兼業禁止規定を置く意味

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2020/03/15|1,262文字

 

<働き方改革の流れ>

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の普及促進を図っています。

そして、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、モデル就業規則の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除しました。

 

<兼業禁止規定の存在>

働き方改革の流れにもかかわらず、兼業禁止規定が就業規則に残っているケースも多々あります。

こうした規定は、政府の方針に沿うものではありませんが、その存在自体が許されないものではなく、各企業が必要性を認めて残しておくことは問題ありません。

 

<職業選択の自由>

職業選択の自由は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」として憲法で保障されています。〔日本国憲法第22条第1項〕

この中の、「公共の福祉」というのは、「他者の人権」のことを指しています。

「公共の福祉に反しない限り」というのは、「他者の人権を侵害しない限り」という意味です。

ですから、労働者が自由に副業・兼業を行えるわけではなく、また、企業が一律に禁止できるわけでもありません。

労働者の副業・兼業の権利が、企業の営業の自由との調整によって、ある程度制限されることもありうることになります。

 

<兼業禁止の合理性>

こうして、企業による兼業禁止や兼業制限に合理性が認められれば、有効性は否定されないということになります。

具体的には、次のような事情があれば、その程度に応じた制限も可能であり、場合によっては、禁止することも許されるということになります。

1.本業に支障が出る場合

兼業のために、遅刻や欠勤が増え、生産性が低下している場合には、本業に支障が出ていることになります。

2.会社の売上が低下する場合

ライバル企業での兼業によって、会社の売上に直接マイナスの影響を及ぼしている場合には、会社の利益が損なわれることが明らかです。

3.ノウハウが流出する場合

会社固有の技術やノウハウが流出している場合にも、会社の利益が損なわれることが明らかです。

4.会社に対する信用を利用する場合

会社の名前や名刺を使って副業を行う場合のように、会社の信用を利用して商売を行う場合には、労働者個人の信用失墜行為が、会社の信用低下を招くことにもなります。

5.違法な仕事をする場合

労働者が、違法薬物を販売するような場合には、会社の信用を失墜させることになります。

 

<懲戒処分が許される場合>

就業規則に兼業や副業の届出義務が規定されているにも関わらず、無届で開始したような場合には、手続違背を理由に厳重注意や譴責処分などの軽い懲戒規定を適用することは可能でしょう。

しかし、就業規則に禁止規定があったとしても、実害の発生が認められないにも関わらず、懲戒解雇や出勤停止処分とすることは、行き過ぎだと思われます。

懲戒処分を行う可能性があるのであれば、不都合が発生する恐れが生じた時点で、まず注意勧告を行なう必要があります。

そして、実害が発生したなら、懲戒処分を検討するという流れにするのが適正な対応となります。

 

解決社労士