2024/12/15|954文字
<法令に出てくる「客観的」という言葉>
労働契約法には、「客観的に」という言葉が3回出てきます(第15条、第16条、第19条本文)。
いずれも懲戒、解雇、雇い止めという重要な条文です。
しかし、ここでいう「客観的に」という言葉がどういう意味なのかは、労働契約法の中に説明がありません。
法令や裁判に出てくる基本的な用語の意味が確定していないと、私たちが具体的な事実に当てはめて考えることがむずかしくなってしまいます。
<辞書の説明>
「客観的」という言葉を辞書で調べると、次のように書かれています。
大辞林 第三版
個々の主観の恣意を離れて、普遍妥当性をもっているさま。
デジタル大辞泉
主観または主体を離れて独立に存在するさま。
特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま。
辞書ですから、様々な場所で使われている「客観的」に共通する意味を表示しているのでしょう。
法令や裁判を解釈するときには、どうしても自分の立場で解釈してしまいます。
特に労働関係法令であれば、使用者の立場と労働者の立場が対立します。
「客観的に」と言われても困ってしまいます。
<たとえば解雇について>
労働契約法は、解雇について次のように定めています。
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
とても抽象的な表現です。
ですから、具体的に使用者が労働者を解雇しようとしたときに、それがこの規定に触れて無効になってしまうのか、それとも有効になるのかを判断するのは困難です。
使用者自身の判断で解雇に踏み切るのはリスクが大きすぎますから、専門家である社会保険労務士などに具体的な事情を話して判断を求めるのが安全です。
そして、この労働契約法第16条の「客観的に」というのは、会社側の主観でもなく、従業員の主観でもなく、「裁判所の判断に従って」ということになります。
裁判所の判断が基準ということであれば、法令の条文を読んで辞書を引いても、ほとんどの場合には分からないことになります。
結局、具体的な事例に照らして関連する裁判例を確認して、その意味するところを確定しなければなりません。
こうした専門性の高いことは、信頼できる国家資格者の社会保険労務士にご相談ください。