関係を規律する労働基準法に取締役が割り込んでいるような印象を受けます。

 

2017.11.04.解決社労士

<8時間労働>

労働基準法には、次の規定があります。

 

(労働時間)

第三十二条 2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

 

8時間労働の考えは、1817年にイギリスのロバート・オーウェンという人が、「仕事に8時間を、休息に8時間を、やりたいことに8時間を」というスローガンを唱えたのが始まりのようです。労働者の健康を平等に保障しようとしたわけです。

 

複数の人々の間に共通する要素があって、その共通する要素に着目して、同じ扱いをすることにより、妥当な結果をもたらそうとするのが、平等の考え方です。

労働者としての地位の確立と、労働条件の改善を求める労働運動を展開するには、同じ労働者として共通の基準である8時間労働を共有するのが、わかりやすかったのだと思います。

 

<働き方改革>

労働基準法ができて322項が8時間労働を定めたのは昭和22年(1947年)ですから、今から70年も前のことです。

今では、働き方改革が唱えられるようになっています。女性も男性も、高齢者も若者も、障害や難病のある方も、一人ひとりのニーズにあった、納得のいく働き方を実現しようという考え方です。

これは、平等ではなくて公平の原理に基づくものです。

 

複数の人々の間に相違する要素があって、その違いに着目し、違いに応じた扱いをすることにより、妥当な結果をもたらそうとするのが、公平の考え方です。

労働から生じるストレスや健康障害は、業務の内容、人間関係、労働環境などの違いによって大きな個人差を生じます。

また、個人の生まれつきの資質、私生活、通勤など会社が改善できないものによっても影響を受けています。

現に、8時間も働きたくない、働けないという人もいますし、もっと働いて収入を増やしたいという人もいます。

こうしたニーズに対応するのが、公平の原理であり、働き方改革もこうした内容を含んでいると考えられます。

 

<あくまでも立法論として>

2019年から施行される予定で、残業時間に上限を設ける規制をする法改正の準備が進んでいます。罰則付きです。

これは、日本国憲法の次の規定の趣旨にも合致します。

 

第二十七条 2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

 

一方で、労働契約というのは、契約自由の原則により労働者と使用者の合意に基づいて自由に決められるべきものです。

労働契約法にも、次の規定があります。

 

(労働契約の原則)

第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。

 

以上のことから、次のようにできないかと思っています。

・所定労働時間は労働者と使用者の合意により自由に定める。

・ただし、2019年施行予定の制限を超えることはできない。

・所定労働時間を超える労働については割増賃金を支払う。

 

今の労働基準法では、法定労働時間を超える労働について、時間外割増賃金を支払うルールですが、所定労働時間を基準にしたらどうかということです。

現在でも、所定労働時間を超える労働に対して割増賃金を支払っている企業があります。これを、すべての企業の統一ルールにできたならと思います。

 

この考えによれば、たくさん働きたい人は、110時間を所定労働時間とすることも許されるようになります。現行法では無理ですから、あくまでも立法論です。

これは、日本人は働き過ぎだという批判に逆行するようにも見えますが、平均値としての労働時間は減少させつつも、たくさん働きたい人のニーズを満たすのも働き方改革の内容に含めて良いのではないでしょうか。

 

今後、こうした議論が深まることを期待しています。

 

2017.10.31.解決社労士

<公民権の保障>

労働基準法に次の規定があります。

 

(公民権行使の保障)

第七条 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

 

公民としての権利とは、選挙権、被選挙権、最高裁裁判官の国民審査権〔日本国憲法79条〕、住民の直接請求権〔地方自治法74条〕などをいいます。

ただし、他人の選挙運動に対する応援や、訴えを提起する権利はこれに含まれないものとされています。

 

公の職務とは、国会・地方議会議員、労働委員会委員および審議会委員としての職務、裁判所の証人としての出廷や公職選挙法上の選挙立会人の職務などをいいます。

労働審判制度における労働審判員の職務、裁判員法に基づく裁判員の職務もこれに含まれます。

 

<公民としての権利の保障>

基本は投票権ですが、投票日当日に出勤する予定でも、期日前投票制度があるので選挙権を行使できないというケースは稀です。

その稀なケースとして考えられるのは、投票日は出勤しない予定、あるいは残業しない予定だったのが、急な予定変更によって、勤務中に職場を抜け出さないと投票できないような場合です。

この場合でも、本人が「投票に行きたい」と請求しなければ、使用者側は期日前投票で投票済みかは詮索できないので、行かずじまいということになるでしょう。

 

<公の職務執行の権利の保障>

たとえ会社に知らせずに国会議員に立候補して当選した場合でも、懲戒解雇処分はできません。これは、権利の侵害になるからです。

しかし、議員活動をするにあたり休職を命じ、あるいは欠勤が多いことを理由に普通解雇とすることは違法ではありません。

 

会社の実情に合わせ、公民権の行使を就業規則にどう定めるかは、かなり専門的な話になります。

こうしたことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士にご相談ください。

 

2017.10.30.解決社労士

<アルバイトを始める前に労働条件を確認>

働き始めてから、「最初に聞いた話と違っていた」ということにならないように、会社から契約書など書面をもらい、労働条件をしっかり確認しましょう。特に次の6項目については必ず確認しましょう。

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

・契約期間の定めがある契約を更新するときのきまり(更新があるか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・勤務時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、 残業の有無、休憩時間、休日・ 休暇、 交替制勤務のローテーションなど)

・バイト代(賃金)はどのように支払われるのか(バイト代の決め方、計算と支払いの方法、支払日)

・辞めるときのきまり(退職・解雇に関すること)

※労働条件を確認する書類には、雇用契約書、労働契約書の他に、雇い入れ通知書、労働条件通知書などがあります。

 

<バイト代は、毎月、決められた日に、全額支払われるのが原則>

労働基準法では、バイト代などの賃金について「賃金の支払いの5原則」というルールがあります。バイト代は、通貨で、全額を、労働者に直接、毎月1回以上、 一定の期日に 支払われなければなりません。

また、バイト代などの賃金は都道府県単位ごとに「最低賃金」が定められており、これを下回ることはできません。

 

<ペナルティによる減給の制限>

遅刻を繰り返すなどにより職場の秩序を乱すなどの規律違反をしたことを理由に、就業規則に基づいて、制裁として、本来受けるべき賃金の一部が減額されることがあります(これを減給といいます)。

しかし、事業主(会社)は規律違反をした労働者に対して無制限に減給することはできません。

1回の減給金額は平均賃金の1日分の半額を超えてはなりません。

また、複数にわたって規律違反をしたとしても、減給の総額が一賃金支払期における金額(月給制なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。

 

<アルバイトでも残業手当があります>

労働基準法では、法定労働時間を超えて残業をさせる場合、事業主はあらかじめ、労使協定(「36(さぶろく)協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。

また、残業に対しては、割増賃金 (残業手当)を次のように支払うよう定めています。

・1日8時間または週40時間を超えた場合は、通常の賃金の25%以上の割増賃金

※ 労働者10人未満の商業、接客娯楽業等は週44時間

・1か月に60時間を超える残業の割増率は50%(ただし、中小企業は猶予)

午後10時から午前5時までに働いた場合は25%以上の割増賃金(深夜手当)が支払われます。

(満18歳になるまでは、午後10時から午前5時までの時間帯に働けません。)

 

<アルバイトでも条件を満たせば有給休暇が取れる>

年次有給休暇とは、あらかじめ働くことになっている日に仕事を休んでも、賃金がもらえる休暇のことで、いわゆる 「有休」や「年休」のことです。

年次有給休暇は、正社員、パート、アルバイトなどの働き方に関係なく、次の条件を満たす場合、取ることができます。

・週1日以上または年間48日以上の勤務

・雇われた日から6か月以上継続勤務

・決められた労働日数の8割以上出勤

 

<アルバイトでも仕事中のけがは労災保険が使える>

正社員、アルバイトなどの働き方に関係なく、また、1日だけの短期のアルバイトも含めて、労災保険の対象です。

仕事が原因の病気やけが、通勤途中の事故で病院に行くときは、健康保険を使えません。※健康保険証を提示しないことになります。

病院で受診するときに、 窓口で労災保険を使うことを申し出てください。

原則として治療費は無料となります。

また、仕事が原因のけがなどで仕事を休み、バイト代をもらえない場合は、休業補償制度があります。

 

<アルバイトでも会社の都合で自由に解雇はできない>

アルバイトだからといって、簡単に解雇できるものではありません。解雇は、会社がいつでも自由に行えるというものではなく、社会の常識に照らして納得が得られる理由が必要なのです。

 

<困ったときの相談窓口>

アルバイトをして労働条件など、労働関係で困った場合は、全国の労働局や労働基準監督署などにある「総合労働 相談コーナー」にご相談ください。

相談は無料です。

また、夜間・土日の相談は、「労働条件相談ほっとライン」 を活用してください。

 

労働条件相談ほっとライン

0120-811-610

月~金:午後5時~午後10時

土・日:午前10時~午後5時

 

2017.10.06.現在

<労働基準法の規定>

労働基準法は、その5条で強制労働を禁止し、次の罰則規定を置いています。

 

第百十七条  第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

 

<強制労働の意味>

「今どき強制労働なんて」と思われてしまうかもしれません。「強制労働」というと、ピラミッド建設に駆り出される奴隷のようなイメージを抱いてしまうのでしょう。

しかし、労働基準法の規定を見ると、次のように書かれています。

 

(強制労働の禁止)

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

 

ここにいう不当に拘束する手段には、長期労働契約(14条)、労働契約不履行に関する賠償予定(16条)、前借金相殺(17条)、強制貯金(18条)などがあります。〔昭和63年3月14日基発第150号通達〕

カッコの中の「〇条」というのは、労働基準法の条文を示しています。

 

<辞めさせてくれない会社>

自分の勤務先がブラック企業であることに気づき、退職を申し出たけれども辞めさせてもらえないという労働相談が増えています。

辞めさせてもらえないというのは、具体的には「辞めるなら違約金を支払え」と本人や身元保証人に迫るようです。

これなどは、労働基準法16条の「労働契約不履行に関する賠償予定」があることを示していて、「退職するな!働き続けろ!」というわけですから、強制労働の禁止に違反していると思われます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

法律は、法律のことを知っている人の味方です。

法律のことを良く知らない人は、良く知っている人を味方に付けて身を守りましょう。

労働関係法令についていえば、信頼できる社労士を味方に付けるのが安心です。不安に思うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.24.解決社労士

<労働基準法の役割>

労働基準法は、労働者が人間らしく生きていけるようにするための、労働条件の最低基準を定めています。

このことは、労働基準法1条に次のように定められています。

 

(労働条件の原則)

第一条  労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

 

労働基準法と聞くと、使用者側にいろいろと罰則をちらつかせて義務付けているイメージを持たれますが、この条文では、「労働関係の当事者」つまり使用者と労働者の両方に、労働条件の維持向上を求めています。

 

<労働条件の決定>

労働条件の決定は、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものだとされています。

このことは、労働基準法2条1項に次のように定められています。

 

(労働条件の決定)

第二条  労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。

 

本来は対等なのでしょうけれども、少子化によって労働者が不足している現状では、労働者側が優位に立っているようにも思われます。

また、入社後は会社に対する貢献度に応じて、優位に立つ労働者と、弱い立場の労働者に分かれてくるでしょう。

 

<労働条件の遵守>

続けて労働基準法2条は2項に次の規定を置いています。

 

2 労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。

 

