不妊治療を受ける社員への配慮

2021/04/04|1,490文字

 

<少子化対策の推進>

少子高齢化が進む現在の日本で、政府は政策として、少子化対策と高齢化対策を強化していますから、育児・介護休業法も、度重なる改正によりその内容が充実してきています。

さらに、労働者が妊娠したことを理由に不利益な扱いを受けるなど、事業主が育児・介護休業法に規定する義務に違反したことが原因で退職した場合には、雇用保険法により特定受給資格者とされ、会社都合で退職させられた人と同じように、失業手当(求職者給付の基本手当)の給付日数が多めに付与されるようになっています。

これは、育児・介護休業法の枠を越えて、政策が推進されている実例の一つです。

 

<厚生労働省からの呼びかけ>

近年の晩婚化等を背景に不妊治療を受ける夫婦が増加しており、働きながら不妊治療を受ける人は増加傾向にあると考えられます。

また、仕事と不妊治療との両立に悩み、やむを得ず退職する場合も多いと言われています。

不妊治療を受ける人は、一定の職務経験を積んだ年齢層の従業員であることも多く、企業の貴重な戦力であると考えられます。

こうした人材を失うことは、企業にとって大きな損失です。

仕事と不妊治療の両立について職場での理解を深め、従業員が働きやすい環境を整えることは、有能な人材の確保という点で企業にもメリットがあるはずです。

 

<不妊治療について>

不妊の原因はさまざまです。

不妊の原因は、女性だけにあるわけではありません。

男性に原因があることもありますし、検査をしても原因がわからないこともあります。

女性に原因がなくても、女性の体には、治療に伴う検査や投薬などにより大きな負担がかかります。

 

検査によって、不妊の原因となる疾患があるとわかった場合は、原因に応じて薬による治療や手術を行い、医師の指導のもとで妊娠を目指します。

これらの治療を行っても妊娠しない場合は、卵子と精子を取り出して体の外で受精させてから子宮内に戻す「体外受精」や「顕微授精」へと進みます。

不妊治療は、妊娠・出産まで、あるいは、治療をやめる決断をするまで続きます。

年齢が若いうちに治療を開始したほうが、妊娠に至るまでの治療期間が短くなる傾向がありますが、「いつ終わるのか」を明らかにすることは困難です。

治療を始めてすぐに妊娠する人もいれば、何年も治療を続けている人もいます。

 

体外受精、顕微授精には頻繁な通院が必要となりますが、1回の治療にかかる時間はわずかです。

ですから、職場としては積極的な支援が可能です。

 

<職場の取り組み>

不妊や不妊治療に関することは、その従業員のプライバシーに属することです。

職場ではプライバシーの保護に配慮する必要があります。

また、セクハラ、マタハラのようなハラスメントの防止も強化しなければなりません。

 

そのうえで、次のような仕事と両立しやすくする制度の導入をお勧めします。

・年次有給休暇を時間単位で取得できるようにする

・不妊治療目的で利用できるフレックスタイム制を導入する

・失効した年次有給休暇を積み立てて使用できる「積立(保存)休暇」の使用理由に不妊治療を追加する

・不妊治療を目的とした休暇制度を導入する

 

上記のうち、時間単位年休、フレックスタイム制、積立休暇は、不妊治療を対象としなくても、社員にとっては魅力的な制度です。

 

<解決社労士の視点から>

これらの取り組みは、人材不足への対処手段として有効なものとなるでしょう。

何もしない企業とは差がつくはずです。

ただ、会社の現状と体力に見合った制度の導入となると、頭が痛いかもしれません。

こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社労士にご相談ください。

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