2023/04/15|1,458文字
<同一労働同一賃金の法制化>
パートタイム・有期雇用労働法により、令和2(2020)年4月1日から、同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、賞与、手当、休暇などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されました。
事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて、説明を求められた場合には、説明しなければなりません。
中小企業にも、令和3(2021)年4月1日からこの法律が適用されています。
<取組手順>
厚生労働省では、次の手順で取り組むことを推奨しています。
手順1 | 労働者の雇用形態を確認する。 |
手順2 | 待遇の状況を確認する。 |
手順3 | 待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認する。 |
手順4 | 手順2と手順3で待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておく。 |
手順5 | 「法違反」が疑われる状況からの早期の脱却を目指す。 |
手順6 | 改善計画を立てて取り組む。 |
<手順1>
社内の労働者のうち、対応が求められる労働者の範囲を確認します。
正社員、契約社員、アルバイトなどの名称や定義は、会社独自のものであって、法令による区分ではありません。
フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者と、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者が対象です。
<手順2>
短時間労働者・有期雇用労働者のそれぞれの区分ごとに、賞与、手当、福利厚生などの待遇について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを確認します。
これは、項目ごとに一覧表の形でまとめると良いでしょう。
<手順3>
待遇の違いが、働き方や役割などの違いに見合った「不合理ではない」ものと言えるか確認します。
待遇の違いを設けている理由を文書化してみます。このとき、労働者に説明することを意識して、理解・納得できるものとします。
待遇の違いと働き方や役割などの違いとで、バランスが取れていることの説明ができている必要があります。
「パートだから」「将来の役割期待が異なるため」など、主観的・抽象的な理由ではなく、客観的・具体的な理由であることが求められています。
<手順4>
短時間労働者・有期雇用労働者の契約形態別に、正社員との待遇に違いがある部分について、その違いが「不合理ではない」と説明できるように整理します。
これを元に、労働者から説明を求められた場合に使用する、「待遇の違いの内容と理由」の説明書を準備します。
<手順5>
以上の手順の中で、待遇の違いが「不合理ではない」と言い難い項目がある場合には、改善に向けた検討が必要となります。
改善が必要な部分については、会社側の意向だけで改善を進めるのではなく、労働者側の意見を聞くことも必要です。
また、手当等の改善をするための原資など、予め考慮・検討しておくこともあります。
<手順6>
改善内容が明確になったなら、これを計画化し、計画的に改善を進めます。
改善内容について、社員が情報を共有してからスタートすることが望ましいわけですから、早めに着手し、余裕をもったスケジュールで取り組めるようにしましょう。
<前提として>
ここまでの手順は、職務内容(業務内容と責任の程度)と人事異動の範囲が、正社員とは異なる短時間労働者・有期雇用労働者を前提としています。
職務内容と人事異動の範囲が同じであれば、すべての待遇について、正社員と同等にしなければ不合理な差別を生じうることになります。
この点についても、忘れないようにしましょう。