朝礼や掃除当番の時間の賃金支払義務

2023/12/26|932文字

 

 

労働基準法により、業務の時間だけでなく、業務の準備の時間、業務の後片付けの時間は、賃金支払対象となる労働時間とされています。

 

<朝礼の時間の賃金支払義務>

朝礼は、業務上必要な連絡事項の伝達、心身の異常の有無の確認、勤務に就く態勢を整えさせるなどのために行われています。

業務に密接に関わる内容を含みますので、通常は出勤者全員の参加が義務付けられています。

確立した判例理論によると、労働時間の定義は「何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間」です。

通常の場合、朝礼はこの定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

こうした朝礼については、会社の方針で賃金を支払わないことにはできません。

例外的に、その朝礼が自由参加であって、参加しなくても評価の低下などの不利益が全く無いのなら、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払は不要です。

もちろん、会社の方針で賃金を支払うことにするのは構いません。

 

<掃除当番の時間の賃金支払義務>

掃除当番は、会社が通常の業務にプラスアルファで行わせているのが一般的な形です。

これは、上記の労働時間の定義に当てはまりますので、賃金支払の対象となります。

こうした掃除当番の時間についても、会社の方針で賃金を支払わないことにはできません。

例外的に、従業員同志が話し合って、自主的に当番を決めてボランティアで行っている場合には、労働時間の定義に当てはまりませんから賃金の支払は不要です。

たとえば、長年にわたり社長が毎朝早く出社してトイレ掃除をしていたとします。

あるとき、一人の社員の提案で、社長に代わり自分たちで掃除することになって、掃除当番が始まったとします。

これが、社長に対する尊敬の念とボランティア精神から始まったことであれば、賃金の支払は不要なのです。

もちろん、会社の方針で賃金を支払うことにするのは構いません。

 

<実務の視点から>

「昔から朝礼や掃除当番の時間については無給です」というのは、その時間の賃金を支払わなくて良い理由にはなりません。

長く続いているルールが、労働法違反の慣行に過ぎないということもあるのです。

社内で行われている何となくのルールに疑問を感じたら、信頼できる社労士にご相談ください。

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