ここでも「労働者及び使用者は」と規定し、労働条件を守ることについては、労働者も使用者も対等であることを示しています。

 

<労働条件の明示>

とはいえ、労働条件が決まっていなければ守りようがありません。また、文書化されていなくて、口頭で説明されているだけでは不明確です。

そこで、労働基準法は労働条件の明示について、次のように規定しています。

 

(労働条件の明示)

第十五条  使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

このように労働条件の明示は、使用者だけに義務付けられています。

ここでいう「厚生労働省で定める方法」というのは基本は書面ですが、電子化された文書によることもできることされています。口頭ではダメです。

そして、明示された労働条件が実際と違っていたら、これを理由に労働者から使用者に対して退職を通知できます。

 

2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

 

ブラック企業で退職を申し出たら、「退職させてもらえない」とか、「違約金の支払いを求められた」とか、不当なことを言われたという話を耳にします。

しかし大抵のばあいは、この労働基準法15条2項を根拠に退職を通知できるケースでしょう。

 

このように、労働条件の正しい明示は使用者の義務ですから、口頭による説明しか無いのであれば、労働者としては「知りませんでした」「忘れました」という言い訳が許されることになってしまいます。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「労働条件なんてよくわからないから決めない」「労働条件通知書を渡して違法性を指摘されたら困る」という経営者の方は、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.23.解決社労士

<労働基準法11項>

法律の第1条というのは、注目されないものです。しかしその法律の目的や、大原則が規定されていますから、これを踏み外すとお話になりません。

労働基準法11項には、次のように規定されています。

「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」

この規定は、憲法(日本国憲法)251項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定に基づいています。

そもそも労働基準法ができたのは、主に憲法272項に「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」という規定があるからです。

つまり、資本家は労働者から搾取するものであり、国は労働者を資本家から守る義務を負うというところから出発しています。

 

<労働基準法12項>

これもまた注目されていませんが、労働基準法12項には、次のように規定されています。

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」

これを踏み外す危険も大きいと思います。

たとえば人手不足の折、会社の偉い人が「うちの会社は週休2日制だけど、労働基準法は1日でOKだと規定しているから、それでいいんじゃねぇの?」と言いかねません。

確かに労働基準法35条には、「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない」と規定されています。

たしかに、新たに会社を設立した場合には、週休1日制でスタートしても違法ではありません。しかし、週休2日制の会社が労働基準法35条を理由に週休1日に変更したら、労働基準法12項に違反します。

法律というのは、どれか1つの規定に違反していなくても、別の規定に違反すれば違法となることがありますから、木を見て森を見ずというのでは失敗します。

それぞれの法律の目的、あるいはそれを超えて、法律の気持ちというものを捉えていないと、条文一つひとつを見て勘違いしてしまうことは避けられません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社労士は、数多くある労働関係法令一つひとつの気持を把握しています。

経営者が「いいこと考えた!」と思ったときは、落とし穴に落ちたときかも知れません。他社に先駆けて何か工夫しようと思いついたときには、実行に移す前に信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.08.17.解決社労士

<休憩時間の自由な利用>

労働基準法は、休憩時間について、次のように規定しています。

 

(休憩)

第三十四条  使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

 

2  前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

 

3  使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

 

このように、労働基準法34条3項は、使用者に対し休憩時間を自由に利用させることを義務づけています。

 

<通達による休憩時間利用の制約>

労働基準法などの法律は、立法府である国会が制定しています。そして、これを具体的に適用する基準として、行政府が次のような通達を発しています。

 

事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を損なわない限り差し支えない。〔昭和22年9月13日基発第17号通達〕

 

休憩時間中の外出について、所属長の許可を受けさせることも、事業場内において自由に休息し得る場合には、必ずしも違法にはならない。〔昭和23年10月30日基発第1575号通達〕

 

<休憩時間利用の制約についての裁判所の判断>

法律の適用について、その合法性(合憲性)が裁判で争われた場合、最終的には最高裁判所が判断を示します。

たとえば、目黒電報電話局事件について、最高裁判所は次のような判断を示しています。

 

一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法三四条三項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法三四条三項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。〔最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社内で、休憩時間の自由な利用に対する制約があった場合、それが法的に許されるかどうかを判断するには、法律の条文を読んで、自分なりに解釈するという方法では危険なのです。

数多くの通達を確認し、関連する裁判例をよく読んで、具体的な制約に当てはめたうえで、専門的に判断する必要があるのです。

顧問の社労士を置いておくことは、会社がつまらないことで足元をすくわれないようにするため、ぜひ必要なことだと思います。

 

2017.08.13.解決社労士

<一斉休憩の原則>

労働基準法の前身は工場法でした。工場では、労働者に一斉に休憩を与えるのが効率的です。

現在、休憩時間は事業場ごとに一斉に与えなければならないというのが、工場だけではなく原則的なルールとなっています。〔労働基準法34条2項本文〕

つまり、労働者に対して交代で休憩時間を与えることは、原則として認められません。

 

<事業の種類による例外>

運送事業、販売・理容の事業、金融・保険・広告の事業、映画・演劇・興業の事業、郵便・電信・電話の事業、保健衛生の事業、旅館・飲食店・娯楽場の事業、官公署等では、労働基準法のこの規定の適用が除外されています。〔労働基準法40条1項、労働基準法施行規則31条〕

つまり、これらの事業では、労働者に一斉に休憩を与える必要がありません。

 

<その他の事業での例外>

上記の例外に含まれない事業でも、労使協定を締結すれば、休憩時間を一斉に与える必要はなくなり、交代で休憩時間を与えることもできるようになります。〔労働基準法34条2項但書き〕

しかも、この労使協定は36協定などと違って、労働基準監督署長への届出が不要です。

それでも、無ければ労働基準監督署の監督(調査)が入ったときには指摘されますから、一斉に休憩を取らせない事業場では、労使協定書を作成して保管しておきましょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

36協定書の届出すらしていない会社もありますが、必要な労使協定が無いのは違法ですから、一度、信頼できる社労士にご相談のうえ、作成して保管しておくことを心からお勧めします。

 

2017.08.06.解決社労士

<36協定の抜け道のハズが>

新国立工事で自殺した男性が、上限月80時間を超える時間外労働をしたのに、将来代休を取る予定にしてその時間分を差し引くことで、80時間未満と申告していました。この方法は、この職場で長年の慣習だったようです。

本来、会社と労働者との間で適法な36協定を交わし、所轄の労働基準監督署への届け出をしていなければ、法定労働時間を超える残業は1か月に1分でも違法です。

この会社では、時間外労働の上限が月80時間と言われています。この内容での36協定書の届け出があって、手続きは適法なのに運用が違法だったということになるのでしょう。

 

<違法な慣習の発生メカニズム>

社内のある部門で、会社のルール通りにやっていては上手くいかないときに、その部門の部長や事業部長などが「いいこと考えた」とばかりに、少しルールを曲げて運用し、上手くいったつもりになってしまうことがあります。

これが会社目線の素人判断であり、労働法の中のある法令のある規定に違反して違法であったとしても、偉い人の言うことには逆らえませんから、これがその部門での新たな慣習として定着してしまうのです。

もし「いいこと考えた」のが社長であれば、人事部門の責任者も逆らえないという可能性すらあります。

 

<違法な慣習の例>

違法な慣習は、一部の部門だけでなく会社全体に蔓延していて、就業規則に違法な規定が置かれていることもあります。所轄の労働基準監督署は就業規則の届けを受付けているわけですが、細かいチェックまではできないのです。

違法な慣習としては、次のような例があります。

・正社員には年次有給休暇を取得させない。

・臨時アルバイトには労災保険を適用しない。

・軽いケガであれば労災にも健康保険証を使わせる。

・妊娠したら退職するルールがある。

・日給制、日給月給制、年俸制で残業手当を支給しない。

・その日の仕事が終わった時点が終業時刻としている。

・会社で決められた制服への着替え時間が勤務時間外とされている。

・遅刻に対する「罰金」の定めがある。

・会社の備品を壊すと新品を弁償させられる。

まだまだキリがないですね。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

今日まで何も問題が無くても、明日には事件が起きてマスコミが大々的に報じ、違法な慣習があったことについて深く反省させられるかもしれません。

たとえば、国が少子高齢化対策を強化している今、「パパママ育休プラス」「子の看護休暇」を知らない経営者の方は、基本的なことだけでも確認しておくことをお勧めします。

面倒でしたら、信頼できる社労士を顧問に置いておくという手もありますので、お近くの社労士にご相談ください。

 

2017.08.04.解決社労士

<管理監督者の処遇>

良く知られていることですが、管理監督者には残業代の支給が必要ありません。〔労働基準法41条〕

役職手当や管理職手当などの名目で、一般社員とは一線を画した高額の手当が支給されているので、これを含む固定給をベースに計算した残業手当を支給しなくても、十分な総支給額になるから問題ありません。

 

<責任の重い管理監督者>

管理監督者には強大な権限が与えられている一方で、その役割や責任も重いものです。

しかし、自覚の不十分な新米管理監督者は、「残業手当が出ないから毎日早く帰ろう」「時間管理が無いから遅刻しても大丈夫」「土日は趣味と家族サービスに充てよう」といった甘い考えをもってしまう危険があります。

パートやアルバイトに使われている労働条件通知書をカスタマイズして、管理監督者向けに説明する文書を作成し、これを用いて説明するとともに署名してもらうなどして、自覚を促しておく必要があるでしょう。

そして、もし管理監督者にふさわしくない言動が見られたら、もう一度、この文書を示して問題点を指摘すべきです。

 

<管理監督者の基準>

管理監督者といえるかどうかは、その人の肩書ではなく、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などの実態により判断されます。

管理監督者といえるための最低限必要な条件は、すべて満たしていることが必要です。

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

・その地位にふさわしい待遇がなされていること

実態として、部長という肩書の社員の中でも、これらの条件を満たしているのは極わずかでしょう。

社員でありながら、実質的には取締役のような立場にある人だけが、管理監督者といえるのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

権限ばかりを振りかざし、役割と責任を果たさないブラック管理監督者が出て来ないよう態勢を整えるには、信頼できる社労士にご相談ください。

ただし、権限を与えられず、役割と責任を押し付けられている「名ばかり管理監督者」に、残業代を支給しないのは違法ですので、くれぐれもご注意ください。

 

2017.07.20.解決社労士

<「基準」の意味>

もちろん「最高」の水準を意味するものではありません。しかし、「標準」や「目安」を示しているわけでもないのです。

労働基準法の「基準」とは、この一線を踏み越えると違法になるというギリギリの「最低」水準や「限度」、「禁止事項」のことを言っています。

ですから、会社独自の判断で労働基準法に示された「基準」よりも労働者に有利なことをするのはかまいません。たとえば、入社とともに年次有給休暇を14日付与するなどがその例です。

 

<「基準」の個別性>

労働基準法の「基準」は項目ごとに定められています。

「うちの会社は残業手当を多めに支給しているから、有給休暇は取らせなくてもいいだろう」など、全体のバランスで調整することはできません。

 

<違約金・賠償額の予定禁止>

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」〔労働基準法16条〕

かつては、中途で退職したり、会社に損害を与えたりした場合は、労働者だけでなくその家族も違約金を払う、損害賠償を行なうなどの契約が見られました。

しかし、これは労働者の退職の自由を奪うことになるので、労働基準法が罰則付きで明確に禁止したのです。

 

