休職制度の設計

2021/07/24|1,680文字

 

<休職の性質>

休職とは、業務外での病気やケガなど主に労働者側の個人的事情により、長期間にわたり働けない見込みとなった場合に解雇せず、労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱いをいいます。

しかし、これは一般的な説明であって、休職の定義、休職期間の制限、復職等については、労働基準法などに規定がありません。

つまり、法令に違反しない限り、会社は休職制度を自由に定めることができますし、休職制度を設けないこともできます。

 

<モデル就業規則の規定>

令和3(2021)年4月に厚生労働省から公表された最新のモデル就業規則には、休職について次のように規定されています。

 

(休職)

第9条  労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。

①業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき  年以内

②前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき 必要な期間

 

第1号が「業務外の傷病による欠勤」に限定しているのは、業務による傷病、つまり労災のうちの業務災害については、解雇制限があるからです。〔労働基準法第19条第1項本文〕

休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とするのですが、業務災害については療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇が禁止されているので、これに配慮した規定となっています。

 

モデル就業規則では、「業務外の傷病による欠勤が  か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき」は、「所定の期間休職とする」という規定になっています。

休日にスポーツをして大ケガをした場合であっても、酒に酔って階段で転んで大ケガをした場合であっても、年次有給休暇を使い果たし、一定の期間欠勤が続けば自動的に休職となります。

また、会社としては何年でも復帰を待ちたい人材というわけではなく、長く職場を離れるのなら代わりの人を採用したいという本音があったとしても、やはり自動的に休職となります。

「あなたは勤務態度が今一つなので、この規定を適用しません」ということはできないのです。

 

<会社に主導権のある規定>

「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を命ずる場合がある

このような規定にしておけば、会社は具体的な事情に応じて休職を命ずるか、休職を命じないで長期欠勤を理由とする解雇をするかの選択が可能となります。

ただ、不公平な運用をすれば、その合理性を問われて解雇が無効となる余地はあります。

さらに、復帰して欲しい人材に休職を命じたところ、本人から退職の申し出があった場合には、引きとめることができません。

この場合、有能な人材が復帰を拒否したということで、他の社員に与える悪影響もあるでしょう。

 

<合意を前提とする規定>

「労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職を申し出ることができる。この場合、会社が承認したときは、会社の認めた期間休職を命ずる

つまり、労働者がそのまま退職するのではなく復帰を希望する場合に、会社が認めた範囲内で休職を命ずることができます。

休職について、会社に主導権がある一方で、労使の合意の元に休職制度を利用することになり、円満な運用を可能とします。

 

<規定を置かないという選択>

就業規則に休職の規定が無い場合、あるいは、そもそも就業規則が無い場合であっても、労働者に休職を命ずることができます。

休職を命じなければ、長期欠勤で退職となるところ、休職を命じて救済するわけですから、法令以上に有利な扱いをすることになるからです。

つまり、ある程度、休職の実績が積み重ねられてから、就業規則に休職についての規定を置くという選択も可能です。

ただ、行き当たりばったりの不公平で不合理な運用をすれば、休職扱いとならず解雇された労働者から、解雇の無効を主張される可能性はあります。

 

休職制度ひとつを取っても、就業規則というのは、会社の個性に応じたものでなければならないことが痛感されます。

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