民法改正の退職日への影響

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2020/07/31|1,661文字

 

<就業規則の規定>

モデル就業規則の最新版(平成31(2019)年3月版)は、従業員の退職について、次のように規定しています。

 

【退職】

第50条  前条に定めるもののほか、労働者が次のいずれかに該当するときは、退職とする。

 ①退職を願い出て会社が承認したとき、又は退職願を提出して  日を経過したとき

 

従業員が「退職を願い出て会社が承認したとき」は、退職することについて労使が合意したわけですから、労働契約の合意解除がなされたことになります。

この場合には、即日退職ということもあります。

これに対して、従業員が「退職願を提出して  日を経過したとき」は、会社側が退職の申し出を拒んだとしても、一定の日数の経過により労働契約が解除されるわけですから、従業員から会社に対する一方的な契約解除ということになります。ここでは、「退職願」と言っていますが、「退職届」「辞職届」と呼んだ方がふさわしいでしょう。

結局、会社に退職願が提出されて会社が承認すればその時点で、会社が承認しなくても規定の日数が経過すれば退職の効果が生じることになります。

 

<民法改正と就業規則>

正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができます。また、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

これには、月給者の場合の例外がありました。

月末に退職を希望するときは当月の前半に、また、賃金締切日がたとえば20日でその日に退職したいときは20日以前1か月間の前半に退職の申出をする必要がありました。〔改正前の民法第627条第2項〕

令和2年4月1日からは、民法改正により、このルールが使用者側だけに適用されることとなり、労働者側には適用されなくなりました。

 

【改正後の民法第627条第2項:期間の定めのない雇用の解約の申入れ】

期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 

つまり、従業員からの退職の申出について、月給者の場合の例外が無くなったことになります。

就業規則は古いままで、「退職願を提出して30日を経過したとき」あるいは「退職予定日の30日以上前に退職願を提出」などと規定されていることもありますが、民法が就業規則よりも労働者に有利な部分は、民法が優先されます。

結局、正社員など期間の定めのない雇用の場合、従業員はいつでも退職を申し出ることができ、会社の承認がなくても、民法の規定により退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは、退職となります。〔民法第627条第1項〕

この原則について、月給者の場合の例外が無くなったということです。

ですから、就業規則は「遅くとも退職予定日の14日前までに退職願を提出」という規定にしておいて、早めの退職願提出を「お願い」し、退職希望者の会社に対する配慮に期待するしかないのです。

 

<実務への影響>

月給制の正社員の場合、退職申し出のタイミングにかかわらず、給与の締日に退職というのが一般的でした。

法改正により、退職日がバラバラになり、就業規則(給与規程)に欠勤控除についての明確な計算方法が無いと困ることになります。

業務の引継ぎについても、引継ぎ期間は「最低でも2週間」だったのが、「原則として2週間」になってしまいました。

突然の退職にも対応できるよう、普段からマニュアルを利用した業務遂行と業務改善を当たり前にしておきたいところです。

また、退職時のルールや異動の場合を含めた引継ぎのルールも、具体的に定めて正しく運用することで、生産性の低下を防止しましょう。

もっとも、従業員が「退職を願い出て会社が承認」という合意退職については、上記のような問題が発生しません。

労使の関係を良好に保ち、「退職」と言えば「合意退職」を意味するような状態にしておくのが理想でしょう。

 

解決社労士