<「罰金」のあるブラック企業>

ところが実際には、遅刻したら罰金3千円、お皿を割ったら1枚につき千円など、気軽に労働基準法違反を犯している会社もあります。

そもそも「罰金」というのは、国家権力が科すものですから、民間企業が従業員から罰金を取るというのは明らかにブラックなわけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社内での「常識」に従って昔から行われていることが、実は労働基準法違反ということだってあります。

労働基準監督署への三六協定書の届出など形式的な面だけでなく、社内で行われていること全体について適法性が確保されているのか、労働条件審査を受けてみてはいかがでしょうか。

人事部では問題ないつもりでいても、思わぬ落とし穴があるかもしれません。

ぜひ、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.06.02.解決社労士

<ブラック疑惑>

マスコミやネットで、ブラック企業の話題が一般化し、自分の勤務先もブラックではないかという疑いを持つ従業員が増えてしまいました。

 

<疑惑のポイント>

ブラック企業の疑いを抱かれるのは、次のようなポイントです。

・賞与が支給されない

・退職金の制度が無い

・通勤手当が一部または全く支給されない

・慶弔休暇が無い

・週休二日制ではない

さらには、次のようなことまで…

・休職の制度が無い

・半日や時間単位の年次有給休暇取得ができない

・病欠を後から年次有給休暇に振り替えることができない

これらは、法令によって労働者の権利とされているものではありません。比較的多くの会社で、事実上行われているにすぎません。

つまり、これらのことを実施するかどうかは、それぞれの会社の判断に任されていて、法令によって強制されているわけではないのです。

たとえば「賞与が支給されない会社はブラック企業」などとは言えません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

会社がブラックの疑いを晴らすためには、労働条件審査と教育・研修が役立ちます。

専門家による客観的な労働条件審査により、労務管理上のあらゆる観点からの適法性がチェックできます。

また、就業規則や社内ルールと労働法について、従業員をきちんと教育すれば、会社が正しいことを理解してもらえるでしょう。

具体的なことは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.30.解決社労士

<国の政策に対する無知>

産前産後休業というのは、労働基準法による国全体の制度です。また、育児休業というのは、育児介護休業法による国全体の制度です。ですから、会社の状況に左右されません。むしろ、会社は従業員が産休や育休を取得する前提で、人材を確保しておかなければなりません。

たとえ就業規則や社内ルールに、産休や育休についての定めが無くても、その会社には法令通りに産休や育休の規定が適用されます。

日本で少子高齢化が深刻化し、出産や育児に対する法的配慮が強化されています。このことを知らずに会社を経営しているというのは危険です。

当たり前ですが、産休や育休に対応できない会社の評判は口コミ情報で低下していきます。

経営者が、国の政策を踏まえて経営していかなければ、その会社の未来はありません。

 

<解雇が困難であることに対する無知>

産休・育休を取らせないということは、そのまま勤務させるということではありません。退職を迫るということです。これは不当解雇にあたります。

妊娠や出産を理由として解雇するのが不当解雇にあたるということについては、法令に具体的な定めがあります。〔男女雇用機会均等法9条3項〕

不当解雇になるということは、解雇が無効になるということです。経営者は解雇したつもりになっていても、その従業員には従業員としての権利が続くということです。

そして実際に勤務していなくても、勤務できないことについて会社側に責任があるわけですから、会社には賃金支払義務が残ります。それだけでなく、会社はその従業員に辛い思いをさせたのですから、慰謝料も支払うことになるでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「ブラック」を経営理念に掲げる経営者はいないでしょう。ブラック企業というのは、経営者が意図せずに、いつの間にかブラックになっているものです。

その昔は、結婚退職が働く女性のハッピーエンドだったかもしれません。しかし、それは遥か昔のことです。

経営者は、時代の流れに乗らなければ生き残れません。会社が流れに乗り切れず、ブラックな方向に向かっていないかのチェックには、労働条件審査が役立ちます。信頼できる社労士にご相談してみてはいかがでしょうか。

 

2017.05.28.解決社労士

<極めて限定されている管理監督者>

管理監督者といえるかどうかは、その人の肩書ではなく、職務内容、責任、権限、勤務態様、待遇などの実態により判断されます。

管理監督者といえるための最低限必要な条件はすべて満たしていることが必要です。

・経営者と一体的な立場で仕事をしていること

・出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと

・その地位にふさわしい待遇がなされていること

実態として、部長という肩書の社員でも、これらの条件を満たしているのは極わずかでしょう。

 

<労働時間等に関する規定の適用除外>

労働基準法には、次のような規定があります。

「第41条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

第2号 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」

管理監督者には、第四章の労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇、第六章の年少者、第六章の二の妊産婦等の中の労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用されないということです。

 

<使用者の立場での労基法適用>

労働基準法の規定からすると、管理監督者は明らかに使用者です。

「第10条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう」

管理監督者は、労働者としての保護規定の一部が適用されないうえ、使用者としての義務を負っています。

 

<深夜手当の支払>

最高裁判所の判決に、「管理監督者については、深夜手当を支払う必要はあるけれども、管理監督者に該当する労働者の所定賃金が労働協約、就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、深夜手当を支払う必要がない場合もある」というのがあります。〔最二小判平成21年12月18日〕

これを受けて、管理監督者であっても深夜手当の支払いは必要であるといわれます。

しかし厚生労働省は、管理監督者の条件に「出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていないこと」を掲げていますから、この条件を満たす本当の管理監督者であれば、午後10時から翌日午前5時の間に何時間働いたかを集計することは困難です。

結局、厳密な意味での深夜手当を計算して支給することはできず、概算でこれに代わる手当を支給する形になります。

 

<名ばかり管理監督者>

管理監督者扱いされていて残業手当も支給されていないような社員が、自分の判断で出勤したり休んだり、遅く出勤したり早退したり、また、取締役と同レベルで経営に口出ししたときに、懲戒処分や降格が検討されるようであれば、その人は「名ばかり管理監督者」です。

こうしたことを理由に不当解雇をしてしまうと、会社は過去2年分の残業手当などの他に慰謝料の請求をされても仕方がないのです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

社内で管理監督者扱いされている社員が、本当の管理監督者なのか、それとも「名ばかり」なのかは、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.24.解決社労士

<労働法違反の公表>

厚生労働省ホームページの「長時間労働削減に向けた取組」のコーナーに労働法違反で書類送検された事案などが公表されました。(平成29年5月10日)

これは、原則として1年間公開されるそうですから、お取引先やお客様の目に触れる可能性があります。

 

<安全面の問題>

労働安全衛生関連の法令違反が大半を占めています。

・作業現場そのものに危険があったもの

・免許や教育研修無しに作業にあたらせたもの

不当な経費節減や手抜きが摘発されています。

 

<賃金の問題>

毎年、最低賃金が上昇していますから、これに追いつかず、いつの間にか最低賃金法違反ということもあります。

・外国人や技能実習生にも最低賃金が適用され、本人の同意は無関係であること

・固定(定額)残業代設定の段階で、最低賃金法違反がありうること

・固定(定額)残業代の基準を上回る残業代を別に支給すべきこと

このような点についての理解不足が多いようです。

代休と休日出勤割増や、深夜割増についても誤解が見られます。

 

<労働時間の問題>

三六協定の未届け、三六協定を上回る残業という形での違法残業が書類送検されています。

三六協定は労使協定ですから、就業規則と同様に労働者に周知しなければなりません。

ところが違反のある企業では、労働者自身が1か月間で何時間まで働いても違法にならないのか、まったく認識していないケースも多いように思われます。

 

<ウソの報告>

労働基準監督署や労働局にウソの報告書を提出して書類送検されている企業があるのは不思議です。

税務署が脱税の手口を熟知しているのと同じように、労働基準監督署などは法令違反のごまかし方を熟知しています。企業側のしろうとが知恵比べをしてもかないません。

また、正直な報告書の提出では「過失」を主張できる場合も多いのですが、ウソの報告書を提出すると「故意」に行っていたと推定されても仕方ありません。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

知っていて法令違反をしているのは論外ですが、適法性について疑問があれば所轄の労働基準監督署に確認することをお勧めします。

藪蛇(やぶへび)になることを恐れるのであれば、少し離れたエリアの労働基準監督署に相談しても良いでしょう。

それも危ないと感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.05.14.解決社労士

<労働条件通知書の交付義務>

労働条件のうちの基本的な事項は、労働者に対して書面で通知するのが基本です。新人なら、1回目は雇い入れ通知書で、2回目からは契約更新の時や、時給変更、出勤日変更の時から労働条件通知書というパターンもあります。

「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」〔労働基準法15条〕

これが労働基準法の定めです。そして、罰則もあります。

「三十万円以下の罰金に処する。」〔労働基準法1201号〕

しかし、たまたま摘発されて30万円の罰金を科せられたとしても、日常的に面倒な書類を交付するよりは、30万円の罰金で済むならその方が楽という考え方をする経営者もいるでしょう。

 

<労働条件通知書の保管義務>

労働条件通知書は3年間の保管義務があります。

「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。」〔労働基準法109条〕

そして、こちらにも罰則規定があります。

「三十万円以下の罰金に処する。」〔労働基準法1201号〕

結局、3年間に1回でも労働条件の交付をサボれば、罰則が適用されうるということです。

 

<現実の問題として>

たとえば、同じお店で5人のアルバイトがいて、この人たちはベテランなので、時給が1,500円だったとします。

そして1人が辞め、代わりに新人が時給1,000円で入ります。2年後、この新人が辞めて、辞めた時も時給1,000円だったとします。

さて、この後、辞めたアルバイトが労働基準監督署に駆け込み「私は時給1,500円で雇われたのに、この2年間、時給1,000円で計算された給与しかもらっていません!」と言い張ったならどうでしょう。

お店側が、「いやいや時給1,000円の約束で雇っていました」と主張できる証拠はあるのでしょうか。

いくらベテランアルバイトたちが、「あの新人は時給1,000円でした」と言っても、お店に有利な証言をしているに過ぎないと思われます。

「時給1,000円で計算した給与を異議なく受け取っていた」と主張しても、「それはクビになりたくなくて。」と反論されればそれまでです。

 

<労働法上の形式的な義務>

労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法などなど、経営者に課せられた義務は把握するだけでも大変な状況です。

しかし、形式的な義務を果たすことは、経営者を護ることにもつながります。

人道的な義務や、人情で果たすべき義務の前に、この形式的な法定の義務を果たすことは、商売を続けるのに必要なことです。

経営者としての想いとは別に、法律上、守らなければ足元をすくわれることがあります。

不安を抱えないで、事業を継続するために、信頼できる社労士にご相談ください。社労士は公務員ではありませんから、親身になってご相談させていただきます。

 

2017.04.22.解決社労士

<労働基準法を守っていたらつぶれる会社>

ビューティークリニックの女性経営者が、労働基準法を順守していたら会社がつぶれるというような発言をして、マスコミを騒がせました。もう2年以上も前のことです。

法律は国会で審議・可決され成立するのですが、法律案の段階で多くの専門家が関わりますので、順守できないような法律が施行されることは稀です。たとえ施行されたとしても、改正案が準備され、実態に合わせて改正されていきます。

特に労働基準法などの労働法で、会社の負担が過大になるような規定ができてしまうと、会社の経営が苦しくなり、結局、労働者の処遇が低下したり、整理解雇が必要になったりして、労働者の保護にはなりません。労働者の保護を目的とする労働法は、このバランスに配慮して作られています。

ですから、労働基準法を守るとつぶれてしまうような会社というのは、経営者が本業以外に気を取られているとか、社会のニーズに対応していないとか、今の時代には合っていないとか、根本的な問題を抱えているのでしょう。

