2024/11/25|1,348文字
<労災保険の休業(補償)給付支給事由>
複数事業労働者の休業(補償)給付も、一般の場合と同様に、1「療養のため」、2「労働することができない」ために、3「賃金を受けない日」の第4日目から支給されます。〔労災保険法第14条第1項本文〕
<労働することができない>
上記2「労働することができない」とは、必ずしも負傷直前と同一の労働ができないという意味ではなく、一般的に働けないことをいいます。
軽作業に就くことによって症状の悪化が認められない場合や、その作業に実際に就労した場合には、給付の対象となりません。
健康保険の傷病手当金では、加入者(被保険者)が今まで従事していた業務ができない状態のことを「労務不能」と言っていますから、基準が少々異なっています。
ただ、労災保険でも、医師の意見、被保険者の業務内容、その他の諸条件を考慮して判断されます。
<複数事業労働者の場合>
複数事業労働者については、複数就業先のすべての事業場での就労状況等を踏まえて、休業(補償)給付の要否が判断されます。
たとえば、複数事業労働者が1つの事業場で労働者として現に就労した場合には、原則として、2「労働することができない」とは認められません。
この場合には、他の要件を満たしていても給付は行われません。
例外的に、複数事業労働者が1つの事業場で労働者として現に就労しているものの、他の事業場では通院等のため所定労働時間のすべては労働できない場合には、2「労働することができない」に該当すると認められることがあります。
<賃金を受けない日>
3「賃金を受けない日」には、賃金の全部を受けない日と一部を受けない日を含みます。
ただし、賃金の一部を受けない日については、次のような日であるとされています。
1)所定労働時間の全部について「労働することができない」場合であって、平均賃金(労働基準法第12条)の60%未満の金額しか受けない日
2)通院等のため所定労働時間の一部について「労働することができない」場合であって、一部休業した時間について全く賃金を受けないか、「平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の 60%未満の金額」しか受けない日
これは、昭和40年7月31日付基発第901号「労働者災害補償保険法の一部を改正する法律の施行について」及び昭和40年9月15日付け基災発第14号「労災保険法第12条第1項第2号の規定による休業補償費の支給について」に基づくものです。
<複数事業労働者の場合>
複数事業労働者については、複数の就業先のうち一部の事業場で年次有給休暇を取得し、平均賃金の60%以上の賃金を受けることにより、3「賃金を受けない日」に該当しない状態でありながら、他の事業場では、傷病等により無給での休業をしているため、3「賃金を受けない日」に該当する場合がありえます。
このことから、3「賃金を受けない日」の判断については、まず複数就業先での事業場ごとに行います。
その結果、「どの事業場でも賃金を受けない日」に該当する場合には、3「賃金を受けない日」に該当するものとして取り扱い、「どの事業場でも賃金を受けない日」に該当しない場合には、その日は、3「賃金を受けない日」に該当しないものとして取り扱うことになります。