2023/10/21|1,042文字
<社会保険加入基準>
大企業など(任意)特定適用事業所の例外はありますが、原則として、臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除いて、1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が正社員の4分の3以上というのが社会保険加入基準です。
万一、週の所定労働時間が定まっていない場合には、次の計算によって算定します。
1年間の月数を「12」、週数を「52」として週単位の労働時間に換算するものです。
・1か月単位で定められている場合は、1か月の所定労働時間 × 12か月 ÷ 52週
・1年単位で定められている場合は、1年間の所定労働時間 ÷ 52週
・1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、その平均値
<正社員がいない場合>
この基準は、正社員の存在が前提になっています。
しかし、小規模の飲食店が1店舗のみの会社などでは、経営者の他にはパートとアルバイトだけで、正社員はいないという場合があります。
この場合には、もしその会社に正社員がいたとしたら、週何時間勤務で、月何日勤務になるかを想定して、その4分の3を基準とします。
一般には週40時間が法定労働時間ですが、従業員が10人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業では、週44時間が法定労働時間となります。
ですから、この制限内で正社員の労働時間を想定することができます。
こうした会社で、週27時間勤務のパートがいた場合に、正社員の所定労働時間を週40時間と想定すれば、その4分の3にあたる30時間を下回るので、社会保険には入りません。
しかし、正社員の所定労働時間を週36時間と想定すれば、その4分の3は27時間ですから、社会保険に入ることになります。
こうして、正社員のいない会社では、正社員の所定労働時間と所定労働日数の想定の仕方によって、ある程度は加入基準を選ぶことができるのです。
<社労士(社会保険労務士)の立場から>
何事にも原則と例外があって、労働関係では、その区分が必ずしも「常識」に従っていないことが多いのです。
従業員のうち誰が、社会保険、雇用保険、労災保険の対象なのか、信頼できる社労士(社会保険労務士)に確認させることをお勧めします。
社会保険などの加入基準は法定のものですから、「加入したい」「加入したくない」あるいは「加入させたい」「加入させたくない」ということで選択できるものではなく、「加入しなければならない」「加入できない」あるいは「加入させなければならない」「加入させられない」という客観的な区分になります。
会社に調査が入れば、会社の方針や言い分は役に立ちません。
法令の基準に従って正しく行いましょう。