労働基準法の中でも、労働時間や休日についての基本的な規定は、過重労働による過労死を防ぐのに役立ちます。以下の規定が守られていない会社では、守れない原因の原因、そのまた原因を突き止めて、一つひとつ解消する努力が求められます。

 

<法定労働時間>

形式的な労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。

実質的な労働時間は、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間をいい、必ずしも実際に作業に従事していることは必要ありません。何もしていなくてもその場を離れることができない手待ち時間は労働時間となります。この実質的な労働時間は、客観的に決まるものですから、就業規則などにより違うルールにすることはできません。

 労働時間の長さは、週40時間以内、18時間以内に制限されています。〔労働基準法32条〕

 

<法定休日>

休日とは、労働契約で労働義務がないとされている日のことをいいます。

使用者は労働者に、毎週少なくとも1回、あるいは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。〔労働基準法35条〕

カレンダーで色の違う日付が休日というわけではありません。就業規則などにより、職場ごとに決められます。

1日のうちの一部でも仕事をさせれば、たとえ30分位の短時間であったとしても、その日は休日を与えたことにはなりません。

 

<法定時間外労働・法定休日労働>

法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合や、法定休日に働かせる場合には、あらかじめ労働者の過半数代表者(過半数の労働者で組織される労働組合がある場合にはその労働組合)との間に、「時間外労働・休日労働に関する協定」を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。〔労働基準法36条〕

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

「そうは言っても、うちの会社には特別な事情があって、こんな規定は守れない」という会社があれば、ブラック企業の汚名を着せられないうちに、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.04.03.解決社労士

<空欄のある労働条件通知書の有効性>

労働条件通知書は、使用者から労働者に対して主要な労働条件を書面で通知するための書類です。そして、労働条件は労働契約の中心的な内容となっています。

労働契約は、使用者と労働者との口頭による合意で成立しますので、書面に不備があっても労働契約の効力には影響しません。〔民法623条〕

たとえ労働契約書や労働条件通知書が無くても、労働契約は有効に成立するのです。

 

<書面による通知義務のある法定事項>

しかし労働契約の成否とは別に、労働者を保護するため、労働条件のうち次の法定事項は、使用者から労働者に書面で通知する必要があります。

1. 労働契約の期間

2. 就業の場所、従事する業務の内容

3. 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

4. 賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締切り・支払いの時期に関する事項

5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

さらに、パートタイマー(短時間労働者)については、パートタイム労働法により、昇給・退職手当・賞与の有無について、文書の交付等による労働条件明示が必要です。

 

<口頭で通知すれば良い事項>

1. 昇給に関する事項

2. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項

3. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

4. 労働者に負担される食費、作業用品その他に関する事項

5. 安全・衛生に関する事項

6. 職業訓練に関する事項

7. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

8. 表彰、制裁に関する事項

9. 休職に関する事項

つまり、これらの事項は労働条件通知書に漏れていても大丈夫です。ただし、パートタイマー(短時間労働者)については、1.3.の事項がパートタイム労働法により、文書の交付等による労働条件明示が必要な事項とされています。

 

<空欄があることによるトラブル>

労働条件通知書は、使用者の労働者に対する一方的な通知書ですから、1部だけ作成して労働者に交付すれば良い書面です。この点が、労働契約書とは違うところです。

しかし、もし空欄があった場合、交付を受けた労働者が勝手に空欄を補充するとこれがトラブルの元になります。ですから、使用者もコピーを1部保存するのが良いでしょう。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

就業規則が無い会社では、就業規則の代わりに労働条件通知書にかなり詳細な内容を記載する必要があります。

決まっていないからと言って空欄のままにしておくことは、法定の要件を満たしていなかったり、トラブルの火種となったりします。

そうは言っても、決め方がわからないなど迷うことがあれば、信頼できる社労士にご相談ください。

 

2017.03.25.解決社労士

<強制労働の禁止>

1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金という罰則が一番重いものです。

使用者が、暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制した場合に適用されます。

これは、強制労働の禁止〔労働基準法5条〕に違反した場合の規定です。

 

<家出少年・家出少女に対する実例>

家出少年・家出少女をマンションに軟禁し、強制的に働かせたうえで、その収入を巻き上げるという明らかな犯罪行為が報道されます。

このようなことが一般の企業で行われるとは考えられません。

 

<学生アルバイトに対する実例>

学生アルバイトを深夜までこき使い、正社員のするような仕事までさせておいて、「あなたには管理監督者の仕事まで任せているのだから残業手当は出ない」と説明しているという報道もありました。

学業よりも仕事を優先させて働かせ、結局、退学に追い込んでしまうという話もあります。

たしかに、監禁や身体の自由を不当に拘束する手段に出てはいませんが、弱みにつけこみ、誤った常識を押し付けて、脅迫や精神の自由を不当に拘束する手段を使っています。

 

<ありがちな実例>

店長から店員へ次のような電話があって、その店員が断り切れずに出勤したら、強制労働になります。

「おい!お前今日は休みだったよな。人が足らないんだ。出ろよ。来なかったら承知しねえぞ!」

店長は使用者ですし、これも労働基準法の禁止する強制労働にあたるのですが、さてニュースにならないということは、実際には行われていないのでしょうか。

それとも…

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

店長が労働基準法違反で逮捕されたのではお話になりません。

遅くとも役職者になったなら、最低限の労働法知識を身につけないといけません。

社員教育についても、ぜひ、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.02.19.解決社労士

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

 

<労働条件明示の理由>

労働条件の明示が労働基準法に規定されているのはなぜでしょうか。

労働契約は、使用者の「働いてください。給料を支払います」という意思表示と、労働者の「働きます。給料を支払ってください」という意思表示が合致することによって成立します。

しかし、具体的な労働条件が決まっていなければ、使用者からアルバイトに「明日は私の自宅のトイレと浴室の掃除をしてもらいます」ということも、絶対に無いとは言えません。こうなると、労働者ではなくて奴隷扱いになりかねません。

もちろん、これは極端なたとえ話ですが、労働基準法が明示を義務付ける労働条件は、すべて限定されないと労働者が困る事項ばかりです。

 

<労働条件が不明確だと下がる定着率>

労働者が不安を感じ、定着しない理由となります。定着率の低い会社は、労働条件があやふやになっていることが多いものです。不安の内容としては、次のようなものが挙げられます。

・契約期間、契約更新の有無…これが不明確だと、次の仕事を探す必要性も、探し始めて大丈夫かどうかもわかりません。契約期間の終了が近づくと、労働者は不安ですし、中には次の仕事を見つけて自分から退職する人も出てきます。

・就業の場所…これが不明確だと、どこで働くのか、勤務地が変わることがあるのか、不安になります。例外的に転勤する人が出た場合、転勤を恐れて退職する人も出てきます。

・業務内容…これが不明確だと、仕事の範囲がわかりません。「こんな仕事までする約束ではなかった」と感じた人は退職を考えます。

・出勤日と始業終業時刻…ただ単に「シフト制」とするなど、不明確になっていると私生活との調整がむずかしくなります。また、どれだけ働いて、どれだけの収入が得られるのかもわからないのでは、勤務時間の安定した仕事を求めて退職するのは仕方のないことです。

この状態だと、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。つまり、「うちは有給休暇を取らせないよ」と自白していることにもなります。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

実際、その日によって勤務時間帯が変わるなど、労働条件をどのように明示すれば良いのか迷うケースもあります。

労働条件が良くわからないために、新人が定着しないのでは、経費、時間、労力、精神力のムダです。

こんなときは、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2017.01.10.解決社労士

<労働法に関する行政監督制度>

労働基準法などの実効性を高めるため、行政監督制度が設けられています。

厚生労働大臣のもとに、国に1つの厚生労働省労働基準局、各都道府県に1つの労働局、都道府県をいくつかのエリアに分けて設置される労働基準監督署があります。

たとえば、東京都立川市にある立川労働基準監督署は、立川市、昭島市、府中市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、武蔵村山市、東大和市の10市を管轄しています。

 

<労働基準監督官と署長>

労働基準監督官は、労働基準法など労働法の施行のための行政取締や刑事処分にかかわり、事業場を臨検し、帳簿や書類の提出を求め、必要な尋問を行う権限や、労働基準法違反の罪に対する捜査権、逮捕権など司法警察員としての権限をもっています。

労働基準監督署長も、労働基準法のもとで臨検、尋問、許可、認定など様々な権限をもっています。

この他、労働基準監督署長や労働基準監督官は、必要があると認めるときには使用者や労働者に報告や出頭を命じることができます。

 

<労働基準監督署の機能の限界>

労働基準監督署は、強力な権限をもっていますが、それは労働基準法や労働安全衛生法などに根拠のある場合に限られています。

たとえば、解雇権濫用の有無の判断など、労働者や企業にとって切実な問題であっても、監督権限を行使することはできません。残念ながら、これらの機関は直接の紛争解決権限をもっているわけではないのです。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

直接訪問した場合でも、電話による問い合わせの場合でも、社労士であることを名乗ると、労働局や労働基準監督署の皆さんはとても親切です。本当に頼りになります。

会社の人事部門で働いていた時に比べて、一段上の対応をしてくださっているように思われます。おそらく話の通じる専門家として見てくださっているのでしょう。

年金事務所や協会けんぽでも同様のことを感じます。もし、行政の相談窓口などに問い合わせても、今一つ納得できない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。社労士から改めて問い合わせると、深い回答が得られるものです。

 

2016.12.21.

<結論>

試用期間中は家族手当を支給せず、本採用となってから支給を開始するという規定や運用は、原則として問題がありません。

ただし、家族手当を支給しないことによって、1時間あたりの賃金が最低賃金の基準を下回ってしまうと、最低賃金法違反となりますから、ここは確認が必要です。

 

<試用期間の法規制>

労働基準法には、「試用期間」という用語は無くて、「試みの使用期間」〔12条3項5号〕、「試の使用期間中の者」〔21条4号〕という用語で2回登場します。

そして、労働基準法の予定する試用期間は14日までです。ですから、会社が試用期間を3か月としても、労働基準法上は15日目からは試用期間として認められません。

認められないとどうなるかと言うと、正当な理由があって辞めてもらう場合にも、解雇予告手当の支払いとともに解雇通告することが必要です。あるいは、30日以上前もって予告するわけです。解雇予告手当20日分と、10日前の予告で、合わせて30日という方法も認められています。〔20条2項〕

たとえ試用期間中であっても、正当な理由があって解雇予告手当を支払わずに即日解雇できるのは、原則として入社14日目までということになります。

 

<試用期間であっても必要な事(法定事項)>

健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険は、試用期間中か本採用後かという区分がありませんので、法定の基準を満たせば入社とともに加入します。

これは、市区役所に出生届を提出しなくても、赤ちゃんが生まれれば、その生まれた事実に変わりはないのと同じです。つまり、加入手続きをしなくても保険料の未払いが発生するだけです。その証拠に、会社に調査が入って手続きもれが発覚すれば、さかのぼって多額の保険料を支払うことになります。

給与について言えば、残業手当、深夜手当、法定休日出勤手当のように、法定のものは試用期間中であっても支給しなければなりません。ただし、役員待遇で入社するなど、いきなり管理監督者の立場に立つ人は例外です。

 

<試用期間であれば必要ない事(会社がプラスアルファで決めた事)>

家族手当の他、精勤手当、賞与など、基本の給与とは別に会社がプラスアルファで支給するものは、試用期間中は支給しない規定と運用でも、原則として問題ありません。ただ、最低賃金法違反に注意するだけです。

 

<ここも社労士(社会保険労務士)の出番>

正しい給与計算を代行するだけが社労士の仕事ではありません。

適法な給与規定の作成と運用も社労士の仕事です。

さらに、社員が納得してやる気になる給与体系を構築するのも、社労士の仕事です。

もし、やる気のないブラック社員がいたり、新人が定着しないという問題を抱えているのなら、給与体系の見直しが必要かもしれません。

信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.25.

