失業なき労働移動 ― 解雇ではなく異業種への出向という道もあります

2024/03/05|1,076文字

 

<産業雇用安定センターとは>

公益財団法人産業雇用安定センターは、企業間の出向や移籍を支援することにより「失業なき労働移動」を実現するため、昭和62(1987)年に国と事業主団体等が協力して設立された公益財団法人です。

設立以来、25万件以上の出向・移籍の成立実績があります。

 

<新型コロナウイルスの影響>

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、極端に人手不足となった業種と、雇用過剰となった業種が発生しました。

人手不足となった業種としては、宅配便などの運送業、スーパーマーケット、ホームセンターなどがありました。

人手不足が、長期にわたるのであれば、積極的に採用すれば良いのですが、新型コロナウイルス感染症が終息すれば、反対に雇用過剰となることも見込まれたのです。

実際、運送業ではますます人手不足となりましたが、スーパーマーケットでは売上減少による雇用過剰が進みました。

ですから、思い切った大量採用はできませんでした。

一方で、ホテル・旅館業、観光業、飲食業などでは、雇用過剰となりました。

こちらも、雇用過剰が長期にわたるのであれば、やむを得ず整理解雇を考えることになるのですが、新型コロナウイルス感染症が終息すれば、反対に人手不足となることが見込まれますし、一度解雇した従業員を再雇用するのは、かなりの困難を伴います。

特に、解雇されたことに大きな不満を抱えた人を呼び戻すのは不可能です。

ですから、ただでさえ法的に有効な解雇は難しいのに、コロナ禍を理由に解雇することは躊躇されます。

 

<産業雇用安定センターの活動>

産業雇用安定センターは、以前から出向・移籍を中核的業務としています。

新型コロナウイルス感染症の影響が拡大していった時期には、一時的に雇用過剰となっている企業から人手不足が生じている企業への異業種間の在籍型出向の支援についても積極的に取り組んでいました。

具体的には、センターの出向支援に関する情報が、各業界団体を通じて個々の企業に提供され、雇用過剰の企業(送出企業)と人手不足の企業(受入企業)の異業種における人材ニーズに関する情報がセンターに集約されます。

これを基に、センターが送出企業と受入企業間の在籍型出向のマッチングを行います。

今後とも、政府の雇用政策や各種方針に即応し、経済団体や労働組合などからの協力のもと、雇用の維持と安定を図り「失業なき労働移動」の実現に向けた活動が継続されます。

こうしたサービスは、無料で行われていますので、一時的であることが見込まれる人手不足や雇用過剰のある企業では、センターの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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