労働紛争の予防

2023/12/12|1,020文字

 

<労働紛争の損失>

退職者の代理人弁護士から、会社あてに内容証明郵便が届いて、アッ!と驚くことがあります。

「円満退職だと思っていたのになぜ?」「本人が悪いのになぜ?」「あんなにおとなしい人なのに」と頭の中はクエスチョンマークだらけになってしまいます。

労働審判や訴訟となれば、弁護士を代理人に立てて対応するのが当たり前です。

弁護士の先生は、会社が責任を負わないように、また、たとえ賠償金を支払うことになっても、なるべく少額で済むように力を尽くしてくれます。

また、訴訟などで解決した後になって、その退職者がウジウジとネットへの書き込みなどで反発してくるようであれば、今度は会社から退職者を相手取って訴えを起こすこともできます。

この点、社労士は訴訟の場合に弁護士である訴訟代理人とともに、補佐人として法廷に出頭し陳述できるだけです。〔社会保険労務士法第2条の2〕

社労士が当事者の代理人となれるのは、個々の労働者と事業主との間のトラブルについて労働局の斡旋(あっせん)などが行われる場合に限られています。

しかもこれは、すべての社労士ができるわけではなく、特定社労士に限られています。

 

<労働紛争になる前に>

たとえ社員が会社に不満を感じても、会社の中で解決できれば、社員も会社も負担が少なくて済みます。

金銭的なことはもちろん、時間も労力も精神的な負担も少ないうちに解決できた方が良いのは分かっていることです。

しかし、そうならないのは、社員が上司に相談したがダメだった、あるいは、それ以前に会社には話の分かる人がいないと感じてしまうからでしょう。

もし、顧問の社労士がいて、相談窓口になっていれば、法令の定めや判例の動向などを踏まえ客観的な説明が可能です。

勘違いが原因で退職し、労働基準監督署や弁護士に相談する事例が多いのは悲しい事実です。

平成27(2015)年4月のパートタイム労働法の改正によって、パート社員については、相談窓口を設置し労働条件通知書などに記載することが義務付けられていますが、こうした窓口の設置と告知は、正社員しかいない会社であっても必要でしょう。

顧問の社労士であれば、相談窓口となるだけではなく、会社の職場ごとの実情に応じたトラブル予防策を提案し推進します。

会社が責任を負わないようにする、徹底的に争うというのも一つの考えです。

しかし、人には感情があります。

社員と会社との信頼関係が保たれ、気持ちよく働ける会社を目指したいものです。

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