<制裁規定の制限>

減給処分の制限として、次の規定があります。

「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」〔労働基準法91条〕

就業規則などに具体的な規定が無いのに減給処分をすれば、懲戒権の濫用となり無効とされます。〔労働契約法15条〕

規定があったとしても、何か一つの不都合な事実に対して、減給処分は平均賃金の1日分の半額が限度です。

そして、この平均賃金の計算方法は法定されています。

たとえば、直近の給与の締日までの3か月で、カレンダー上の日数が91日のとき、この間の給与の総合計が91万円であれば、1日分は1万円、その半額は5千円です。これが減給処分の限度です。

 

<具体的に計算すると>

月給30万円で、月間所定労働日数が22日だとすると、1日あたりの給与は、

30万円÷22日=13,636円 と計算されます。

3回遅刻すると、これだけの給与が減額されるわけです。

一方で、月給30万円であれば平均賃金の1日分は約1万円、その半額は約5千円ですから、この5千円を大きく上回る13,636円を減額することは、制裁規定の制限を超えてしまいます。

 

<例外的に欠勤控除として許される場合>

もし1日8時間勤務の場合で、3回の遅刻を合わせて8時間以上になるのなら、

1日分の給与を減額しても制裁の意味を持ちません。

なぜなら、欠勤控除をする場合よりも、給与の減額が少ないからです。

ただし、欠勤控除をしたうえで、それとは別に減給処分として1日分の給与を減額するならば、制裁規定の制限を超えてしまいます。

 

<制度としての合理性>

1分の遅刻を3回でも、3時間の遅刻を3回でも、同じく1日分の給与を減額するルールならば、明らかに不公平です。

出勤の途中で遅刻しそうだと思った社員は、喫茶店でくつろいでから3時間遅刻して出勤するかもしれません。また、病気だとウソをついて年次有給休暇を取得するかもしれません。

遅刻3回で1日分の給与を減額するルールというのは、ブラック社員を生み出す原因となりかねないのです。

 

懲戒処分を適正に規定し運用するというのはむずかしいものです。だからといって、懲戒処分が無ければ問題社員を野放しにしてしまいます。

懲戒処分の役割は、不都合な行為をした社員を懲らしめることよりも、まじめな社員が安心して働ける会社にすることの方が大きいといえます。

会社に合った規定と運用をお考えでしたら、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.11.02.

<労働条件の通知>

アルバイトでも、パートでも、人を雇った使用者は労働条件を書面で交付する義務があります。〔労働基準法15条〕

労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書など名前はいろいろです。

名前はどうであれ、交付しないのは違法で30万円以下の罰金刑が規定されています。〔労働基準法120条〕

30万円の損失で済めばマシですが、マスコミやネットの書き込みの威力で、立ち直れなくなる可能性があります。

というのは労働条件が不明確なら、年次有給休暇の付与日数も取得した場合の給与計算の方法も不明です。月給制なら、残業手当の計算方法もわかりません。こうしたことから、労働条件を書面で交付しないのは、「年次有給休暇も残業手当もありません」と表明しているようなものだからです。

 

<ひな形の活用を!>

厚生労働省のホームページで、この労働条件通知書のひな形をダウンロードできます。契約形態に応じて10種類用意されていますから、各労働者に適合するものを利用しましょう。この時点で面倒に思ったり迷ったりするのであれば、お近くの社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

なお、ひな形はA4サイズ2枚ですが、記載要領もA4サイズ2枚です。ひな形というのは、印刷してすぐに使えるわけではありません。特に労働条件通知書では空欄が多いですから、あらかじめ使用者のほうで案を作成しておいて、労働者に確認しながら修正して完成させるという一手間がかかります。この案を作成する段階と、完成版のチェックの段階で、記載要領と照らし合わせて確認する必要があります。

労働条件通知書は、トラブル防止のために作ることが義務づけられています。ですから、下手な労働条件通知書はトラブルのもとになります。実際には、退職前後の労働者と会社との間で紛争の火種となります。そうならないために、表現の工夫が必要なのです。

 

<表現の工夫>

まず、「よくわからない」「決まっていない」という理由で、法定の項目をカットしてしまうと労働基準法違反となり、罰則が適用されることは、労働条件通知書を交付しないのと同じですから注意しましょう。労働基準法に違反する内容とならないようにすることも大切です。

ここでは、常用、有期雇用型について、特に工夫が必要なポイントをご紹介します。

1.「契約の更新は次により判断する。」

 誰が判断するのか書いておかないと、労働者から「私はそうは思いません」と反論されてしまいますから、「契約の更新は次により使用者が判断する。」あるいは「契約の更新は次により会社が客観的に判断する。」と記載することをお勧めします。

2.始業・終業の時刻等

 勤務形態によっては、毎日バラバラということもあります。

 いくつかのパターンにまとめられるのであれば、標準勤務時間として、いくつかの始業・終業・休憩時間をならべて記入しましょう。

 それも無理であれば、何時から何時までの間で何時間勤務(休憩何分)かを記入します。平均的なことを記入するわけです。

 どちらの場合にも、1日の標準的な所定労働時間を記入しなければなりません。これが無ければ、年次有給休暇を取得しても、その分の賃金が計算できませんから、記入が無ければ「年次有給休暇を取得させるつもりが無い」という解釈になってしまいます。これだけで違法です。

 ここは、始業・終業の時刻等が毎日バラバラのパターンが想定されていないので、記入欄が無く注意が必要です。

3.所定時間外労働の有無

 ここで「有」を選択した場合で、1日8時間、1週40(44)時間を超えて残業することがある場合には、所轄の労働基準監督署長に三六協定書を提出しているわけですから、その範囲内で、「1日何時間まで」「1週何時間まで」などの記入をしておきましょう。

 後になってから、残業が多すぎるなどの不満が出ないように、あらかじめ確認しておく項目です。

 これも記入欄が無いので注意が必要です。

4.休日

 特定の曜日などで決まっていない場合には、「週当たり」または「月当たり」の日数を記入します。

 これが無いと、年次有給休暇を付与する条件としての出勤率が計算できませんから、やはり記入が無ければ「年次有給休暇を取得させるつもりが無い」という解釈になってしまいます。これだけで違法です。

5.自己都合退職の手続

 ひな形では、(退職する  日以上前に届け出ること)となっていますが、言った言わない、取り消したのではないか、などのトラブルを防止するために、(退職する  日以上前に所定の「退職届」で届け出ること)としておくことをお勧めします。もちろん、「退職届」の準備が必要です。

以上、ちょっとした工夫でトラブルを防止できるポイントをご紹介いたしました。

 

2016.11.01.

<周知義務について説明されていること>

「労働基準法および同法による命令等の要旨、就業規則、各種労使協定等を労働者に周知しなければなりません。 周知の方法には、常時各作業場の見やすい場所に掲示/備え付ける、書面で交付する、磁気テープ/磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し各作業場に労働者がその記録の内容を常時確認できる機器を設置するというのがあります。」

これは、労働基準法106条の説明として良く目にするものです。

 

<本当に知りたいのは>

しかし、周知する立場の経営者や人事担当者は、「法令の要旨」をどのようにまとめたら良いのかということを知りたいのです。

就業規則や労働基準法に基づく労使協定ならば、それをそのまま周知すれば良いので、何も迷うことはありません。

しかし、「法令の要旨」となると、まさか『労働法全書』や『六法全書』を休憩室に置いて、従業員の皆さんに見ていただくというわけにはいきません。しかも、労働基準法106条は、法令そのものではなく「法令の要旨」と言っていますから、悩んでしまいます。

 

<お勧めなのは>

厚生労働省のホームページには、パンフレット、リーフレット、ポスターが豊富に収録されています。パンフレットは数ページにまとめられたもので、リーフレットは基本的には1枚でまとめられたものです。

たとえばネットで「厚生労働省 パンフレット マタハラ」で検索すると、「妊娠したから解雇は違法です」というページが検索され、そこに「パンフレット:働きながらお母さんになるあなたへ」という項目が見つかります。

厚生労働省とパンフレットの間に空白(スペース)を入れ、パンフレットとマタハラの間にも空白(スペース)を入れて検索すると、3つの言葉を含んだページが表示されますので、この検索方法を活用しましょう。

それでもなお、上手い説明が見つからない場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

 

2016.10.19.

<労働条件の明示>

人を雇うときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。労働契約は口約束でも成立するのですが、特に重要な項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります。〔労働基準法15条〕

書面の名称としては、労働条件通知書、雇い入れ通知書、雇用契約書、労働契約書などが一般的です。

ここで使用者とは、事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいいます。

 

<書面の交付による明示が必要な事項>

・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)

期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)

・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)

・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)

・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)

・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

※労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般的に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多いです。

※これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています。〔労働契約法42項〕

 

<労働契約の禁止事項>

労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。

その主なものとしては、次の例があります。

・労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと。〔労働基準法16条〕

たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。

・労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること。〔労働基準法17条〕

労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。

・労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること〔労働基準法18条〕

社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは厳格な法定の要件のもと許されています。

 

<採用内定>

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。

したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります。〔労働契約法16条〕

内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法20条(解雇の予告)、22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する必要があります。

 

2016.08.21.

<試用期間だけ低めの月給>

試用期間中は低めの月給にしておいて、本採用になったら本人の働きぶりに見合った月給に引き上げるのは、よく行われていることです。

労働基準法も試用期間中の賃金が低めになることに配慮して、平均賃金を計算する場合には、試用期間を除くことになっています。〔労働基準法12条3項5号〕

求人広告でも、入社時の労働条件通知書でも、試用期間の月給について正しく明示していれば問題ありません。

 

<最低賃金法との関係>

月給を1か月の所定労働時間で割って、都道府県ごとの最低賃金を下回れば、最低賃金法違反となります。

入社にあたっては、労働条件通知書などで所定労働時間を示さなければ違法なのですが、計算方法としては次のようになります。

土日のみが休日で、あとは一切休日がない場合、1日8時間勤務なら、

365日×(5日÷7日)×8時間÷12か月=173.8時間

となりますから、174時間と定めればよいでしょう。

都道府県ごとの最低賃金×174時間 を月給が下回れば、月給が安すぎるので、最低賃金法違反ということになります。

月給が15万円で、月間所定労働時間が174時間であれば、

150,000円÷174時間=862円

ですから平成28年7月現在、最低賃金がこれを上回る東京都と神奈川県では違法となってしまいます。

 

<さらに定額残業代を含む場合>

月給に定額残業代を含むのであれば、求人の段階からこれを明示する必要があります。

たとえば、月間所定労働時間が174時間で、15万円の月給に20時間分の定額残業代を含むのであれば、残業代抜きの純粋な基本給をPとすると、

150,000円=P+P÷174時間×20時間×1.25 ですから、これを解いて、

残業代抜きの基本給が131,155円、20時間分の残業代が18,845円となります。

すると、今度は131,155円が最低賃金の基準となりますから、

131,155円÷174時間=753.8円

ですから平成28年7月現在、最低賃金がこれを上回る北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県では違法となってしまいます。

 

2016.07.28.

