手取り額での給与決定

2023/10/22|964文字

 

<給与からの控除>

基本給の他に、通勤手当、残業手当、その他の手当があれば、それらを合計して給与の総支給額となります。

しかし、この総支給額がそのまま従業員に支給されるわけではありません。

総支給額を基準に、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料が決まり、これらが控除されます。

40歳以上なら、介護保険料も加わってきます。

また、総支給額から通勤手当を差し引いた金額を基準に、所得税と住民税の控除があります。

ただし、一定の基準を超えれば通勤手当にも課税されますし、住民税は入社の翌年の6月から控除することが多いのです。

こうして、いろいろ控除された残りが手取り額となります。

 

<入社にあたっての給与の決定>

小さな会社では、社長と応募者とで採用面接をして、給与については手取り額で合意することもあります。

たしかに、応募者の入社後の生活費を考えると、手取り額で約束しておけば安心です。

しかし、手取り額から基本給を逆算するのは容易ではありません。

所得税や住民税は、扶養家族の状況によっても変わるものです。

 

<深夜労働がある場合>

夜間に営業する飲食店などでは、午後10時から翌日午前5時の間に勤務時間が含まれるのが通常です。

そして、この時間帯は深夜手当として25%以上の割増賃金が発生します。

深夜手当の計算基礎は、基本給に一定の手当を加えた金額ですから、基本給とも総支給額とも違う金額になるのが通常です。

基本給を手取り額から逆算する場合には、この深夜手当も計算に入れる必要があります。

このとき、休憩時間をいつ取るかによっても計算が変わってきます。

 

<残業代込みの場合>

残業代込みで手取り額を設定する場合には、定額残業代についてきちんとしたルールを定め、正しく運用しなければ違法になってしまいます。

残業代の計算基礎は、深夜手当と同額になります。

 

<実務的には>

新人を採用する場合に、給与について手取り額で約束してしまうと後の計算が大変です。

基本給と各手当の金額で決定し、手取り額の目安を提示するのが得策です。

 

<社労士(社会保険労務士)の立場から>

それでも手取り額で給与を決めたい、あるいは決めてしまったという場合には、信頼できる社労士(社会保険労務士)にご相談ください。

ご本人から必要な情報をうかがって、可能な限り正確な基本給を計算いたします。

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