 

<実は短い試用期間>

試用期間を定める場合、3か月から6か月が主流でしょうか。

ところが、試用期間で解雇予告手当の支払が不要なのは、入社14日目までで、15日目以降の解雇には解雇予告手当が必要となります。〔労働基準法21条〕

もちろん、30日以上前もって解雇の予告をしておけば、この解雇予告手当の支払は不要です。〔労働基準法20条〕

しかし、試用期間を3か月とした場合、実際には2か月以内に本採用とするかしないかの判断が必要となります。遅れれば、その日数分の解雇予告手当が必要となります。

 

<解雇予告手当の効力発生時期>

解雇予告手当は、支払った日に効力が発生します。

ということは、15日に「今月いっぱいで解雇します」と通告して、25日に給与に合算して支払うと、25日に効力が発生することになります。すると、退職日が10日遅れ、翌月10日が退職日になり、翌月分の社会保険料が発生するなど、ややこしいことになってしまいます。

労働基準法など労働者を守る法律では、本人の同意があっても、同意することによって本人が不利益をこうむる場合には、原則として同意がなかったものとして扱われます。

「月末で解雇だけど、解雇予告手当は25日に給料と一緒に払ってもいいかな?」「別にいいですよ」という口頭のやり取りは危険で、同意の内容が書面に残っていて、しかも同意することにもっともな事情が認められなければ、後になって本人の気が変わっても対処できません。

解雇予告手当は給与ではありませんから、給与計算担当者が面倒に思ったとしても、解雇予告と同時に支払いましょう。

 

2016.07.19.

<「労働法」ということば>

「労働法」といっても、「労働法」という名前がついた一つの法律があるわけではありません。

労働問題に関するたくさんの法律をひとまとめにして「労働法」と呼んでいます。その中には、労働基準法や労働組合法をはじめ、男女雇用機会均等法、最低賃金法といった法律が含まれています。

 

<労働法の役割>

会社に就職しようとする場合、労働者(働く人、従業員)と会社(雇う人、使用者、企業、事業主)との間で、「働きます」「雇います」という約束=労働契約が結ばれます。

どういう条件で働くかといった契約内容も労働者と会社の合意で決めるのが基本です。

とはいえ、労働者はどこかに雇ってもらって給料をもらわなければ、生計を立てていくことができません。

したがって、雇ってもらうためには、給料や働く時間に不満があっても、会社の提示した条件どおりに契約を結ばなければいけないかもしれません。

また、給料について会社と交渉しようとしても、「ほかにも働きたい人はいるから、嫌なら働かなくていい」と会社に言われてしまえば、会社の一方的な条件に従わなければならないこともあるでしょう。

このように、全くの自由にしてしまうと、会社よりも弱い立場にあることが多い労働者にとって、低賃金や長時間など劣悪な労働条件のついた、不利な契約内容となってしまうかもしれません。

そうしたことにならないよう、労働者を保護するために労働法は定められています。

労働法について知識をつけておくことが、労働者自身の権利を守ることにつながります。

なお、労働法の保護を受ける「労働者」には、雇われて働いている人はみんな含まれますので、正社員だけでなく、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者やアルバイトでも「労働者」として労働法の適用を受けます。

 

2016.07.14.

<常識的に考えて>

「残業代はいただきません」「年次有給休暇は取得しません」「5年間は退職しません」という同意があって、きちんと書面を残しておけば、すべてが有効だとします。

すると、会社が思いつく限りの同意書の提出を採用の条件とします。そして、新人の入社の時に書かせておけば、労働基準法の存在など無意味になります。

こう考えると、たとえ本人が心の底から同意していても、その同意は無効だということがわかります。

 

<法的に考えて>

憲法が労働者の保護をはかるため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定めることにしました。〔日本国憲法27条2項〕

こうして定められた法律が労働基準法です。

ですから、労働基準法の目的は、使用者にいろいろな基準を示して守らせることによって、労働者の権利を守らせることです。

労働者の同意によって、この基準がくずされてしまっては、労働者の権利を守ることはできません。

労働基準法は使用者に対し、とても多くの罰則を設けて、基準を守らせようとしています。

一方で、労働者に対する罰則はありません。労働者が労働基準法違反で逮捕されることもありません。

 

<会社への「しっぺ返し」>

パート社員から「12月の給料をもらうと扶養を外れてしまうので辞退します」という申し出があったとします。店長が大喜びで、念のため一筆とっておいたとします。しかし、退職後にそのパート社員から「あのときの給料を支払ってください」と請求されたら拒めません。〔労働基準法24条1項〕

事務職の正社員から「また計算間違いをしました。計算し直して、書類を作り直します。私のミスですから、今日の残業代はいりません」と言われた上司は、「まぁそうだよな」と思います。そして、念のため一筆とっておいたとします。それでも、この正社員が退職するときに、会社に残業代の支払を求めたら会社は拒めません。

社員は在職しているうちは、会社に束縛されています。しかし、退職すれば自由になります。そして、労働者の権利を最大限に主張できるのです。

 

2016.07.08

<時間外労働の原則>

1日8時間、1週40時間の法定労働時間が定められています。〔労働基準法32条〕

また、毎週少なくとも1日または4週間を通じ4日以上の法定休日が定められています。〔労働基準法35条〕

使用者が労働者に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、法定休日に労働させる場合には、36協定を締結し労働基準監督署長に届けなければなりません。

 

<災害時などの例外>

しかし、災害その他避けることのできない理由で、臨時に時間外・休日労働をさせる必要がある場合にも、例外なく36協定の締結・届出を条件とすることは実際的ではありません。

そこで、このような場合には、36協定によるほか労働基準監督署長の許可(事態が急迫している場合は事後の届出)により、必要な範囲内に限り時間外・休日労働をさせることができるとされています。〔労働基準法33条1項〕

ただしこれは、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定ですので、厳格に運用されます。

また、労働基準法33条1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

 

<例外にあたるかどうかの判断>

災害その他避けることのできない理由にあたるかについては、被災状況、被災地域の事業者の対応状況、労働の緊急性・必要性などをふまえて個別具体的に判断することになります。

熊本の震災では、被害が甚大かつ広範囲のものであり、一般に早期のライフラインの復旧は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、ライフラインの復旧作業は、条件を満たすものとされました。

ただし、あくまでも必要な範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどの配慮が及びます。

また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。

 

2016.07.02.

<法定休日の原則>

使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えます。〔労働基準法35条1項〕

これが原則です。

毎週というのは、特に就業規則などに定めがなければ、カレンダーどおり日曜日から土曜日までの7日間をいいます。ですから、この7日間に1日も休みがないというのは、労働基準法違反です。

ただし、三六協定を交わしていれば、その範囲内で法定休日に出勤しても、使用者が罰せられることはありません。

 

<法定休日の例外>

前項の規定には、4週間を通じて4日以上の休日を与える使用者については適用しないという例外規定があります。〔労働基準法35条2項〕

これが4週間に4日以上の休日を与える変形休日制です。

この制度を採用するには、就業規則などで4日以上の休日を与える4週間の起算日を定めておかなければなりません。ここで起算日というのは、4週間(28日間)を数えるときの最初の日をいいます。これが決まっていなければ、どの4週間で4日以上の休日にするのかわからないので不都合です。

労働基準法の規定は、どの4週間を区切っても4日の休日が与えられていなければならない趣旨ではありません。〔昭和29年9月20日基発第1384号通達〕

 

<この制度を採用した場合の賃金計算の注意点>

これは休日についての合法性の話ですから、賃金計算とは別問題です。

出勤日数が多い週には、労働時間の合計が1週間の法定労働時間を超えることになります。この場合、1日での時間外労働とは別に、1週間での時間外労働が発生しますので、25%以上の割増賃金が必要です。

結論として、休日については融通の利く制度なのですが、割増賃金が増える可能性があるのです。

 

2016.06.28.

<1か月単位の変形労働時間制の狙い>

会社としては、割増賃金支払いの基準が変わることで人件費の削減が期待できます。

また、労働者としては、日々の勤務時間数に変化が出ることでメリハリができ、勤務時間の短い日にプライベートを充実させたりリフレッシュしたりできます。

 

<基本的なしくみ>

1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)以内となるように、労働日と労働日ごとの労働時間を設定します。そのようにシフトを組むわけです。

こうすることにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えたりしても、条件を満たすシフトの範囲内では、時間外割増賃金が発生しない制度です。〔労働基準法32条の2〕

ここで特例措置対象事業場とは、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業をいいます。

 

<必要な手続き>

労使協定または就業規則に必要な事項を定め、締結した労使協定や作成・変更した就業規則を、所轄労働基準監督署に届け出ます。

常時使用する労働者が10人以上の事業場は、就業規則の作成・届出となります。

これは簡単な手続きで済みます。

 

<定めることが必要な事項>

・対象労働者の範囲

法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。

・対象期間と起算日

対象期間と起算日は、具体的に定める必要があります。たとえば、毎月1日を起算日として、1か月平均で1週間あたり40時間以内とするなどです。

・労働日と労働日ごとの労働時間

シフト表などで、対象期間すべての労働日ごとの労働時間をあらかじめ具体的に定める必要があります。

一度定めたら、特定した労働日や労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。

・労使協定の場合にはその有効期間

労使協定を定める場合、労使協定の有効期間は対象期間より長くなります。適切に運用するためには、見直しの機会を考えて、3年以内にすることが望ましいでしょう。

 

<1か月単位の変形労働時間制がうまくいく条件>

メリットの多い制度ですが、導入する意味があるのは「少なくとも月1回は8時間を下回る勤務時間の日があること」です。

実態として、毎日少なくとも8時間は勤務し、日によっては8時間を超えて勤務することがあるというのであれば、この制度を導入しても、会社にも労働者にもメリットがありません。

スーパーマーケットなどの小売業や、カラオケ店などの接客娯楽業では、正社員について、この制度を導入するメリットがない実態が見られます。前提として、正社員の仕事をパート社員やアルバイト社員にも割り振ることができるよう、教育に力を入れる必要があります。

「1か月単位の変形労働時間制を導入するため」という目的で、正社員による正社員以外への教育を強化すれば、それ自体が生産性の向上になるのですから、ぜひ取り組むことをお勧めします。

 

2016.06.25.

<労働基準法施行規則32条>

あまり知られていないと思いますが、休憩時間を与えなくてもよい職種があります。

運輸交通業または郵便・信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶、航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員、電源乗務員で長距離にわたり継続して乗務する者には休憩時間を与えないことができます。

乗務員でこれらに該当しない者については、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が「一般の休憩時間」に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。

郵便・信書便、電気通信の事業に使用される労働者で屋内勤務者30人未満の郵便窓口業務を行う日本郵便株式会社の営業所(郵便局)で郵便の業務に従事する者には休憩時間を与えないことができます。

 

<一般の休憩時間>

こうした特殊な業務の労働者を除き、「一般の休憩時間」を与えなければなりません。

「一般の休憩時間」とは、「労働時間が6時間を超える場合には少くとも45分、8時間を超える場合には少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与える」というものです。〔労働基準法34条1項〕

使用者としては、労働者から「休憩なんて要りませんよ」と言われていたので与えなかったところ、退職してから「休憩を与えられていませんでした」と訴えられたら、反論の余地がないということです。

労働法が保障する労働者の権利の中には、労働者が放棄できないものがあるのです。ですから、安易に「本人が同意しているから」「念書を書いてもらったから」大丈夫とはいえないこともあるのです。

 

2016.06.23.

<休憩時間の長さ>

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。〔労働基準法34条1項〕

したがって、出社したらすぐに休憩とか、休憩してからすぐに退社というのはできません。また、8時間勤務で全く残業がないのなら休憩時間は45分と定めてもOKです。

若いアルバイトの中には、休憩時間をけずって働きたいという人もいます。しかし、休憩には心身の疲労を回復して、業務効率の低下を防いだり、労災の発生を予防する意味もありますから、本人の希望で短縮することはできないのです。

では、反対に延長はどうでしょうか。実働8時間休憩4時間という労働契約でも、その休憩時間が実際に仕事から離れて自由に使える時間であれば、法的な問題にはならないでしょう。ただ、そうした条件で採用を希望する人はまれでしょうし、途中でこういう労働条件とすることが本人にとって不都合であれば、労働条件の不利益変更の問題となりえます。

 

<休憩時間の分割>

たとえば、1時間の休憩時間を40分1回と10分2回に分けて与えることは許されます。禁煙のオフィスで働く喫煙者などは、このほうが助かります。

しかし、3分の休憩を20回与えるなど、実質的に見て休憩時間とはいえないような与えかたはできません。そこは常識の範囲内で、疲労回復という休憩時間の趣旨にそって考えましょう。

 

<休憩時間の一斉付与>

休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、その事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。〔労働基準法34条2項〕

ただし、お店などでは誰かしら接客する人がいないと不都合ですから、この労使協定がなくても、次の業種では一斉付与の例外が認められています。

運送業(旅客または貨物)、商業、金融・広告業、映画・演劇業、郵便・信書便・電気通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署の事業

反対に、これ以外の業種ではきちんと労使協定を交わしておきましょう。書類作成をサボるだけで、労働基準法違反というのはばかばかしいです。

 

<休憩時間の自由な利用>

使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。〔労働基準法34条3項〕

「何かの必要に備えて自分の席にいなさい」ということであれば、これは休憩時間にはなりません。待機時間は労働時間です。

使用者が休憩中の外出を制約できるかについては、事業場内において自由に休憩できるかぎりは、外出許可制をとっても差しつかえないとされています。〔昭23年10月30日基発1575号通達〕

 

2016.06.17.

<会社を辞めるのは労働者の権利?自由?>

正当な理由によって、労働契約の期間途中で辞めたり、期間満了時に辞めたりしたことで、会社の業務に何らかの支障が生じたとしても、突き詰めれば、それは会社側の人事管理に原因があるのですから、労働者に法的な責任は生じません。

ただし、期間を定めて働いている契約の途中で、自分側の都合で一方的に辞めると、損害賠償責任が発生することはあります。

その場合の賠償額は、残りの期間働かなかったことによって、実際に会社が失った利益にとどまります。さらにその後のことまで、責任を負うことはありません。

また、期間を定めずに働いていたときは、就業規則などに規定された予告期間さえ守れば、理由は何であれ、辞めることによって法的な責任が生じることはありません。

 

<強制労働の禁止>

暴行、脅迫、監禁その他精神または身体の自由を不当に拘束する手段によって就労を強制することは禁止されています。〔労働基準法5条〕

この違反には、10年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が設けられています。〔労働基準法117条〕

退職を思いとどまらせるための説得が禁止されているわけではありませんが、繰り返し長時間にわたって取り囲んだり、拒否しているのに繰り返し家に押しかけたりするなど、社会的相当性を超える威圧的な方法・手段で行えば違法な監禁や強要となります。〔刑法220条、223条〕

また、会社が辞めたいという労働者に、損害賠償請求や告訴することを告げることは、労働者に実際にそのような責任を発生させる事情があったのならば別ですが、具体的な事実や根拠もなく行ったときは、違法な恐喝や脅迫となります。〔刑法222条、249条〕

不当な脅しには毅然とした対応が必要ですが、こうしたことは犯罪ですから、もし身の危険を感じるようならば、最寄りの警察署に相談しましょう。

 

2016.06.07.

<生理休暇の権利>

​生理休暇は女性労働者の権利です。

労働基準法に「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」という規定があります。〔労働基準法68条〕

これに違反した使用者に対しては、30万円以下の罰金という規定もあります。〔労働基準法120条1号〕

 

<権利濫用の禁止>

しかし、権利である以上、濫用は許されません。

国民は、基本的人権を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うものとされています。〔日本国憲法12条〕

ここで、「公共の福祉」というのは、自分の権利と他人の権利との調整をいいます。

労働基準法の生理休暇の規定にも「著しく困難」ということばがあり、これが「公共の福祉」の原理を示しています。つまり、生理なら休めるのではなくて、生理が重くてとても仕事どころではない場合に休めるわけです。

 

<実態としては>

特定の女性社員だけが、生理休暇を多くとるという現象があります。

体質により、あるいは婦人科の病気を抱えていて、生理が特につらいということもあるでしょう。

しかし、業務に支障が出たり、女性の当然の権利だから別に遠慮は要らないのだという態度だと、男性からも女性からも不満が出てきます。

 

<生理休暇の制限>

生理休暇は半日でも、時間単位でもとれますが、使用者の側からこれを強制することはできません。

また使用者は、医師の診断書など特別な証明を求めることができません。

ただ、生理休暇を有給にするか無給にするかは、労使の協議に任されていますので、就業規則で無給と規定することは可能です。

さらに、偶発的なことではありますが、女性上司がお見舞いに行ったら不在で、翌日に確認したら「入院していた」と言っていたが、その事実はなく、遊びに行っていたことが判明したというケースでは、事前事後のウソの報告があるわけですから、懲戒処分の対象ともなりえます。

 

<結論として>

生理休暇をとった事実で、昇格、昇給、賞与支給にあたっての評価を下げることはできません。

しかし目標管理制度で、結果的に目標達成率が低かった場合には、低い評価を与えても問題はありません。

その他の人事考課基準でも、生理休暇の回数とは関係なく、会社への貢献度や個人の業績が客観的に劣っていたのなら、評価が下がるのは評価制度の正しい運用だといえます。

こうしたことから、生理休暇の濫用ばかりにとらわれることなく、適正な評価制度の正しい運用こそ、望ましい解決策だといえるでしょう。

 

2016.05.30.

<予定外の長期入院で月給が下がるのは>

月給制の従業員が入院したら、入院期間に応じて毎月少しずつ基本給が下がっていくシステムというのは聞いたことがありません。

これでは、会社の従業員に対する冷たさが見え見えです。そういう会社では働きたくないです。

また、不合理であり社会通念上も相当性がないので、法的に許されない不利益変更となります。

 

<年俸制なら許されるのか>

ではなぜ「年俸制の従業員が長期入院したとき年俸を下げてもよいのか」という疑問が出るのでしょうか。

これは、年俸が過去の実績を踏まえつつ、今後1年間でどれだけ会社に貢献してくれそうかという予測評価に基づいているためでしょう。

プロ野球の選手は、一般の労働契約とは違うと思いますが、サラリーマンにも応用できそうだということで、年俸制を採用している会社があります。

そして一度決めた年俸は、長期入院にもかかわらず、会社から支払いが続くというものです。

しかし、これは会社が独自に決めたルールです。年俸制なら欠勤控除できないという法令の規定はありません。そもそも、労働基準法などに年俸制の規定はありません。

予想外の長期入院が発生したときに不都合を感じるような給与支払いのルールを作っておいたことが失敗なのです。

 

<ではどうしたらよいのか>

年俸制であっても、労働基準法の縛りがあります。毎月1回以上定期に賃金を支払わなければなりません。残業手当、深夜手当、休日出勤手当も支払う必要があります。

しかし、欠勤控除してはいけないというルールはありません。実は法令には規定がないのですが、労働契約の性質から「労働者が働かなければ会社に賃金の支払い義務はない」という「ノーワークノーペイの原則」があります。

欠勤控除しないのは、会社がそういうルールにしているからです。

ですから、年俸制を実施している会社で、就業規則に欠勤控除の規定がなければ定めればよいのです。もちろん、就業規則がないのなら一から作る必要があります。

ただし、長期入院にもかかわらず、通常の賃金を支払い続けていたという例が過去にあった場合には、就業規則の不利益変更が疑われます。この場合には、弁護士や社会保険労務士などの専門家と、所轄の労働基準監督署に相談しながら慎重に事を進める必要があります。

 

2016.05.24.

<おどし文句か冗談か>

「定期健康診断をサボり続けると労働基準法違反だから逮捕されるよ」

「就業規則のルールを守らないと労働基準法違反で捕まるよ」

会社の上司からこんなことを言われる人がいるそうです。

本気で言っているとは思えません。

 

<労働基準法違反の制裁>

労働基準法は、使用者に対して基準を示して、いろいろ義務づけています。

これに違反した使用者に対する罰則も規定されています。

しかし、労働者に対する罰則はありません。

 

<逮捕の性質>

逮捕とは、罪を犯したと疑われる人の身体を拘束する強制的な処分をいいます。

逮捕の後、48時間以内に身柄を検察官に引き渡さなければなりません。

検察官は24時間以内に勾留請求するか、釈放するか、起訴するかを決めます。

 

<労働者の逮捕>

労働者が労働基準法違反の罪を犯すということ自体がないのですから、逮捕や起訴などもないのです。

ただし、就業規則に違反すれば、会社での評価は下がるかもしれませんし、場合によっては懲戒処分の対象となるかもしれません。

それを心配した上司が、部下に対してたとえ話をしたのでしょうか。

 

2016.05.22.

<効力の優先順位は?>

「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」〔労働基準法13条〕

これが労働基準法の規定です。

「達しない」ということばがポイントです。

労働契約で法律よりも低い労働条件を定めて労働者に不利となる場合には、その部分を無効にして法律に従うという意味です。

逆に、労働契約の中に法律よりも有利な部分があれば、その部分については労働契約が有効となります。

結局、法律と労働契約を比べて、違いがある部分については、労働者に有利な方が有効となります。

 

<具体例>

たとえば、試用期間が終わり本採用となってから6か月後に年次有給休暇が付与されるという労働契約は法律よりも不利です。たとえ本人が同意していても、法律の基準により試用期間の初日から6か月後に付与されます。

またたとえば、1日7時間勤務の会社で、7時間を超えて勤務したら時間外割増賃金として25%を加えるという労働契約は法律より有利です。なぜなら労働基準法は、8時間の法定労働時間を超える残業に割増賃金を義務づけているからです。この場合には、労働契約が優先されます。

 

<労働契約が無い場合>

働いている限り、労働契約が無いということはありません。口頭であっても、それなりの約束はあるはずです。

ですから、正確には「労働契約書」が無い場合ということになります。たとえ契約書ではなくても、労働条件を会社から一方的に通知する「雇い入れ通知書」「労働条件通知書」でもよいのですが、何も無ければ労働基準法に定める条件が適用されることになります。

ただ、何時から何時まで、どこで、どのような仕事をするのか、休憩時間はどうなのかということは、法律に規定がありません。これでは働く人があまりにも不安定ですから、会社には労働条件を書面で交付するなどの義務があります。30万円以下の罰金という罰則もあるのです。

それでも交付していない会社は、無意識のうちにブラック企業になっていますので働かないのが無難です。

 

2016.05.08.

<労働基準法での定義は?>

「この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。」〔労働基準法10条〕

これではよくわかりません。

 

<確実に「使用者」といえるのは?>

労働基準法10条に書いてある「事業主」とは、個人事業なら事業主ですし、会社なら会社そのものです。「事業の経営担当者」とは、代表者、取締役、理事などです。

「その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」の中に、人事部長や労務課長などが含まれることも明らかです。他にもここに含まれる人はいるのでしょうか。

 

<社内の人に限られない?>

「使用者」というと、会社にいる人の一部というイメージなのですが、「労働基準法に基づく申請などについて事務代理の委任を受けた社労士が、仕事をサボってその申請などを行わなかった場合には、その社労士は労働基準法10条の使用者にあたり、労基法違反の責任を問われる」という内容の通達もあります。〔昭和62年3月26日基発169号〕

 

<結論として>

労働基準法の他の条文や通達を全部合わせて考えると、「使用者」とは労働基準法で定められた義務を果たす「責任の主体」だということがわかります。

社労士は会社のメンバーではないのですが、労働基準法で義務づけられていることを、会社の代わりに行う場合には、その業務については「使用者」になるわけです。

また、人事部の中の担当者やお店で人事関係の事務を扱う人は「労働者」なのですが、労働基準法で義務づけられたことを行う場合には、その業務については「使用者」でもあるわけです。

 

2016.05.05.

<行政通達とは>

行政通達は、行政機関が行政上の取扱いの統一性を確保することを目的として定める指針です。その内容は、法令の解釈、運用・取扱基準や行政執行の方針などです。

 

<労働法の世界での行政通達の役割>

労働法の世界では、労働者を保護するための法令が多数制定されています。

しかし、現実の世界で生じる具体的な問題や紛争のすべてをカバーすることはできません。法令が予定していないことも起こるのです。

また、法令というのは、抽象的な表現を多く含んでいます。そのため、いくつもの解釈ができてしまうことがあります。これでは、法令の適用によって労働者と使用者の両方が納得する結論を出すことができません。

そのため、行政機関が法令の解釈・運用・取扱基準を示すことがあります。これは「行政通達」の形をとることが多いのです。

 

<行政通達の効力>

あくまでも行政機関内部の指針です。国民の権利・義務を直接に規制するものではありません。しかし、たとえば労働基準監督署が企業を指導する場合には、行政通達の基準に従って指導します。ですから、事実上の強制力をもっていると考えられます。

 

<行政通達に逆らえるのか>

たとえば、行政通達そのものの効力を争って、企業が裁判を起こしても門前払いとなります。

しかし、行政通達に従った指導によって、企業が不当な損害をこうむった場合には、国家賠償を求める形で争うことはできます。

反対にいえば、企業はそこまでする気がないのなら、行政通達に基づく指導に従わざるをえないということです。

 

2016.05.04.

<憲法に規定されていること>

日本国憲法は、1947年(昭和22年)5月3日 に施行されました。

その目的は、私たちが人間らしく生きていけるようにすることです。

この目的にそって規定されている内容は、主に次の2点です。

・日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていく権利(基本的人権)の保障

・権力が日本国民の基本的人権を侵害しないようにする権力細分化のしくみ

 

<権力細分化のしくみ>

国家権力が、王様のような一人の人間に集中すると、私たちが人間らしく生きていくのに必要な基本的人権は、その人の感情によって簡単に侵害されてしまいます。

そうしたことがないように、憲法は権力を細かく分割するしくみを定めました。

・国家権力を、立法権・行政権・司法権に分けました。三権分立です。

・立法権のある国会を衆議院と参議院に分けました。

・行政権を内閣と多くの行政機関に分けました。

・司法権を最高裁判所・高等裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・家庭裁判所に分けました。

・地方分権のため、都道府県とその下に市町村を設けました。

・この他、政党や派閥の存在を認めています。

このように国家権力が細分化されたことによって、誰か一人のえらい人が、自分だけの考えで好きなことを自由にできなくなりました。

もし、そうしたことをすれば、国民や住民の批判にさらされることになります。

今後も、選挙制度が正しく機能している限り安心です。この意味で、私たちが投票に行くことはとても大切です。

 

<基本的人権の保障>

日本国民の一人ひとりが人間らしく生きていくための最低限の権利として生存権が規定されています。私たちが「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。〔憲法25条〕

生活保護などの諸施策は、この規定が根拠となっています。

さらに、国が生存権の保障をできるように財源を確保するしくみも定めています。

・「文化的な生活」ができるための義務教育〔憲法26条〕

・教育を受けた人が働く権利と義務〔憲法27条〕

・立場の弱い働き手が団結する権利〔憲法28条〕

・働いて得た財産を自分のものとする権利〔憲法29条〕

・収入や財産によって税金を納める義務〔憲法30条〕

・そしてこの税金を使って守られる生存権〔憲法25条〕

このように、憲法25条から30条までは循環する関係にあります。

 

<労働基準法の役割>

日本国憲法27条2項が「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定しているのを受けて、労働基準法が制定されました。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定めて、使用者に強制的に守らせることによって、労働者を保護しています。

労働基準法ができる前は、民法の「契約自由の原則」によって、労働者に不利な労働契約も許されていました。それが、労働基準法の制定によって、労働者が人間らしく生きていく権利を確保するため、労働基準法違反の労働契約は許されなくなったのです。

労働基準法は、労働者を保護するため、使用者に対する罰則をたくさん規定しています。一方、労働者に対する罰則はありません。

労働者の権利は、労働基準法をはじめ多くの労働法によって保護されているのです。

ただし、権利の濫用は許されませんので、念のため。〔憲法12条〕

 

2016.05.03.

<不退職の念書とは?>

「退職しません」という念書を従業員に書いてもらうことがあります。

これに効力はあるのでしょうか?

 

<優秀な社員に対して>

たとえば、優秀な社員をプロジェクトのリーダーに抜擢したものの、その社員にはたびたびヘッドハンティングの話が来ているようなので、プロジェクトが終わるまでは辞めないという念書を書いてもらって安心したいというケースです。

たとえ本人が同意のうえでも、こうした念書を書かせることは、憲法で保障されている職業選択の自由の侵害ですから、明らかに無効でしょう。

しかし、退職を禁止する期間を限定して、その間は特別手当を支給するという場合はどうでしょう。「○年○月末までの間、御社から月額5万円の特別手当を給与の一部として受領します。この間は、御社の業務に精励し退職いたしません」という念書です。見返りがあることから、よさそうにも見えます。

「途中で退職したら、それまでの特別手当は返金する」という内容だとグレーでしょうか。

 

<給与の過払いの場合>

たとえば、社員が会社の近くに転居したとき、本人は上司に「住所変更届」を出したのにもかかわらず、その上司がこの届を机の引き出しに保管して忘れていたので、長い間、高額な通勤手当をもらい続けていたというケースです。

あるいは、正社員と同姓同名のアルバイトに誤って賞与を振り込んでしまい、本人がバイクのローン返済に全額使ってしまったというケースです。

どちらも、本人が気づかないはずはないものの、会社側にも落ち度があります。

全額一度に返済してもらうことは無理なので、ご本人の希望により、毎月給与から1万円控除することにして、この間は退職しないという念書も考えられます。

正社員の通勤費であれば、金額にもよりますが、あまり負担なく返済できるでしょう。しかし、アルバイトが3年がかりで返済するという場合には、学校卒業後も退職しないという約束となってしまうこともあります。

 

<その効力は?>

「退職しません」という念書は、本人が同意していても、職業選択の自由の侵害、労働契約への不当な拘束になって、法的効力はありません。

それでも、心理的な拘束力はあるでしょう。ややグレーな話ですが、会社としてはこの心理的な拘束力に期待して念書を書いてもらうことがあるといえます。

もちろん従業員には、この念書に同意する義務はありません。

念書を使うときは、会社側も従業員側もよく考えてからにしましょう。

労働法の世界では、会社と従業員が心から同意していたとしても、客観的に見て労働者に不利益を生じうる念書は無効なのです。「年次有給休暇は取得しません」「残業手当はいただきません」という念書が有効だとしたら、労働基準法も骨抜きになってしまうのですから当然です。

 

<ではどうしたらよいのか?>

優秀な社員に退職して欲しくないケースでは、高額な特別手当や、臨時昇給などで、転職を検討されないようにするというのが王道でしょう。

給与の過払いのケースでは、あらかじめ就業規則に定めておくことができるのですから、従業員が負担にならない形での返金について定めておきたいです。

また、住所が変わったら通勤手当がいつからどうなるのかをきちんと教育しておけば、誤った支払いがあったとき本人が気づくでしょう。これは、アルバイトに賞与が支給されないということについても同じです。

 

2016.05.03.

<よくあるパターン>

正社員として月給20万円で採用、ただし3か月間は試用期間で月給15万円とするなどのパターンは多いですね。ここで、試用期間は時給1,000円の契約社員とするのならよいのですが、月給の時間単価が最低賃金を下回るというのは法令違反です。「月給÷所定労働時間」を計算して確認しておきましょう。

 

<試用期間終了で雇用契約終了>

4月から6月まで試用期間の新人が、どうも会社の正社員としての要件を満たしていないので、辞めていただこうという場合、6月に入ってから「本採用はありません。試用期間の終了をもって退職していただきます」という話をすると、解雇予告手当の支払いが必要となります。解雇予告手当の支払いを避けるには、5月中に見極めて通告することが必要です。

ただし、14日以内に見極めて解雇を通告する場合には、解雇予告手当の支払いが不要です。しかし、14日以内に見極めのつくかたを採用するのは例外でしょう。採用の失敗ともいえます。

 

<試用期間の延長>

ブラック企業が、人件費を削減するために、試用期間の延長を繰り返して、安い給料の支給を続けることがあります。

そうではなくて、「人物的にはいいけれど、ミスが多いのと、報告を忘れるのが気になる」などの理由で、もう少し様子を見たいということがあります。この場合に、ご本人と面談して、試用期間の終了をもって辞めるか、試用期間を1か月延長するか相談し、試用期間の延長を選んだとします。

それでも、やはり正社員にするには能力不足を感じるので辞めていただいたとします。すると、一方的に試用期間を延長されたことに対する慰謝料の請求などで訴えられる恐れがあります。訴訟になれば、客観的な証拠がものをいいますから、いつどんなミスをしたか、いつどんな報告を忘れたか、いつ試用期間延長の話をして、どのように同意したのかなどなど事実の記録を詳細に残しておかないと、会社が敗訴する可能性が高まります。

 

<社会保険の加入は?>

試用期間の初日から、厚生年金や健康保険に入るのが法律の定めです。

これを避けるためには、試用期間ではなくて2か月限定の有期労働契約とすることです。そして、この2か月間の勤務成績が優秀であれば、正社員に抜擢することがあるというのなら、正社員になったときから社会保険加入でかまいません。しかし、2か月の有期契約で採用されることを希望するかたは稀でしょう。

また、これを繰り返して正社員抜擢が当たり前になれば、実質的に最初から正社員として採用していることになり、初めから社会保険に入らなければなりません。

 

<試用期間クリアの基準>

試用期間終了後に本採用するかどうかの基準が、「正社員としてふさわしい」などの抽象的な基準だと、それ自体が争いの種になります。基準を満たしているかどうかの判断が、客観的にできないからです。

採用にあたっては、「遅刻・欠勤しないこと。社員・お取引先・お客様には明るく元気にあいさつすること。電話応対が同僚と同レベルでできること。」など、試用期間クリアの基準を、書面にまとめて説明し渡しておくことをお勧めします。

なかには、この基準をクリアする自信のないことを理由に、採用を辞退するかたもいるでしょう。それはそれで、無駄な採用をしなくて済んだことになります。

また、無理に試用期間を延長して、トラブルになることも防げると思います。

 

2016.05.01.